
EV駆動用モータの高効率化をリードする、
マグネットソリューション
世界的な環境問題の解決策として、EV(電気自動車)の普及が進められています。しかし、EVが世界中で本格的に安全で快適に走るためには、数々の技術的ハードルをクリアする必要があります。そのひとつが、EVの心臓部である駆動用モータの小型・軽量化と高効率化です。厳しい技術的要求を満たすモータを実現するためには、モータ性能を左右する構成部品であるマグネットの進化が求められています。

EV走行の原動力となる、駆動用モータに求められる技術課題
クルマの電動化が、世界中で着実に進んでいます。特に欧州やインドなどでは、エンジン車の具体的な販売停止の期日を設定して「EVシフト」の取り組みが進められています。この世界的なEV化の流れは、ますます加速していくでしょう。
モータ駆動するクルマの市場予想

出典:株式会社富士経済『2019年版 HEV、EV関連市場徹底分析調査』
モータで動くEVは、モータとエンジンを併用するハイブリッド車(HEV)や、その発展版であるプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)などと明確な違いがあります。HEVではモータに不具合が起きても、いざとなればエンジンで走行できます。さらに、さまざまな走行シーンに応じてモータとエンジンを使い分け、最適な省エネ走行を行うこともできます。
一方、EVではモータしか頼るものがありません。発進と停止を繰り返す渋滞走行、険しい山道や凸凹道などのオフロード走行、高速道路走行、さまざまな搭乗者数や荷物を搭載しての走行…、これらすべてのシーンでEV駆動用モータは、より少ない電力で効率よく動くことが求められます。さらに、モータ自身の小型・軽量化も高効率化に影響を及ぼすため、不可欠な要件です。そこで重要になってくるのが、モータ性能を左右する構成部品であるマグネットの進化です。
EV駆動用モータの構造例(イメージ)

ハイパワーマグネットと磁力の制御技術による、モータソリューション
EV駆動用モータには、非常に強い磁気エネルギーが求められるため、永久磁石の中でもっとも強力とされているネオジムマグネット(※1)が用いられています。その中でTDKのネオジムマグネット(NEORECシリーズ)は、世界最高レベルの保磁力(※2)を達成。このハイパワーマグネットはモータに大きな回転力を与えて、従来のネオジムマグネットを使用したモータよりも、さらなる小型・軽量化と高効率化に貢献します。
また、EV駆動用モータのさらなる小型・軽量化と高効率化のためには、モータの形状や内部構造を、より複雑で多様な設計へと変える必要があります。これに伴い、使用されるネオジムマグネットにもハイパワーであると同時に、従来とは異なる形状と、磁力をより効率的に発する磁場の配向性が求められます。
TDKは、モータの使用条件・使用環境によって最適化を行う、ネオジムマグネットのさまざまな形状を正確につくる技術と、磁場を自由に変えられる配向制御技術(※3)を確立し、多様化するモータ設計に最適なネオジムマグネットのソリューション提供を可能にしています。
平板形状と円弧形状の磁場配向の違い(イメージ)

また、TDKは、ネオジムマグネットに含まれる、ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった、調達が困難なレアアースである、重希土類元素(※4)を最小限の添加に抑える技術を確立しております。 2012年には、Dyを全く使用しないネオジムマグネットを業界に先駆けて開発しました。これらの取り組みにより、モータ設計の要望に応えると共に、TDKはマグネット調達の変動リスクを抑えてEVの安定生産も支えていきます。
EV駆動用モータの新たな開発要求に応える、マグネットソリューション。CO2を排出しないEVの走りを支えます。
ネオジムマグネット「NEORECシリーズ」

用語解説
- ネオジムマグネット:ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする磁石で、永久磁石の中では最も強力とされている。
- 保磁力:磁石を使用する中で磁力の弱くなりにくさを示す尺度。磁化された物質を磁化されていない状態に戻すために必要な力で表す。単位はCGS単位ではエルステッド(Oe)、SI単位ではアンペア/メートル(A/m)。
- 配向制御:磁場を特定の方向に合わせる処理。
- 重希土類元素:希土類元素17種類のうち、特に希少で安定調達が困難な元素のこと。