

【Sustainability and TDK】
循環経済への移行を加速させる電子部品の環境対策とは?
大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊など様々な環境問題にも密接に関係しています。資源・エネルギーや食糧需要の増大や廃棄物発生量の増加が世界全体で深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用する「循環経済」への移行を目指すことが世界の潮流となっています。TDKは、製品ライフサイクルにおける地球環境への負荷を最小化できるように、サーキュラーエコノミーを目指した製品設計および製造の取り組みを推進しています。

資源を余すことなく使う「サーキュラーエコノミー」
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。
循環経済への移行によって3R(廃棄物等の発生抑制・循環資源の再使用・再生利用)+Renewable(バイオマス化・再生材利用等)をはじめとする資源循環の取組が進めば、製品等のライフサイクル全体における温室効果ガスの排出低減につながることから、カーボンニュートラル実現の観点からも重要な取組です。また、資源の効率的使用、長期的利用や循環利用、ライフサイクル全体での適正な化学物質や廃棄物管理を進めることにより新たな天然資源の投入量・消費量の抑制を図ることは、資源の採取・生産時等における生物多様性や大気、水、土壌などの保全、自然環境への影響を低減するという観点からも重要です。TDKは、サーキュラーエコノミーに関わる最新情報を収集・分析し、活動を推進しています。具体的に、TDKのサーキュラーエコノミーに関わる活動を2つご紹介します。
サーキュラーエコノミーとは

フィルムコンデンサのフィルム材料をバイオマス由来へ
既成の製品であっても、地球にやさしい持続可能な原材料を使用することで、より持続可能性を高めることができます。その一例がTDKのフィルムコンデンサModCapシリーズで、革新的なサステナブルフィルムが採用されています。ModCapシリーズのフィルムは全製品にバイオサーキュラー素材を採用し、高い環境性能を追求しています。環境に優しい素材を使用することで、製品のさらなる向上を図り、地球環境に貢献できます。

TDKのグループ会社であるTDK Electronics のMarisa Rico(Coordinator of the materials science laboratory/写真左)は、ModCapの材料開発を担当しました。新製品についてこう話します。「TDKでは、部品のライフサイクルを伸ばすことで不要な材料を削減し、廃棄物をより適切に管理するために、サーキュラーエコノミーに関するさまざまなアプローチを常に研究しています。そのため、私たちは、素材特性を損なうことなく持続可能な新素材を開発するため、サプライヤーと積極的に協力しています。その取り組みの中で、食品で使われているバイオベースフィルムをコンデンサに使用するという画期的な提案が生まれました」。また、同じく製品化を担当したVictor Alcaide Lozano(Director of Product Marketing for PEC HP Capacitors/写真右)はこう話します。「このバイオベースフィルムは、従来の製品とまったく同じ電気的特性を持っており性能面では差がありません。この技術はModCap以外の他のタイプのフィルムコンデンサにも対応できます」。
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ModCapシリーズ

バイオベース・ポリプロピレン・フィルムとISCC 認証

MLCCの製造工程で使用されるPETフィルムをリサイクル
TDKは主力製品である、積層セラミックチップコンデンサ(以下、MLCC)の製造工程で使用されるPET フィルムを再利用するリサイクルシステムの構築に電子部品業界で初めて*1成功しました。MLCCは、スマートフォンや、ノートパソコンなどの様々な電子機器に加えて、電装化が進む自動車においても不可欠な電子部品です。電気を蓄えたり放出することで、電圧を安定させたり、ノイズを取り除くといった重要な役割を果たします。
MLCCの製造においては、原材料である誘電体ペーストをシート状にして、内部電極を塗布するという工程があります。この塗布する際はPETフィルムが使用されますが、製造工程での使用後は主にサーマルリサイクル*2や焼却処分されることがほとんどでした。
新たなリサイクルシステムでは、それまで廃棄していたPETフィルムの表面を洗浄し、その後PET樹脂(ペレット状)に戻し、協業先である東レ株式会社(東京都中央区)で製膜化を行います。そのフィルムにTDKが特殊処理を施すことで、MLCCの製造工程での再利用が可能となりました。なお、本システムで使用するリサイクルPETフィルムは、従来のPETフィルムに対しCO₂が約10%削減*3されています。

リサイクルPETフィルムの実現は、関係企業とのアライアンスにより、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止といったサーキュラーエコノミーに貢献するTDKの取り組みです。
PETフィルムのマテリアルフロー

TDKは、原材料の使用から製品の設計と製造、生産工程から排出する廃棄物の資源化に至る、ものづくり全体での資源価値の最大化と環境負荷の削減に取り組み、サーキュラーエコノミーの実現に向け貢献していきます。
用語解説
- 電子部品業界で初めて:2021年12月現在、TDK調べ。
- サーマルリサイクル:廃棄物を燃焼するときにときに発生する「熱エネルギー」を回収して利用するリサイクルシステム
- CO₂が約10%削減:PETフィルムの製造工程で発生するCO₂のこと。東レ調べ。