ロボットの自然な動きをつくる、高精度センサの役割とは?
現在、私たちの日常生活や社会のいたるところでロボットの普及が進んでいます。人に代わって接客や警備、清掃などの作業を行うサービスロボットや、家族やペットのようにふるまうコンパニオンロボットなど、新しいタイプのロボットがつぎつぎと登場しています。最新のロボットの自然でなめらかな動きを実現しているのは、本体に搭載されたモータとセンサの組み合わせです。この記事では、ロボットの進化を支える高精度の「TMRセンサ」の秘密に迫ります。
サービスロボット市場が花開こうとしている
製造、物流の現場や、医療・福祉施設、そして家庭など、さまざまな場面で人に代わって作業を行うロボットが活躍しています。その種類は幅広く、ファクトリーオートメーション機器や無人搬送機(Auto Guided Vehicle: AGV)をはじめ、接客ロボットや介護ロボット、家庭では癒やしや楽しさを提供するコミュニケーション用のロボットも登場しています。
ロボットのタイプは「産業用ロボット」と「サービスロボット」に分類されます。工場などの製造現場で働く産業用ロボットは、人間とは隔離された環境で、人の代わりに決められた作業を行う一方、サービスロボットは接客や介護などのサービスを行い、おもに店舗やオフィスなど、人に近い公共空間で動作します。サービスロボットと人が共存するためには、なによりも安全性を確保することが重要となります。
サービス用ロボットの普及は世界中で進み、今後もセンサやシステムの進化に合わせて新しい種類のロボットが登場し、私たちの暮らしにますます身近なものになっていくでしょう。
ロボットに求められるセンサの役割とは
サービスロボットのなかでも、家庭においてペットや家族のような役割を果たす「コンパニオンロボット*1」は、AIによる会話機能やなめらかな動作によって、機械であることを忘れさせるようなふるまいを実現します。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人とのコミュニケーションが減った現在、孤独感を和らげるための手段としても注目されています。
そんなロボットのなめらかで自然な動きに欠かせないのが、モータの性能とともに、モータを制御するための「コントローラ」と「角度センサ」という部品です。アームや胴体、車輪などロボット本体の可動部には小型のサーボモータが搭載されており、コントローラがそれぞれのモータの動きを細かく制御します。その際、モータが回転する角度や速さを正確に検知するセンサが角度センサです。
コンパニオンロボットのような小さなロボットが自然で正確な動作を行うには、高い精度での角度検知と高速応答性能によって、モータの最適なトルク応答を引き出すことが必要です。そのために、高精度の角度センサと小型の組み込みコントローラが重要な役割を果たします。TAS/TADシリーズは、サービスロボットをはじめ幅広い用途で活躍しています。
また、室内を自律移動するロボットには、部屋の広さや周囲にある物、人物の動きなど、外部環境を正確に検知することも大切です。そのために、最新のコンパニオンロボットには、カメラやマイク、温度センサ、照度センサなど、センサ部品が多数搭載されています。ロボットの高性能化には、センサの小型化や高精度化、そして信頼性を高めるための技術が欠かせないのです。
ロボット用モータの角度センサとして使用されているのが、高精度かつ高信頼性をもつ磁気センサである「TMRセンサ*2」です。従来のセンサよりも回転体の角度やポジションを広い温度領域で精度よく検知することが可能です。ロボット用のモータにとどまらず、電気自動車用モータの角度検知や、電動パワーステアリング(EPS)の回転角検知、スマートフォンカメラのオートフォーカス機能など、高精度の磁気検知が必要なシーンにおいて幅広く利用されています。
高精度TMRセンサの実力
TDKのTMRセンサは、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子を活用した磁気センサで、自動車用などの角度センサとして開発されました。TDKの磁性技術、薄膜技術のノウハウが詰まった製品で、高精度・高い信頼性・良好な温度特性を誇ります。
TMRセンサは広い温度領域で安定した動作を実現します。そのため、精度と信頼性が求められる車載用部品としての採用が進んでいます。また低消費電力も兼ね備えており、自動車だけでなく、ロボット、スマートフォンなどのコンシューマー製品にも幅広く使用されています。
モータで動くものすべての制御に役立つTDKの高感度TMRセンサ。高い精度と信頼性でこれからの産業や暮らしを支えています。
高度な薄膜プロセス技術で製造されるTMR素子は、1~2nm(ナノメートル:100万分の1ミリ)もの薄い絶縁体層を2層の強磁性体層ではさんだ構造の薄膜素子です。TDKのTMRセンサTAD2141は、ノイズに強く高出力かつ角度精度に優れ、安定性に優れた角度センサを小型のパッケージにて提供しています。さらに、センサ素子を2個搭載したTAD4140は、分離独立した2つの出力系統を持ち、自動運転車に求められる高い冗長性を確保しています。製品について詳しい情報はプロダクトセンターをご覧ください。
用語解説
- コンパニオンロボット:家庭や医療施設、介護施設などで、高齢者や子どもの孤独を和らげたりストレスを軽減したりすることを目的としたロボット。
- TMRセンサ:TMR(Tunnel Magneto Resistance:トンネル磁気抵抗効果)。量子力学のトンネル現象を利用することで、感度を示す磁気抵抗率が高いTMR素子を応用した磁気センサ。