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[ 2008年3月期 通期 連結決算説明会 ]2008年3月期 連結業績概要と2009年3月期の見通しについて

取締役 常務執行役員 経理部長 江南 清司

取締役 常務執行役員 経理部長 江南 清司

経理部長の江南です。本日はご多忙ところ、多数ご出席いただきありがとうございます。また、日頃のご支援に感謝申し上げます。

早速ですが、2008年3月期の決算概要と2009年3月期の業績見通しについて、報告申し上げます。従来、決算短信に従って説明していましたが、ページがあちらこちらにいって見づらいというご意見ありました。今回から、正面のスクリーンに映す「配布資料」に従って説明させていただきます。

まず、2008年3月期連結業績概要ですが、売上高が8,663億円、前期比43億円、0.5%の増収です。営業利益が872億円、前期比76億円、9.5%の増益。税引前当期純利益が915億円、前期比28億円、3.2%の増益。当期純利益が715億円、前期比13億円、1.9%の増益。営業利益率は10.1%です。
1株当り利益が、前期の529円88銭から551円72銭となりました。1株当り純資産(株主資本)が、前期5,759円18銭から当期は5,556円77銭。
微増収、微増益ですが、売上高と純利益は過去最高となりました。1株当り純資産が目減りしているのは、円高により外貨資産の換算が大きく減り、その結果、「資本の部」のその他の包括利益が大きく傷んだことで、外貨資産の1株当り純資産が目減りしています。

2008年3月期の為替の影響ですが、対米ドル114円44銭、2.2%の円高。対ユーロ161円59銭、7.7%の円安。その結果、為替影響額は売上高で81億円のマイナス、営業利益59億円マイナスとなっています。当期の対米ドル円レートは、前半が円安で推移、後半が円高で推移。安値が124円14銭、高値が95円78銭とぶれましたが、年平均にすると、前期比2円53銭しか変わっていなかったということの結果です。

2008年3月期決算の特徴ですが、1つは記録デバイス製品のHDDヘッドが大幅な数量増加を確保できたことと、製品構成において、垂直磁気記録製品の比重が大きくなっていったこと。もう1つは、記録デバイス製品を除いたそれ以外の電子部品関係。これについては、電子デバイス、その他の電子部品が、デジタル製品が好調だったという背景の中で、順調に売上を伸ばすことができました。
ただし、電子材料に含まれているコンデンサは、市場の流れについていけなかった。取りこぼしがあったということと、全社的な話ですが、原材料価格の高騰が利益の重しになったということです。
さらに、記録メディア製品は、TDKブランドの事業をイメーション社に譲渡したことによる大幅な減収がありました。その見返りとして、譲渡益が発生したことが挙げられます。
さらには、期中平均レート、為替があまり変わりませんでしたが、期末日レートは前期末が118円05銭に対して、当期の3月末は100円19銭ということで、約18円の円高になった結果、その換算からP/LとB/Sにかなりの影響があったことです。
もう1つ加えると、この期は比較的積極的にTOBやM&Aを実施した1年であったということです。

次に、製品別売上高についてです。

製品別の売上高と業績概況、売上高の構成割合並びに対前年同期比売上高増減率を申し上げます。全社の売上高8,663億円のうち、電子素材部品部門が8,181億円、前期比593億円増、7.8%増収。全体に占める構成割合は94.4%です。記録メディア部門は、売上高が482億円、前期比550億円の減、率にして53.3%の減。全社に占める構成割合が5.6%になっています。

製品別売上高のうちの電子素材部品ですが、8,181億円で593億円増えた増収の背景を申し上げます。1つは、薄型テレビ、家庭用ゲーム機、ノートPC、携帯電話、デジカメ等々のデジタル家電製品について、新興市場向け需要が拡大し、それに伴ってセット製品の生産が増えたことが、部品の生産増に寄与しています。また、高機能、多機能化が進んだことで、それぞれ部品点数、搭載点数が増えました。もう1つは自動車電装化の進展です。こうした背景により、部品関係は増えています。その中で、コンデンサについては市場の拡大に十分追随できなかった1年であったと認識しています。

