[ 2004年3月期 通期 連結決算説明会 ]2004年3月期 連結業績概要と2005年3月期の見通しについて
代表取締役社長 澤部 肇
皆さんこんにちは。日ごろは大変お世話になり、ありがとうございます。また、本日はお忙しいところをお集まりいただきまして御礼申し上げます。
早速、弊社2004年3月期連結業績からご報告いたします。
損益概況でございます。売上高は前期比8.2%増の6,589億円、営業利益は前期比約2.5倍の543億円、税引前利益は前期比3倍の556億円、当期純利益は3.5倍の421億円でした。なお、営業利益には構造改革に伴う費用75億円が含まれております。
1株当たりの利益は、2003年3月期90円56銭が、2004年3月期317円80銭です。1株当たり株主資本は4,176円32銭から4,351円80銭になりました。2004年3月期の最終実績は、今年の1月29日、第3四半期の決算時にご報告いたしました見込みを達成しました。前期に引き続き増収増益とすることができました。
部門別の売上でございます。
電子素材部品の売上高は前期比10.7%増の5,229億円です。この部門全体としては増収を達成しましたが、その中身を要約します。
電子材料製品及び電子デバイス製品につきましては、昨年の上期はSARS、イラク戦争等により低調でしたが、夏以降は非常に好調になりました。PC、携帯等の部品需要の急激な回復、並びに薄型テレビ、デジタルカメラ、DVDレコーダー等のデジタル家電の好調により、売上高並びに受注高が増加しました。こういった市況によって、下期は数量的にも極めて繁忙になり、工場稼働率も上昇しました。
記録デバイス製品は、HDD用ヘッドの市場の拡大、並びにマーケットシェアの増加によって売上高を大きく伸ばし、当部門の売上高の増加につながりました。
これらを製品別にブレークダウンしますと、電子材料製品は前期比1.3%減の1,668億円、コンデンサはデジタル家電、通信、PC、自動車と全般にわたって需要が回復しました。下期は大変忙しい状況になり、受注も高水準が続いております。これに加え、品種構成の改善、新製品の拡販に努めた結果、売上高も増加しました。フェライトコアは、テレビの薄型化に伴いまして、偏向ヨークコア、あるいはフライバックトランス用コアが大幅に減少いたしました。ADSL用などの通信市場向けは伸びていますが、全体としては大幅減収となりました。マグネットも数量は前年を上回りましたが、製品の小型化、売価ダウンにより減収となりました。
電子デバイス製品は、前期比4.2%減の1,080億円でした。インダクティブデバイスは、自動車の電装化の促進、携帯電話の復調、デジタル家電の伸長によりまして、EMCフィルタ、SMDコイル等が増加し増収となりました。センサ・アクチュエーターもPC向け、通信分野向けを中心に大きく伸びました。しかしながら、アミューズメント向けのゲームやパチンコ用の電源の市況が悪化して大幅な減収により、当製品としては減収となりました。
記録デバイス製品は、前期比30.8%増の2,301億円。HDD市場は堅調で、前期比約20%伸びました。ヘッドの員数が1台当たり2.65個から2.6個とあまり落ちなかったこと、占有率も30%から33%に順調に増加したこと等により、大幅な増収となりました。
IC関連その他製品は、前期比20.7%増の179億円。通信インフラ関係の市場の低迷により、LAN/WAN関係の半導体が減収となりましたが、ノイズ対策のための電波エンジニアリング製品が、通信向け、自動車向けを中心に増加したこともあり、増収となりました。
電子素材部品部門を市場分野別に見ます。
情報分野は56%の構成比で、前期比22%増。自動車分野は9%の構成比で、前期比1%増。通信分野は9%の構成比で、前期比11%増。AV分野は11%の構成比で、17%の減収になっています。これは、先ほど申し上げましたアミューズメント関係、アナログ関係の減収によるものです。
記録メディア・システムズ製品部門は、オーディオ・ビデオテープの減少分を光メディアの増収でカバーしました。しかしながら、ソフトウェア部門の不振をカバーすることができず、わずかながら売上高が減少いたしました。
地域別の売上概要は、アジアが23%増、欧州4%増、国内2%増ですが、米州は16%の減少となりました。海外売上高は前年比10.6%増の4,902億円。海外売上高比率も前年から1.6%上昇して74.4%となりました。
次に連結営業利益です。前年の営業利益221億円から約2.5倍の543億円となりました。322億円の増益です。その内容は、売上高の増加並びに品種構成の改善による利益増が633億円。合理化、資材値引き、歩留まり改善、経費の圧縮等で401億円。これが増益要因です。減益要因としては、売価値引き8.1%で580億円、為替の変動で、1USドル122円から113円に円高になったことによる132億円の減益。以上で322億円の増益となりました。
