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TDK Investor Day 2026:未財務資本を通じた企業価値向上に向けて(人財戦略・最先端技術)
(2026年9月1日開催)
説明要旨

1. Opening Remarks

Opening Remarks

本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。
CEOの齋藤です。

私のコミットメント

私のコミットメント

昨年も未財務資本説明会を開催しましたが、私のコミットメントのうち、未財務資本を高める経営の強化に関連して、本日は当社の技術力やそれを支える人的資本についてご説明します。

長期ビジョンを支える未財務資本

長期ビジョンを支える未財務資本

こちらの図は、長期ビジョンを達成するためのマテリアリティ、中期経営計画、そして未財務資本を強化するための人財戦略の位置づけを示したものです。
長期ビジョンの実現に向けて、当社のマテリアリティは、すべてのステークホルダーへの長期的な価値創造を前提としつつ、自社の企業価値を最大化させる要素にフォーカスしており、社会と企業のサステナビリティの同期化という考え方を採用しています。
未財務資本に関連するマテリアリティとしては、社会のトランスフォーメーション実現に貢献するR&D、そしてその研究開発を支え、競争優位を生み出し続ける人財の活躍推進および育成を掲げています。

経営戦略と人財戦略の連動

経営戦略と人財戦略の連動

これらの人財をいかに育成・強化していくかという人財戦略は、経営戦略と密接に連動させています。
当社は長期ビジョンの実現に向けて、人的資本を単なる資源ではなく、トランスフォーメーションを実現する主体そのものであり、経営戦略の実行と価値創造を推進する中核的な資本と位置づけています。
経営のトランスフォーメーションを進める上での課題は、大きく2つあります。一つは既存事業の強化、もう一つは事業ポートフォリオの変革です。
これらの課題を解決し、経営を進化させていく上で重要なのが、人財の変革力の強化です。
あるべき人財ポートフォリオとは、事業変革をけん引し、イノベーションを推進できる人財の集合体です。
人財をどのように獲得・強化しているかについては、この後CHROのAndreas Kellerよりご説明します。

中長期で目指す姿の実現に向けて

中長期で目指す姿の実現に向けて

先ほどのような人財が、当社が中長期的に目指す姿の達成に向けて、引き続き成長戦略、すなわちポートフォリオマネジメントを推進・けん引していきます。

AIエコシステム全体に向けて売上を伸ばします

AIエコシステム全体に向けて売上を伸ばします

その成長戦略における最大のドライバーが、AIエコシステム向けビジネスの拡大です。
2031年3月期には、2026年3月期比で約3倍の売上規模に拡大させる計画です。
なお、2027年3月期 第1四半期の実績においては、当初の想定を上回る力強い成長を示しています。
本日は、この図のグレーで示した部分にあたる新規事業の拡大に向けた、最先端技術開発やソフトウェア等を活用したソリューションビジネスについて、CTOの橋山および技術・知財副本部長のJim Tranよりご説明します。

2. 人的資本経営について

人的資本経営について

皆さま、こんにちは。CHROのAndreas Kellerです。
昨年は、平岡朋代(HR Center of Excellenceの責任者)とAngela Yuan(人財副本部長)とともにこの場に立ちました。平岡さんが今日もまた一緒に参加してくれていることを嬉しく思います。
今年は、当社のグローバルHRリーダーシップチームの重要メンバーであるGreg Browerと共にプレゼンテーションを行います。
これまでご説明してきたTDKのあらゆる戦略において、実行のための最大の原動力は「人財」であると私たちは確信しています。これからの20分間は、その点についてお話しします。
本日のテーマ「人的資本経営:イノベーションとインクルーシブな成長の推進」が示す通り、いかなる成長目標や技術的な意欲、市場拡大も、適切な人財が適切な企業文化の中で活躍しなければ決して実現しません。
本日はこのことを皆さまにお伝えします。

Andreas Keller

Andreas Keller

私は前職のHilton Hotelsでの13年間の経験から、あらゆる競争優位性は最終的に「人」に帰着するという信念を持ち、26年前にTDKのドイツ法人に入社しました。サプライチェーン、経営管理、人事など様々な職務を経て、現在のCHROに就任しています。 TDKの変革を肌で感じてきたこの道のりは、私に広い視野と強い信念を与えました。私の経歴そのものが、TDKが持つ自社のリーダーを見出し、育成し、成長させる力を証明していると言えます。

