株主・投資家情報 | 経営方針

トップメッセージ

次の時代に向けて
テクノロジーの可能性を追求し、
変革を加速していきます。

代表取締役社長石黒 成直

このたび、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患された皆様とご家族の皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。また、医療の最前線で治療に尽力してくださる皆様、私たちの生活インフラを支える仕事に従事されている方々に心から感謝を申し上げます。

加速するテクノロジーの進化

0.1ミクロンにも満たないウイルスが人類を翻弄しています。同時にそれは私たちの価値観や生活にも大きな変化を与えています。毎日、長い時間をかけて満員電車で通勤していた私たちは、リモートワークでも仕事が止まらないことを知りました。私も、かつて移動時間を費やして面談していた様々な拠点の取引先やパートナーと、Web会議を通じて問題なくコミュニケーションを取っています。やがて治療薬やワクチンの開発が実現し、COVID-19が人類にとって大きな脅威ではなくなる日も来るでしょう。しかし、私たちはかつての生活に戻ることはないと思います。皮肉なことに、人類の敵であるCOVID-19が新たなノーマルライフを生み出し、テクノロジーの進化を加速させているのです。感染拡大が社会にもたらした影響は甚大ですが、次の時代に向かうための契機と受け止め、TDKも「新定常状態」を前提にした変革をスタートしました。

次の時代に向かう契機と受け止め、TDKも変革を加速していきます
次の時代に向かう契機と受け止め、TDKも変革を加速していきます

次の時代に向かう契機と受け止め、TDKも変革を加速していきます

証明されたTDKのレジリエンス

パンデミックによって社会と経済が混乱する中、TDKはレジリエンス(危機や変化への対応力)を証明できました。

当社は、受動部品やセンサ、HDD用磁気ヘッド、マグネット、電池、電源など、幅広い製品ポートフォリオを有する総合電子部品メーカーです。今回の世界的な危機においては、このポートフォリオの多様さが真価を発揮しました。米中関係の悪化とCOVID-19の感染拡大は、自動車市場や産業機器市場を直撃し、受動部品を中心に需要が大幅に縮小しました。一方、ICT市場は5G(第5世代移動通信システム)向け需要を中心に堅調に推移し、リチウムポリマー電池や高周波部品などが全社業績を下支えしました。とりわけリチウムポリマー電池は、ノートパソコンやタブレット向けなど、世界中で拡大するテレワーク需要を確実に掴むことができました。

当社は、社員を信頼し、権限を委譲することでやる気を引き出すことを目的とした「エンパワーメント&トランスペアレンシー(権限委譲と透明性の向上)」をポリシーとするグローバルガバナンス体制の構築を進めています。主眼に置いているのは、中央集権型ではなく自律分散型の組織づくりです。COVID-19の感染拡大への対応において、このような組織体制の有効性が明らかになりました。まだ中国で感染の初期段階にあった時期に、現地の拠点を通じて状況を把握した当社は、2020年1月下旬には危機対策本部を設置。感染が各国に拡大していく中で、刻々と変わる状況を掴んでいきました。一方、自律分散型の組織づくりの柱として2019年に新設した中国、米国、欧州の各地域本社と主要事業会社が、それぞれの状況に合わせて具体的な対策を講じたことが、事態のスピーディな収束に繋がりました。国ごとに制度や状況が大きく異なる中、東京ですべてを指揮していたら、対策が後手に回っていたと思います。

特に、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)を経験し、その教訓を活かして対策を立ててきた中国の拠点の対応は、的確かつ迅速でした。リチウムポリマー電池の中核企業であるAmperex Technology Limited(ATL社)は、生産の停滞を最小限に留め、早期に生産を再開しました。中国の拠点がいち早く正常化したことで、パンデミックが全世界に広がる中でもTDKは踏ん張ることができました。各地域の経営メンバーと社員には、心から感謝しています。

私は社長就任時より、TDKがいかなる外的・内的環境の変化にも柔軟に対応し、持続的に発展する企業となることを、ステークホルダーの皆様に対する自身の責務として捉え、様々な改革を進めてきました。その一環であるグローバルで多様な自律分散型組織の確かなレジリエンスを確認でき、これまでの取り組みに自信を深めています。

