
【CEATEC 2019】
見えないスピーカーが、車内デザインを一新する
今回は、アジア最大級の国際展示会である『CEATEC 2019』に、TDKが出展する注目の新製品・ピエゾスピーカ「PiezoListen™」をご紹介します。PiezoListenは、世界最薄クラスの薄さ(約0.49mm)で、設置場所を選ばずに高音圧・広音域な音を生み出すことができる、どこでもスピーカーです。その応用範囲は広く、例えば車載用途では、クルマのダッシュボードやディスプレイ、壁などから広がりのある音を出せ、車内デザインを一変させる可能性を秘めています。

CASEで注目される、近未来の“車内デザイン”に最適なスピーカー
クルマは、現在、CASE(コネクテッド、自動運転、シェア&サービス、電動化)と言われる、新たな潮流が急速に広がっています。こうした中、注目を浴びているのが「車内空間」です。
“コネクテッドカー”としてクルマがICT端末としての機能を有し、また“自動運転”によって人の運転の必要がなくなると、車内空間はくつろぐアメニティルームとなります。これによって、大画面で高音質なAV機能、シートやエアコンなどの車載装置とICTシステムの融合など、デジタル技術による新たな“サービス” が考えられています。この背景には、エンジン音がなく静かな “電気自動車”の実現があります。
この近未来の車内空間は、操作的な機能はディスプレイに集約して、広い空間を確保するデザインになると言われています。さらに、クルマ自体と会話して操作する技術も進むと予測されるため、オーディオ機能の充実を含め、優れた音響設備の整備も重要になってくるでしょう。
従来にないアメニティルームに変わる、車内空間

そこで最適なのが、TDKが新開発した、ピエゾスピーカ「PiezoListen™」です。ピエゾスピーカとは圧電素子(※1)の振動の原理を利用したスピーカーで、ピエゾアクチュエータと呼ばれる薄板状の圧電素子を使って音を出します。
PiezoListenは世界最薄クラスの薄さ(約0.49mm)で、設置場所を限定することなく取り付けることができ、車内至るところで振動させ音を出すことができます。そのため、スピーカーの“穴”をつくることなく、ダッシュボードやディスプレイの裏などに張り付けることが可能で、車内デザインの自由度はぐっと高まります。さらに、従来の圧電素子では難しいと言われてきた低周波領域に強く、400Hz~20,000Hzの幅広い音域を再生可能です。
あらゆるものをスピーカーに変える、PiezoListenの広大な可能性
PiezoListenは、超小型・薄型でサウンドのポジションを自在に設計できるサウンドポジショニング用のスピーカーと、より高音圧・広音域を実現できるワイドレンジ用のスピーカー、2タイプをラインナップしています。
TDKのサウンドポジショニング用PiezoListenは、薄型テレビで活躍しています。ここでは、PiezoListenは画面上部に複数、設置されています。一般的に、薄型テレビの電磁式スピーカー(※2)は下部に設置されており、画面上部のPiezoListenと相乗効果を生み出すことで、全体の音場定位を引き上げ、映画館のような臨場感を体感できる音響システムになっています。
ピエゾスピーカを使用したテレビの例

テレビや自動車以外にも、PiezoListenは、タブレット、ノートパソコン、ウェアラブル機器、スマートフォンなどのスピーカー、VRのヘッドシステム、産業機器のタッチパネルなど、多種多様な用途で活躍が期待されます。また、PiezoListenはスピーカー以外にも、圧電振動で逆位相(※3)を行うことによって、例えば、クルマの車内空間の音のノイズや振動音を少なくする“ノイズキャンセル”への技術応用も考えられます。
PiezoListenは、TDK独自の積層技術と素材技術により、薄型の高変位の圧電素子を開発したことで実現しました。約0.49mmという世界最薄クラスの圧電素子の中は、10層以上の圧電シートが積層され、スルーホールと呼ばれるレーザー照射技術によって接続されています。圧電技術であらゆるものをスピーカーに変えるPiezoListen。これまでにない新たなソリューションを、幅広い分野で展開していきます。
ピエゾスピーカPiezoListen™


本製品は、2019年10月15日~18日まで、幕張メッセで開催されるアジア最大級の国際展示会である『CEATEC 2019』に出展します。今回は「Make It Attractive」をテーマにTDKが得意とする7つのマーケットにおいて、幸せな未来社会を引き寄せるための製品を、デモ機や映像によりご紹介いたします。詳細は特設サイトをご覧ください。
用語解説
- 圧電素子(ピエゾ素子):水晶や特定の種類のセラミックなどに圧力を加えることで生じるひずみに応じて、電圧が発生する現象を圧電効果という。圧電素子(ピエゾ素子)とは、その圧電効果を利用して電気を取り出したり、逆に電圧をかけることで振動を取り出す電子部品のことを指す。
- 電磁式スピーカー:電磁石の力を利用して音を出すスピーカーのこと。
- 逆位相:交流信号の位相(電波や電流が発生する周期的な波形のうち、同じ地点に相当する個所を測った位置や状態のこと)が反転(位相差180°)したもの。