経営戦略と連動した人財戦略

経営戦略と連動した人財戦略

TDKの人財戦略は、経営戦略との連動(RENDO)を原則としています。先ほど齋藤さんが述べた通り、両者は並行するのではなく、常に一体となって動いています。
これを実行するため、スライド左下に示す4つの強みを持つ人財ポートフォリオの構築を進めています。 「事業変革をけん引する人財」「イノベーションを推進する人財」「AIやソフトウェア領域に精通し、ソリューションへと変換できる人財」、そして「ソリューション提供力を有する人財」です。
これは単なる理想ではなく、現在まさに構築中のポートフォリオです。そして、スライド右側に示す5つのHRの柱(「人財の獲得と育成」「インクルーシブなリーダーシップの実践」「グローバル・リーダーシップ育成基盤の構築」「組織力と業務効率の向上」「従業員の健康およびエンゲージメントの強化」)がこれを具現化します。これらはすべてTDK United HRトランスフォーメーションによって推進されています。

TDK Human Induction Cycle

TDK Human Induction Cycle

この戦略の実現に向けて、私たちはTDKならではのTDKヒューマン・インダクション・サイクルというモデルを活用しています。
インダクタ(コイル)が磁界にエネルギーを蓄え、効率的に放出するように、私たちは個人のポテンシャルを引き出し、企業文化を通じて高め、TDK Transformationによる価値創造を社会やビジネスに還元します。
これは一度きりではなく、持続的で自己強化的なサイクルです。強力な企業文化が強固なパイプラインを築き、それがイノベーションを推進し、さらに優秀な人財を惹きつけます。
このサイクルは、スライド右側の「変革の原動力としての人的資本の強化」「価値創造を生む組織と文化の強化」「戦略実行に資する能力の高度化」という3つの取り組みで推進されます。次に、これが当社の価値創造モデルとどう結びつくかをご説明します。

TDK 人的資本価値創造モデル

TDK 人的資本価値創造モデル

このスライドは、当社の人的資本のアウトプットが財務資本につながるモデルを表しています。
人的資本への投資は、定性的なスコアだけでなく財務的な価値創造への貢献としても測定可能であるべきだと考えています。当社は人的資本ROIを追跡しており、投資家の皆さまとの対話を通じて、明確なベンチマーク目標の設定に積極的に取り組んでいます。
ヒューマン・インダクション・サイクルが機能することで、イノベーションの加速、意思決定の強化、組織内摩擦の低減、市場競争力の向上が実現します。これらは単なる定性的な成果ではなく、人財投資に対する戦略的なリターンなのです。

TDK 人的資本価値創造モデル

TDK 人的資本価値創造モデル

主要なKPIの進捗をお話しする前に、これらを支える3つの文化的価値観について触れさせてください。
機能対等:役職や勤務地にかかわらず、すべてのチームメンバーの意見が尊重されること。真のエンゲージメントを実現するための基盤です。
Venture Spirit(ベンチャースピリット):常に挑戦し、新しいものを追求するTDKの起業家精神のDNAです。この精神が、社内インキュベータープログラムの土壌になっています。
多様性の尊重:思考、背景、性別、国籍の多様性が、イノベーションの原動力となります。多様なチームこそが優れた解決策を見出します。
これらは私たちが実践し、効果を測定している行動原則です。
それでは、KPIについてご説明します。

チームメンバーエンゲージメント

チームメンバーエンゲージメント

主な成果KPIの1つ目は、チームメンバー(従業員)エンゲージメントです。
私たちは毎年グローバルでエンゲージメントサーベイ(調査)を実施していますが、中でもコミュニケーションスコアを重視しています。コミュニケーションの質こそが、機能対等が実践されているかを示す最も信頼できる尺度だからです。
エンゲージメントスコアは、2024年3月期の72ポイントから、2026年3月期には76ポイントへと上昇しました。コミュニケーションスコアも67ポイントから71ポイントへと上昇し、75ポイント以上という目標に向けて前進しています。
また、サーベイ参加率は80%から92%へと上昇しました。グローバル企業で92%という参加率は驚異的であり、チームメンバーが自分の声には意味があると信じてくれている証拠だと言えます。
この成果は、以下の具体的な取り組みによるものです。例えば、すべてのチームメンバーが経営陣に直接質問できる四半期ごとのグローバル・タウンホールミーティングや、新入社員入社式、国際女性デーなどのイベントが挙げられます。さらに、ここには記載していませんが、各拠点のあらゆる部門で、改善に向けたチームごとのフォローアップ対話が実施されています。