次に、電子素材部品8,181億円の内訳を説明申し上げます。まず、電子材料ですが、2001億円ということで9億円の増収です。この中身としての「コンデンサ」は、微増に留まっています。これは、PCや携帯電話向けで減収、逆に自動車向けで増収。「フェライト及びマグネット」は、マグネットが増収、フェライトコアが減収。その結果、電子材料全体は、全社に占める構成割合が23.1%、増減率は0.4%アップ。「コンデンサ」そのものは、電子材料の中に占める割合が69%、増減率は横ばい。「フェライトコア及びマグネット」の構成割合は31%、増減率1%アップ。電子材料は苦戦したということです。

次に、電子素材部品の中の電子デバイスは、2,091億円、109億円の増収、5.5%のアップです。増収の要因ですが、「インダクティブ・デバイス」はテレビ向けの電源系コイルや信号系コイルが増えました。さらに、自動車向けでコモンモードフィルタが増加したことが挙げられます。「高周波部品」については、PC向け部品が増えました。「パワーその他」は、半導体向けの電源製品が減りました。デジタル家電向けのアクチュエータが減っています。その結果、電子デバイス全体は、全社に占める構成割合が24.1%、5.5%のアップ。その中の「インダクティブ・デバイス」は、電子デバイスに占める割合が46%、伸び率7%アップ。「高周波部品」の構成割合が8%、増減率が71%アップ。「電源その他」の構成割合は46%、増減率2%ダウン。電源製品については製品の採算性の見直しを行っており、不採算製品の一部を終息させていますので、そのことも微減収の原因になっています。

次に電子素材部品のうちの記録デバイス、HDDヘッドですが、3,347億円、299億円の増収、9.8%アップ。その結果、記録デバイスの全社に占める構成割合は38.6%。増収の要因はPC用途、HDDの生産増に、HDDヘッドがついていけたということです。従来の「その他ヘッド」については、一部製品の撤退により減収になっています。
先回、HDDのサスペンション事業を買収したというお話をしましたが、これは、今回から「その他」のところに入れさせていただいております。記録デバイスの中の「HDD用ヘッド」は93%、伸び率6%アップ。「その他」には、サスペンションと従来の「その他ヘッド」が入っていますが、構成割合が7%、98%アップ。従来、「その他ヘッド」と表示していたものを、「その他」に名称変更させていただきました。理由は、先ほど言いましたように、サスペンションが入ったからということです。

電子素材部品の中のその他電子部品ですが、742億円、176億円増、31.2%の増収です。増収、要因はエナジーデバイス(二次電池)、電波暗室が伸びたということです。

記録メディア部門ですが、ブランド販売事業の譲渡によって大きく売上を落としました。それに伴って、製品構成も、従来から比べると大きく変わっています。記録メディアに占める「オーディオテープ」は、構成割合7%、増減率は28%ダウン。「ビデオテープ」の構成割合15%、59%のダウン。「光メディア」の構成割合37%、68%のダウン。ブルーレイディスクは市場が立ち上がっているということで、それに伴って徐々に増加しています。「データテープその他」の構成割合は41%で、25%ダウン。残った中でのデータストレージテープ、LTO(Linear Tape ‐Open)は増収となっています。

次に分野別売上高ですが、TDKでは「情報家電」、「高速大容量ネットワーク」、「自動車」の3分野を重点分野と位置づけて活動しています。その中で電子素材部品部門を100とすると、「情報家電」の構成割合が63%、9%の増収です。ストレージ機器向けの好調が要因でした。「高速大容量ネットワーク」の構成割合が11%、13%の増収。ここでは通信関係が好調でした。「自動車」分野の構成割合は8%、10%の増収。電装向けが好調でした。この3分野以外の「その他」分野は、構成割合が残りの18%で1%増収。産業機器向けが好調でした。

