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[ 2006年3月期 通期 連結決算説明会 ]2006年3月期 連結業績概要と2007年3月期の見通しについて

代表取締役社長 澤部 肇

代表取締役社長 澤部 肇

皆さんこんにちは。本日はお忙しいところをお越しくださいましてありがとうございます。また、平素はいろいろとご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
早速、弊社2006年3月期通期の事業業績をご報告申し上げます。売上高は、前期比20.9%増の7,952億円、営業利益は前期比1.2%増の605億円、税引前利益は前期比8.9%増の661億円、当期純利益は前期比32.4%増の441億円でした。
3月8日に記録メディアの追加構造改革を発表したとき、同時に2006年3月期の予測をご報告しましたが、このときの見直しの数値にほぼ沿った形での実績となりました。なお、営業利益には構造改革等に伴う一次費用157億円が含まれていますので、営業利益は前期比若干の増加にとどまりました。この一時費用を除くと、営業利益は前期比27%の増加、営業利益率も9.6%とほぼ2桁レベルに近づいています。1株当たり利益は前期の251円71銭に対して333円50銭、1株当たり純資産は前期の4,832円46銭に対して5,310円62銭でした。お陰様で、売上・利益とも前期実績を上回り、4期連続で増収・増益とすることができました。

次に、部門別の売上高と営業利益です。
電子素材部品部門ですが、売上高は前期比26.1%増の6,878億円、営業利益は前期比68億円増の743億円で、この部門全体は増収・増益となりました。
その中身を要約すると、電子材料製品および電子デバイス製品は、これらの事業に非常に影響の大きい携帯電話、パソコンの需要が当初の予想以上に伸び、需要も拡大しました。また、薄型テレビ、携帯、オーディオプレイヤーの出荷が急増したこともデジタル家電向けの部品需要を押し上げ、結果として当社の部品ビジネスは非常に好調に推移することができました。その結果、電子材料、電子デバイスとも増収となりました。ただし、コンデンサ事業は当社特有の製造上の問題が上期に発生したことで、好調な需要を着実につかみきれなかったことは反省点です。一方、前期はラムダパワーを当社グループに迎え入れ、電源事業の足固めを行いました。これから統合効果を具体的なものにするための施策を展開していきます。
記録デバイス製品についても、ハードディスクドライブがPC用の用途の伸びに加えて、民生用の需要が拡大したことで、HDD用ヘッドの需要も大きく伸びました。ことに当社は、マーケットシェアを2005年3月期の31%から2006年3月期は36%と大きく伸ばし、当社のHDD用ヘッド売上高は前期比4割近い増加となりました。その結果、記録デバイス製品も35%の増収となりました。
記録メディア製品部門ですが、売上高は前期比4.6%減の1,074億円、営業利益は計画外の追加構造改革を実施したこともありマイナス138億円、前期比61億円悪化しました。この期の営業利益には、構造改革費用110億円が含まれています。2006年3月期も、光ディスク製品の市場価格下落に対応した値引きが収益悪化の大きな要因となり、品種構成を含めた値引き額は273億円でした。加えて、原油価格、材料費の高騰等の影響が製造原価に及び、光ディスクの原価低減は計画どおりに進むことができませんでした。これらを背景に、追記型、あるいは書き換え型のCD、DVDの製造から全面撤退したことは先月ご説明したとおりです。前期は工場閉鎖に伴う一時費用が利益圧迫要因となり、大きな赤字を計上しましたが、構造改革により記録メディア事業は収益構造の根本的な改善ができたものと判断しています。