グローバルリーダー育成基盤の構築

グローバルリーダー育成基盤の構築

続いて、昨年ご説明したグローバルマネジメント育成プログラム(GMDP)の進捗をご報告します。
4つのマネジメント層(TCDP、GMP、GAMP(IMDビジネススクールと連携)、GEMP(IESEおよび至善館大学と連携))に分かれたこのプログラムには、これまでに各地域のリーダーからトップ層まで約1,250名が参加しました。
現中計期間における累計参加者数は367名に達し、目標の500名以上に向けて順調です。女性参加率も年々増加して現在26.1%となり、30%の目標に着実に近づいています。また、経営幹部の後継者準備率は212%に達し、目標の200%を大きく上回りました。これは、空きポジションに対して2倍以上の後継者が準備できていることを意味します。

組織横断型・グローバルな育成プログラムの成果

組織横断型・グローバルな育成プログラムの成果

ここで強調したいのは、GMDPが単なるリーダー育成のパイプライン構築にとどまらず、実際のビジネスを生み出しているという点です。
トップ層向けのプログラム(GEMP)を通じて、参加者は実際のベンチャー事業を立ち上げています。
例えば、センサ事業以外のメンバーだけで設立されたSensEIという会社です(詳細はCTOセッションでお話しします)。彼らは自ら事業機会を見出して部門横断的チームを結成し、現在は一つのベンチャー企業として機能させています。 TDK Launch Engine(旧・TDK Kindergarten)から生まれたその他のスタートアップ企業については、昨年すでにお話ししましたので、ここでは割愛します。ちなみに、CTOの橋山さんや技術・知財副本部長のTranさんも、このGEMPプログラムの参加者です。
次に、世界中の優秀な人財にTDKを魅力的に見せる人財獲得戦略についてお話しします。私から戦略のフレームワークを共有し、続いてBrowerさんから詳細をご説明します。

Employer Branding の取り組み

Employer Branding の取り組み

Employer Brandingは、単なる広報活動ではなく、競争力と持続可能な成長をけん引する戦略的なビジネスレバレッジです。
Corporate Brandingが「なぜTDKから買うべきか」に答えるのに対し、Employer Brandingは「なぜTDKで働くべきか」に答えるものです。この2つは別々の戦略ですが深く連動しており、これこそが実行される「連動」です。
当社の戦略は、「求職者に選ばれる企業になること」「従業員が留まり成長する理由を提供すること」「経営にとっての人財パイプラインの強化」という3つの成果を目指しています。これを、グローバルアイデンティティの確立や世界市場での一貫したメッセージの発信など、4つの目標を通じて達成していきます。
それでは、Browerさんに引き継ぎます。彼は2017年のInvenSense社の買収に伴いTDKに入社し、現在はGlobal HR Business Partnering Function(HRBP)の責任者です。

Greg Brower

Greg Brower

HRBPの責任者を務める、Greg Browerです。
TDK入社前はグローバルIT企業であるCiscoに勤務し、IT、製造、エンジニアリング、人事など現在の基盤となる様々な職務を経験しました。
本日は、共有された企業文化とEmployer Brandingの戦略的な連動についてお話しします。

Employer Brandingを通じて 高い自律性を持つ「融合」から、体系的な「連動」へ

Employer Brandingを通じて 高い自律性を持つ「融合」から、体系的な「連動」へ

Employer Brandingは、人財を惹きつける魅力的なものでなければなりません。当社を的確に表すIn Everything, Better」というブランドメッセージのもと、私たちが発信するメッセージと実際の勤務には、一貫性と誠実さが求められます。新卒採用や、中途採用、あるいは企業買収によって加わったメンバーも含めて、チームメンバーのリアルな声を共有しています。
そこからソーシャルメディアや採用イベントなどを通じて一貫したストーリーをグローバルに発信しています。これが当社の連動であり、各組織が連携した構造へと移行している証です。それでは、実際の活動をいくつか見てみましょう。

人財の獲得

人財の獲得

Employer Brandingは、現在および未来のチームメンバーのエンゲージメントを高めています。例えば、世界陸上での内定式や、先ほどケラーさんがお話ししたグローバルのタウンホールミーティングなどがあります。
ここで、中央の写真に注目してください。TDK Tokyo E-Prix(フォーミュラE 東京大会)に招待した採用候補の若手エンジニアのグループが写っています。ポルシェとの技術パートナーシップを通じて、社内に広がるエキサイティングなテクノロジーの世界を直接体験してもらったのです。その結果、応募者数は前年比140%も増加しました。

