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[ 2001年3月期 通期 連結決算説明会 ]社長挨拶

代表取締役社長 澤部 肇

代表取締役社長 澤部 肇

澤部でございます。日頃は大変お世話になり、また、本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。それではさっそく、早速弊社2001年3月期決算概要についてご報告申し上げます。

まず連結決算です。売上高は2%増の6899億円。営業利益は24.5%減益の563億円。税引前利益は12%の減益で645億円。当期純利益が13%減益の440億円でございます。一株当りの利益は330円54銭です。ROEは9.2から7.3%に下がりました。なお、当期の一般管理販売費に、記録メディア関係を主体とした生産体制変更に伴うリストラ費用31億円が含まれています。

2001年3月期ですが、携帯、IT等の情報通信市場、あるいは AVのデジタル化で、第1四半期から第3四半期までは、電子部品市場はきわめて好調でした。しかし、受注は9月をピークに、売上高は10月をピークに落ち始め、第4四半期は需要の減少、あるいはお得意様の在庫調整が重なり、急ブレーキがかかりました。
それでも、電子材料、電子デバイスの売上高は、チップコンデンサが前年比47%の伸び、高周波部品32%、あるいはインダクティブデバイスのコイル前年比49%の伸びを中心として、全体で約18%伸びて580億円増加しました。
一方、記録デバイスですが、前年比316億円、16%の減少です。記録メディアが109億円、7%減少しました。電子部品の増収とこれらの減収とを差し引きしますと連結売上高の増収は154億円、2%の微増となってしまいました。
通信と記録を本中期計画の重点分野としておりますが、通信分野は前期比30%伸びました。全社の売上高に対する構成比も11%から14%になりましたが、記録分野は対前年比7%減少しました。構成比も45%から41%に落ちてしまいました。
記録分野の売上高が減少した要因の一つは、ハードディスクドライブ用ヘッドです。その理由の一つは、技術的方向性の判断ミスによりまして、市場要求の対応が遅れました。この判断ミスはヘッド構造、あるいはMRの形状、Free層の薄膜化で出力が上げられるだろうと考えていましたが、なかなか考えていたようにいかず混乱しました。2番目は、水害等の天災が起こりました。これによる操業が、一部停止しました。
三つ目は、おごりがありました。ヘッドの面記録密度、スクエアインチあたりの上昇カーブが60%から100〜150%になったときに、こんなすごいカーブではできないだろう。私どもができないなら、他社もできないだろうというおごり。あるいは、Free層の薄膜化で出力が改善できるだろうという思い上がりがありまして、15 ギガビット/平方インチ(Gbpsi)、あるいは20 Gbpsiで、得意先の要求に応じきれず、当期は圧倒的ナンバーワンを指向したにもかかわらず、マーケットシェアは34%から31%に落ちました。
また、昨年3月に買収したヘッドウェイ社の技術が、部分的には貢献することがありましだが、いまだ全社的に貢献という形にはなっておらず、固定費の増加だけが目立ち、収益体質を悪化いたしました。
しかしながらここへきて、ヘッドウェイ社の戦力が高まってまいりました。コミュニケーションもよくなってきました。また、6月から市場導入される30 Gbpsi、それに続く40 Gbpsiで、市場での技術レベルNo.1の目途がついてきました。お得意様からそのような評価をいただきましたので、シェア拡大に自信をもっております。
一方、収益面では、これをいかに早期に歩留まりを上げていくかがキーになるわけですが、歩留まりアップの施策として、技術ロードマップの中の先端技術開発、すなわち高出力、高周波化、あるいは狭トラック化という形で、先端を走り続けるということ。そのことが、ドライブメーカーとの信頼を得て、距離を短くし、連携を強化することになります。
したがいまして、ドライブメーカーとの設計の連携、あるいはヘッドの評価技術等の共用で歩留まりアップの施策が非常に行いやすくなります。
次は、開発リードタイムの圧縮。4番目は社内の製品開発、設計、あるいはプロセス技術、設備開発等をコンカレントに推進していくことで、歩留まりアップを早期に図り、収益の改善をしていきたいと思っています。
需要はPCもサーバも伸びていますが、したがいまして、ハードディスクドライブも伸びているわけですが、ヘッドの使用数は相変わらず減少しております。ヘッドの総需要は当期も減っておりまして、当期が底になると思っています。と申しますのは、来期以降少しずつ増えだしたホームユースの新市場の増加が期待できます。いずれにしても磁気ヘッドは、この5年から7年について、まだ商品価値が十分にあると考えております。
次の減少要因である光ディスクですが、アナログからデジタルに転換していく中で、光ディスク、その中でもCD-Rを記録メディア事業の柱の一つと考えています。このCD-Rが後発国の追従がまだ先だという分析上の誤りを起こしました。これが、供給過剰から値引きにつながり、大幅な赤字となりました。デジタル製品は差別化が困難であること、あるいは製品ライフが短いために、開発から製造、販売、すべてを自社でやる事業形態は得策でないと考えました。一部の先端技術の製品を除いては外部購入をしていく形態をとることにしました。
したがいまして、余剰となりました設備の除却、あるいは人員の縮小を行いました。3月で日米のCD-Rの生産はすべて終了いたしました。なお、既存のアナログメディアについても、生産拠点の統廃合を行って、収益向上を図っております。5月末にはこうしたリストラ関係を完了いたします。当部門は前期90億円の営業赤字でしたが、当期は黒字化することを計画しております。

