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[ 2002年3月期 通期 連結決算説明会 ]2002年3月期連結業績と2003年3月期見通しについて

代表取締役社長 澤部 肇

代表取締役社長 澤部 肇

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本日はご多忙なところをお集まりいただきありがとうございます。また、日頃はご支援を賜り御礼申し上げます。それでは早速、2002年3月期の連結業績からご報告申し上げます。なお、決算の詳細につきましては、後ほど経理部長からご報告申し上げます。

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2002年3月期の連結決算からご報告申し上げます。
連結決算の売上高です。対前期比16.7%減の5,750億円、営業利益は前期563億円に対して、マイナス421億円、税引前利益は前期645億円に対しマイナス421億円。当期純利益は前期440億円に対し、マイナス248億円でした。なお、営業利益には構造改革に伴う費用361億円が含まれています。

第3四半期の決算時(今年2月5日)には、構造改革費用を256億円と見込んでいました。後ほど詳細を申し上げますが、この時点ではTDK本体の人員削減を400名とみていましたが、実際には853名になったことなどにより、構造改革費用が105億円増加しました。第3四半期の発表時に通期売上高で5,650億円、営業利益でマイナス360億円とみていました。その時と比べますと、売上高で100億円、営業利益で44億円、第3四半期の発表時よりも実質好転しています。

しかし、皆さまのご支援にも関わらず、このような業績に終わってしまったことにつきましては、株主をはじめ、各ステークホルダーに対して誠に申し訳なく思っております。
2002年3月期の業績の悪化は、需要の大幅な減少によるところが大きいわけでございますが、それに加えて会社として変化に対する認識の遅れ、あるいは認識してからの行動の遅れに起因していたと考えています。

2003年3月期を価値ある企業として残れるかどうか、生存をかけた非常事態の期と認識しています。まず、損益分岐点を引き下げ、1日も早く黒字体質に転換すること。そして、他社の追随を許さない、独創的な商品を少しでも早く開発して成長していくこと。同時に、株主からお預かりしたお金を大切に使っていく。これらのことを、同時並行的かつスピーディに実施してまいりたいと思っています。

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部門別の売上高です。電子素材部品部門は22%減の4,330億円。これを市場分野別にみますと、通信分野が前期比51%減、AV分野が11%減、OA分野が15%減と、自動車とアミューズメントの増加を除いては、全分野にわたって減少しました。
OA分野の下落が比較的少なかったのは、HDD用のヘッドの売上が回復してきたことによります。市場における40GB/Pの比率が増加したことにより、マーケットシェアを挽回いたしました。上期の20%のマーケットシェアから、第4四半期は27%まで回復しました。
記録デバイス製品の売上は第2四半期を底にして、四半期ごとに約20%ずつアップしてきました。第4四半期は前年同期比で18%上回りました。
通信インフラ、あるいは産業機械は回復の兆しはみえてきませんが、AV、自動車、PC、部品等の分野は昨年の第2四半期で底を打ちました。事務機、携帯電話、家電等は第4四半期で底を打ち、徐々に回復に向かっています。

記録メディア・システムズ製品部門はオーディオ、ビデオテープの減少を、光メディアあるいはデータテープ、ソフト関係で補い、前期比3%のアップ。オーディオ、ビデオテープの比率は同部門の43%まで下がりました。データテープあるいは高密度の光ディスク等によって売上を拡大していく計画です。2002年3月期はCD−Rの価格の大幅な下落と同時に、構造改革の費用増加等によりまして、赤字脱却はできませんでした。当期はドイツ工場の清算、あるいは玉川テクニカルセンターの生産中止など、拠点の再編を進めるとともに、データテープの歩留まり改善等の合理化を行いました。2003年3月期は黒字転換を図ります。

地域別ですが、国内の26%減をはじめ、通信機市場の不振がございましたヨーロッパが21%減等、全般にわたって減少しました。海外全体の減少が12%と、国内より少なかったことによって、海外売上の比率は68%から71%になりました。