日本・ドイツにおけるランキングが向上

日本・ドイツにおけるランキングが向上

また、東洋経済「2027年卒の就職人気企業ランキング」で100位にランクインしました。将来的にさらに順位が上がるよう、継続的な改善に注力しています。また、ドイツでは「Top Employer Institute」から4年連続でTop Employerに認定されました。ブランドを現場に根付かせ、市場に対して一貫したストーリーを発信・体現しているからこその成果です。それでは次に、成長戦略をサポートするために、私たちがどのようにブランドを活用しているかを見てみましょう。

経営戦略と連動した人財戦略

経営戦略と連動した人財戦略

Kellerさんが人財戦略と経営戦略の連動の重要性を言及したとおり、ビジネスで勝つためには、これらがしっかりと結びついている必要があります。
ここからは、ソフトウェア・ソリューションに関する技術力の強化事例をご紹介します。

システム・ソリューション・AIソフトウェアのケイパビリティ

システム・ソリューション・AIソフトウェアのケイパビリティ

TDKは、お客様にトータルソリューションを提供することで価値を創造します。当社は材料やプロセスの専門知識を持ち、ソリューションに不可欠なソフトウェア技術力も強化しています。 CTOオフィスと、ソフトウェアとデバイスの専門知識の融合、グローバル要件への適応、部門を越えた知識の共有を推進し、顧客ニーズを解決する体制を構築しています。これら3つを組み合わせることで、顧客のニーズを解決するソフトウェア技術力を構築できるのです。
Employer Brandingの観点から言えば、Sensors Convergeにおいて「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選出された、Rosa Chowがその好例です。ChowさんはInvenSense社でソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、現在はソフトウェア部門のエグゼクティブへと昇進しました。また、センサシステムズビジネスカンパニー(SSBC)において、モーションセンサをはじめ、マイク、温度・圧力センサ、磁気センサの開発にも携わりました。彼女はまさにTDK Unitedを体現する存在であり、技術ソフトウェアコミュニティの一員として、韓国、日本、中国、サンノゼ(米国)、そしてヨーロッパ全土でチームを率いてコラボレーションを推進しています。
マーケティング、製造、IT、人事など、各部門にChowさんのようなリアルなストーリーが数多く存在します。内部から能力を構築しインパクトを生み出すことこそが、 Employer Brandingの真の姿です。人財戦略と経営戦略の連動が、このような素晴らしい成果を生み出しています。
私からは以上です、ありがとうございました。

Keller:最後に要点をまとめます。
連動により、「人」に関するあらゆる意思決定は経営戦略と確実につながっています。エンゲージメントは向上し、92%というエンゲージメントサーベイ参加率が示す通り、チームメンバーは私たちを信頼しています。 GMDPによる後継者準備率は目標を上回り、より厚みを増したリーダーシップ層のパイプラインから、SensEIのような実際のビジネスが生まれました。 Employer Brandingの価値も向上しており、次世代ソリューションの原動力となるAIおよびソフトウェア人財の育成も積極的に進めています。
私たちは単に人財プログラムを運営しているのではなく、TDKの未来を支える人的基盤を構築しているのです。
本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。

3. 最先端技術開発について

最先端技術開発について

皆さまこんにちは。CTO兼技術・知財本部長の橋山です。
本日は技術・知財副本部長のJim Tranとともに、CTOセッションをお届けしますので、よろしくお願いします。

橋山 秀一

橋山 秀一

私自身は、TDKしか経験しておりませんが、技術者として研究開発所でキャリアをスタートして以降、営業、海外駐在、事業部門責任者、戦略本部など、様々な経験を経てCTOの職についています。

AIエコシステムの価値創造を担うソフトウェア人財の育成

AIエコシステムの価値創造を担うソフトウェア人財の育成

長期ビジョン“TDK Transformation”には、社会の変革(トランスフォーメーション)への貢献と、自社を変革し続けていくという2つの想いが込められています。
フェライトツリーの“根”で表現した未財務資本の部分にはソフトウェア技術を追記しており、AIを含むソフトウェア技術を強化する事により更なる企業価値の向上を目指しています。
そのため、変革を続けるTDKに必要なソフトウェア人財の採用および育成に注力しています。
TDKならではのソリューションを提供するため、センサ等のデバイスの特性を熟知した上でのソフトウェアの技術力のみならず、
チームで開発を進める “人をつなぐ力” 及び、セキュリティや規制に対応していく “ビジネスへの適応力” が必要となります。

