

【Sustainability & TDK】
サトウキビ由来のバイオマスポリエチレンで誕生した、環境配慮型の新たな電波吸収体とは?
5G 製品やミリ波レーダー、その他の車載機器、IoT 機器など、従来よりも高周波帯のマイクロ波やミリ波の電波を使う電子機器の開発が活発化しています。そのため、電子機器を搭載した製品について、電磁波の影響を正確に測定し、性能を評価するための電波暗室のニーズが高まっています。同時に求められるのが、電波暗室のキーマテリアルである電波吸収体の進化。吸収性能の向上と共に環境対応も強く望まれています。TDKは従来の電波吸収体と同等の性能を持ちながら、サトウキビ由来のバイオマスポリエチレンを25wt%(重量パーセント)以上配合した新製品「バイオマス電波吸収体」を開発しました。

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拡大する電波吸収体ニーズに求められる環境対応
さまざまな電子機器がネットワークにつながる現代において、重要度が高まっているのが電子機器のノイズ対策です。さらに、電子機器を搭載した製品について、電磁波の影響を正確に測定し、性能を評価するための電波暗室のニーズも拡大しています。その電波暗室のキーマテリアルが、天井や壁、床などで使用される、電波を反射せずに吸収する「電波吸収体」です。世界の電磁波吸収材市場規模は、2023 年には電波暗室の世界全体の市場規模が約421 億円だったのに対し、2028年に 約633億円に達すると予測されています(矢野経済研究所推計値)。
同時に、電波暗室や電波吸収体の需要が増えれば増えるほど、重要になっていくのが環境対応です。電波吸収体は、発泡スチレンや発泡ポリエチレンを基材としたものが多くを占めています。電波暗室の電波吸収体は通常数十年のスパンで使用されるものの、発泡スチレンや発泡ポリエチレンは、地球温暖化を促進させる二酸化炭素を排出する石油由来であるため、環境にやさしい自然由来の材料に変えることが求められています。これにより、日本を含む120以上の国や地域が目指している2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質的な排出量がゼロとなった状態)実現にも寄与します。
●電波暗室の世界市場規模推移・予測(金額:2023-2028 年予測)

電波吸収体の基材をサトウキビ由来のバイオマスポリエチレンへ
そこでTDKが新たに開発したのが、業界で初めてバイオマス材料であるバイオマスポリエチレンを電波吸収体に使用した、バイオマス電波吸収体「IS-BPシリーズ」 です。従来品と耐火性、強度、耐久性において同等の性能のまま、石油由来のポリエチレンに代わり、サトウキビ由来のバイオマスポリエチレンを25wt%以上の配合に成功しました。これにより、従来品と比較してCO₂排出量を13%削減する効果があります。

「IS-BPシリーズ」は、一般社団法人日本バイオプラスチック協会(JBPA)のバイオマスプラマークを取得した製品です。バイオマスプラマークは、バイオマスプラスチック*を一定比率以上含み、かつ安全性の審査基準に合格した製品に、マークと名称の使用を認めるものです。
●バイオマスプラマーク

DXとGXに貢献するバイオマス電波吸収体
循環型社会への転換が求められるなか、TDKでは、環境配慮型の製品開発への取り組みを通じて、廃棄物の削減やCO₂排出量の削減に取り組んでいます。バイオマスプラスチックはその原料製造から焼却までのライフサイクル全体で二酸化炭素の排出を抑制する効果があり、地球温暖化の防止に貢献できます。

電子部品ビジネスカンパニー
マグネティクスビジネスグループ
EMC&RFソリューションズ部 課長
齋藤 寿文
バイオマス電波吸収体の今後の展望について製品担当者である、TDK株式会社マグネティクスBG EMC&RFソリューションズ部の齋藤 寿文課長はこう話します。「IS-BPシリーズはサトウキビ由来のバイオマスポリエチレンを25wt%以上配合した製品です。バイオマスポリエチレンを廃棄焼却した際に発生するCO₂は、植物が成長時に吸収したCO₂と等量であるため、トータルで CO₂の増加はありません。このため、従来の石油由来樹脂を使用した製品と比べてCO₂排出量を削減し、温暖化対策に貢献できます。近年、異常気象による災害の増加や農産・水産物への影響など、気候変動の影響が身近な問題となりつつあり、本製品のような環境配慮型製品は、今後ますます重要視されていくと考えています」
TDKは、バイオマス電波吸収体の提供を通じて、DXの加速を支えると共に、サステナブルな社会の実現を目指します。
バイオマス電波吸収体「IS-BPシリーズ」

用語集
- バイオマスプラスチック:植物等のバイオマス(生物資源)を化学的または生物学的に合成し原料としたプラスチックをバイオマスプラスチックという。