
EVバッテリを超高精度にモニタリングする、
TMRセンサソリューション
バッテリ残量計は、EV(電気自動車)をはじめとするxEV(電動車)にとって必要不可欠な機能です。バッテリ・モニタリング機能は、このバッテリ残量を正確に計測することで、走行距離の推定精度向上に貢献し、今後、EVにおける電気の使用量が増えていくにつれて、さらなる高精度化が求められます。EVのバッテリ・モニタリングの性能を左右する構成部品のひとつは、電流センサです。

“電欠”を防ぐために重要なバッテリ・モニタリングの課題
EVは、バッテリの残量がなくなると走行できなくなります。これは「電欠」と呼びます。もっとも懸念される電欠は、高速道路での走行時です。高速道路上で電欠が起きると、多数の人命に関わる重大な事故や、大渋滞が誘発される可能性があるからです。こうしたことを防ぐため、自動車メーカーや交通インフラ各社は、正確なバッテリの消費予測情報をドライバーに知らせ、充電に適切なサービスエリア及びパーキングエリアを伝えるといったサービスを展開しています。今後このような取り組みは、EVの普及や給電インフラの発展と共にさらに進んでいくでしょう。
このバッテリの消費予測で重要なのが、高精度なバッテリ・モニタリングです。今のバッテリ残量がどれぐらいなのか、きわめて高精度な測定を行わなければ、情報の信頼性を損ねて交通に悪影響をもたらしかねません。さらに、バッテリ・モニタリングの高精度化は、バッテリ残量に関わる充放電状態のチェックに加えて、バッテリセルを劣化させる状況を防ぎ、バッテリの長寿命化に貢献します。
今後EVにおける電気の使用量は、スマートハウスなどのインフラやネットワークなどとのコネクテッド化や自動運転化、モータの搭載増加などによって、ますます増えていきます。そこで求められるのが、バッテリ・モニタリングを左右する構成部品のひとつである電流センサの高性能化です。
バッテリ・モニタリング

最大1200Aという大電流を1%未満の誤差で検知する、バッテリ・モニタリングソリューション
バッテリ・モニタリングにおける電流センサには、さまざまな方式(※1)がありますが、その中でも代表的な測定方式としてクローズド・ループと言われる方式があります。しかしこれまで、クローズド・ループの電流センサは、センシングするための磁束を発生させるコイルのコアが大きく、バッテリ・モニタリング設計の自由度やクルマの軽量化を損なうといった課題がありました。
この課題を解決しコアレスにしたのが、TDKが新開発したクローズド・ループ・TMR(トンネル磁気抵抗効果※2)電流センサです。TMR素子とコイル、抵抗からなる磁気検出部とASIC(※3)をワンパッケージに収めたTMR電流センサは、わずか1%未満(フル・スケール)の誤差という高精度で、最大1200Aという大電流を非接触で測定できます。その上、小型で低電力のため、これまでにない高精度なバッテリ・モニタリングの実現に貢献できます。
クローズド・ループ/従来の電流センサとTMR電流センサ

この新たなTMR電流センサは、TDKが得意とするTMR素子の技術や、TDK ミクロナスの磁気センサの設計技術など、グループの総合力を融合して生まれました。TMR電流センサ(製品名:CUR 423x)は、高精度なバッテリ・モニタリングを支えて、EVのさらなる普及に貢献していきます。
磁気センサ素子の特性比較

TMR電流センサ「CUR 423x」

CUR 423x は、自動車ならびに産業機器向け高電流AC/DC 計測に適した非接触磁界電流センサです。TDKのTMR技術を活かしたミクロナスブランドとして初めての製品です。詳細は、プロダクトセンターをご確認ください。
用語解説
- 電流センサ方式:抵抗値が小さな抵抗に電流を流し、その両端電圧を測ることで電流値を求める「シャント抵抗」や入力電流によって発生した磁界が常にゼロになるように、二次巻き線にフィードバック電流を流す「クローズド・ループ」など、様々なタイプがある。
- TMR(トンネル磁気抵抗効果):磁気により絶縁体膜のトンネル電流が変化する現象で、これを応用した素子は、感度を示す磁気抵抗率が従来よりも高く、高密度の信号をより正確に読み取ることができる。
- ASIC(Application Specific Integrated Circuit):信号処理等の特定の用途向けに、複数機能の回路を1つにまとめた集積回路のこと。