TDKのビジネスモデル

TDKのビジネスモデル

多様性に富んだ人財を基盤に、未来を構想し、並行していち早く新たな技術を市場投入するための実行力を備えておくことで差別化を図ります。一方で、技術および製品によって最適なポジションで事業を展開するというのが、TDKのビジネスモデルとなります。
例えば、センサ事業においては、エッジAIやソフトウェアと組み合わせることで、モジュールやシステムレベルなど、より付加価値の高いソリューションでAIエコシステムに貢献することを目指します。

AIエコシステム向けソリューション提供を見据えたM&A

AIエコシステム向けソリューション提供を見据えたM&A

当社は、過去よりM&Aにより事業ポートフォリオを変革してきました。
最近はAIエコシステムへ、より付加価値の高いソリューションを提供するために、補完すべき技術の獲得を強化してきました。
スマートグラス向けには、目の動きによるユーザーの意図を検知するアイトラッキング等の技術を保有するSoftEye社の子会社化や、スマートグラス向けディスプレイのシステム設計技術を持つOQmented社の資産獲得などがあります。
AIデータセンター向けには中型電池をマレーシアで生産するためのLinergy Power社の子会社化や、GPUの冷却等に寄与するコールドプレートの製造に必要なECAM技術を保有しているFablic8Labs社のM&Aの計画があります。
なお、Fablic8Labs社のM&Aは、当局の承認を待って完結する予定となります。
これら新たに獲得した技術を、さらなる企業価値の向上につなげていきます。

ソリューション提供力強化のためのAIを軸とした4つの取り組み

ソリューション提供力強化のためのAIを軸とした4つの取り組み

当社にとってのAIは、この図に示しているとおり、大きく分けて4つの側面があると考えています。
右下の図にある、AIを活用する事で業務の効率化を図るという事に関しては、すでに多くの企業で取り組まれていますので、皆さまご存じのとおりと思います。
左上の図は、市場としてのAI、つまりAIが進化する事により広がるAIエコシステムが、当社が新たな技術を提供する機会となるという意味になります。
右上の図は、当社の製品やソリューションの付加価値を高めるためのAIとなります。工場の予知保全を実現するSensEI事業や、今後大きな成長が期待されているスマートグラス向け事業などが該当します。なお、これらの事業に関して、この後Jim Tranより詳しくご説明します。
左下の図は、研究開発活動を加速するためのAI活用となります。その中の新規材料開発への貢献が期待されるMI(マテリアルインフォマティックス)に関しては、次のページでご説明します。

マテリアルインフォマティクスによる材料開発の高度化

マテリアルインフォマティクスによる材料開発の高度化

昔から材料開発には時間がかかると言われてきました。研究者が試行錯誤し、積み重ねた実験の結果に基づいて開発していたためです。
現在は、そのような過去から積み上げてきた数多くのデータを活かした上で、AIを活用する事で、開発スピード及び材料特性の向上を目指しています。
また、次期材料開発につながるサステナブルな材料設計方法の確立などを目指す意味においても、MI(マテリアルインフォマティックス)の活用が重要になっております。
今後もTDK独自の材料開発を続けていきます。

AIエコシステムを支える技術ポートフォリオの強化

AIエコシステムを支える技術ポートフォリオの強化

今後フィジカルAIが本格化していくと、AIエコシステムにおける当社の機会はますます大きくなると考えています。
データなくしては、AIは活用できない訳ですし、センシング技術なしに必要なデータを得る事は出来ないためです。
ご覧のとおり、当社にて研究開発を進めてきた技術と、M&A等により獲得した新規技術を融合させることにより、AIデータセンターなどのインフラに対する貢献を継続しながら、フィジカルAIに対する新たな技術の貢献を最大化すべく、中長期の技術開発を続けていきます。
ここからTranさんが、フィジカルAIに対する当社の貢献も含めて、先ほどお話ししたAIを軸とした4つの取り組みの1つである、 “付加価値を高めるAI”に関するより詳しい説明を行います。

