

【Sustainability & TDK】
持続可能なエネルギー社会を支える「マイクログリッド」と次世代電源技術
再生可能エネルギーの普及に伴い、太陽光パネルや風力発電といった設備の性能だけでなく、発電した電力を効率よく送電し、蓄電・活用するかが重要な課題となっています。TDKでは、再生可能エネルギーの出力をムダなく制御・利用するための電源製品の開発を通じて、環境にやさしいエネルギーを安定して活用できる社会の実現を目指しています。また、TDKは経営と環境マネジメントが一体となった環境マネジメントシステム(Environmental Management System: EMS)を確立し、多様化する環境問題に対応しています。


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再生可能エネルギーの可能性を広げるために
地球温暖化対策やエネルギーの安定供給を背景に、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入が世界中で広がっています。その一方で、こうした電源は、天候や時間帯によって出力が変動しやすいため、安定的に活用するには、発電された電力をかしこく制御する技術が欠かせません。その中で注目されているのが、「マイクログリッド」という仕組みです。
マイクログリッドとは、従来の広域的な商用電力ネットワークと異なり、地域や施設単位で構成される小規模な電力ネットワークのことを指します。太陽光パネルや蓄電池、風力発電などを組み合わせて、発電・蓄電・送電を地域や施設内だけで完結することができます。

一般的な電力ネットワークでは交流(AC)が使われますが、マイクログリッドでは太陽光発電や蓄電池の直流(DC)系統が中心です。風力発電のように交流で発電される電源は、整流して直流に変換されます。こうすることで、電力変換によるロスを減らし、変換に必要な機器の数も抑えられます。
このような直流ベースでの電力ネットワークは、「DCマイクログリッド*1」と呼ばれ、近年ではデータセンターや工場、オフィスビル、病院などで、電力を効率よく利用するために導入が進んでいます。
DCマイクログリッドで使われる太陽光パネルや風力発電は、発電した電力をそのままネットワーク(DCバス)に供給することができません。ここで必要となるのが「MPPTコンバータ(最大電力点追従コンバータ)」です。MPPTコンバータは、太陽光パネルの発電量や天候の変化に応じて、最適な電圧と電流に調整し、常に最大限の電力をDCネットワークに供給できるよう制御を行う電源機器です。
DCマイクログリッドの構成図

高電圧化による新たな課題も
DCマイクログリッドでは、送電時のエネルギーロスを抑えるため、より高い電圧で電力を流す技術が採用されはじめています。現在では、DC1500Vという高電圧の導入が産業用途を中心に拡大しています。しかし、高電圧に対応できる電源機器は限られており、さらに電力を「双方向」にやりとりできる製品は非常に少ないのが現状です。使い切れない電力を蓄電池に貯めたり、電力需要が足りないときに貯めた電力を放出したりして、再生可能エネルギーと連携して安定運用するには、双方向での電圧変換が可能な電源機器が欠かせません。
高電圧マイクログリッドに適したTDKラムダの新技術
こうした課題を解決するために、TDKのグループ会社であるTDKラムダが開発したのが、双方向DC-DCコンバータ「EZA11K」と、これを最大6台まで直列接続できるオプションユニットの「EZA11K-SU」を組み合わせた電源システムです。ふたつの製品を連携させることで、高電圧マイクログリッドの構築をサポートできます。

EZA11KとEZA11K-SUを組み合わせた電源システムの特長
●最大6台を直列接続できDC1500Vに対応
オプションユニットEZA11K-SUを使うことで、双方向DC-DCコンバータEZA11Kを最大6台まで直列に接続可能、DC1500V・66kWの電圧、大容量に対応します。高電圧マイクログリッドでも安定した運用が可能になります。
●双方向の電力変換が可能
EZA11Kは1台で蓄電池への充電と放電の両方に対応し、余剰電力の充電や不足時の放電といったエネルギーの最適運用が可能です。
●高効率設計と安全性
EZA11Kの内部には、高効率のSiC-MOSFET(シリコンカーバイドMOSFET)や、TDK独自の低損失磁性材料「PCH95」を採用。これにより、最大96.5%の高い変換効率を実現しています。また、電圧バランスを保つユニットや過電圧保護ユニット(OVP)を内蔵し、安全面にも配慮されています。
さらに、EZA11Kは自律的な制御モードも備えており、電圧の変動に応じて自動で充放電をコントロールし、マイクログリッドの安定運用に貢献します。
マイクログリッドが叶える未来
双方向DC-DCコンバータEZA11Kはすでに、大学キャンパスや企業の施設などで実証実験が進んでいます。DC1500Vと380Vグリッドの変換や、蓄電池との充放電をスムーズに行うことで、その性能が実証されています。今後、都市インフラや大規模な再エネ発電設備などで、より高電圧・大容量のDCマイクログリッドが求められる中、双方向DC-DCコンバータの役割はますます重要になっていくでしょう。

システム電源開発部
グリーンエネルギー技術1グループ
山﨑 翔平
マイクログリッドにおける電源製品の可能性について、TDK ラムダ株式会社システム電源開発部の山﨑翔平は次のように話します。「マイクログリッドでは、太陽光発電などの出力電力が直流であるため、従来の商用の交流電力ではなく、直流電力が利用されています(直流給電網)。また、余剰電力を蓄えるため、リチウムイオン電池などの二次電池を利用した蓄電池も使用されています。この直流給電網と蓄電池との間で電力融通するのが、TDKラムダのDC-DCコンバータです。DC-DCコンバータは、DC(直流)を任意のDCへ変換することで、利用される電子機器に最適な安定した電圧を作り出す役割を担います。さらに、電力コストの削減や環境負荷の低減にも寄与し、持続可能なエネルギーシステムの構築に貢献します」。
導入事例の紹介
■金沢工業大学 白山麓キャンパス(石川県白山市)
再生可能エネルギーの地産地消とエネルギーレジリエンス強化を目的に、EZAシリーズを活用。自律分散型の蓄電池制御やバイオマスシステムを熱源としたスターリングエンジンによるDC発電、太陽光発電の診断機能付きのMPPT制御などを実施しています。詳細はこちらのページをご覧ください。

■成宏電機様(石川県小松市)
災害時の電力自給と商用電源の利用最小化を目的としたDCマイクログリッドを導入。EZAシリーズにより、太陽光パネルのオンラインでのメンテナンス、電気自動車との接続による電力供給も実現しています。詳細はこちらのページをご覧ください。

TDKラムダでは、EZA11と蓄電池の管理を行うBMS*2(バッテリーマネジメントシステム)を組み合わせた次世代製品の開発も進めており、再生可能エネルギーのさらなる活用と省エネルギーの推進を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。製品についての詳しい情報はプロダクトセンターをご覧ください。
用語集
- DCマイクログリッド:直流(DC)電力による小規模な電力ネットワーク。再生可能エネルギーの発電・蓄電設備と組み合わせることで、エネルギー変換ロスを減らすことができる。
- BMS:蓄電池の状態を監視・制御するシステム。充放電の最適化や劣化防止を行う。