自律分散型の組織と「多様性の強さ」が真価を発揮しました
自律分散型の組織と「多様性の強さ」が真価を発揮しました

自律分散型の組織と「多様性の強さ」が真価を発揮しました

Value Creation 2020

TDKは、社是「創造によって文化、産業に貢献する」に込められた、創業者齋藤憲三の「社会の発展に貢献したい」という想いと一筋に繋がった道を歩んでいます。常にその時代が求めるものをお届けし、社会の発展に貢献してきました。そして現在も、「Social Value(社会的価値)」の追求を事業のすべての目的に置いており、その結果として「Commercial Value(成長戦略)」と「Asset Value(資本効率)」の増大を実現し、「Social Value」をさらに創造していくサイクルを回すことを目指しています。

こうした価値創造の道筋を明確にした上でスタートしたのが、中期経営計画「Value Creation 2020」(2019年3月期から2021年3月期まで)です。本計画では、「Commercial Value」の目標として売上高1兆6,500億円、「Asset Value」の目標として営業利益率10%以上、ROE14%以上を定めました。2期目となった2020年3月期は、米中関係の悪化とCOVID-19の感染拡大による世界経済の減速などの外的要因に加え、近年、積極投資によって拡充してきたセンサ事業や、マグネット事業の収益性改善の遅れなどの内的要因により、減収・減益という結果となりました。

2021年3月期は、テレワークの普及に伴う需要や5G関連向けの需要が拡大する一方で、自動車分野を中心に厳しく見積もらざるを得ず、中期経営計画の経営目標は未達の見通しとなりました。

短期的に厳しい経営環境を想定してはいるものの、中長期的にはTDKの可能性の広がりを強く実感しています。かつて、経済合理性と社会合理性は、企業経営上トレードオフの関係にあると考えられていました。しかし、国連による持続可能な開発目標(SDGs)の採択をはじめ、サステナビリティをめぐる議論が深まる中で、2つのベクトルが徐々に同じ方向を向いていきました。当社も2019年に、「独自のコアテクノロジーとソリューションの提供により、すべての人々にとって持続可能で幸福な社会を実現する」という「サステナビリティビジョン」を策定しました。そしてCOVID-19の感染拡大は、2つの合理性に加え、投資家や社員、社会など様々なステークホルダーの利害のベクトルを一致させました。新しい生活様式への移行だけではありません。先進国の少子高齢化や都市部への人口集中、化石燃料の枯渇、食料や水不足など、人類の持続可能性を脅かす社会課題の解決が求められています。あらゆる産業で5GやAI(人工知能)、再生可能エネルギーなどを駆使した変革が進み、テクノロジーの進化を支える電子部品が活躍する場面は、無限に広がっていくでしょう。

社会課題の解決に貢献できる可能性の広がりを強く実感しています

強みを活かした社会課題の解決

TDKは一貫して磁性技術をコアコンピタンスとし、電力の効率利用に役立つ部品を磨き上げ、エネルギー領域で強みを発揮してきました。これから環境問題の解決や、省エネルギー社会、脱炭素社会の実現が一層求められていきます。リチウムポリマー電池や高効率の電源、ノイズと発熱を減らす電子部品、センサの活用を通じ、電力の発電、送電、変換、蓄電の各領域でEX(エネルギートランスフォーメーション)に貢献できると考えています。たとえばEVでは省電力化に不可欠な部品だけでなく、ワイヤレス給電システムなどでもお役に立つことができます。また、再生可能エネルギーの発電装置関連の省電力化・効率化にも貢献できます。当社が競争力を有するリチウムポリマー電池に関しては、小型電子機器やウェアラブル機器向けなどミニセルのアプリケーションや、ドローン、電動二輪車向けなどパワーセルのアプリケーションへの展開を進めています。とりわけ、今後スマートシティの開発が進んでいく中、需要拡大を見込んでいるのが、蓄えておいた電力を使いたいときに使う「タイムシフトユース」を実現する家庭用蓄電装置向けの二次電池です。すでに蓄電システムの開発メーカーにおける需要開拓を進めています。

