センサで進化する、自立と移動の新しいかたち
WeWALK Smart Cane 2は、従来の白杖の機能を拡張し、アシスト技術の新たなスタンダードとなります。WeWALKが開発し、TDKの先進的なセンサソリューションによって実現した本製品は、モーション、サウンド、超音波という3つのセンシング技術を統合。正確なナビゲーション、確かな音声操作、そしてリアルタイムでの障害物検知を実現しました。これらのセンサは、日常の使い心地を高める、スリムな人間工学デザインの本体の内部で、低消費電力ながら高い性能を発揮します。視覚障がい者の声を取り入れて設計され、多くの受賞歴を持つWeWALKのSmart Cane 2は、TDKのセンシング技術とWeWALKのビジョンが融合することで、誰もが移動しやすい社会を実現し、生活の質を高めるという両社の想いを形にした製品です。
よりインクルーシブな世界のための、スマートな白杖
モビリティとは、「移動」するだけではなく、「自立」そのものです。世界中には、約4,300万人を超える目の見えない方々がおり、さらに多くの視覚障がい者は、普段の生活において安全に移動することに困難を感じています。外出する際には、白杖(はくじょう)は必要不可欠な道具ですが、地面より高い位置にある障害物の検知は苦手で、胸や頭の高さにある危険には対応しきれません。
イギリスに拠点を置くスタートアップWeWALKは、「障がいのある人々が抱える独自のニーズに応えるソリューションを提供する」ことを使命としています。視覚障がいに関する個人的・職業的な経験から着想を得て、従来の白杖を、ネットワークにつながるAI搭載のモビリティツールへと進化させました。その成果がWeWALK Smart Cane 2です。視覚障がい者の安全性、自信、そして自立を支える革新的なアシストデバイスとして設計されました。WeWALKのビジョンを実現するため、その知能を支えているのは、TDKの高精度センサ製品です。
WeWALKとTDKのコラボレーションによって、私たちはモビリティとアクセシビリティのあり方を見直し、世界中の視覚障がい者を真に力づけるツールを生み出すことができました。TDKのセンサは、私たちのビジョンを実現するために必要な精度、信頼性、低消費電力性能を備えています。
WeWALK共同創業者 Kürşat Ceylan氏
より安全なモビリティへのスマートなアプローチ
WeWALK Smart Cane 2は前モデルの成果をもとに大きく進化しました。AIによる音声ナビゲーション、超音波による障害物検知、将来の拡張に備えたモジュール式ハンドルを搭載し、反応が良く直感的な使い心地を実現します。地表の障害物だけでなく、足元から頭上の標識まで、進行方向のすべての領域で対象物を検知し、従来の杖では対応が難しかった課題にも応えます。人間工学に基づくデザインと高度なソフトウェア設計により、定期的なアップデートを通じて機能を進化させ続けることができるのです。
この製品は、視覚障がい者のコミュニティと深く連携したインクルーシブデザインを採用し、普段の生活に根ざしたニーズに応える機能を実装しています。その結果、Smart Cane 2は60を超える国と地域で何千人もの視覚障がい者に使われ、Time Best Inventions 2023、The King’s Awards for Enterprise Innovation2024、Edison Awards2024、iF Design Awardなど、世界的に高い評価を受けています。
TDKのテクノロジー
WeWALK Smart Cane 2は、以下に紹介するTDKの3つの先進センシング・ソリューションを中心に構成されています。
●SmartMotion® 6軸IMUセンサ(慣性計測装置)
3軸ジャイロスコープと3軸加速度センサを単一のチップに統合し、低ノイズで高感度を実現。さらに気圧センサとオンボードのデジタル・モーション・プロセッサ(DMP)を搭載し、杖の姿勢や動きをリアルタイムに捉えます。これにより、ユーザーごとの杖の使い方を理解して、拡張情報をフィードバックできます。
この高度なセンサシステムは、視覚障がい者の歩行訓練を行うO&M(Orientation & Mobility:歩行・方向づけ)トレーナーにとっても有用なツールとなります。WeWALK Smart Cane 2の接地角度や左右のスイング動作に関する詳細なデータを提供し、専用ダッシュボードを通じて、トレーナーがリモートで受講者の杖の使い方をモニタリングできます。これにより、一人ひとりのデータに基づいたフィードバックが可能になり、進捗を時系列で確認できます。歩行訓練をデジタル化することで、教える側と習う側の双方に、より効率的で測定可能かつ示唆に富んだトレーニングを実現し、杖の技術習得と、自立した移動への道を新たに描きます。
●SmartSound™ MEMSマイクロフォン・センサ
きわめて低い消費電力で、いつでも使える音声アシスタント機能を提供します。AI処理と組み合わせることで、杖のインターフェースを通じた音声やコマンド入力を正確に実行し、より自然で快適な操作体験を可能にします。
●SmartSonic™超音波ToF(Time of Flight)センサ
周囲の明るさに左右されず、最大約9.5メートルの距離を測定します。センサの反応角度を設定でき、人物検知などの前処理を担うプロセッサを内蔵し、リアルタイムで障害物を把握します。杖の物理的な長さをはるかに超えて認識範囲を広げ、接近前に危険を察知できます。
これらのセンサは、接続性を確保するTDKの積層チップアンテナや、電力と信号を効率的に制御する高性能インダクタによって支えられています。小型化と省電力化により、杖は軽量でスリムに仕上がり、長時間でも快適に使用できます。
複数のTDKセンサを使ってSmart Cane 2に「知能」を与えたWeWALKは、センサイノベーションの大きな可能性を示しています。正確なセンシングが人々の生活に具体的な変化をもたらす良い例です。
Massimo Mascotto プロダクトマーケティング・ディレクター
, InvenSense(TDKグループ会社)