さて、次に地域別売上高です。全地域で記録メディアの減少の影響が大きく効いています。日本国内は、電子部品関係の売上高減少。その他の電子部品のみ増加です。米州も売上高は減少していますが、電子材料だけが減少で、それ以外は増えています。欧州も売上高減少。電子材料だけ減少。アジア地域は売上高増加。これは、電子素材部品の全分野で増加しています。海外売上高は7,142億円、全社に占める比率が82.4%、前年比較で2.3ポイントさらに増加しています。

次に連結損益計算書です。これを見ていただくと、営業利益が76億円増加しています。詳細については次に説明させていただきますが、この中で営業外損益が47億円悪化しています。悪化の大きな要因は為替換算差損益で、先期比46億円悪化しています。円高の影響です。営業外その他の費用で13億円悪化しています。これは、有価証券の評価損です。それから、記録メディア販売事業譲渡益が153億円となっていますが、前回は149億円と言っていましたので、4億円益が増えています。これは、譲渡したときにワーキングキャピタルの水準を決めていましたが、それよりも多くのものを譲渡した。ワーキングキャピタルの中身を相手方が精査して、どれも妥当なものだということを是認していただけたということで、基準を超えた部分について、ここで益を計上したということです。

営業利益が76億円増えていますが、この分析として、操業度、品種構成を含む売上増が255億円、合理化コストダウン301億円、販売管理費の減少2億円。それから、その他ということで事業譲渡益153億円、合計711億円のプラス要因。それに対して、製品値引きが576億円、全社で6.2%相当分です。為替の影響がマイナスの59億円、トータル635億円。差し引き76億円の増となっています。
販売管理費については、メディアのコンシューマー事業を譲渡したわけですから、販売費がかなり減るはずですが、そのことによって93億円販売費が減っています。逆に、開発費の増や、新しく事業買収した会社に含まれている販売費の増によって、ほとんど先期と変わらない程度の販売費になっています。
それ以外に、販売管理費は構造改革費用が前年は70億円でしたが、当期は60億円でした。メディアの事業譲渡益を除くと、営業利益では前年比較で実質77億円減少していると、我々は認識しています。

これをセグメント別に見ると、電子素材部品部門は売上高で593億円増えて、営業利益がマイナス58億円になっています。記録メディアは550億円売上が減って、営業利益が134億円増えています。電子部品は58億円減少していますが、通常10%ぐらい利益率があります。そうすると、66億円くらい利益が増えていなければいけなかった。それからすると、約120億円、電子部品関係でマイナスであったと認識しています。これは、1つにはコンデンサ事業のとりこぼし。2つ目には、磁性事業を中心にした資材の高騰によって、大半が説明できるのではないかと思っています。

記録メディアは134億円の増益になっていますが、譲渡益153億円をさっ引くと、実質的な営業利益は41億円マイナス。前期と比較すると19億円の減益で、悪化している形になります。この悪化部分はほとんど構造改革費用の差ということになります。譲渡に伴う周辺整備の構造改革費用に33億円掛かりました。前年は13億円でしたから、20億円ほど超過しています。その分が、この悪化の部分です。したがって、これを除くと当期は営業利益マイナス8億円。中間決算の際にマイナス8億円と言いましたが、そういう意味で、下期はほぼトントンという状況で、実質的に営業利益は推移したと理解しています。

次に、第3四半期、第4四半期比較です。TDKの第3四半期は好調で、そういう意味では、外部に発表していた目標900億円は達成できると思っていましたが、非常に厳しい状況になりました。その件について話したいと思います。結果872億円で、28億円ほど未達に終わりました。

要因の1つは、急に円高に触れたことです。第3四半期は113円で推移しましたが、第4四半期は105円。8円くらいの差があり、この為替の影響が大きかった。
電子素材部品では、第3四半期の売上高が2,178億円、第4四半期が2,019億円、159億円減っていますが、第4四半期がダウンすることは前々から想定されていたことで、第4四半期の売上の実績は、円高があったものの想定レベルを達成しています。ただし、この中にサスペンションの売上高が追加になっています。これがなければ円高で目減りした約100億円は達成できなかった。円高を克服しようとすると、物量が伸びて、操業度で効果が出てこないと厳しい。円高をカバーするほど操業度は上がらなかったことが、大きな要因となります。

