

壊れる前に異常を予知。
機器メンテナンスの常識を変える
超小型センサモジュール
工場をはじめとする生産現場では、機械・設備の異常を未然に防いで、ダウンタイム(停止時間)を抑えることが求められます。壊れてから対応するのではなく、異常を予知し、事前にメンテナンスすることで、生産性を高めることができます。こうした「予知保全」を簡単に行うためにTDKが開発したのが、世界ではじめてエッジAIに対応した超小型センサモジュール“i3 Micro Module”です。

生産現場における“予知保全”の技術課題
一般的に生産現場では、機械・設備を100%稼働させることが求められます。これはフル稼働させることによって、生産性を高めることができるためで、24時間365日稼働させている工場も少なくありません。
機械・設備が停止するダウンタイムを抑えるために、現在大きな注目を集めているのが「予知保全」というコンセプトです。これは、工場内の機械や設備をセンサによってリアルタイムに監視し、不具合や故障を事前に予知して対策を行うことを指します。
故障や不具合が生じてから対策を行う従来の「事後保全」とは違い、予知保全は、故障のリスクを低減して製造のダウンタイムを最小化し、設備の寿命を延ばすことが可能だと言われています。現在、世界的に取り組みが進められている工場のスマートファクトリー(※1)化においても大きな命題であり、様々な現場での普及が期待されています。
予知保全において、設備や機械の状態をセンサでリアルタイムに監視することを「Condition based Monitoring」と呼び、特に重要な技術と考えられています。しかし、これを実現するためには大きな課題が主に2つありました。一つ目は、一般的に工場においては、様々なセンサや分析ツールなどが各々異なるシステムとして提供されており、取得したデータの集約から処理までのプロセスが複雑なため、分析結果の活用が容易ではないことです。二つ目は、配線や物理的な制約により、ユーザーが望む場所でセンシングできないことが多々あるため、最適な状態監視が難しいという課題でした。
工場における予知保全

センサ、エッジAI、ネットワークを一つに、
超小型センサモジュールソリューション
これら2つの課題を解決するのが、TDKが開発した、世界ではじめて、エッジAI(※2)を搭載したセンサモジュール “i3 Micro Module”です。
i3 Micro Moduleは、各種センサ(振動、温度、音、気圧など)とエッジAI、メッシュネットワーク機能(※3)を一つにしたセンサモジュールで、これまで困難だった、データの集約・統合・処理を容易にします。加えて、超小型でバッテリ駆動が可能なワイヤレスセンサモジュールのため、配線などの物理的な制約を受けずに、ユーザーは望みの場所でセンシングすることが可能です。機械や設備の異常予知がとても手軽にでき、理想的な「Condition based Monitoring」を実現します。
その結果、機器情報を可視化することで人手に頼らない監視ができる、機械や設備の健康状態を把握して寿命をのばすことができる、予期しない障害を防ぐことによって製造におけるダウンタイムを最小限に抑えられる、といった多くのメリットを生産現場にもたらし、理想的な予知保全の実現に貢献します。
i3 Micro Moduleはマルチセンサ

エッジAIによる予知保全(イメージ)

エッジAI搭載センサモジュールのこれからの大きな可能性

次世代製品&ソリューションズグループ
Condition based Monitoring BU/ CbM Development Unit
遠藤 寿之
“i3 Micro Module”のようなバッテリ駆動型モジュール製品は、センサ、無線通信、それぞれの機能を持ったデバイスを小型・集積し、モジュール内部でそれらを省電力で最適に制御する高度な技術が不可欠です。こうしたデバイスの小型・集積化や省電力制御は、主力製品である電子部品やバッテリで培った技術を応用して実現できました。また、TDKはセンサ製品の応用技術として、エッジAIの研究開発も長年進めており、世界初のエッジAI搭載のセンサモジュールの開発に成功しました。
これからの“i3 Micro Module”について、TDK株式会社 次世代製品&ソリューションズグループの遠藤寿之はこう話します。「新たなセンシング技術と全固体電池などの電源技術を統合しながら応用範囲を広げ、あらゆる装置への組み込みが可能となるよう、さらなる小型パッケージへの集積化を行っていきます。また、搭載するエッジAIをより高度化し、自ら設置場所の状況を継続的に学習し、自律的な判断を行うことで、生産現場で求められる高度な意思決定を支援するモジュールへと進化させます」。
将来的には、 “i3 Micro Module”をクラウド統合も含めたソリューションとして顧客に提供することも構想中です。TDKは、高度なモノづくりで、次世代のスマートファクトリー実現に貢献していきます。
将来の “i3 Micro Module”は、高度な意思決定を支援するモジュールへ



用語解説
- スマートファクトリー:生産現場において、IoT・AI・ロボティクスなどのデジタル技術を活用し、リアルタイムなビッグデータの収集・活用や、生産ラインの自動化・自律化を推進する取り組み。
- エッジAI:IoT機器やセンサなどの端末にAIを搭載し、端末が学習・推論を行う技術のこと。端末を通して行われたデータを基に、端末内で推論・判断を行う
- メッシュネットワーク:複数の中継機器が互いに対等な関係で網の目(mesh)状の伝送経路を形成し、データをバケツリレー式に転送する通信ネットワーク。