取締役会の実効性評価:2023年3月期
2023年4月27日
当社は、取締役会に期待されている機能が適切に果たされているかを検証し、その向上を図っていくために、毎年、取締役会の実効性の評価を実施しています。
また、その実効性を中立的・客観的に検証するため、一定期間毎(三年に一度を目途)に第三者評価機関に評価を依頼しています。
2023年3月期の取締役会評価においては、2022年3月期に第三者評価機関による調査を実施したことから、取締役会の諮問機関であるコーポレート・ガバナンス委員会(委員長:執行役員を兼ねない取締役会長 石黒成直)が中立的な立場で一次評価を実施し、取締役会によるディスカッションを経て、最終的な評価を行いました。
評価プロセス
- コーポレート・ガバナンス委員会(社外取締役を含む取締役および執行役員(戦略本部長)で構成)において、今回の実効性評価の方法とスケジュールを検討・審議しました(2022年9月)。また、その内容は取締役会にも共有されました(2022年10月度取締役会)。
- コーポレート・ガバナンス委員会が全取締役(7名)および全監査役(5名)に対し、実効性評価アンケート(無記名方式)を実施しました(2022年11月~12月)。
- 【アンケート項目(大項目)】
- ①取締役会の役割・機能(設問+自由記入)
- ②取締役会の規模・構成(設問+自由記入)
- ③取締役会の運営状況(設問+自由記入)
- ④指名諮問委員会の構成と役割(設問+自由記入)
- ⑤指名諮問委員会の運営状況(設問+自由記入)
- ⑥報酬諮問委員会の構成と役割(設問+自由記入)
- ⑦報酬諮問委員会の運営状況(設問+自由記入)
- ⑧社外取締役に対する支援体制(設問+自由記入)
- ⑨監査役の役割・監査役に対する期待(設問+自由記入)
- ⑩投資家・株主との関係(設問+自由記入)
- ⑪当社のガバナンス体制・取締役会の実効性全般(自由記入)
- ⑫取締役および監査役の自己評価(自由記入)
- ※上記の大項目の下に詳細な小項目を設けて多面的な調査を行っています。
実効性評価アンケートは、毎年の継続的な測定が可能なように、一定の質問項目については毎回同じにする一方で、評価の質を高めるために、質問項目の見直しを毎年行っています。また、自由記入欄を多く設け、アンケート項目にとらわれず多様な意見や提言を吸い上げられるようにしています。
- コーポレート・ガバナンス委員会が、上記アンケートの結果を取りまとめ、共通する課題や論点を抽出しました。その内容はコーポレート・ガバナンス委員会から取締役会に中間報告し取締役会で審議しました(2022年12月度取締役会)。
- コーポレート・ガバナンス委員会委員長が、上記アンケートにより抽出された重要な論点を中心に個別インタビュー(全取締役および全監査役)を実施しました(2022年12月~2023年1月)。
- コーポレート・ガバナンス委員会が、アンケートおよびインタビューで集めた意見を無記名の形で取りまとめ、それに基づく検討・審議を行い、一次評価としてまとめました(2023年3月)。
また、この一次評価結果は取締役会に報告され、取締役会はその内容を勘案し複数回の審議を行い、最終的な評価を確定しました(2023年3月度および4月度取締役会)。
コーポレート・ガバナンス委員会による一次評価
コーポレート・ガバナンス委員会による一次評価の結果は以下のとおりです。
- 評価結果の概要
- ①高い実効性と年々の進化がみられる。
-
- 執行体制のガバナンス整備と取締役会による後押しの実現が果たされている。
- 取締役会の議論を執行側が真摯に受け止め、経営に反映している。
- 取締役会評価で抽出された課題に対するPDCA施策を通じ、ガバナンスのスパイラルアップが継続的に図られている。
- 当社の取締役会は、社内外取締役会メンバーが深い信頼関係と健全な緊張関係を持ちつつ、高いレベルでの議論を行っている。
- ②現状の機関設計は有効に機能している。
-
- 機関設計(監査役会設置会社)および各機関(取締役会、監査役会、指名諮問委員会、報酬諮問委員会)は有効に機能している。
- コーポレート・ガバナンス委員会は社外取締役を含むメンバー構成となり、ガバナンスの大局的な議論の場として刷新されたことによる進化がみられる。
- 各機関(取締役会、監査役会、指名諮問委員会、報酬諮問委員会)の規模・構成・メンバー資質は高いバランスを有しており適切である。
- 独立社外取締役が取締役会議長を務め、中立的な立場から公正かつ活発な議論のファシリテートに貢献している。
- 元社長である執行役員を兼ねない取締役会長の存在が、企業価値向上に資する取締役会の議論に貢献している。
- ③取締役会において活発で実質的な議論がなされている。
-
- 取締役会の議論はオープンネスな雰囲気の中、より大局的な議論へと進化しつつある。
- 社内・社外、取締役・監査役の区別なく積極的な議論参加が行われている。
- 中長期経営計画、ガバナンス体制、経営課題等についての議論が行われている。