部門別の損益です。電子素材部品部門は、HDD用ヘッドの好調、下期からの部品需要の拡大、収益の改善が進み、当部門の営業利益は前期比360億円増の565億円。その結果、通年でも2桁の営業利益率を確保することができました。
記録メディア・システムズ製品部門は、磁気テープの減益を光メディアの収益改善によってカバーしました。しかしながら、米国ソフトウェア子会社の不振により、前期比37億円悪化してマイナス22億円となりました。このソフトウェア子会社は昨年12月に売却しました。したがいまして、同部門は光メディアを中心とした事業から適正な利益を確保できる収益構造の確立を急ぎたいと思います。
キャッシュフローです。フリーキャッシュフローは、営業利益の改善に加えて資産効率の向上を図り、前期577億円から192億円改善し、769億円となりました。棚卸資産保有月数も、昨年の1.5カ月から1.4カ月に改善いたしました。有形固定資産回転率も昨年の年2.5回転から3回転に、売掛債券保有月数も2.8カ月から2.5カ月に改善しています。
次に単独決算です。
売上高は前期比1.4%減の3,161億円、営業利益は前期比44.8%減の18億円、経常利益は前期比13.2%増の103億円、当期純利益は前期の1億円に対して45億円になりました。営業利益の減少については、後ほど経理部長から詳しく説明いたしますが、営業損益に入るものと営業外との会計処理によるものであり、基本的に体質は良くなっております。
期末配当金は、1株につき5円増加して、30円とさせていただく予定です。年間の配当金は、昨年12月に実施済の中間配当金25円と合わせて55円となる予定です。
2005年3月期の見通しです。
連結損益は、売上高3.2%増の6,800億円、営業利益は10.5%増の600億円、税引前利益は11.5%増の620億円、当期純利益は10.4%増の465億円を計画しております。
2005年3月期の想定為替レートは105円です。これによる前期からの影響金額は、売上高で300億円減収、営業利益で119億円の減益になります。以上を吸収して、2005年3月期は増収増益を計画しています。
さて、景気はだいぶ上向いてきたようですが、この景気が持続するのか、あるいは改善されていくかということについては、多少不安要因がございます。特に、エレクトロニクスは中国や米国との関係が深いわけですが、両国の景気の持続性が大丈夫なのかどうか。あるいは、日本の為替介入を起点とする過剰流動性相場によるバブルの発生リスク、アメリカの赤字バブルの崩壊などが気になるところです。
しかしながら、マクロはさておき、エレクトロニクスは米国、中国と同様に日本も極めて堅調です。電子部品も、1-3月期は昨年の10-12月期に比べて、あまり落ちませんでした。4-6月期の受注も、非常に好調でした。私どもも、期首計画以上のご注文をいただいております。
アテネオリンピックまでは大丈夫だろう、アメリカの大統領選挙までいけるのではないか、年末まではいけるのではないかという形で、好調が持続するのではないかという見方が業界としては支配的になっています。しかし、「まだ」は「もう」、「もう」は「まだ」ということもありますので、慎重に見ていきたいと思いますが、中期的に見た場合、よほどのディプレッションでもない限り、エレクトロニクスは強い時代に入ったと見てよろしいのではないかと思います。
ご承知のように、開花期を迎えたデジタル情報家電、カーエレクトロニクス、ITオフィス、それらを結ぶデジタルコンバージェンスということで、2005年ごろに多少の調整が入ったとしても、2006年、2007年、2008年に向かって期待できると思っています。
これからの数年を考えたときに、キーワードとなるのは、「新製品」「中国」「為替」「自然との融合」の4つだと思っております。
「中国」は、生産基地から市場へと比重が移っているように思います。単に労働コストの安いものだけを利用していただけでは、ローカルメーカーに追いつかれてしまいます。したがって、特徴を持った、あるいは作り方に特徴をもった形で事業展開していく新たなステージに入ったと思っています。
「為替」は、基本的には円高に推移していくと考えております。100円を切る場面も出てくると思っております。為替対策というと、円以外のところでものづくりをするとか、予約ということはありますが、真の円高対策は為替変動に影響を受けない、競争力のある、強い、良い商品を作り続けるしかないと思っております。
