世界中で建設が進む洋上風力発電とは
大きな羽根で風を受け、ローターを回転させて発電を行う風力発電。化石燃料を使わず、排気ガスも出ないクリーンエネルギーとして、各国で普及が進んでいます。日本と比べて風況の良い(風の強い)ヨーロッパでは、風力発電が再生可能エネルギーの主力となっており、大型の風車を数基~数十基設置した大規模な発電施設「ウインドファーム」も数多く建設されています。近年では、陸上よりも安定して風力を得られ、大型の発電機を設置できることから、海上に設置される「洋上風力発電」の普及が拡大しています。
日本政府が2020年に発表した「グリーン成長戦略*2」では、2050年のカーボンニュートラルを実現するために、洋上風力発電が重要産業分野のひとつに挙げられています。2040年までに最大で4,500万キロワット(原子力発電所45基分)の電力を洋上風力発電によってまかなうことが目標に掲げられています。
2021年12月には、秋田県由利本荘市沖、能代市、三種町及び男鹿市沖や千葉県銚子市沖など国内3つの海域での大規模な洋上風力発電事業を行う事業者として、三菱商事エナジーソリューションズ株式会社を代表企業とするコンソーシアムが選定されました。この事業は、国内初の着床式洋上風力発電*3として、3海域で合計出力170万キロワットという大規模な計画となっており、国内外の注目を集めています。
日本での洋上風力発電の市場は、今後もこれらの政策を追い風に成長を続け、2030年度には約9,200億円の大きな市場となることが予測されています*。
風力発電の効率を高めるカギとなるマグネット
風力発電機の構造はとてもシンプルです。高い支柱(タワー)に支えられた風車の羽根(ブレード)が風を受けて回転し、その回転軸が発電機を回すことで発電を行います。発電機は回転軸の後部にある、「ナセル」と呼ばれる装置の内部に搭載されています。ナセルでは、発電機を高速で回転させることにより電力を発生させます。出力10万キロワットを超える大型の風力発電機では、支柱の高さは約150m以上、回転するブレードの直径は約200mを超える巨大な建造物となっています。
風力発電機の発電効率を高めるために重要となるのが、マグネットの性能です。発電機に搭載されたマグネットが強力であるほど出力を上げることができるため、風力発電機にはEV(電気自動車)の駆動モータにも使われる、強力なネオジムマグネットが採用されています。
風力発電機を支えるTDKのマグネット
TDKでは、創業以来蓄積してきた磁石の素材技術や製造技術など、独自のコアテクノロジーを活かして、世界最高レベルの残留磁束密度と保磁力を持ったネオジムマグネットの製造を行っています。家電や電子機器などに用いられる小型のマグネットと異なり、風力発電機には大型かつ強力なマグネットが採用されており、発電機一基に搭載されるマグネットの重量は、5トン以上もの大きさになります。
TDKは、風力発電機向けのマグネットの製造に早くから取り組み、2010年ごろから国内外の風力発電機向けに豊富な納入実績があります。今後、クリーンエネルギーである風力発電の重要性がますます高まっていくなか、TDKはマグネットの性能をさらに高めることで、より発電効率の高い発電機の実現を支えていきます。脱炭素社会の実現という大きな目標に向けて、TDKは独自のテクノロジーを通じて貢献していきます。
用語解説
- カーボンニュートラル:二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成すること。
- グリーン成長戦略: 2050年のカーボンニュートラル実現のために、民間企業のイノベーションを促し、新時代に向けた挑戦を応援するため、経済産業省によって策定された成長戦略。
- 着床式洋上風力発電:洋上風力発電のひとつで、風車を支える基礎を海底に固定するもの。水深が50mを超える海域では、浮体式の構造物に風車を設置する、浮体式洋上風力発電が用いられることが多い。