次に、営業損益の赤字要因についてご報告します。営業損益はマイナス421億円。1975年の連結決算開始以来初の赤字になってしまいました。前期の563億円からマイナス421億円でございますので、984億円の悪化となりました。為替は1米ドル111円から125円へ、1ユーロ100円から110円と円安で、売上高で408億円、営業利益で98億円の増加要因でございました。一方、売上減少による利益減、これは操業度の悪化も含みますが、マイナス666億円、売価変動は約△8%ございました。値引きがマイナス要因で502億円。リストラ等の構造改革に伴う費用もマイナス要因ですが、マイナス361億円、合計1,529億円のマイナス要因を、材料、資材の値引き、歩留まり向上等の合理化で、合理化金額は447億円でしたが、これでカバーできずに大幅な減益となってしまいました。

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構造改革について申し上げます。第3四半期の決算発表時に、退職金加算部分151億円、設備等の資産除却105億円、合計256億円と申し上げました。今回、実際に締めてみますと、退職人員増加等で、退職金加算分206億円、設備等の資産の除却が155億円、合わせて361億円の費用が発生しました。削減人員では、第3四半期時に申し上げました見込みは国内の削減人員2,780名、海外人員4,500名、合計7,280名に対して2002年3月期の実績は国内削減人員3,257名、海外4,511名、合計7,768名の削減となりました。
2003年3月期の構造改革費用は85億円をみています。これは、すでに発表した国内の2工場の閉鎖、海外1工場の閉鎖に加えて、国内3工場、海外5工場の閉鎖ないしは縮小を検討中です。合わせて構造改革費用として85億円をみています。

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当期の損益への影響金額ですが、人件費は先ほど申し上げましたように削減前と比較して230億円減少します。その他、経費145億円を圧縮いたします。一方、構造改革費用85億円が発生しますので、固定費の引き下げは合計290億円になります。その他、購入資材の値引き200億円を計画しています。

次に配当についてですが、大変遺憾ではございますが期末配当は1株につき20円、中間と合わせて1株につき年50円とさせていただきたいと思います。前年に比べて10円の減配となりますが、リストラ等に配当資金に回させていただきました。早期に収益体質の改善、配当率の向上を目指していきたいと思っております。

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2003年3月期の見通しは、1米ドル120円を想定しています。売上高は5,800億円、前期とほぼ横ばいです。営業利益200億円、税引き前利益170億円、当期純利益130億円。
電子部品全般に受注は回復基調にございます。しかし、電子工業と非常に関わりの深いアメリカの経済は、もろさを内在しての回復と認識しておりまして、穏やかな回復になるだろうと思っています。在庫の調整は完了しつつありますが、電子工業全体を引っ張るリーディング商品が見あたらない。こういったことで、第2四半期以降は不透明です。また、ネット社会におけるスピードと競争の激化、中国の台頭、EMSの存在、ICとの関わり、ものによっては供給過剰の状態等、電子部品を取り巻く環境は相変わらず厳しいと認識しております。したがいまして、電子素材部品部門のうちの電子材料製品、電子デバイス製品関係は横ばいとしました。記録デバイス製品ですが、PCならびにHDDの需要は若干伸びるとみていますが、HDD1台当たりのヘッドの員数が相変わらず減少しています。したがって、HDD用ヘッドの需要は減少すると思っていますが、2002年3月期と比較してマーケットシェアは増加すると考えています。よって、売上高は横ばいとみています。
記録メディア・システムズ製品部門ですが、オーディオ、ビデオテープの需要の減少はありますが、2002年3月期に承認が取れましたデータテープの売上拡大、光ディスクの需要の増加から、売上は横ばいとみています。

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連結営業利益の増加要因、すなわち前期マイナス421億円から当期200億円と、621億円改善する要因でございますが、為替につきましては1米ドル120円とみて、前期に比べて5円の円高とみています。これによるマイナス要因が50億円、売価変動の値引きはマイナス要因として526億円。
構造改革の費用は、前期は361億円でしたが、今期は85億円をみていますのでプラス要因として276億円。固定費の引き下げが375億円。資材の値引きを含めた合理化等で546億円。差し引き621億円の増益を計画しています。

