サステナビリティ | 環境サーキュラーエコノミーへの取り組み

基本的な考え方

循環型社会への転換が求められる中、TDKでは限りある資源の有効利用の観点から活動を進めています。2006年度には、事業所から排出される廃棄物について埋め立ておよび単純焼却による処理を行うことなく、最終的に100%の再資源化を達成しました。その後もその水準を維持しながら、排出物の発生そのものを抑制する取り組みを推進しています。
また、製品のライフサイクルを通じて資源利用効率を最大化するサーキュラーエコノミーを推進し、自然資本への依存や影響を最小化することで循環型社会構築に貢献します。

※法の規制により単独では再資源化できない物を除く

ガバナンス

取締役会の監視

TDKでは、年1回以上、気候変動および自然資本を含む環境全般の進捗状況および計画、リスクについて、環境担当役員によるマネジメントレビューを実施しています。マネジメントレビューの結果、経営の意思決定を要する内容については、経営会議および必要に応じて取締役会の審議を実施しています。

経営者の役割

気候変動および自然資本を含む環境リスクについては、環境担当役員の責任を明確化しており、社長執行役員CEOが任命しています。また、経営会議の下位の会議体に、リスク管理体制を強化するため、経営会議直属の委員会を設置しています。このうち、事業目標の達成および事業運営を阻害する要因への全社的対応を目的にERM(Enterprise Risk Management)委員会を組織し、気候変動および自然資本を含む環境リスクのうち、重要事項を協議しています。なお、ERM委員会の委員長は社長執行役員CEOが任命した執行役員が務めています。

戦略

TDKの事業活動では、さまざまな資源を活用して製品を製造し、また事業活動にともなう排出物が発生します。これら資源の利活用は、自然資本(淡水、海水、土壌、大気)や生態系サービスに依存したり、インパクトを与えます。TNFDのLEAPアプローチに沿って、生物多様性を含む自然との接点、依存とインパクト、リスクと機会を評価し、資源の有効利用の戦略を検討します。
また、廃棄物については、関連法令を遵守して、適正な処理を行い、生活環境の保全に努めます。

評価方法

  • 自然資本に対する依存とインパクト
    自社およびバリューチェーン上の産業セクター/サブセクターについて、生態系サービスへの依存やインパクト、マテリアリティについてENCOREにより評価します。また、生態系サービスと自然資本の関係性も明らかにします。
    自社およびバリューチェーン上の拠点と、自然との接点については、IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)、Global Forest Watch、WWF Risk Filter(Biodiversity & Water)等のツールを活用して調査します。
    これらのデータをもとに、自然への依存とインパクトの高い拠点と資源循環に関するアクティビティを診断します。
  • リスクと機会の評価
    自然に対する依存とインパクトをもとに、リスクと機会を評価します。

リスク管理

TDKは組織目標の達成を阻害する要因(リスク)に対し、全社的に対策を推進し、適切に管理する全社的リスクマネジメント(ERM)活動を実施するため、社長執行役員CEOが指名した執行役員を委員長とするERM委員会を設置しています。
委員会の活動状況については、監査役および内部監査部門の定期的な確認と監査により、当社グループにおける経営上重要なリスクの抽出・評価・見直し・効果的な対応策の策定等、リスク管理体制を強化しその実効性を高めるための助言が受けられる仕組みを確保するとともに、顧問弁護士等の専門家からも、当社グループを取り巻くリスクについて、随時助言を受けています。
ERM委員会では、全社のリスクの分析評価を行い、対策が必要なリスクを特定するとともに、リスク対策を主導するリスクオーナー部門の割当等、全社的リスクマネジメントを推進しています。個々のリスクに対しては、割り当てられたリスクオーナー部門がリスク対策の実施を主導し、その対策状況については、委員会にてモニタリングを行います。委員会によるリスク分析評価や重要なリスクの対策状況については、経営会議において審議し、取締役会に報告しています。企業の社会的責任に関するリスクや、気候変動および自然資本に関するリスク、人材獲得と人材育成に関するリスクなど、サステナビリティに関連するリスクについても、リスクオーナー部門の割当および担当執行役員の任命を行っています。
気候変動および自然資本を含む環境全般のリスク・機会については、本社安全環境機能が、気候変動や自然資本に関連した外部および内部環境の変化をモニタリングします。また、TNFDのLEAPアプローチを活用して、事業に影響を与える自然関連のリスク・機会を洗い出しています。

指標と目標

2023年度の目標と実績

2023年度目標 実績
排出物原単位 前年度比 1.5%改善 前年度比 3.5%改善
排出物総量の推移(グローバル)
排出物総量の推移(グローバル)
  • ※データに誤りがあったため再計算し、訂正後の数値を掲載しています。

評価と今後の取り組み

2023年度の排出物総量は、生産品目に合わせた投入資源量の最適化や排出物削減活動を進めた結果、前年度比6.9%減少の121,617トンとなりました。また原単位も前年度比3.5%改善となり、目標を達成しました。
今後も引き続き、徹底した工程改善を進め、投入資源効率と歩留り改善率の両面から排出物の発生抑制に努めます。