次に単独決算です。売上高は5.3%増の4577億円。営業利益は36.7%増の261億円。経常利益は14.6%増の501億円でした。当期純利益は64.1%減益の87億円でした。特別損益に退職給付会計基準変更にともなう移行時の差異346億円。これは信託設定益152億円を相殺した後の、特別損が含まれています。

配当について。当期末1株当りの配当金は利益処分に関する基本方針に基づきまして、1株につき30円とさせていただく予定です。これによりまして、昨年12月の中間配当30円と合わせますと、年60円となります。
単独決算の配当性向は91%と大変高率になりますが、先ほど申し上げました退職給付会計基準変更にともなう一時的な特別損失約500億円が発生したためです。連結では配当性向は18.1%、ROEは7.3%、DOEは1.3%となります。

次に2002年3月期の見通しです。まず連結ですが売上高は横ばいの6900億円をみております。営業利益は29%減益の400億円。当期純利益は35%減益の285億円を見通しております。単独の見通しですが、売上高は16%減収の3850億円。営業利益は39%減益の160億円。当期純利益は95%アップの170億円を見込んでおります。

記録メディアは、3月末で日米のCD-R生産を終了し、既存のアナログメディアであるオーディオビデオの生産拠点の統廃合も5月末に完了いたします。これにより第2四半期より黒字転換を計画しています。
記録デバイスですが、市場の回復が非常に遅れています。また、単価の引き下げ要求が厳しく、第1四半期の収益は厳しいと思いますが、記録メディア同様、第2四半期から30 Gbpsi、あるいは、それに続く40 Gbpsiの市場導入が始まり、これによるシェア拡大が十分見込まれますので、収益も徐々に回復していくと考えております。
次に電子部品ですが、PC及び携帯の在庫調整が9月ごろまで長引くと考えています。第1四半期が底で、第2四半期、第3四半期と少しずつ受注の入り具合、あるいはお得意様の反応が回復しておりますが、お得意様によって回復の状況がまだらであるのが現状です。したがって、第3、第4四半期でも前期上期レベルまで回復できるのがやっとではないかと見込んでおります。
前期並びに当期と、収益力が低下いたしました。早期になんとしても収益体質を改善しなければならないと思っています。その第一として、ハードディスクドライブ用のヘッドをローリスク・ハイリターンにしなければならない。ご承知のように、ハードディスクドライブのビジネスはハイリスク・ハイリターンでしたが、このところ、ハイリスク・ローリターンになっています。リスクを減らすために、リスクを取りにいかなければならないということで、取りにいくことによって、マーケットにおけるポジションを強いものにすることがリスクを少なくすることだと考えていますが、そのためには、今のタイプ、次のタイプ、その次のタイプと勝ち続けなければそのポジションは取れません。したがいまして、人、あるいは資金を投入し続けなければならないわけですが、先行きの価格の低下等を考えますと、相当効率的な形で投入を図っていかなければなりません。同時に、早期の歩留まりの向上で収益をバックアップしなければならないために、なんとしても、先端技術で勝っていかなければならない。それによって勝つことが、後ほど、この方向については橋本からご報告いたしますが、どのような形でトップを維持していくかということになりますが、維持することによって得意先、あるいは他の部材メーカーとの連携がより濃くなり、情報が濃くなってくると思います。同時に、このたび生産開発技術センターを設けました。そこでプロセス技術、あるいは設備開発等を行っていくわけですが、そういった部門と開発、あるいは設計機能のコンカレントな活用を図っていかなければならないと思っています。

2番目はチップコイル、あるいはインダクティブコイルなど、DC-DCコンバータ等のキャッシュカウの電子部品商品で、しっかりとキャッシュを稼がなければいけません。これは我々の得意分野ですが、中には競合会社にとられている部分もございます。これを取り戻す。
これらの製品はますます、小型、高性能、多層化が要求されてくるわけですが、私ども、テープで培ってまいりました塗布技術、薄膜多層技術、あるいはバインダー等の有機材料技術をコアコンピタンスとして、これを生かしながら生産技術的、開発的にも強いポジションをとってまいります。

3番目は、記録メディアビジネスを早期に、資本コストを上回る収益体質にしなければなりません。これにつきましても、後ほど担当常務からご報告させていただきます。
当期は市場の低迷、お得意様の在庫調整が長期化するなど、非常に厳しい期であると認識しておりますが、この厳しさを、全社を引き締め、あるいは危機意識を高める好機と考えております。分岐点の引き下げ、あるいは開発のリードタイム短縮等々に力を入れて、収益構造を来期に向けてきっちり改善していく期と認識しておりますので、引き続き、皆様のご指導、ご支援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。