

TDKのDE&I:前編
ダイバーシティ(多様性)が、
未来を創るチカラになる
TDKでは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)(DE&I)を、イノベーションの原動力、変革の推進力、そして持続可能性を支える戦略的な要素と位置付けています。多様なチームメンバーと彼らの豊富な経験、視点、スキルを受け入れることで、TDKは事業パフォーマンスを大きく向上させ、エレクトロニクスおよびテクノロジー分野でのグローバルなプレゼンスを強化していきます。

TDKがダイバーシティを重視する意義とは
PT.TDK Electronics Indonesia チームメンバー同士のコラボレーション
TDKのDE&Iへの取り組みは、長期ビジョン「TDK Transformation ~サステナブルな未来のために、TDKは変わり続ける~」と直接的に結びついています。このビジョンでは、TDKが多様性と才能溢れるチームメンバーが相乗的かつ中核的な役割を果たし、グローバルな課題に対応する持続可能なソリューションを創出し、テクノロジーを通じて社会の発展を加速させることを目指しています。
しかし、社会全体と同様に、TDKもまた、真の未来創造力を育むためには、効果的なインクルーシブ・リーダーシップの確立が不可欠であると認識しています。TDKの人財本部でダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの責任者を務めるジェイ・セバスチャンは、「私たちの使命は、多様性を重視し、インクルーシブ・リーダーシップを推進する企業文化を育成し、すべてのチームメンバーが価値を認められ、受け入れられていると実感できる企業文化を育むことです」と述べています。
「TDK United」— 価値創造とチームワークの融合
1935年に日本で創業したTDKは、現在では世界30カ国以上、250を超える拠点で10万人以上のチームメンバーを擁するグローバル企業へと成長しました(2024年度末時点)。これまで世界中の多数の企業を買収してきたTDKは、現在、売上および従業員の約90%が日本以外という巨大な多国籍企業となっています。そんなTDKの課題は、多様な人材を共通のビジョンのもとで協力し合うグループとして、いかにまとめあげていくかということです。
主な多角化の歴史

TDK株式会社の社長執行役員CEO齋藤昇は、「世界中のチームメンバーとのチームワークで価値を創出する個性あふれる融合体『TDK United』がTDKの最大の強みであり、原動力です」と語ります。
まるでジャズバンドが個々のスキルと視点を融合させて音楽を生み出すように、「TDK United」は多様なチームが相互理解を深めながら、チームワークで価値を創出する融合体となっています。

エンパワーメント&トランスペアレンシーの重要性
TDKにおいて、エンパワーメント(権限委譲)とトランスペアレンシー(透明性の確保)は、活気ある組織文化を育み、持続的な成長を実現するために欠かせない要素です。TDKでは、すべてのレベルの従業員が自らの役割に責任を持ち、十分な情報に基づいて意思決定を行い、会社全体の成功に貢献できるようサポートしています。
チームメンバーが主体的に影響を与えられる環境を整えることで、TDKは社員一人ひとりの可能性を引き出し、信頼と責任感に満ちた企業文化を築いています。従業員が自身の業務や意思決定に対して主体性を感じることで、モチベーションとエンゲージメントが高まり、生産性や満足度の向上、さらにはビジネス成果の向上につながります。
次世代の多様なリーダーシップの育成と研修
組織の能力と効率性の向上も、TDKの長期ビジョン達成には欠かせません。特に、あらゆるレベルの人材プールから未来のリーダー候補を育成することは、TDKの重要な取り組みのひとつです。TDKでは、優れた人材を発掘・育成するための包括的なプログラムの一環として、エントリーレベルからエグゼクティブレベルに至るまで、さまざまな管理職向け研修プログラムをグローバルに提供しています。
「2018年より、ジュニアリーダーシップからコーポレートオフィサーレベルまで、4つのグローバルリーダーシップ&マネジメントプログラムを提供してきました。これらのプログラムの目的は、リーダーシップとマネジメント能力の向上、未来に備えたリーダーの育成、そして強力な人材パイプラインの構築です。私たちはグローバルなコンピテンシーを取り入れ、DE&Iチームと協力しながら、プログラム設計にインクルーシブ・リーダーシップの実践を組み込んでいます」。TDKの人財本部グローバル部門の人材育成副責任者であるカリーヌ・ル・エジェは、このように述べています。
TDKの人材育成プログラム

