

「持続可能な未来」というゴールを目指して。 マクラーレン レーシングとTDKの戦略的パートナーシップ
2024年10月、TDKは英国の名門レーシングチーム、マクラーレン レーシングとテクノロジーパートナーシップを締結しました。この提携は、両社が持つ専門的な技術を結集し、自動車分野においてイノベーションとサステナビリティを推進することを目的としています。2025年5月17、18日には、東京・有明で世界最高峰の電動フォーミュラレース「東京E-Prix」が開催され、多くの観客が電動モビリティの未来を感じる機会となりました。
フォーミュラEとは ──テクノロジーとサステナビリティの最前線
マクラーレン レーシングとTDKのパートナーシップの舞台となるのが「Formula E(フォーミュラE)」です。フォーミュラ Eとは、電動フォーミュラカーによる国際的なシリーズで、FIA(国際自動車連盟)公認の新たなモータースポーツです。かん高いエンジン音を響かせて競ってきた従来のフォーミュラカーレースと違い、バッテリのみで駆動する電気自動車が、時速280kmもの高速で都市のコースを駆け抜けます。世界各国の都市を転戦し、年間チャンピオンの座を競い合うこのシリーズは、「電気自動車のF1」とも呼ばれています。

TDKは、マクラーレン レーシングの「NEOM McLaren Formula E チーム」と戦略的技術提携を締結しました。TDKの技術はすでに、チームが採用しているレースカーのパワートレイン「日産e-4ORCE 05」に提供されています。2025年5月17、18日に東京・有明で開催された、フォーミュラEの東京大会「2025 Toyko E-Prix」では、世界最高峰の電動フォーミュラマシンが特設コースで熱戦を繰り広げました。
フォーミュラEは、レースで順位を競うだけのレースではありません。持続可能な未来の実現というゴールを目指し、自動車業界全体が進化を競い合う場でもあります。世界的に電気自動車へのシフトが急速に進む中、各メーカーはフォーミュラ Eの舞台を、テクノロジーと将来へのビジョンを広くアピールするための絶好の機会と位置づけています。エネルギー効率を高める電動パワートレイン、部品の軽量化技術、高度な熱マネジメントシステムなど、EV時代に欠かせないイノベーションがここで試されています。

F1 Sim Racing ――若い世代が熱狂するeスポーツ
TDKとマクラーレン レーシングのコラボレーションは、フォーミュラ Eだけではありません。バーチャル空間で繰り広げられる「F1 Sim Racing(シムレーシング)」は、もうひとつの重要な舞台です。F1シムレーシングとは、最新のシミュレーターを使い、実際のF1レースを限りなく忠実に再現したコースで順位を競うバーチャルレースです。ドライバーは専用のシミュレーターに乗り込み、実際のF1マシンさながらの操作でレースを戦います。

このバーチャルレースは、若年層を中心に人気が広がっており、世界中で数万人がリアルタイムで観戦する人気コンテンツとなっています。レース動画は全世界に同時配信され、YouTubeやTwitchなどのプラットフォームを通じて世界中に拡散するなど、eスポーツの枠を超えた新たな文化となりつつあります。TDKはeスポーツ分野でも「McLaren Shadow F1 Sim Racingチーム」を支援しています。センサ技術や電源供給技術など、最先端の電子部品メーカーならではの技術を提供しています。
TDKのソリューション ──センサ、受動部品、そしてサステナビリティ
TDKは、現在普及が進むxEVおよびADAS向けの電子部品やセンサ、さらにEVパワートレインに欠かせない電源製品やDC-DCコンバータなどを開発・製造しています。以下のカテゴリごとに自動車技術の進化に貢献するTDKの製品・技術を紹介します。
●サステナビリティと電力管理
xEVのさらなる普及のためには、バッテリ性能の向上とエネルギー損失の低減が欠かせません。TDKはDCリンクコンデンサをはじめとする受動部品で、電力損失の低減や高効率な電力管理を実現します。また、電磁両立性(EMC)を確保する保護部品、各種電圧に対応したパワーインダクタ、高精度の温度センサなどを提供。高電圧・大電流にも対応できる充電器向けの高信頼性部品により、xEVの充電時間短縮にも貢献します。
●速度とパフォーマンス
車間距離の調整や車線の維持などを行う運転支援システムには、カメラ、LiDAR、レーダー、超音波センサなどが連携して、車両をリアルタイムで制御する必要があります。TDKは、ノイズ対策のためのコモンモードチョークやコンデンサ、パワーインダクタも幅広く展開し、先進運転支援(ADAS)の性能向上にも貢献しています。
●安全性、機能性、快適性
TDKは、多彩なセンサ製品で、ドライバーの運転支援と安全性を両立します。MEMSマイクロフォンや超音波センサは、バック時の障害物検知や周囲のドライバーの異常な動きを察知します。また、触覚フィードバックを備えたタッチディスプレイやスマートフォン充電用のワイヤレス充電コイル、EMI対策部品やノイズ低減技術は、快適でストレスの少ないユーザー体験を実現します。
フォーミュラ Eで培った技術は、「レースから道路へ(race-to-road transfer)」という言葉の通り、一般量産車へも応用されます。TDKとマクラーレン レーシングのパートナーシップは、xEV市場における新たな技術的ブレークスルーを推進する原動力となる可能性を秘めています。
TDKは今後も、最先端の電子部品やセンサを通じて、モビリティ分野の変革を支えていきます。自動車の電動化と高機能化が加速するいま、世界最高峰のレースで培った技術は、一般車両にも応用されることで、走行性能や安全性の向上、電力消費の効率化につながり、世界中の自動車の環境性能を高めることにつながります。持続可能なモビリティ社会の実現を目指し、モータースポーツやeスポーツの枠を超えて、TDKの挑戦は次のステージへと向かっています。
