Transformation
フェライトから未来へ。TDK90年の変化と挑戦
1935年12月、磁性材料「フェライト」の工業化を目的として日本で誕生したTDK。この新材料から、ラジオやテレビ、パソコン、スマートフォン、自動車に至るまで、あらゆる電子機器を支える技術革新の歴史が始まりました。そして、2025年12月、TDKは創立90周年の記念日を迎えます。1980年代に音楽用カセットテープで一世を風靡したTDKの事業は、現在様々な先端技術に多角化し、世界30か国以上の国や地域で10万人を超えるチームメンバー(従業員)が活躍するグローバル企業へと成長しました。TDKの90年を振り返ると、「変化の歴史」とも言えます。多くの企業が特定の事業にこだわり続ける中で、TDKは、創業以来、主要事業を時代に合わせて大きく変化させてきました。この記事では、TDKの変わらぬ創造の精神と、次の100年に向けた変革(Transformation)の歩みをたどります。
▶関連記事:
Venture Spirit あくなき挑戦が支えたTDK90年のイノベーション
すべては「フェライト」から始まった
1930年、東京工業大学(現:東京科学大学)で世界初の酸化物磁性体「フェライト」が発明されました。当時は使い道も分からなかったこの新材料に可能性を見出し、日本に産業を興せないかと考えた創業者・齋藤憲三は、フェライトの工業化を目的に、1935年12月7日東京電気化学工業(現:TDK)を設立しました。
フェライトコアは、無線通信機やラジオの性能を劇的に向上させ、終戦までに延べ500万個を出荷。戦後は白黒テレビ用の部品として採用され、1950年代に日本国内でテレビ放送が開始されると、テレビの需要は爆発的に増加。TDKは、フェライトコアを通じてテレビの普及を支えるとともに、情報化社会の幕を開きました。
フェライトから広がるTDKの技術と製品
TDKは、フェライトを原点とする磁性技術を発展させ、磁気記録テープなど新たな製品の開発に取り組みます。1968年には、独自の材料技術とプロセス技術により、音楽を高音質で録音できる「音楽用カセットテープ」の開発に成功します。カセットテープの登場は、音楽の楽しみ方を大きく変えることになりました。
その後も磁性技術は、インダクタ、磁気ヘッド、センサなど、電子部品の開発にも応用され、TDKの技術領域を大きく広げていくことになります。家庭では電化製品が普及し、人々の生活は大きく変化しました。TDKは急速に広がるエレクトロニクス社会を支える企業として、成長を続けていきました。
時代とともに主要事業を変化させてきたTDK
創業以来、TDKはひとつの事業だけにとどまらず、時代のニーズに合わせて主要事業を次々と変化させてきました。TDKの90年を象徴するものとして、「フェライトコア」「音楽用カセットテープ」「積層インダクタ」「薄膜磁気ヘッド」といった4つのイノベーションが挙げられます。いずれも当時の常識を塗り替え、人々の暮らしや産業に大きな価値をもたらしました。
音楽用カセットテープで世界的なブランドとしてその名を知られるようになったTDKは、インダクタやコンデンサなどの電子部品の研究・開発を進めます。1980年には世界で初めて積層チップインダクタの開発に成功し、電子機器の小型化と高性能化に欠かせない部品として普及します。
また、磁性技術を発展させて開発したHDD用磁気ヘッドは、コンピュータの記録容量拡大に貢献し、デジタル社会の発展を支えました。近年では、大容量の小型リチウムイオン電池がスマートフォンやノートPC、モバイル機器の小型化を支えることで、ICT(情報通信技術)の進化にも寄与しています。
社会の変化にあわせて、その時代のテクノロジーを支える企業として進化してきたTDK。過去の成功にとらわれず、自らの可能性を広げ続けてきた姿勢こそが、90年の成長を支えてきた原動力と言えます。
未来への展望:2035年に向けて
2000年代以降、TDKは積極的なM&Aを通じて、世界中の革新的な技術と人材を取り込みながら、事業ポートフォリオを拡大してきました。現在では、世界30以上の国や地域に250以上の拠点を持ち、10万人を超えるチームメンバーがグローバルに活躍しています。
現在、TDKは長期ビジョン「TDK Transformation」を掲げています。これは、TDK自身が変革(Transform)を続けるだけでなく、社会の変革も支えていくことを宣言したものです。その変化の中核を担うのが、「AIエコシステム」です。AIはサーバーやデータセンターをはじめ、スマートフォンなどのデバイス、自動車、医療、ロボティクス、インフラなど、社会のあらゆる領域に広がり、私たちの暮らしや産業の姿を大きく変えつつあります。
TDKは、受動部品、センサ製品、磁気応用製品、エナジー応用製品など多彩な製品ラインアップにより、このAIエコシステムの発展を支えていきます。創立90周年を迎える今、そして100周年となる2035年に向けて、TDKはこれからも変化を恐れず、大胆に新しい価値を世界に届け続けていきます。
次回の記事では、これらの変革を支えてきた挑戦者たちのストーリーをご紹介します。
