世界の建設DXを加速させる傾斜計測システム
イタリアの「ピサの斜塔」は、わずかな地盤変動の積み重ねによって、長い年月をかけて大きく傾いた例として知られています。一方、建築・土木工事の現場や橋梁、トンネル、擁壁などの社会インフラでは、わずかな傾斜変化の見逃しが、地盤や構造物の健全性の低下を招き、重大事故につながる可能性があります。
こうしたリスクを低減するには、地盤や構造物の傾斜変化を継続的かつ高精度に監視することが不可欠です。TDKは、高精度センシング技術と無線通信技術を融合し、微小な傾斜変化を遠隔・リアルタイムで把握できる「傾斜計測システム」の展開を推進しています。異常の早期発見を通じて建築・土木工事における安全監視や社会インフラの維持管理に貢献するとともに、資源の有効活用や環境負荷の低減を支えるサステナブルな維持管理を実現します。
目次
記事のポイント
- 労働者の不足や社会インフラの老朽化、災害リスクの増大により、地盤や構造物を継続的に監視する重要性が世界的に高まっています。
- 異常の前兆として現れる微小な傾斜変化を高精度センサで早期に検知することが、重大事故の未然防止や予防保全に大きく貢献します。
- TDKの傾斜計測システムは3軸MEMS加速度センサで傾斜を1/1000度の高精度で計測し、無線による常時監視を実現します。
世界的に高まる地盤・構造物の監視の重要性と「傾斜」が注目される理由
現在、建築・土木分野では、労働者の不足、社会インフラの老朽化、災害リスクの増大という三つの課題が顕在化しています。技術者や点検員の確保が世界的に難しくなっている一方、橋梁やトンネルなどの社会インフラでは老朽化が進み、地震や豪雨による災害リスクも増大しています。限られた予算と人員の中で効率的な維持管理が求められる中、対応策として注目されているのが、IoTやセンサを活用した遠隔監視です。
その中でも、地盤や構造物の健全性を示す重要な指標の一つが「傾斜」です。建築・土木工事では施工時の安全監視のため、また、橋梁、トンネル、擁壁などの社会インフラでは維持管理のため、傾斜計測による監視が広く活用されています。地盤や構造物に異常が発生する際には、その前兆として微小な傾斜変化が現れることが多く、こうした変化を捉えることで異常の早期発見につながります。
このような微小な傾斜変化は目視では確認できないことが多いため、高精度センサによる継続監視が重要です。微小な傾斜変化を早期に検知し、データとして可視化することで、重大事故の未然防止や迅速な対応判断につなげることが可能になります。
2040年度に向けて日本政府が目指す建設現場のイメージ
日本政府は、i-Construction 2.0 *1を掲げ、デジタル技術の活用により建設現場のあらゆる生産プロセスのオートメーション化を実現し、2040年度までに3割の省人化により生産性1.5倍の達成を目指しています。
TDKの傾斜計測システムが実現する遠隔監視
従来の傾斜監視では、定期的な現地点検や手作業による計測が一般的でした。しかし、この方法では計測時点の状態しか把握できず、異常発生のタイミングを見逃す可能性があります。また、有線システムでは配線工事や設備管理の負担が大きく、広範囲への導入には制約がありました。さらに、社会インフラの老朽化による監視対象の増加により、従来の運用手法だけでは効率的な維持管理が難しくなっています。こうした課題の解決策として注目されているのが、無線通信と自動計測を活用した常時監視システムです。
TDKの傾斜計測システムは、スマートフォンや自動車向け製品で培った3軸MEMS加速度センサ技術を活かして、2軸方向の傾斜を1/1000度の高精度で計測します。現場に設置するだけで傾斜データを自動収集し、遠隔・リアルタイムで監視できるため、建築・土木工事における安全監視、社会インフラの維持管理、災害対策など幅広い用途で活用できます。人手に依存した監視業務を効率化しながら、異常の早期発見と安全性の向上を実現するソリューションです。
特に、無線化によるトータルコストの低減は本システムの大きな強みです。配線作業の負荷を大幅に低減できるため、施工・機器・メンテナンスの各コストを抑えられ、有線式と比べて設置・撤去時間を半減できた事例も報告されています。
無線式高精度傾斜計測システム システム構成例
傾斜計測システム 活用例
傾斜計測から予防保全へ進化する監視ソリューション
技術研究所 建設・環境基盤研究部
主席研究員 博士(工学)、技術士(建設部門)
河野 貴穂氏
TDKの傾斜計測システムを実際に導入した、株式会社竹中工務店の河野 貴穂氏はこう語ります。