近未来の社会では、あらゆるデータがサイバー空間で処理され、それが人々の生活にフィードバックされることで、より効率的な社会が形成されていくでしょう。そうした仕組みは、データ分析などのアルゴリズムを担うICと、アナログ情報をキャッチする膨大な数のセンサ、そしてフィードバックされたデータを物理運動に変えるアクチュエータがセットになって初めて実現します。世界トップクラスのセンサのラインアップを有する当社は、総合電子部品メーカーとしての強みも活かし、ICメーカーと関係を深めながら、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)において、物理世界とアルゴリズムを繋ぐ「トランスデューサ(変換器)」としての役割を果たすことができます。中でも膨大なデータのセンシングと高速処理が求められるADAS(先進運転支援システム)・自動運転では、より競争力を発揮できると考えています。さらに、少子高齢化とそれに伴う労働力不足、医療・介護問題という社会課題の解決に向け、ロボティクスの進化やヘルスケア分野におけるDXにも貢献していく考えです。

そうした未来の重要なインフラとなるのは5Gです。近い将来、基地局総需要の大部分を占めると予測されるスモールセル基地局のマルチアンテナを支えるLTCC(低温同時焼成セラミックス)デバイスや、高周波部品、高周波対応のインダクタ、IC内蔵基板「SESUB(Semiconductor Embedded Substrate)」技術を活かした小型・低背電子部品などで貢献していきます。

このように、TDKが強みを活かして「すべての人々にとって持続可能で幸福な社会を実現」するためには、私たち自身も変革していく必要があると感じています。

エネルギー・環境問題の解決とデータを活用した社会の効率化に貢献していきます

未来づくりに貢献していくための変革

素材技術とプロセス技術を中心とする「モノづくり」の絶え間ない研鑽は、時代がいかに移り変わろうとTDKの持続的発展の基盤であり続けます。当社では4年ほど前より、デジタルを活用して製造プロセスの見える化を図る「インダストリ4.0」への取り組みに加え、「ゼロディフェクト(不良品ゼロ)」を追求する「モノづくり改革」を進めています。同時に、徹底した省エネ施策、再生可能エネルギーへの転換を推進することにより、TDK自身もエネルギーEco企業へと変革していきます。

世の中の要請を素早く、的確に察知し、いかにタイムリーに価値をお届けできるかが、成長戦略上の重要なポイントだと考えています。そのためには、社会やお客様のニーズを探知するアンテナの強化が必要です。HDD用磁気ヘッドとリチウムポリマー電池は、いずれも世界中で高いシェアを獲得しています。最先端の製品を開発する機会が得られるため、技術やニーズのトレンドを先んじて把握するアンテナの感度が極めて高いのです。これが、お客様のご要望にいち早くお応えできる「Time to Market / Quality / Volume」の実現に繋がっています。こうした強みを全事業に広げるべく、TDKグループ全体に横串を刺し、デジタルを活用したグローバルマーケティング機能の強化とグローバルR&D機能の強化に取り組み、経営効率を徹底的に高めていきます。

また、グローバルガバナンス体制の構築に加え、優秀な人財を世界横断的に発掘・育成し、国籍や事業会社の枠を超えて最適配置を図るグローバル人財戦略など、多様性の強さを一層高める取り組みも引き続き行っていきます。

社会の要請を迅速かつ的確に察知するためのアンテナを強化していきます

最後に

先日、社内で「このパンデミックが20年前に起きていたらどうなっていたか」が話題になりました。20年前といえば、私がヨーロッパの工場に駐在していた頃です。当時、ある方から「将来はインターネットで買い物する時代が来る」というお話を伺いました。家庭にインターネットが普及し始めた頃でしたので、「なぜインターネットで買い物をしなければいけないのだ」と思った記憶があります。それから20年、世界中がブロードバンドで繋がり、スマートフォンが普及し、クラウドが膨大なデータを処理し、AIの性能は加速度的に進化しています。私自身もWeb会議を行い、ネット通販で日用品を購入し、スマホアプリで食事を注文しています。もし20年前にパンデミックが発生していたら、私たちはなすすべもなかったでしょう。この20年間のテクノロジーの進化と、そのパワーには驚かされます。

TDKも、この20年間で大きく変革を遂げました。しかし、自己変革を怠れば、常識を覆すテクノロジーの登場と同時に、一気に競争優位を失う恐れもあります。常に危機感を持ちながら、テクノロジーの可能性を追求し、持続可能な社会の実現とTDKの永続的な発展に向けて、TDKグループ一丸となって前進していきます。

テクノロジーの無限の可能性を追い求めていきます

2020年10月

TDK株式会社
代表取締役社長
石黒 成直

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