実際の生活にあわせて設計
にぎやかな街の歩道から混雑する交通機関まで、Smart Cane 2はユーザーがより自信をもって移動できるようユーザーを支援します。人間工学に基づくモジュール式デザインは、使用後もハードウェアのアップグレードが可能で、技術やユーザーのニーズの変化に合わせて、製品が進化します。
本体にはClassic Cane(従来杖)/Enhanced Safety(安全強化)/Navigation(ナビゲーション)/AI Assistant(AIアシスタント)の4つのモードがあり、お好みや環境に合わせてカスタマイズできます。頭上の障害物を検知したり、曲がり角のたびにナビゲーションを受けたり、近くのランドマークの情報をAIアシスタントに尋ねたりと、日常での自立をサポートする「移動のお供」として機能します。
Smart Cane 2は、TIME Best Inventions、Edison Awards、iF Design Award、The King’s Award for Innovation、Forbes’ Accessibility 100 Listなど、世界的な表彰でも評価され、インクルーシブなテクノロジー分野におけるブレークスルーとしてその影響力が認められています。
インクルージョンのためのパートナーシップ
WeWALKとTDKの協業は、CES 2025で世界のテックコミュニティから注目を集めた流れを受け、社会的なメリットのためにテクノロジーを活用するという両社の共通の想いを体現しています。
WeWALKは、TDKのセンサを使って人々の生活を良くする製品を生み出すよう、他のエンジニアたちにもインスピレーションを与えると信じています。
Massimo Mascotto, InvenSense(TDKグループ会社)
私たちはTDKと共に、モビリティの意味そのものを再定義しています。
Kürşat Ceylan氏, WeWALK
継続的なイノベーションとモジュラー設計によるアップグレード計画により、Smart Cane 2はまだ始まりに過ぎません。あらゆる人々が社会に完全に参加できる未来に向けて、テクノロジーがその支えとなる世界を指し示しています。
本記事のポイント
●WeWALK Smart Cane 2は、従来の白杖にAI起点の知能を加えることで、視覚障がい者のモビリティを変革します。
●SmartMotion® IMU、SmartSound™ マイクロフォン、SmartSonic™ 超音波ToFなどのTDKセンサが、ナビゲーション、音声操作、障害物検知の中核を担います。
●視覚障がい当事者が開発に直接参加することで、現実のニーズに即したインクルーシブな設計を実現しています。
●TDKのセンサソリューションは、高精度、低消費電力、小型化を特長とし、ユーザビリティと性能の両立に貢献します。
●WeWALKとTDKのパートナーシップは、誰もが使えるイノベーションと継続的な製品進化への共同の取り組みを示すものです。
●Smart Cane 2はCES 2025やCEATEC 2025でも注目を集め、世界的な広がりを見せています。
まとめ
WeWALKのSmart Cane 2は、白杖という親しみのある形状にAIとスマートセンサを組み込むことで、視覚障がい者の自立した移動を再定義します。正確なモーショントラッキング、直感的な音声操作、超音波による障害物検知により、従来の杖では対応しきれなかった、地表および頭上のどちらの危険にも対応します。
本製品の中核には、6軸IMU、MEMSマイクロフォン、超音波ToFセンサといったTDKの先進センサがあり、低消費電力と人間工学設計を両立しながら、リアルタイムのフィードバックとスマートなナビゲーションを可能にします。視覚障がい当事者と協力して開発されたSmart Cane 2は、インクルーシブなエンジニアリングと目的を持ったイノベーションの好例です。
WeWALKとTDKのコラボレーションは、センサ技術が生活の質を大きく高められることを示し、モビリティをより安全でスマートなものに変えていきます。将来の拡張に対応するモジュール設計により、Smart Cane 2は、誰もが使える、つながるソリューションといったビジョン実現に向けた第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q:WeWALK Smart Cane 2とは?
A:視覚障がい者向けの次世代モビリティツールです。AI音声ナビゲーション、超音波による障害物検知、精密センサを組み合わせて、安全性、認知、自立性を高めます。詳細はhttps://wewalk.ioをご参照ください。
Q:TDKのセンサはどのようにSmart Cane 2を支えていますか?
A:SmartMotion® IMUは、姿勢や動きをトラッキングし、SmartSound™ MEMSマイクは音声操作を可能にし、SmartSonic™ 超音波ToFは頭上を含む物理的な障害物を検知します。
Q:従来の白杖に比べて優れている点は何ですか?
A:従来の白杖では、主に地面レベルの障害物しか検知できないのに対し、Smart Cane 2は複数の高さの危険を特定でき、音声ナビゲーションも備えているため、より安全で直感的な移動をアシストできます。
Q:視覚障がいコミュニティはどのように開発に関わりましたか?
A:視覚障がい者がユーザーとして機能検証やフィードバックに参加し、実際の課題を解決する改良に貢献しました。
Q:WeWALKのパートナーとしてTDKが適している理由は?
A:小型で高精度、低消費電力というセンサ技術の特長が、常時稼働が求められるモバイル補助デバイスに最適だからです。
Q:Smart Cane 2の実機をどこで見られますか?
A:TDKとWeWALKの動画をご覧ください。
Q:WeWALK SmartCaneの今後の展開は?
A:モジュール設計により、将来のハードウェアとソフトウェアのアップグレードが可能です。WeWALKは、ソフトウェアの更新と将来のハードウェア強化を通じてユーザー体験を継続的に改善し、ニーズに合わせて機能を進化させ、グローバルにアクセシビリティを広げていく方針です。
