TDKのDX推進への取り組み
CDXOメッセージ
エレクトロニクスにおける
持続可能なイノベーションの推進:
TDKのDXイニシアティブ
Roshan Thapliyaローシャン・タプリヤChief Digital Transformation Officer
(兼) 経営システム本部長
(兼) DX推進グループ ゼネラルマネージャー
独自のフレームワークに基づいた自社開発のTDK GenAIプラットフォームで変革を推進
TDKのデジタルトランスフォーメーション(DX)フレームワークは、営業・マーケティング、生産、サステナビリティの全社横断的な取り組みです。たとえば営業・マーケティング分野では、エージェンティックAIが顧客管理システムをインテリジェントな成長エンジンへと変貌させ、機会の継続的な監視、リスク検出、チームへの最適な指導を実現しています。製造現場では、DXが現場の専門知識をデジタルツールで補強し、業界トップクラスの運用効率を実現しています。スマートマニュファクチャリング※/インダストリー4.0の取り組みでは、品質保証、予知・予防保全、エネルギー効率化、サプライチェーン最適化をAIとデータ統合によって強力に支援しています。サステナビリティトランスフォーメーション(SX)においては、高度なデジタル技術をサステナビリティのあらゆる側面に組み込み、脱炭素やエネルギー生産性の向上を推進しつつ、カーボンフットプリントの最小化に貢献しています。DXとSXの融合により、TDKは自社の変革を進めるとともに、エレクトロニクスにおける持続可能な成長の新たなスタンダードを打ち立てています。
※ デジタル技術を活用し、製造プロセス全体を最適化する取り組み
これらの変革を推進する基盤の一つが、TDKが開発したセキュアなTDK Generative AI(TDK GenAI)プラットフォームです。TDK GenAIプラットフォームは、データやAPIにアクセスするツール・検索層、タスク管理を担うオーケストレーション層、大規模言語モデル(LLM)およびドメイン特化型AIによる推論層、継続的改善のためのフィードバック・学習層、そして堅牢なガバナンスを実現するセキュリティ・コンプライアンス層からなる多層構造を有しています。TDK内で提供される生成AIサービスは、このTDK GenAIプラットフォームとAPIゲートウェイを活用しており、組織全体でのスケーラブルかつセキュアなエージェンティックAIソリューションの展開を可能にし、ワークフローの最適化と生産性向上を加速しています。TDKは、生成AI技術を組み込んだシステムをいち早く自社で開発し、実稼働レベルでグローバルのグループ全体に展開した先進的な企業の一つです。市場の見通しを踏まえつつ、有望な技術を大胆に取り入れようとするその姿勢に、TDKの「ベンチャースピリット」が表れています。
TDKの内部ワークフロー改革への強いコミットメントは、DX、AI、ITに加え、新たに導入されたタスクフォース型のDXイニシアティブに集約されています。このDXイニシアティブは専任タスクフォースを運用現場に短期間(通常は1カ月未満、最大で2カ月程度)集中派遣し、高いインパクトを持つAI駆動型ソリューションを特定・実装することを目的としています。これにより、長年にわたり蓄積されたドメイン特化データをもとに構築したドメイン特化型AIを組み合わせたエージェンティックAIを活用し、大幅なコスト削減とワークフローの効率化を図ります。このタスクフォース型DXイニシアティブは多様な技術要素と業務プロセスの協働・融合を象徴しており、迅速に変革を実現し、成果を数値で評価します。バックオフィス業務から工場現場まで幅広い分野で採用が進み、間接業務の自動化により運用コストの改善効果が表れています。
業務プロセスのDXを支える、多様な教育プログラムとゼロトラストセキュリティ
TDKのDXに対する取り組みは、ビジネスインパクトや成果、努力を讃える社内表彰「DX-Award」を通じてグローバルに評価され、イノベーションと卓越性を重視する文化を醸成しています。TDKのDX推進の中心にはチームメンバー(従業員)のエンゲージメントがあり、経営システム本部のDXマネジメント・AIセンター・ITインフラチームが、ガバナンス、責任あるAIポリシー、組織内の情報共有を主導しています。
アップスキリング・リスキリングは、基礎から専門までのIT講座、実地研修、サイバーセキュリティ、プライバシー、責任あるAIに関する専門モジュールを含む包括的なDX研修プログラムを通じて優先的に推進されています。グローバルな連携によりネットワーキングやコミュニケーションが促進され、対面式のイベントやデジタルプラットフォームを活用した社内外のDXコミュニケーションが活発に行われています。また、DX認定の取得やSNS、国際会議への参加を通じて外部との連携も強化し、デジタルコミュニティにおける存在感を高めています。これらの取り組みが、人、技術、知識が交差する活気あるネットワークを形成し、チームメンバーのエンパワーメントだけでなく、業界におけるデジタルリーダーシップ、連携の新たな基準の確立にも寄与しています。
サイバーセキュリティとプライバシーは、TDKのDXの中核をなすものです。主な取り組みとしては、クラウド・オンプレミスのインフラや情報資産を守る堅牢なゼロトラストセキュリティフレームワークの導入があります。これは認証・認可、ネットワークアクセス制御、AIモニタリング、デバイス管理、ネットワーク分割の5つの技術領域と包括的なガバナンスにより構成されています。各領域で4段階のセキュリティレベル(レベル1:セキュリティ基準、レベル2:強化された保護、レベル3:半自動検知・対応、レベル4:自動検知・対応)を設定し、多層的かつ適応型の戦略で継続的に対策を強化し、脅威の検知と対応の自動化を推進しています。グローバルなゼロトラストアーキテクチャの採用により、新たなAI駆動型脅威の台頭にも先手を打って対応し、デジタル環境と重要資産を守るための積極的かつダイナミックなアプローチを示しています。
TDKはアジャイルな手法、堅牢なAIプラットフォーム、継続的な学習と倫理的な視点を重視する文化を融合し、DXとAIを高度に組み合わせた変革を推進しています。こうした取り組みにより、電子機器メーカーとしてお客様や社会の期待を超え、オペレーショナルエクセレンスとデジタルリーダーシップの最前線に立つ存在となると確信しています。