それから、TOBやM&Aを比較的積極的に実施した1年だったとお伝えしましたが、買収後に含まれる無形資産の費用化。これは手続的にあるわけですが、これが17億円ありました。3月に発生しています。これは最初から想定できていたことですが、上記のような円高に加えて、円高を克服できるほど数量が伸びなかったことで、カバーできると考えていた17億円が、最後は重くのしかかってきたと認識しています。

次に貸借対照表です。総資産は9,355億円で、538億円減っています。これは、期末日レートが約18円円高に動いた結果、外貨資産の円換算影響額が697億円マイナスになっていることが大きな要因です。その中で現金及び現金同等物を見ていただくと、1,300億円現金が減っています。これを振り返ってみると、償却を上回る設備投資が130億円、マグネコンポ社の買収186億円、デンセイ・ラムダさんの100%で159億円、自己株式取得393億円、一部有価証券の取得178億円、配当金の支払い157億円。また、マグネコンポ社を買収したときに借入金がありましたが、それを返済し、内部資金に替えたということで、借入金の返済92億円。為替円高による目減りが254億円。715億円利益を稼ぎましたが、それでは追い付かなかったということで、1,300億円のマイナスになっています。

次に、資本の部のその他の包括利益を見ていただくと、637億円悪化して815億円のマイナスになっています。円高によって外貨換算調整勘定が558億円悪化して724億円のマイナス。株価が下落しているということで、有価証券未実現評価損益が32億円悪化してマイナス15億円。それから、株が下がったことで資産運用がうまくうかず、年金債務調整額が47億円悪化してマイナス76億円。この減少が、先ほど言った1株当たり純資産の減少につながっています。財務指標はだいたいどれも良い方にいっていますが、有形固定資産回転率は先期3.52が今期3.37。この期は増産投資ということで投資が先行し、それが、まだ増産、売上に結びついていない。そういう意味で、回転率が落ちているということです。

次に株主還元です。この1年間、1つは自己株式の取得償却を行いました。それが359万9,000株、392億円。配当は中間で60円、期末70円、年間を通して130円を実行させていただきました。今期は期末70円でしたから、その延長線上で中間70円、期末70円で140円を予定しています。安定的に配当を増やしていくことが基本方針になっていますので、株主への利益還元を増やせるように、この後に報告する「2009年業績見通し」の達成に最大限努力していきたいと考えます。

では、2009年3月期の連結業績見通しです。売上高8,800億円、営業利益800億円、税引前当期純利益855億円、当期純利益650億円、為替レートは100円を想定しています。  
2008年3月期と比較すると、売上高は増収ですが、営業利益以下は全部減益。当期純利益ベースでは9%の減益を予定しています。

業績見通しは、サブプライムローン問題に端を発した金融不安や、実体経済の影響の程度、資源の高騰の程度、あるいは為替変動の程度等々、予測が非常に難しい、よくわからないというのが基本的認識です。予測が難しいということは、それぞれ前提にするところが違ってくる。それによって数字が変わってくるということです。そういう意味では、予測の前提をはっきりしておかなければいけません。我々の寄って立つコンシューマーエレクトロニクス市場は、薄型テレビ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等々、これらは前期比プラス成長するという予測に立脚して、販売計画を立案しています。HDD用ヘッドは、HDD需要は堅調に伸びる、特にノートPCは2.5インチ、HDDの需要は高い伸びが期待できるという前提で販売計画を作っています。いずれにしても、前期比ほぼ115円が100円ですから、15円弱の円高。その影響を考えると非常に厳しい目標と認識していますが、その達成に向けて頑張っていきたいと思います。

その前提としての設備投資ですが、700億円を予定しています。これについては、市場の状況を見ながら、抑えるところは抑えるということも含めて考えたい。減価償却費は、先期投資したものが当初から効く分が結構あるので、770億円。研究開発費は570億円を想定して、これらを投入する結果として、8,800億円の売上を目指したい。それから、一時費用は2008年3月期が60億円でしたが、今期は47億円を想定しています。

私からは以上です。ありがとうございました。