営業利益ですが、前期は構造改革費用の追加投入が悪化の要因となり、前年の営業利益598億円から微増の605億円となりました。営業利益の増減要因は、売上増および品種構成の改善に伴う増益が412億円。合理化、すなわち資材値引き、その他の生産合理化等々で484億円。それから、為替が円安に振れ、1USドル108円の前期に対して今期は113円でした。これによるプラス要因が77億円。マイナス要因として、売価値引きが全体の売上に対して9.2%の809億円、構造改革費用142億円、デンセイラムダの営業権の償却15億円等々を相殺して、7億円の増加となりました。
次に期末配当金です。1株につき従来の予定40円から10円引き上げて、50円とさせていただく予定です。昨年12月に中間配当金として40円を実施していますので、年間の配当金は1株当たり90円となる見込みです。前期は構造改革費用の積み増し等により、一時費用が増加して利益を圧迫しましたが、電子部品事業は増収・増益のトレンドにあります。また、当社の基本方針である「配当は安定的な増加を念頭に置いて行う」ことに照らして、年間90円を提案します。前期比20円の増加となります。また、2007年3月期はこの基本方針に基づき、年間100円の配当金を予定しています。

次に2007年3月期の見通しです。連結損益ですが、売上高は前期比3.1%増の8,200億円、営業利益は前期比35.5%増の820億円、税引前利益は前期比33.1%増の880億円、当期純利益は前期比38.3%増の610億円を計画しています。
市況は現状でも引き続き好調です。部品業界全般としても、昨年の8月から8カ月連続で前年対比2桁の伸びとなり、この4-6月期も2桁の伸びが予測されています。こういった状況で、一時的かもしれませんが、売価の値引き圧力も弱まっています。フラットテレビを始めとする情報家電、携帯、PC、自動車、ハードディスクドライブなど、市場は全般に好調が続くものと見ています。
しかしながら、マクロの面から見ると不安要因があります。原油価格を主体とした材料費の値上がり、さらに、米国経済と為替の動向です。世界的に金利が上がり始めました。金利が上がるとお金が滞って過剰流動性も終焉に近くなり、アメリカにお金が流れにくくなります。日本はこれから金利が正常化してきます。そうしますと、日米間の金利差がつまり、ドル安になることが懸念されます。これも米国にお金が流れにくくなる要因になると思います。「悪くなる」と言われながらもこれまで好調を続け、世界経済を引っ張ってきた米国経済が、ドル安金詰まりで後半は調整局面に入る恐れがあります。しかし、マクロ経済は先行不安があるとしても、TDKは生き延びるために成長し続けなければならない。前年の企業買収で当期の伸び率は若干落ちますが、成長していきます。
電子材料については、前期もたついたコンデンサの回復、金属磁石の需要拡大により、10%の増収を予定しています。電子デバイスは、高周波部品およびインダクタの新製品投入による増収、電源その他の製品については情報家電、高速大容量ネットワーク分野における増収、さらにはデンセイラムダ社の電源事業の増収効果等により、27%の増収を予定しています。デンセイラムダ社は、前期の6カ月分に対し当期は1年分が加わります。この増収効果は260億円ほどですが、これを除いても電子デバイス部門は12%の増収となります。記録デバイスですが、シーゲート社にマクスター社が吸収・合併されたことによる影響は避けられません。HDDマーケットの伸びによる他得意先への売上拡大等で、この影響をかなり吸収できる計画ですが、HDD用ヘッド事業全体としては9.8%の減収を見込んでいます。記録デバイスとしては10.5%の減収計画です。記録メディア部門のデータストレージテープは伸びていますが、光ディスク事業は完全にバイ・セルモデルに展開したこと、および不採算製品の整理により5%の減収を計画しています。