Jim Tran

Jim Tran

皆さま、こんにちは。米州本社GM兼技術・知財副本部長のJim Tranです。
私がTDKに入社して5年余りになります。それ以前はエンジニアをしていました。
昔の話になりますが、Boeing、そしてソニーで電気エンジニアとしてキャリアをスタートしました。その後キャリアを重ね、BroadcomのVice Presidentを経て、TDKに入社する前はQualcommでSenior Vice Presidentを務めていました。

フィジカルAIへの貢献

フィジカルAIへの貢献

本日は、フィジカルAIを中心にお話ししますが、最後にAIデータセンターに関する最新情報も簡単にお伝えします。
フィジカルAIは、ロボティクス、スマートグラス、エッジAIデバイス、自動運転、ドローンなど、多岐にわたる市場に広がっています。フィジカルAIのTAM(獲得可能な最大市場規模)が約1兆ドルにまで拡大するなかで、TDKの製品とソリューションはこの成長の一翼を担うことになります。この後、TDKがこの成長市場にどのように参入していくのかをご説明します。

SensEIの成長戦略

SensEIの成長戦略

2024年に、私たちは工場や倉庫の効率を向上させるエッジAIソリューションの提供を目的として、TDK SensEIという会社を設立しました。最初に取り組んだのは状態基準保全(CbM)です。当社のedgeRX™デバイスを使えば、工場で機械が停止した際に、何が原因で故障したのかを特定することができます。
これが当社のエッジAIへの第一歩でした。それ以降、私たちはAWS(アマゾン ウェブ サービス)と提携し、当社のソリューションにクラウドコンピューティング機能を追加しました。
これにより、TDKは予知保全(PdM)および処方保全を市場に提供できるようになり、お客様は故障が発生する前に対策を計画できるようになりました。故障を予測するだけでなく、その故障が起こる前に、何をすべきかを処方、つまり提示できるようになったのです。この市場は、今後数年間で35%成長すると予測しています。

edgeRX™の市場環境

edgeRX™の市場環境

市場の状況について、もう少し詳しくご説明します。
これまでにも多くの企業がこの分野でソリューションを提供を試みてきましたが、クラウドのみに注力するか、あるいは限られたインテリジェンスしか持たないセンサデバイスに偏っていました。
しかしTDKでは、競争力のあるソリューションを市場に提供するためには、マルチモーダルセンシングを備えた導入しやすいエッジデバイスと、クラウドの計算能力を融合させ、トータルなシステムソリューションを提供する必要があると考えています。
そして、私たちはまさにこのソリューションを実践しています。

産業用機械・製品のヘルスモニタリング

産業用機械・製品のヘルスモニタリング

どのような工場であっても、稼働時間を最大化したいと考えています。これこそが、当社のedgeRX™およびedgeRX™ VISIONソリューションの目標です。機械の稼働時間維持をサポートすることで、工場の効率向上に貢献できます。
グラフにある通り、edgeRX™は潜在的な故障をできるだけ早く工場の管理者に警告し、ダウンタイムそのものを回避することを目指しています。
これにより、コストを削減し、スループットを最大化するとともに、工場全体にAIを活用した可視性をもたらすことができます。

スマートグラス向けビジネスの成長戦略

スマートグラス向けビジネスの成長戦略

次に、スマートグラスについてご説明します。
2025年に当社はSoftEye社の買収を発表し、AR Platforms BDを設立しました。SoftEye社は、低消費電力のアイトラッキング(視線追跡)技術を提供する企業です。
この技術と、フルカラーレーザーモジュール(FCLM)、MEMSミラー、高度なバッテリ技術、センサといったTDKの他の技術を組み合わせることで、スマートグラス市場をけん引するプラットフォームを提供していきます。
システム内でこれらの技術を最適化することにより、当社のプラットフォームは次のようなスマートグラスを実現します。
つまり、1日中持続するバッテリ寿命を持ち、軽量で1日中快適に装着でき、電子部品の小型化によりファッショナブルなデザインが可能になります。
さらに、TDKの網膜投影技術により、度付きレンズの製造を電子機器の製造プロセスに依存せずに行える拡張性を備えています。この市場も、今後数年間で35%の成長が見込まれています。

シームレス・インプット・テクノロジー(Seamless Input Technology)

シームレス・インプット・テクノロジー(Seamless Input Technology)