その内容は企業の持続的成長、企業価値向上に資するものである。 - 取締役会の議論が、事業計画や施策に反映され、最終的な経営の質向上につながっている。
- 前事業年度の実効性評価で抽出された課題への取組みの進捗状況
前事業年度に報告した次の課題については、取締役会の年間計画において対応項目として掲げられ、改善への取り組みが認められました。
- ①中期経営計画達成のためのモニタリング
- 取締役会において、全社および主要事業部門の中期経営計画の進捗についての報告と審議が行われた。その結果に基づき、2023年3月度の取締役会において、中期経営計画の進捗の総括と次期事業計画の審議が行われた。また、ステークホルダーへの訴求という点においては、取締役会において定期的にIR活動のフィードバックが行われ、さらに、取締役会外の場において、社内外取締役・監査役を含むメンバーにより「あるべき投資家との対話」「非財務情報開示に関する活動」をテーマに複数回のディスカッションを実施した。
- ②ボード・メンバーのサクセッションとボード・カルチャーの継承
- ボード・メンバーのサクセッションの一環として、指名諮問委員会において各メンバーのスキルを明確にした「スキル・マトリックス」を作成し、株主総会招集通知および統合報告書への開示が行われた。また、コーポレート・ガバナンス委員会において、将来的に取締役会のメンバーが変化しても活発で実効的な議論ができる取締役会の文化を継承するための方法についての審議が行われた。その成果物として、「TDKコーポレート・ガバナンス基本方針」にTDKのボード・カルチャ-が明文化され織り込まれ、取締役会において同方針の改定決議が行われた。
- ③グループリスクマネジメントの議論の深化
- 全社リスク管理についてはERM委員会から、コンプライアンスリスクについてはコンプライアンス委員会から、それぞれ取締役会への複数回の報告がなされ、取締役会においてグループリスクマネジメントに関する議論が深められた。さらに、特に重要な事項については、社長執行役員から取締役会に対してタイムリーな報告がなされている。
取締役会による最終評価
- 実効性評価の結果(結論)
この評価においては、取締役会の実効性を「会社の持続的な成長を実現する為に取締役会が期待される役割・機能(経営の監督、重要事項の決定等)を適切に果たしていること」と捉え、それを担保する仕組みがあり、適切な審議や活発で実質的な議論が行われているか、その結果が経営の向上に繋がっているかという観点で評価を行いました。
当社取締役会は、コーポレート・ガバナンス委員会による一次評価を踏まえ、取締役会において複数回の審議を行った結果、取締役会及びその諮問委員会(指名諮問委員会及び報酬諮問委員会)は、その規模や構成、議案や審議内容、議論の状況、経営への反映等々の点から、その実効性が十分に確保されていることを確認しました。
さらに、前事業年度における取締役会評価の結果を踏まえた改善を図ることにより、取締役会の実効性向上を継続的に進めていることを確認しました。 - 今後の課題
今回の取締役会評価の結果、取締役会が今後も取り組んでいくべき主な課題として以下の3点が認識されました。
- ①取締役会の議論のさらなる進化
- 当社は、迅速かつ自律的な意思決定を促す権限委譲と業務執行における透明性の確保(Empowerment & Transparency)により、成長を遂げてきた。今後も成長を持続し、さらなる企業価値の向上を促進するべく、取締役会の議論をもう一段階進化させていくべきである。取締役会は執行側への権限委譲をさらに進め、取締役会の議論をより大局的かつ中長期的なテーマにフォーカスし、議論の深化を図っていく必要がある。また、執行側は、取締役会における実効的な議論を担保するために、引き続きボード・メンバーへの適切な情報共有を進めていくことが重要である。
- ②ステークホルダーとのエンゲージメント強化
- 当社の企業価値の向上を目指し、全てのステークホルダーに当社の成長性・競争優位性についての理解をより深めてもらう必要がある。その為に、取締役会は、当社の成長性を見据えた中期経営計画の策定に深く関与していくと同時に、執行側による投資家等のステークホルダーとのエンゲージメントの強化(情報発信、コミュニケーション、ブランドの強化等)について議論し、その後押しを行うべきである。
また、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上という共通の目的に向けて当社グループ全体で取り組む上で、取締役会は従業員に対して、より開かれた存在になることが有益である。 - ③変化の激しい市場動向への対応
- グローバルに経済的・社会的・政治的な変化が激しい予測困難な時代において、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を果たすために、グローバル規模での市場分析を含むマーケティング戦略、および地政学・地経学リスクへの対応力を高めていく必要がある。
当社は、会社の持続的な成長と企業価値の向上を実現していくために、取締役会の実効性の向上に今後とも取り組んでいきます。
以 上