

最新のセンサ技術が可能にする、
「ヒアラブル端末」の新体験
「ヒアラブル端末(スマートヒアラブル)」や、「完全ワイヤレスステレオ(TWS:True Wireless Stereo)」の技術は目覚ましい進化を遂げ、人と機械、そして世界との関わり方を大きく変えようとしています。高性能マイクロプロセッサや様々なセンサを内蔵したヒアラブル端末は、音楽を楽しむだけでなく、没入感あふれるサラウンド体験を提供します。技術の進歩にともないTWSデバイスは、お気に入りの音楽やポッドキャストを聴いたり、映画やゲームを楽しんだり、メタバース空間で交流したり、スマートフォンで通話したりと、あらゆるシーンで総合的な「聴く体験」を提供する、スマートデバイスへと進化しています。

ますます広がるヒアラブル端末の価値
ヒアラブル端末によって、ユーザーはスマートフォンやタブレット、その他スマートデバイスとシームレスにつながっています。例えば、デバイスを直接操作しなくても、電話の発信や着信、音声アシスタントの利用、音楽の再生が可能になりました。マルチタスクが当たり前となった現代のライフスタイルに最適な技術と言えます。
また、高度なセンサ技術によって、周囲の環境や好みに合わせてオーディオ出力をカスタマイズすることで、大迫力サウンドやノイズキャンセリング、ハンズフリー操作など、自分だけのオーディオ体験も可能になっています。センサチップ上での機械学習や、環境に最適化したオーディオ調整機能により、騒がしいレストランや大音量のコンサートホール、静かな部屋など、あらゆる環境で最適なリスニング体験を実現できます。
さらに、様々なセンサによって、心拍数や血圧、歩数など生体情報や健康状態のモニタリングに加え、異常姿勢や転倒の検知もできるようになりました。このような背景から、将来ヒアラブル端末を利用する機会は、他のウェアラブルデバイスをさらに上回るものと予想されています。

ヒアラブル端末の進化を支えるTDKのセンシングソリューション
TDKは、最先端のセンサソリューションとオンチップのソフトウェアを組み合わせた、InvenSense 「VibeSense360™」を開発しました。VibeSens360は空間オーディオやアクティブノイズキャンセリング、センサによる音声認識などの機能を進化させ、ユーザーにとって真の没入体験を可能にします。
エッジでの音声処理を可能にする機械学習機能「SmartEdgeML™」
エッジ向けマイクロプロセッサ技術の進歩は、ウェアラブルデバイスに大きな変革をもたらしています。常時ネットワークに接続し、常時電源がオンになることで、センサはデバイスを装着するユーザーの動きや行動を常に認識し、生のデータソースとして重要な役割を担うようになり、ユーザーの生活の質を向上させます。
TDKのグループ会社であるInvenSenseが開発したMEMSセンサは、わずか2.5x3mmの小さなチップ上で、複雑な推論と処理が可能になるなど、飛躍的な進化を遂げています。これらのモーションセンサには、優れた処理能力を発揮し、常時オンでエッジ処理できる機械学習対応のモーションプロセッサが搭載されています。このエッジ技術のおかげで、スマートイヤホンなどのデバイスがセンサ上で基本的な機械学習の演算を実行できるようになりました。データ処理をマイクロプロセッサやクラウドに頼る必要がなくなり、バッテリ消費を大幅に抑えることが可能になりました。
「消費電力」という難題の解決に向けて
現代のコンピュータ技術における大きな課題のひとつに消費電力が挙げられますが、チップ上で動作するエッジコンピューティング技術は、データ処理の負荷をクラウドから末端(エッジ)にあるデバイスに移行できるため、消費電力の問題解決に向けて確かな一歩になると期待されています。
InvenSenseでプロダクトマーケティングディレクターを務める、Sahil Choudharyは、次のように説明します。「例えば、TWSスピーカーのメーカーが、機械学習を使って人の頭の動きを検出する機能をエッジデバイスで実装したいとします。その際、InvenSenseが提供するMEMSセンサを使えば、処理システム全体を起動させることなく、ローカルかつ効率的な処理が可能です。学習済みのモデルは、センサ上でわずか30マイクロアンペア未満の電力で動作します。当社のテクノロジーにより、機械学習がプロセッサやクラウドではなく、センサ上で直接行えるため、消費電力を大幅に削減できるのです」。
この手法では、デバイスとクラウド間のデータ通信を大きく減らせるので、消費電力と処理時間の削減に直結します。さらに、デバイス内のチップに高度な処理能力を直接組み込むことで、クラウドコンピューティングに起因する遅延なしに、リアルタイムのデータ分析と意思決定が可能になります。
大規模なプロセッサやリモートサーバへの依存が最小限に抑えられることで、バッテリの節約だけでなく、プライバシーとセキュリティのも強化されます。センサ上で動作するエッジ技術は、ヒアラブル端末に限らず、あらゆるIoTデバイス、スマートセンサ、モバイル機器の省電力化と効率的な動作をサポートし、より環境に優しく自律的なデジタルインフラの実現に貢献します。
このようなエッジでのデータ処理というパラダイムシフトは、ますます接続が進むIoT時代のエネルギー需要対策として有望なだけでなく、レスポンス改善、信頼性向上、さらには環境負荷の低減にも一役買うことになるでしょう。

