シールドなしで手軽に測定できる、超高感度磁気センサの幅広い可能性
地磁気の強さは約50マイクロテスラで、ふつうの永久磁石の数千分の1程度で大変微弱です。この地磁気よりもさらに微弱なのが、脳や心臓が発する生体磁気。地磁気の100万分の1から10億分の1程度の磁場(ピコ~フェムトテスラレベル)(※1)を発しています。
これらは、超電導素子を利用したSQUID(※2)と呼ばれる、高感度な磁束計で測定できます。しかし、冷却装置や地磁気を遮断する装置など、大掛かりなシステムが必要となります。
そこで、TDKが開発したのが常温でも計測可能な、超高感度磁気センサです。2016年に東京医科歯科大学との共同研究の成果として、世界で初めて常温の磁気センサによる心磁界分布の可視化に成功、現在では、3ピコテスラという超微弱な測定を可能にしています。さらに2019年3月には、測定の高精度化により、リアルタイムで心磁界分布の計測ができるようになりました。そして今回、これまで必要だった大掛かりな磁気シールドを不要にし、手軽な測定を可能にしました。これは「産業用途やインフラ用途などもっと様々な用途に、超高感度磁気センサを使ってほしい」という、開発者の思いによって実現したものです。
光や赤外線を使ったセンサは、測定物の間に、銅や土などの障害物があるとうまく検知できませんが、磁気センサは可能です。こうした特長を生かして、新たな超高感度磁気センサは、様々な産業用途やインフラ用途などの応用が考えられ、これまでにないブレークスルーを生み出す可能性があります。例えば、医薬品・食品などの中に含まれる金属異物を超高感度で検出する装置や、目視では発見できない微細な欠陥を検査する磁気探傷試験(MT)、地中深くに穴をあけること無く資源の探査を行う金属鉱物資源の探査など、微弱な磁場を検知するシステムの応用範囲は広大です。地磁気の1000万分の1、ピコテスラレベルの超微弱な磁場を大掛かりな設備無しで計測できる、超高感度磁気センサのこれからにご注目ください。
『CES 2020』では、新開発した超高感度磁気センサ(製品名:Nivio xMR センサ)のデモや詳細な情報を展示します。超高感度磁気センサに対するご要望やニーズ、課題などを伺います。