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2003年3月期の重点テーマは、当然のことながら収益構造の改革です。売上が伸びない状態におきましても、収益の回復および確保できる体質を作ると同時に、収益性あるいは生産性の低い分野から高い分野への経営資源の移動を行いました。
損益分岐点の引き下げで黒字化を図り、キャッシュフローの改善を図っていきます。棚卸資産保有月数は、前期の1.9カ月から1.7カ月。固定資産回転率は前期の年2.1回転から2.5回転。売掛債権保有月数は前期の3.1カ月から2.9カ月に改善します。

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同時に、選択と集中の徹底を行い、過去2年間、TVAがネガティブなもの、すなわちクリティカル・ビジネスを洗い出して、3年以内にNPV(Net Present Value=現在価値)の黒字化が見込めないものについては原則撤退とし、3年以内に黒字化が見込めるものについても、半年ごとに検証していくということを行ってまいります。
クリティカル・ビジネス・ユニットとして俎上に上げ、2003年3月期上期末までに終息させると考えている製品が売上高で約62億円あります。また、第2四半期、第3四半期中に方向付けするものは約600億円。これは、必ずしも全部やめるわけではありませんが俎上に上げて、収益の改善をするのか、あるいはやめていくのかを今後見極めたいと思っています。

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2番目の重点施策は成長戦略の遂行です。再三申し上げておりますように、TDKはe-material Solution Providerとして、TDKの香りのする製品を出し続けながら、成長していかなければなりません。中期的には、これまで市場を牽引しておりました携帯電話、PCに加えて、情報家電、高速大容量ネットワーク、カーエレクトロニクスを重点市場とてみております。
情報家電についてはMPUの高速化が進み、動画を含むブロードバンド対応で、PCがAV機器との融合を図りながら増加していくと思っています。したがって、デジタル放送対応TV、HDDレコーダ、DVDレコーダ等を対象商品とみています。
高速大容量ネットワークでは、ブロードバンドに接続するセットトップボックスやADSL、CATVモデムをはじめ、IPv6を使用した電話などの新サービス対応機器、ならびに動画転送可能な5GHz帯を使用した無線LANも、すでに普及が進んでいる2.4GHz帯の無線LANと組み合わせながら市場が展開していくとみております。
カーエレクトロニクスですが、自動車の環境対策からくるエンジンコントロール、あるいはABSなどの安全対策などで、電子化がさらに進展するのに伴い、これらの機器に使用される部品が増えると思っています。これに加えて電装用マグネット、さらには電気自動車モータ用の金属磁石、DC/DCコンバータの需要が大きく伸びると思っています。ITSに関してはETCなどの無線機器に使用される高周波部品に加えて、ETCゲートでの誤動作を防止するための電波吸収体も新たな分野として期待しています。

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それらにおける弊社の戦略商品ですが、
情報家電分野ではHDDレコーダ用ヘッド、DVRブルーディスク、高周波対応ノイズ対策部品を考えています。
高周波大容量ネットワーク分野においては5GHz帯の無線機器用部品、モジュール、基板、積層高周波部品、USB2.0などにおける高速インタフェース用対応部品、サーバ通信機器用の高効率DC/DCコンバータ、大容量データテープを考えています。
カーエレクトロニクス分野では、ITSおよび5.8GHz帯での電波障害吸収体、あるいはCANBUS対応ノイズ対策部品、42V/14Vの2極電源方式対応のパワーモジュール、電気自動車、ハイブリッドカー用のDC/DCコンバータ、電装モータ用高性能磁石などを戦略商品と考えています。

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3番目の施策は高効率経営の推進です。それぞれの説明は省きますが、執行役員制について触れさせていただきます。6月の株主総会後の取締役会を経て導入することにいたします。業務執行効率の向上、企業の健全性を目指すものです。これにより、業務執行の責任と権限の明確化を図ります。併せて報酬委員会を設けます。これらの諸施策によりコーポレートガバナンスを一層強化してまいります。

以上のような形で、2003年3月期は先ほども申し上げましたように生き残れるかどうか、生存をかけた非常に重要な期と考えています。収益構造を改善し、活力を取り戻すべく、取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いします。