2024年度目標
排出物原単位 前年度比 1.5%改善

取り組み

「TDK環境ビジョン2035」のもと、2025年までの環境基本計画として「TDK環境・安全衛生活動2025」を策定しています。この計画には排出物に関する目標および活動施策も含まれており、これに基づいてグループ全体で活動を展開しています。
これらの取り組みを推進するために、従業員への意識啓発、環境教育を通じた資源の有効利用に対する意識の醸成にも取り組んでいます。

排出物削減の取り組み

各製造拠点では、環境マネジメントシステムに則り廃棄物に関するアセスメントを実施し、廃棄物の発生を削減するための機会を特定しています。特定された機会に応じて、例えば、生産プロセスの見直しや改善を行うなど、各拠点で適切な対策を講じ、廃棄物の発生を最小限に抑えるよう努めています。

■有害廃棄物半減への取り組み
TDK Electronics Componentsに属するスペイン マラガ工場ではフィルムコンデンサを製造する上で生じる、有害廃棄物(金属フィルム、コンデンサスクラップ、硬化樹脂など)の削減プロジェクトを進めてきました。
熱処理工程最適化による歩留まり改善や樹脂使用効率を高めるなどの施策を継続実施することで、有害廃棄物を含む排出物を64%削減することに成功しました。
また空調設備運用の見直しや太陽光パネルの導入といった活動も展開しており、地球環境の負荷低減にも同時に取り組んでいます。

■製造工程で生じる廃棄物のリサイクル
TDKグループでは、廃棄物の発生そのものを削減する取り組みだけでなく、製品の製造過程で生じた廃棄物のリサイクルも積極的に推進しています。廃棄物のリサイクルは、廃棄物を再利用可能な資源として再生するプロセスです。廃棄物の分別や適切な処理方法を選択することで、リサイクル可能な廃棄物を選別し、可能な限り再利用のための再資源化プロセスに回しています。
例えば、工程で使用した液体化学物質を回収し再利用するなどの自社内での再資源化の取り組みに加えて、金属くずをリサイクル可能な処理業者を選択するなど、信頼性の高い外部の処理業者とのパートナーシップを築き、廃棄物の再資源化を協力して実現しています。

製品における取り組み

■製品デザインからの取り組み(リサイクル材を使用したパワーインダクタ)
パワーインダクタCLT32シリーズはリサイクル鉄およびリサイクル銅の使用率を高めており、製品の50%以上が既にリサイクル金属に置き換わっています。また本シリーズは、本来の性能を実現するために、銀やニッケルが必須でしたが、開発設計時の努力が結実し、銀を使用せず、少ないニッケルでの製造を実現させたため、調達・製造コストの抑制につながっています。
製品の特徴としては、高出力の小型製品であること、消費電力が少なく、長い耐用年数であることが挙げられます。
なお、本パワーインダクタは「SUPER ECO LOVE製品」として認定されています。

※TDKでは、環境配慮型製品の中でも環境負荷低減効果が高く、業界においてもほかをリードする製品を「ECO LOVE製品」、さらに「ECO LOVE製品」の中でも効果が高く業界トップレベルの製品を「SUPER ECO LOVE製品」と認定しています。

SUPER ECO LOVE PRODUCTS

■業界初バイオマスプラスチックを使用した電波吸収体
IS-BPシリーズは、発泡ポリエチレンを基材とし、カーボンのオーム損失を利用した電波吸収体です。アンテナや無線通信機器等を評価するための電波暗室の壁面に設置して使用します。バイオマスプラスチックを25wt%以上含有し、従来製品(IS-012A)に比べCO2排出量を13%削減した環境配慮製品です。
日本バイオプラスチック協会(JBPA)の認証を取得しています。

■リチウムイオン電池のリサイクルと再利用(Amperex Technology Ltd.)
リチウムイオン電池は、コバルトやリチウムなどのレアメタルが使用されます。これらの資源には限りがあるため、使用済み電池のリサイクルが重要です。バッテリーを製造しているAmperex Technology Ltd. は、リサイクル業者、精製業者、正極材メーカーと協力してリサイクルされるコバルトやリチウムを電池原料として使用する事業を2023年から開始しました。
2023年度には電池用原料としてリサイクル原料コバルトを20%以上使用しました。これによるCO2削減効果は71,500トンと試算されます。リチウムやその他の原料も積極的にリサイクル原料を導入していきます。これからもバッテリー資源のサーキュラーエコノミーの構築を進め、サステナブルな電池産業の発展に貢献していきます。

■市場初のバイオ・キャパシター・シリーズ(TDK Electronics Components, S.A.U., Malaga)
コンデンサModCap®シリーズの誘電体として使用されているポリプロピレンフィルムに、再生可能なバイオベースのポリプロピレンを採用しました。
このフィルムが使用されているMalagaプラントは、国際サステナビリティ・カーボン認証(ISCC)規格の認証を受けています。
この市場初のバイオ・キャパシター・シリーズは、カーボンフットプリントの低減につながり、循環型経済にも貢献するものです。