私たちは、この技術がコンピューティングの世界に新しいタイプのHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)をもたらすと考えています。つまり人間がAIとシームレスに対話できるようになります。
スマートグラスに搭載された様々なセンサを融合させることで、AIが役立つためのコンテキスト(状況・文脈)認識を提供できるようになります。
例えば、AIはスマートグラスのセンサを利用して、あなたがどこに車を停めたかを把握できるようになります。車から降りてドアを閉めたことを認識すると、それをトリガーにしてスマートグラスが駐車場所の写真を撮ります。後でショッピングモールから出てきた時に、「車はどこにある?」と聞けば、駐車場所の情報を表示してくれるのです。
これ以外にも多くのユースケースがあり、次のページでそのいくつかをご紹介します。

シームレスなユーザー体験を実現するソリューション

シームレスなユーザー体験を実現するソリューション

アイトラッキング技術を搭載したスマートグラスの事例をご紹介します。
例えば、名刺を受け取った際、AIを学習させておけば、初対面の人に会ったことを認識し、自動的に名刺を撮影してくれます。また、歩いている時や自転車に乗っている時にナビゲーションを利用し、視線の動きだけでUIの機能を呼び出すなど、完全なハンズフリー体験もできます。
その他の事例については割愛しますが、イメージは掴んでいただけたかと思います。

SensorGPT™の成長戦略

SensorGPT™の成長戦略

次は、当社研究室で開発されたエキサイティングな技術、Sensor GPT™をご紹介します。
あらゆるAIアプリケーションは、モデルをトレーニングするためのデータを必要とします。実際のところ、AIアプリケーション開発の80%は、データの収集、整理、そしてラベリングに費やされています。これが、AIアプリを迅速に市場に投入する上での大きな障壁となっています。
Sensor GPT™は、収集すべきデータ量を削減することを目指しています。ごく少量のサンプルデータさえあれば、Sensor GPT™が十分なデータを拡張または合成し、実際のデータを収集した場合と同等の精度を実現します。これにより、大量のセンサーデータを必要とするAIアプリケーションの製品化までの時間を大幅に短縮できます。
当社の目標は、これを幅広いセンサに対応できるように拡張性をもたせることです。さらに、特定のセンサに依存しない仕様にし、市場にある他のLLM(大規模言語モデル)と同じくらい使いやすいユーザー体験を提供します。
この市場は今後数年間で非常に急速に成長すると見込んでいます。

金属3Dプリント技術の成長戦略

金属3Dプリント技術の成長戦略

最後に、新たに獲得したECAM(Electro-chemical Additive Manufacturing)という技術をご紹介します。
当社は先日、銅などの金属をプリントできる3Dプリンタを開発したFabric8Labs社の買収を発表しました。
この技術には、熱マネジメント、高周波アンテナ、受動部品など、多くの応用分野があります。銅などの金属を極めて微細なピッチでプリントし、独自の構造を作り出すことができます。
この技術の応用例が、データセンターにおける熱マネジメントです。電力と熱のマネジメントは、AIデータセンターにとって最大の課題の一つです。この技術を使えば、マイクロチャネルを備えたインサートやコールドプレートをプリントすることができ、冷却液を効率的に流して放熱性を高めることが可能になります。
この技術により、TDKはAIデータセンター市場の成長にさらに深く関与していくことになります。現在、規制当局の承認を待っている状態であり、許可が下り次第、皆さまに最新情報をお届けいたします。
私からのプレゼンテーションは以上です。

4. Closing Remarks

Closing Remarks

長期の成長領域への投資を加速強化

長期の成長領域への投資を加速強化

本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。
4月の決算発表時にもご説明いたしましたが、当社は引き続き未財務資本を強化していくことで、価値創造チェーン(Value Creation Cycle)をより一層スピーディーかつ効率的にトランスフォームし続け、フェライトツリーを持続的に成長させていきます。

最後に

最後に

最後になりますが、本日のプレゼンテーションの中でも何度か連動という言葉が登場しました。
こちらのスライドのとおり、今年の統合報告書のテーマは「連動(RENDO) 」としております。
Unitedを、融合から連動へとトランスフォームさせていくという思いを込めています。
連動にはスライドに記載の通り様々な意味合いが含まれますが、当社が今後さらに加速させていきたいのは、株主、投資家、アナリストの皆さまとの建設的な対話や協働を通じた連動です。皆さまから頂戴したご示唆やご助言を経営に反映させ、連動していくことで、さらなる企業価値向上に取り組んでまいります。

引き続きご支援のほど、よろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました。