

【Sustainability and TDK】
CO₂排出量削減を目指す、生産拠点での取り組みとは?


脱炭素社会の実現に向けて、二酸化炭素(CO₂)の排出削減がこれまで以上に求められているなか、製造業においては、生産効率を高めたり、再生可能エネルギーによる電力を導入したりするなど、生産拠点におけるCO2排出削減への取り組みが重要となっています。TDKは生産拠点におけるエネルギー起源のCO₂排出を主要な環境負荷と認識し、世界中で積極的な削減活動を進めています。モノづくりの最前線で行っている代表的な環境活動をレポートします。

中国/ Amperex Technology Limited (ATL)
脱炭素を目指し、一丸となってグリーンファクトリー化を推進
TDKのグループ会社であるATL(Amperex Technology Limited)(中国)は、スマートフォン用バッテリの開発・製造で、世界ナンバー1のシェアを誇るリチウムイオン電池メーカーです。スマートフォン以外にも、ウェアラブル機器やIoTデバイス、ドローンや電動二輪車、家庭用蓄電システムなどで、ATLのリチウムイオン電池は世界中で活躍しています。
[写真:ATLの主要工場である寧徳工場(福建省)]

ATLは、全工場で横断的に省エネ活動を行う「省エネルギー委員会」を設置して環境活動に取り組んでいます。2016年より“全社を挙げて、高効率でエネルギー消費の少ないグリーンファクトリーの実現”というエネルギー方針を掲げ、2017年7月にエネルギー・マネジメント・システムに関する国際規格“ISO50001”を取得しました。そして、2020年度は生産設備の改善による効率化の活動が、TDKグループ内で生産拠点の安全・環境への取り組みを評価する「EHS(Environment, Health and Safety) Performance Award」において、とくに優れた工場として表彰を受けました。
ATLは世界有数のリチウムイオン電池メーカーであり、その生産数は膨大な数にのぼります。そのため、生産能力が飽和状態になると省エネプロジェクトの進捗管理が煩雑になっていました。また、リチウムイオン電池は新しい技術であり、省エネに関する技術ノウハウが少ないことも課題でした。しかし、こうした状況においても、生産能力を落とすことなく、設備の効率化の改善を進めることで、CO₂排出原単位の目標を達成しました。これは、全工場を挙げて専門の技術チームを結成するなどの人的/財源支援を行って、グリーンファクトリーの実現に注力したことによるものです。
今後ATLでは、生産拠点でのさらなる再生可能エネルギーの導入拡大や固形廃棄物の削減・再利用・リサイクルなどの新たな環境活動を実施する予定です。世界をリードするリチウムイオン電池メーカーとして、さらなるCO₂排出削減を目指しています。
生産設備の改善による高効率化の一例


日本/ TDK 三隈川工場
モノづくりの見える化を通じて、省エネ化とコスト削減を実現
TDK三隈川工場は1982年、ビデオテープの量産を目的に建設されました。以来、ベースフィルムに均一な薄膜を形成する薄膜塗布技術をコアテクノロジーとし、現在では積層セラミックコンデンサなどの製造工程で主要部材として使用されるフィルムや調光フィルムなどの電極用途に使われる低抵抗な透明導電フィルムなどを主力製品として生産しています。
三隈川工場の環境活動の特長は、CO₂、水の使用量、廃棄物を効果的に削減したことです。すべての生産プロセスにおける活動を意識的にリンクさせることで、改善をはかりました。なかでもCO₂削減活動では、エネルギー使用量が多い“空調”を、生産のない時に空調機の停止または風量低減を実施することで、生産活動に支障をきたすことなく、使用量低減と同時にコスト削減に成功しました。コスト削減の結果は、効果金額を毎月、関係者へ報告して見える化し、モチベーションアップにつなげています。
この活動を支えているのが「JABRO」と呼ばれるシステムの存在です。JABROとは、三隈川工場で進めているDX推進活動であり、テクノロジーを利用し、サービス及び生産性向上を目指すためのプラットフォームです。製造工程に膨大な量のセンサを設置することで、全長監視を実現しました。例えば、クリーンルームでは、温度や湿度、ダストの量などをモニタリングでき、わずかな変化が一目で分かります。このJABROのモニタリングシステムや蓄積されたデータを応用することで、効果的な空調調整を実現しました。
今後も三隈川工場では、環境価値と経済効率を高めながら、高品質なモノづくりを追求していきます。
空調機の最適化を実施


スペイン/ TDK Electronics マラガ工場
再生可能エネルギー100%の生産で、カーボンニュートラル実現を目指す
TDKのグループ会社であるTDK Electronicsのマラガ工場(スペイン)は、再生可能エネルギー発電設備や鉄道、産業機器等で使用されるパワーコンデンサの開発・製造拠点です。パワーコンデンサは、高電力の機器や設備の電力変換や電力制御(パワーエレクロニクス)に貢献し、エネルギーの効率的な利用を支えています。

2021年4月より、マラガ工場では、生産活動で使用するすべての電力を再生可能エネルギーでまかなっています。それに加えて、工場の屋上約900㎡のスペースに約160枚の太陽光パネルを設置。この太陽光発電は、年間で約90MWhの電力を発電しています。これは工場のエネルギー需要の約2%に相当し、太陽光発電だけで、年間約35トンのCO₂排出量削減が見込めます。これらを合わせると、約95%のCO₂排出量削減につながります。さらに、マラガ工場の敷地内には電気自動車の充電ステーションも設置し、カーボンニュートラル実現へ向けて取り組みを加速させています。
マラガ工場では、脱炭素以外にもさまざまな観点から省エネ・省資源活動を積極的に取り組んでいます。例えば、エアコン装置からコンプレッサー設備までの水回収システムを確立することで、エアコンから最大22%の水を回収することを可能にしました。これによって、水の消費量はもちろんのこと、水冷却設備のエネルギー消費量の削減につながっています。また、給水施設内の水を加熱するために太陽集熱器を設置しました。従来はガスヒーターを使用していましたが、太陽集熱器にすることで、年間18,000kWhの省エネ効果を見込んでいます。
今後もマラガ工場は、カーボンニュートラル実現を目指し、省エネを突き詰めて環境に優しいモノづくりに取り組んでいきます。
マラガ工場の屋上

気候変動への取り組みをさらに進めていくために
TDKでは、CO₂をはじめとする温室効果ガスの排出量削減を目指し、サステナビリティ推進本部・安全環境グループを中心に、TDKグループ全体での環境活動の推進と支援を行っています。上記で紹介した生産拠点でのCO₂排出量削減だけでなく、原材料の使用、物流、製品の使用の段階から廃棄にいたるまで、ライフサイクル的視点での環境負荷の低減に取り組んでいます。TDKの環境活動の意義について、サステナビリティ推進本部・安全環境グループの清水里香は次のように話します。

サステナビリティ推進本部
安全環境グループ
清水里香
TDKグループでは、気候変動対策を含むサステナビリティ課題に積極的に取り組んでいます。特にCO₂をはじめとする温室効果ガスの排出量削減においては、各拠点における省エネ推進・再エネ導入に対して具体的な目標値や施策を設定し、脱炭素社会実現に向けて着実に前進しています。この他、TDK製品の省エネ効率を向上させることで、これらが組み込まれている電子機器の使用時におけるCO₂排出抑制にも貢献しています」。
「クリーンで高効率なエネルギー・ソリューションは、持続可能な社会実現に向けたTDKグループの重要な事業機会戦略として位置づけられており、『社会価値を創造しながら成長する』という意志が込められています。今後も様々な取り組みを進めて参りますので、どうぞご期待ください」。