

【Sustainability and TDK】
TDKは、なぜ気候変動対策に本気で取り組むのか(前編)
気温の上昇や豪雨、台風などが多発するなど、世界各地で異常気象の報告が相次ぎ、温暖化をはじめとする気候変動に対する危機感が高まっています。この危機の原因となっているのが、CO₂を中心とする温室効果ガスの世界的な増加です。TDKは、原材料の使用から製品の使用・廃棄に至る、ライフサイクル的視点での環境負荷の削減に取り組んでいます。この記事では、気候変動問題をめぐる世界の動向とTDKの気候変動対策について2回にわたってご紹介します。

TDKでは、中期経営計画「Value Creation 2023」において、「Social Value」(社会的価値)をはじめとした価値の創造に取り組み、事業を通じてSDGsに掲げられた地球規模の課題解決に貢献することで、企業価値向上を目指しています。
▶TDKグループのSDGsへの取り組み
世界的な温暖化とCO₂排出量の関係
18世紀後半の産業革命以来、私たち人間はエネルギー源として化石燃料を使用するようになり、全世界のCO₂排出量は過去40年で約2倍に増加しました。先進国の経済成長を支えるエネルギー源として長年依存してきた石炭、石油、天然ガスは、現在では地球にとって重い負担となりつつあります。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「人間の活動が地球温暖化の主要な原因である」と指摘しています。温暖化は気温上昇だけでなく、豪雨、森林火災、干ばつ、低温などの異常気象を引き起こし、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。
世界のCO₂排出量と平均気温の推移

(出典:Global Carbon ProjectとIPCC第6次評価報告書資料をもとに独自作成)
世界的な社会課題となっている温暖化に対処するため、国際社会の動きも進んでいます。2015年12月にフランス・パリで開催された、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)では「パリ協定」が採択されました。この協定は、すべての締約国が産業革命以降の気温上昇を2℃以下に抑え、21世紀後半までに低炭素社会を実現することを目指すものです。日本政府も「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、グリーン成長戦略の策定や、再生可能エネルギーの導入を推進しています。
産業活動におけるCO₂削減の重要性
温暖化対策においては、政府による取り組みだけでなく、産業界の役割も非常に重要です。CO₂を含む温室効果ガスは、産業部門からの排出がもっとも多く、日本国内の排出量の約35%を占めています(※出典:環境省「2021年度温室効果ガス排出・吸収量」より)。とくに製造業では、製造の際だけでなく輸送・物流においてもトラックや飛行機を利用するなど、業務において大量の化石燃料を使用します。また、廃棄物の処理過程においてもエネルギーを大量に消費します。TDKを含む製造業では、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの導入、省エネ技術の開発などを通じて、積極的にCO₂排出量を削減することが求められています。

TDKのCO₂排出削減への取り組み

TDKでは、2035年までにライフサイクル視点でのCO₂排出原単位*1を半減(基準年2014年度)させることを目指し、2016年に「TDK環境ビジョン2035」を策定しました。また2050年までに「CO₂排出ネットゼロ実現」するという目標を掲げ、さまざまな取り組みを進めています。以下にその具体的な取り組みを紹介します。
●生産拠点
TDKは、「エネルギーの有効利用」と「再生可能エネルギーの利用拡大」の観点から、生産拠点でのCO₂排出量削減に取り組んでいます。TDKのマテリアリティである「2050年CO₂ネットゼロに向けたエネルギーの有効利用と再生可能エネルギーの利用拡大」を軸に、グループ横断的な生産活動に密着した削減活動を推進しています。
●Scope3カテゴリー別取り組みによるCO₂排出量削減
TDKでは、自社が直接排出した温室効果ガス(Scope1)や、事業活動におけるエネルギー使用にともなう間接的な排出(Scope2)だけでなく、サプライヤーやTDKの製品使用者による排出(Scope3)も含めたカテゴリー別取り組みによる環境負荷低減を推進しています*2。サーキュラーエコノミーを目指す低環境負荷材料を使用したモノづくりの推進や、輸送・物流時におけるCO₂削減、また、TDKの電子部品が最終的な製品の省エネにどのくらい貢献しているかを可視化する「製品貢献量」の算定対象製品の拡大を進めています。

2050年のCO₂ネットゼロ実現を目指して

安全環境グループGM
Jason Mizell
TDKでは、再生可能エネルギーの導入やエネルギー使用量の低減を通じて、気候変動対策を進めています。グループ全体での再生可能エネルギーの導入を推進する、サステナビリティ推進本部、安全環境グループGMのJason Mizellは、次のように語ります。「TDKは、未来の世代のための投資を行っています。温室効果ガスの排出量を削減し、気候変動や環境への影響を低減していきます。事業を通じてサーキュラーエコノミー活動を実践し、世界におけるサステナビリティの先進的企業になることを目指します」。
TDKは、社長を環境マネジメントシステム(Environmental Management System:EMS)の最高責任者とする統合的な体制で事業活動を行っています。また、従業員一人ひとりが、サプライチェーン全体の視点でCO₂排出量削減に目標をもって取り組むことで、2035年でのCO₂排出原単位の半減達成、そして2050年のCO₂ネットゼロ実現を目指しています。一つひとつの取り組みを着実に積み重ねていくことで、気候変動という大きな問題の解決に貢献していきます。
TDKのサステナビリティ
用語解説
- CO₂排出原単位:企業の活動によって排出されるCO₂の量をさまざまな単位あたりで測定したもの。TDKは売上高あたりのCO₂排出原単位をもとに削減目標を掲げています。
- Scope1, 2, 3:事業活動に関係する温室効果ガスの排出を1~3のカテゴリで分類したもの。Scope1=自社での燃料の使用や工業プロセスによる直接的な排出。Scope2=自社が購入した電気、熱などの使用に伴う間接的な排出。Scope3=Scope1, 2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)。