「構造物を長く使い続けたり、自然災害に備えたりするために、建築・土木分野でもヘルスモニタリングを広げていきたいと考えています。名古屋の現場では、小型・軽量で無線接続できる機器を約1年半検証し、既存機器と同等の精度と安定性を確認しました。TDKの計測システムは、設置時間を短縮できるため、人手不足や配線が難しい現場にも役立つと思います。一方で、DXが進まないのは、計測データが限られた用途でしか使われず、計測する側のメリットが少ないからだと考えています。計測データを長期で蓄積できれば、将来の現場の信頼性向上や工期・コスト削減につながる財産になるはずですが、まだその効果の証明まで至っていません。今後はDX導入をもっと加速できるように、データ管理や分析、その効果検証を進めていきたいと考えています。」
また、今後の傾斜計測システムについて、技術・知財本部 インキュベーションセンター インターナルインキュベーション部 モジュラーセンシングユニットの関島リーダーは次のように述べています。
「TDKの傾斜計測システムは、センサデバイスで取得したデータを可視化し、無線通信によって遠隔・リアルタイムで監視できるシステムです。今後は、お客様のニーズに応えるため、異常検知や予防保全につながる傾向検出などの機能を拡充し、より付加価値の高いサービスへ展開していく予定です。これにより、建築・土木工事における地盤や構造物の安全監視と社会インフラの維持管理の効率化に貢献するとともに、安全性の向上と維持管理の高度化を支える次世代ソリューションを提供してまいります。」
現在、TDKの傾斜計測システムは日本国内での展開が中心で、シンガポールでの実証も進行中です。海外への本格展開は今後の検討段階ですが、TDKは独自のセンシング技術を武器に、建築・土木工事の安全確保と社会インフラの維持管理を支え、世界の建設DXと持続可能な未来を支えるソリューションを提供し続けます。
まとめ
労働者の不足や社会インフラの老朽化、災害リスクの増大により、地盤や構造物の監視、および社会インフラの維持管理の重要性が高まっています。異常の前兆として現れる微小な傾斜変化を高精度に検知することが、事故防止や予防保全に貢献します。TDKの傾斜計測システムは3軸MEMS加速度センサを搭載し、傾斜を1/1000度の高精度で計測します。無線による常時監視で人手に依存した監視業務を効率化しながら、異常の早期発見と安全性の向上を実現します。
よくある質問(FAQ)
Q:傾斜計測システムとは何ですか。
A:傾斜計測システムは、建築・土木工事の現場や社会インフラにおける地盤や構造物の傾斜変化を遠隔から監視できるシステムです。
Q:傾斜計測システムの特徴を教えてください。
A:3軸MEMS加速度センサと独自のデータ処理技術により、高精度な計測を実現していることです。また、920MHz帯を使用した無線通信方式により、Wi-FiやBluetoothとの干渉がなく、長距離のデータ通信が可能です。複数の傾斜計で計測したデータはクラウドサーバーやPCに集約され、一元的に管理できます。
Q:傾斜計測システムの導入により、建築・土木工事における安全監視や社会インフラの維持管理にはどのようなメリットがありますか。
A:人手に依存した監視業務を効率化しながら、異常の早期発見と安全性向上を実現します。また、無線化によるトータルコストの低減で、施工・機器・メンテナンスの各コストを抑えられます。
Q:傾斜計測システムの導入および操作は簡単ですか。
A:無線なので有線に比べて、設置作業の負荷を軽減し、現場への導入を容易にするシステムを提供します。同時に、複数の傾斜計で計測されたデータはクラウドサーバーやPCに集約され、一元的に管理できます。
Q:製品についてスペックや詳細はどこで知ることができますか。
A:傾斜計測システムに関する詳しい情報はプロダクトセンターをご覧ください。
<展示会に出展します>
TDKは、下記の展示会に出展いたします。当日は、建築・土木現場向けの無線計測システムを展示し、実機デモンストレーションを通じて、現場への導入イメージをご紹介します。皆さまのご来場を、心よりお待ちしております。
建設技術展2026 関東
会期:2026年10月20日(火)~10月21日(水)
会場:サンシャインシティ 展示ホール(東京都豊島区東池袋)
TDKブース:サンシャインシティ 2F 展示ホールD D-94
事前登録:建設技術展2026関東
建設技術展2026 近畿
会期:2026年10月28日(水)~10月29日(木)
会場:インテックス大阪 6号館(大阪府大阪市住之江区)
TDKブース:インテックス大阪 6号館 Cゾーン No.24
事前登録:建設技術展2026近畿
建設技術フェア2026in中部
会期:2026年11月19日(木)~11月20日(金)
会場:ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)
TDKブース:ポートメッセなごや 第一展示館 #け02
事前登録:建設技術フェア2026in中部
用語集
- i-Construction 2.0:日本の建設現場の生産性向上と働き方改革を目的として、国土交通省が2024年4月に策定した施策。
※お問い合わせは日本国内のお客様に限らせていただいております。
海外からのお問い合わせには対応しておりませんので、あらかじめご了承ください。