次に、当期および中期事業戦略です。2006年3月期は久々に2桁の成長率を達成することができました。これを持続的なものにするため、次の3点を成長への重点テーマとします。1つ目は人材の強化・増強、2つ目は高収益三本柱づくり、3つ目は顧客志向と経営体質の強化です。
当社の業績を支える事業はHDD用ヘッド、積層セラミックチップコンデンサ、インダクタの三事業です。HDD用ヘッドは、2006年3月期は売上・利益とも大幅に伸ばしましたが、問題は継続的かつ厳しい売価ダウンと客先要求の向上によって、利益率の改善が難しくなっていることです。しかも、シーゲート社によるマクスターの吸収合併で、HDD用ヘッドのマーケットシェアは逆転します。厳しい状況下ではありますが、民生用を始め、市場は拡大傾向が続いています。専門メーカーとして技術的優位性を保ち、かつコスト競争力を強化して、再びナンバーワンのポジションを獲得する施策を打っていきます。
チップコンデンサですが、前上期は製造上のトラブルで伸び悩みました。前下期にほぼこの問題は解決できたので、今期は当社の戦略、かつ当初の目的であった高・大容量の拡大、生産性の向上を実現します。新しいアプリケーションを中心に拡販を図ります。
インダクタですが、前期は需要の拡大および新製品投入効果に支えられ、売上を伸ばすことができました。小型、低背、高機能製品が市場において非常に好評ですが、市場における当社のシェアは完全なトップではなく、この事業をさらに拡大する余地は大きいと考えます。お客様の要求をつかみ、タイムリーな新製品を投入することで、この事業をさらに成長させていきます。
当期はこの三事業をしっかりとした柱にして、他の事業部がこれに続く施策を打ち出します。例えば電源部門は、前期にラムダパワーグループを当社のグループに迎えました。今期は両社の電源事業はシナジー効果を発揮する期だと捉えています。TDKは電源事業の基幹部品となるフェライトを起源とする会社であり、材料開発のノウハウを蓄積した会社です。一方、デンセイラムダ社は電源技術の専門家であり、特に産業用電源ではナンバーワンのシェアを持っています。両社の統合で、材料、すなわちフェライトから、インダクタ、トランス、電源という最終製品までをつなぐ、いわゆるバーティカル・インテグレーション・ビジネスモデルを作り上げることができました。今期から、TDKラムダ統一ブランド製品を投入し、シナジー効果の実現の具体的アクションに入ります。
磁性製品については、エネルギー効率の高い金属磁石が省エネ、環境保護のニーズの高まりを受け、市場は拡大しています。市場での確固たるポジションを確保していくために、生産性の一層の向上がキーになると考えています。開発、製造体制を再構築し、市場ニーズを先取りした商品力で市場の拡大に対応していきます。高周波部品については、当社の強みを発揮できるだけの基盤が十分に出来上がっていません。ユビキタス社会が現実のものになり、UWB、Wi-Fi、WiMAX等の市場の拡大が期待される中で、これに遅れをとらぬよう背水の陣を敷き、選択と集中を基本コンセプトにこの事業の拡大を図っていきます。
当社のセラミック技術、プロセス技術を駆使した通信用モジュールの開発、さらには薄膜技術をブラッシュアップして、薄膜デバイスの開発を急ぎ、特徴ある製品ラインナップにより事業の拡大を目指します。さらに、以上の事業の経営体質を強化すべく、中期的に次の施策を展開していきます。
1つは開発のスピードアップです。新製品比率40%以上、ナンバーワン製品比率60%以上を目標として、特徴ある製品の拡大を図ります。2つ目はモノづくり力の強化です。変化対応、あるいはグローバル対応ということで、リードタイムの短い工程の設置、さらにはマザー工場を確立し、製造原価率10%削減を目標とします。3つ目は、真のSCMの確立です。いわゆる開発から生産、販売、物流に至るまでの一貫体制。すべての部門、機能において市場と同期したSCMを確立し、在庫手持ち月数半減を目指します。
顧客志向、経営体質の強化を図り、先ほど申し上げた目標値をクリアして、新中期計画では営業利益率15%の達成を図りたいと思います。エレクトロニクスはイノベーションをクリアし、さらなる発展が期待されています。TDKは今後ともeマテリアル・ソリューション・プロバイダの役割を果たし、各ステークホルダーに対してエキサイティングな会社を目指しますので、皆様の一層のご支援をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

なお、私はこの決算説明会をもって、社長としての最後の決算説明会になりますが、8年間いろいろとご支援を賜り、心から御礼申し上げます。また、今後も経営陣の一員として、上釜と共に企業価値の拡大を目指してまいりますので、引き続きご支援のほどをよろしくお願いします。

どうもありがとうございました。