また、カリーヌは、TDKのグローバルトレーニングプログラムと将来の成功における多様性の重要性についてこう言及しました。「教育、所蔵部門、思考スタイル、ジェンダーなど、あらゆる種類の多様性が、高いパフォーマンスを発揮するチームの刺激剤となります。それは、プログラム参加者にとっても貴重な学習体験となります。そのため、私たちは参加者の多様性を継続的にモニタリングしています。例えば、ジェンダーダイバーシティへの意識を高めるため、過去のデータを活用し、選考時に男女を平等に評価するよう指導しています。また、すべてのプログラムにインクルーシブ・リーダーシップの実践を組み込み、TDKのリーダーシップチーム全体に良い習慣を広めています」。

2023年11月 GMP研修で異文化理解研修を受けるTDKチームメンバー
「GMPでは海外のいろんな拠点を回って研修を受けました。スイス、アメリカ、ドイツ、中国、インドネシアを訪れ、最終的に日本に集合しました。たくさんのことを見て吸収して、グループの中の友達をたくさん作りたいと思って臨みました。研修の中のグループワークでは、まったく異なる業種やバックグラウンドを持つ人と議論し、お互いの意見を尊重して結論を出さなくてはいけません。しかもそれを全部英語でやるので、大きなチャレンジであると同時に、いい経験になりました」。東京本社のコーポレートマーケティング&インキュベーション本部に所属し、グローバルマネジメントプログラム(GMP)に参加した船津浩子は、その経験についてこのように語りました。
「TCDPは素晴らしい旅となりました。このプログラムでは、ヨーロッパ各地のTDK拠点から集まった28人の優秀なメンバーたちとネットワークを築くことができました。異なる役職や勤務地の人々と経験を共有する機会は非常に貴重でした。高いモチベーションを持ったメンバーと一緒にプロジェクトに取り組み、アイデアを自由に表現できる、開かれた環境があったことで特別な経験となりました」。
TDKのグループ会社TDK Electronicsで強磁性複合材料開発の責任者を務め、チェコ共和国からTDCPに参加したピーター・コンラッドは、このように語りました。

2023年9月、ヨーロッパで開催されたTCDPに参加したチームメンバー
インクルーシブ・リーダーシップ:TDKのビジョンの礎
TDKの長期ビジョンの中核であり、人財戦略の重要な施策のひとつとして、2023年に設立されたDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)チームは、すべての業務に「包括性」が組み込まれるよう取り組んでいます。この考え方は、TDKの組織運営の基盤を形成しています。インクルーシブ・リーダーシップとは、「リーダーが多様なスキルと能力を組み合わせることで、一人ひとりのメンバーが組織に所属意識を持ち、ありのままの自分を最大限活かして、貢献できるような環境を生み出す」ものです。
2022年、ヨーロッパで開催されたTCDPの講習風景
この指針に基づき、TDKにおけるDE&Iは、長期的な成功へと道を開くために次のような3つのAに基づき施策を推進しています。
●AWARENESS(認識):ダイバーシティとインクルーシブ・リーダーシップの重要性についての認識を高める。
●ACTION (行動):インクルーシブ・リーダーシップの模範となり、それを実践する文化を育成する。
●ACCOUNTABILITY(説明責任):進捗を測定し、DE&Iの成果に対する責任を果たす。
DE&Iの主な成果と今後の展望
2025年にかけて、TDKのDE&Iチームは、ダイバーシティ推進のさらなる拡大を目指し、以下の3つの主要テーマに注力します。1つ目が「DE&Iの推進」 女性やLGBTQ+を含むすべてのチームメンバーの積極的な参加を支援する施策を実施。2つ目が「リーダーの育成」 革新的な研修プログラムを通じて、イノベーションとビジネスの成功を促進します。そして3つ目が「エンゲージメントの向上」 インクルーシブ・リーダーシップ、オープンなコミュニケーション、リーダーシップの説明責任を通じてチームの結束を強化していきます。
これまでのTDKでのDE&Iの主な取り組み

未来に向けて
TDKにおける多様性は、イノベーションと変革を推進し、より公平な未来を創る力となります。多様性を尊重することで、TDKはダイナミックで活力のある労働力を創出し、サステナブルな社会に長期的なインパクトを与えます。
前述のカリーヌ・ル・エジェは次のように述べています。「TDKのチームメンバーの多様性は、確かな強みである一方で、共通の理解と合意に至るまでに様々な異なる視点に向き合わなくてはならない、というチャレンジをもたらします。しかし、それは非常に価値のある学びの大きい道のりでもあるのです」。
多様で包括的な企業文化によって、TDKに独自の競争優位性がもたらされ、生産性、創造性、ビジネス成果の向上につながります。TDKにとって、ダイバーシティは単なる価値観ではなく、テクノロジー、イノベーション、サステナビリティの分野でリーダーであり続けるための強みなのです。
後編では、女性のリーダーシップの観点からTDKのダイバーシティについて検証します。
