0.1mm以下の金属さえも見逃さない、小型・高性能磁気センサの実力とは?
モノづくりの現場において、高品質な製品を安定して製造するためには、原材料から品質管理を徹底し、微小異物の混入を防ぐことが重要です。各種製品の工場ではこれまで、目に見えない極小の異物を取り除くため、さまざまな検査方法やセンサを活用してきました。TDKはHDDヘッドの製造で培った技術を応用することで、わずか0.1mmにも満たない小さな金属片を検知できる、高感度・小型磁気センサを新開発しました。
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製造現場における異物検査の重要性とは?
医薬品や化粧品、化学工業製品などの製造現場では、製品の品質を高めるため、目に見える異物はもちろん、目に見えないほど微細な異物の付着や混入に細心の注意が払われています。例えば、スマホやPCに使われるリチウムイオン電池の材料に微小異物が混入すると、発熱や発火、電池容量の低下の原因となる場合があるなど、わずかな異物が私たちの生活に重大な結果を招くこともあります。
微小異物を検出する方法は多岐にわたります。カメラやイメージセンサを使う検査は、画像処理技術の進化やAI技術とも融合することでますます高度化しています。しかし、光学式の検査では物の表面にある異物しか検出できないのが難点です。また、超音波を使った検査では物の内部を調べることができますが、検出の分解能がmm単位にとどまり、より小さな異物の検出が困難という課題があります。
現在、微小異物検査に多く使われているのはX線検査機です。検査対象にX線を照射することで、表面や内部の異物をスピーディに検出できます。金属をはじめ、ガラス、ゴム、プラスチックなどの非金属も検出可能ですが、検出できる異物の大きさは、数百µm(=0.数mm)程度が限界のため、より高度で高品質な製品の製造のために、100µm(=0.1mm)よりも小さな異物を検出できるセンサへのニーズはますます高まっています。
鉄やステンレス鋼の検出のニーズ
現在、製造現場で検出対象としてのニーズが拡大しているのは、200µm(=0.2mm)以下の鉄やステンレスなどの細粉(パーティクル)です。金属のなかでもアルミニウムや銅などの非磁性金属は粘性が高く微粒子になりにくいため、工場のクリーン度を高めることで外部からの混入を防ぐことができます。しかし、鉄やステンレスは生産設備の材質にも使われており、機械が稼働することで細粉が発生してしまうために混入を避けることは困難でした。
そんな課題を解決し、金属異物検出のニーズに応えるためにTDKが開発したのが磁気センサ「Nivio」をベースにしたxMR*1タイプの磁気センサ「Migne (ミグネ)xMRセンサ」です。磁気センサNivio に比べて、微小磁界に対するS/N比(信号/ノイズ比) を高めつつ、8×8×5mmという、指先に乗るほどの小型・薄型化を実現しました。
磁性粒子の磁気を鮮やかに映し出すTDKの高感度磁気センサ
製造ラインにおける金属異物検出のシステムは次のようになります。製造装置の摩耗や剥離などで発生した鉄やステンレスなどの金属細粉が、被検査物に混入します。検査装置では、被検査物を含めて強力なマグネットで着磁を行います。その後、金属異物が発する磁気を金属センサで検出します。
着磁された金属微粒子は、N極とS極をもつ微小な磁石となり、Migne xMRセンサでスキャンすると磁力線の吹き出し方向と引き込み方向が、赤色と青色で表示され、磁化した金属異物を検出することができます。
製造現場だけではない応用にも
Migne xMRセンサは、小型のセンサ部品を複数配置してアレイ化することで、より広範囲にわたって異物検出が可能になります。高度な異物検査が求められる医薬品メーカー、化学工業品メーカーで主流となっているX線検査機の課題を解決し、製品の品質や安全性の向上、不良品の低減などに役立てることができます。
Migne xMRセンサは、異物検査以外にも、その他の微小磁界検出用途でも、すぐれたパフォーマンスを発揮します。物の内部の状態を壊すことなく検査する「非破壊探傷検査」や、医療分野では画像診断技術である「磁気粒子イメージング装置」などへの応用も期待されています。小型・高精度のTDKのxMRセンサから、さまざまな可能性が大きく広がっていきます。
詳細はCEATEC WEBサイトをご覧ください。10月31日までご覧いただけます。
用語解説
- xMRセンサ:磁界によって電気抵抗が変化する磁気抵抗効果(Magnetoresistance)を利用して、磁場の大きさを計測することを目的とした磁気センサ。