ヒアラブル端末向けセンサ技術がもたらすもの
現在、ヒアラブル端末は、音楽や映像などのエンターテインメントからビジネスシーンまで、あらゆる場面で活躍しています。VibeSense360は、モーションセンサ技術の3つの要素により、デバイスと周囲の世界とのつながりを飛躍的に高めます。
1. 頭の向きに連動する空間オーディオ

空間オーディオ用の最新の6軸センサは、周囲の環境を3次元の音響空間として再現し、オーディオ体験にかつてない臨場感をもたらします。ヘッドフォンやヒアラブル端末、AR/VRヘッドセットなどに搭載されたセンサは、頭の動きと向きを検出し、リアルタイムでオーディオ出力を調整します。
この技術は、加速度センサとジャイロセンサ、そしてヘッドトラッキング用のアルゴリズムを組み合わせることで、聴く人の頭の動きを正確に捉えます。これにより、音が一方的に聞こえるのではなく、聴く人に追従するようになります。まるでその場にいるかのような立体的なオーディオ体験を生み出します。
この画期的な技術は、映画やゲームなどのエンターテインメント体験を向上させるだけでなく、メタバースなどの仮想現実(VR)や拡張現実(AR)にも新たな可能性を拓きます。よりリアルで没入感の高いユーザー体験の実現に貢献します。
2. 声を検知してノイズキャンセリングする「Transparency for Talk」
VibeSense360の各種センサは、イヤホンの使用に伴う煩わしさを軽減し、真の没入感を提供します。骨伝導センシング技術により、VibeSense360は、ユーザーの声の振動を検出し、ノイズキャンセリングを自動でオフし、外の音が聞こえるトランスペアレンシーモードに切り替えることで、状況に応じた最適な調整を可能にします。
例えば、音楽を聴いているときに電話がかかってきた場合、VibeSense360が発声特有の振動を検知し、自動で音楽を一時停止するよう端末に信号を送ります。イヤホンをタップしたり、パーソナルアシスタント機能に指示したりする必要はありません。


3. 直感的な操作を可能にするジェスチャー認識
イヤホンに搭載されたジェスチャー認識センサにより、ハンズフリーでの操作性とアクセシビリティー(誰にでも使えること)が飛躍的に向上します。わずかな頭の動きや向きの変化を検出し、特定のジェスチャーをコマンドに割り当てることで、ユーザーは触れることなくデバイスを操作できます。
例えば、頭を左に傾けると再生または一時停止、右に傾けると曲のスキップや電話の着信拒否などです。使い勝手が良いだけでなく、SmartEdgeMLによって、ユーザー好みのカスタマイズも可能です。また、身体に障害がある人や、運動中、料理中などハンズフリー操作が必要なシーンでも役立ちます。
動きを正確に検知し、シームレスなユーザー体験を実現するには、センサの精度と応答性が重要です。これらの技術の進化は、私たちとデバイスとの関わり方を大きく変える可能性を秘めています。より直感的で自然な動作でデバイスを操作できるようになる日も近いかもしれません。
TWS向けセンシングソリューションの未来
VibeSense360のスマートセンシング技術をTWSに搭載することは、オーディオ技術と家電製品におけるOEM(相手先商標製造業者)にも大きなメリットをもたらします。
より直感的でスムーズな操作性、バッテリ寿命の大幅な改善、多彩な機能などのTWSデバイスの進化をもたらし、パートナー企業にとっては、競争の激しい市場において差別化を図り、よりパーソナライズされた革新的な製品を生み出すことができる機会を創出します。
今後、スマートセンシングソリューションは、ユーザーに大きな可能性を提供しながら、間違いなくパーソナルオーディオの未来をつくる重要な鍵となるでしょう。TDKは、これらの技術を責任を持って創造的に活用し、世界中のユーザーの多様なニーズに応え続けていきたいと考えています。
