

屋内位置測位ソリューション「VENUE®」と最新ロボット技術のコラボレーションがひらく可能性とは
GPS/GNSS*1の電波が届かない屋内の環境において、人やモノの場所を正確に表示できるTDKの屋内位置測位ソリューション「VENUE®」。オフィスビルや病院、倉庫を自律走行できる最新のロボット技術とのコラボレーションによって、人やモノの管理効率を大幅に高め、人手不足の解消や生産性向上につながる大きな可能性を秘めています。

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屋内位置測位ソリューション「VENUE®」とは
TDKの屋内位置測位ソリューション「VENUE®」は、スマートフォンまたは専用端末を使用し、人やモノの位置測位を行うソリューションです。専用アプリをインストールしたスマートフォンや、専用端末を設置したフォークリフト・自走式ロボットなど、移動する物体の位置情報をリアルタイムで可視化できます。
VENUEが位置測位に利用するのは、地球上に固有のものとして存在する地磁気*2です。地磁気は鉄筋や金属等の構造物と干渉することで、場所ごとに特有の磁気パターンを形成しており、そのユニーク性を利用します。あらかじめ測位エリアの地磁気を測定し、地図上の位置情報と組み合わせた「地磁気マップ」を作成します。スマートフォンや、専用端末の磁気センサによって検知された磁気情報から、位置情報が取得できるという仕組みです。

VENUEは、Beacon(Bluetooth)などの屋内測位ソリューションと比べて、無線通信機器を設置する数が最小限で済み、拡張性やコスト面に優れています。また、既存のWi-FiアクセスポイントからのRSSI値(電波強度)も参照することで、高精度な測位を実現しています。

このようにVENUEは、高精度に広範囲を測位でき、かつ低コストで導入可能であることから、オフィスでの従業員のリアルタイムな在席状況や、工場・倉庫・建設現場・病院等での人や物の動きを可視化できます。また、VENUEの可能性はこれだけにとどまらず、他のソリューションと組み合わせることで、さらに大きな価値を提供できると考えています。そのひとつとして、ugo株式会社が提供する次世代型アバターロボット、「ugo(ユーゴー)」との協業に向けて行った実証実験の例を紹介します。

ロボットとのコラボレーションで
活用の幅が広がる
2本のアームと移動機能を持った「ugo」は、LiDAR*3をはじめとした複数のセンサにより、安全な自律走行が可能で、人に替わって施設内の警備や設備の点検、棚卸し作業などに活用できる次世代アバターロボットです。(画像提供:ugo株式会社)
今回のTDKとの実証実験では、まずVENUEをインストールしたスマートフォンを「ugo」に持たせ、あらかじめ記憶させたルート上を巡回する「ugo」をVENUE上で測位できる環境を構築しました。これにより、同じ画面上でVENUE端末を持つ人と「ugo」の位置を同時に可視化することを検証しました。
「ugo」には360度の視野をカバーするカメラが搭載されており、仮に不審者や不審物を発見した際にその位置情報をリアルタイムにVENUE上で確認する、といった活用方法が考えられます。また、施設内の警備や点検のほか、「ugo」にバーコードやQRコード、RFIDタグのような資産管理タグのスキャナーを持たせて、無人での資産管理が行えることも検証できました。
人やモノの位置を高精度に測位でき、かつRFIDのような資産管理ソリューションとの連携が可能なVENUEと、定期的に決められたルートを無人で安全に自走できる「ugo」とのコラボレーションにより実現できた例であり、人による作業が不要となることから、様々な業界で起きている労働者の減少という問題に対して有効な解決策として期待されます。
VENUEとugoの協業がひらく可能性
VENUEは前述のように、測位を始める前に対象エリアの地磁気情報を測定した「地磁気マップ」が必要です。これまでは人がスマートフォンを持ってその測定を行っていましたが、同様の作業が「ugo」によって実現できれば、VENUE導入までの時間を短縮でき、また人の立ち入りが困難なエリアでのサービスの展開も可能となることが期待されます。
VENUEとugoのコラボレーションについて、ugo株式会社の創業者であり代表取締役CEOの松井健氏は次のように話します。「あらゆる人やモノの場所、状況が把握できることは、業務DXに必要な要素です。当社のロボット『ugo』が業務を遂行する上で、現場で働く人やモノと連携することで、人との協働におけるロボットの行動計画の最適化や、リアル空間の状況をデジタル空間で管理し、全体最適を行うといったことが実現できるようになります」。

代表取締役CEO
松井健氏
画像提供:ugo株式会社
VENUEは、地磁気センサと加速度センサ、ジャイロセンサといった複数の高精度なセンサとBluetooth、Wi-Fiを組み合わせた屋内位置測位アルゴリズムにより、高精度でありながらコストを抑えた導入が可能です。「低コストで導入できる点はお客様にとってもメリットが大きく、従来の屋内位置測位技術とは一線を画するものと認識しています。今後は、当社のようなロボットとの連携も含めた、様々なアプリケーションでの導入が進み、活用事例も増えてくるのではと期待しています」(松井氏)。
TDKでは、「VENUE」を他のソリューションと組み合わせて活用することでその価値を最大限に高め、社会の様々な問題への解決に貢献することを目指しています。VENUEの詳細および「ugo」の詳細は、下記Webサイトをご覧ください。
用語解説
- GPS/GNSS:GNSS(global navigation satellite system)は、衛星測位システムの総称で、複数の衛星からの信号を受信し、地上での位置を計測するシステム。GPS(global positioning system)はアメリカが開発したGNSS衛星のひとつ。
- 地磁気:地球が発する磁気と磁場のこと。地球上のあらゆる場所で固有の値を示すため、屋内外での位置情報の特定に利用できる。
- LiDAR:Light Detection And Rangingの略語。レーザーを照射して、反射光の情報をもとに対象物までの距離や形などを計測する技術。