さらに、「自然との融合」は、われわれ物作り屋として、環境問題はますます重要になっています。コスト面、社会との関係で、いかに自然と融合していくかということが非常に重要になっています。後世に対する責任という面でも、環境問題はきっちりしていきたい。それに相応しい物作りをしなければならないと思います。
以上の3つの課題が「新製品」に結びついていくわけです。こういった中で成長を続けていくためには、いかに市場が望む新製品を作り続けられるか。エレクトロニクスの宿命である価格下落に対応するためにも、価値ある新製品を作り続けるしかないと思っております。
私どもTDKは幸い、更なる成長が期待できるエレクトロニクス分野におります。そこにいれば自動的にハッピーになれるということではありませんが、チャンスは非常に大きいと思っています。
一方、デジタル・ネット社会になり、スピードも早まっています。キーデバイスの標準化も進み、市場での競争は、ますます強烈・激烈になっております。圧倒的に差別化された新製品でない限り、すぐに価格戦争に巻き込まれ短命に終わってしまいます。こういったデジタル時代に勝ち残っていくためには、本業にしっかりと軸足を置いて、お客さまのニーズをタイムリーに商品化し、提供していくしかないと思っております。
2005年3月期は、売上の3分の1は新製品、それも価値のある新製品でいきたいということで、目標値としては新製品比率35%以上、ナンバーワン製品比率50%以上を考えています。この35%以上はHDD用ヘッドを除いております。HDD用ヘッドはほとんどが新製品ですので、入れると50%を越えてしまいます。
そのためにやらなければならないことは、何が差別化になり、勝っていくための要素技術なのかを明確にして、その拡充を徹底的にやっていくと同時に、開発体制も再編いたしました。テーマも、より厳しく選別いたしました。ヒット率、開発効率を上げていきたいと思っています。
終了した2004年3月期は、好条件が重なったHDD用ヘッドに支えられた成長であり、収益であったと思っています。特に、第3四半期のHDD用ヘッドはすべてうまくいき、できすぎぐらいに思っています。しかし、記録デバイス事業は好不調が激しいですから、記録デバイスや記録メディア・システムズ製品を除いた電子材料、電子デバイス製品でしっかりとした収益のプラットフォームを作り、その上に記録デバイスや記録メディア・システムズ製品の収益が乗る構造を作っていきたいと思います。
真のe-material solution providerとして、特徴のある電子材料、電子デバイスの開発、それを活かすプロセス技術で価値ある新製品を継続的に出し続け、新たな成長へ挑戦していきたいと思っております。市場の要求する小型、軽量、高性能、廉価については、HDD用ヘッドで培った薄膜技術を他の製品に積極的に活用してまいります。楽しみな部品の芽も出てきています。
また、チップコンデンサの大容量化、センサ・アクチュエーターの積層技術、インダクティブデバイスの新製品等、収益力・競争力の十分にあるものも出てきましたが、フェライト、マグネット等の磁性製品、将来の柱と期待する電源製品、記録メディア・システムズ製品など、収益力に多くの問題を抱えている商品もありますので、これらの製品群につきましては、新製品、新工法の導入を図って収益力の向上を急ぎたいと思っています。
もちろん、記録デバイスもしっかりと収益を上げていきます。2005年3月期はWD社のHDD用ヘッドの内製化によって、売上高は当面減少します。シェアも落ちます。しかしながら、ナンバーワンの技術力を維持し続けることによって売上も拡大し、シェアも戻ってくると思っております。また、HDDはノンIT市場にも広がっています。小型化、大容量化、廉価対応といったノンITへの対応も、すでに手を打っております。簡単ではありませんが、トップを走り続けたいと思います。
貸借対照表については、だいぶ改善してまいりましたが、問題は現預金だと思います。今のような低金利時代、現預金は少ないほど良いと考えますが、リスクヘッジのためには持たざるを得ないと思っています。イベントリスク、為替変動リスク、流動性不安リスクなどが考えられます。同時に、世界的な金余り現象が終了することも考えられます。われわれは、リスクの高いハイテクで仕事をしているということを考えますと、ある程度の現預金を持っていく必要があると思います。
しかし、大切なことは、株主からお預かりしている大事な資金でございますから、企業価値を拡大するために、基本的には新製品売上の拡大のための施策を積極的に打っていくことに活用したいと思います。
われわれの今の状態は、谷底からやっと這い上がり、岸壁の中腹当たりにへばりついているような状態で、うっかりすると手がすべったり、風に煽られたりします。しっかりと安全を確保して、成長を目指したいと思っています。
不足しているのは成長力です。これを強化するために、自分たちの得意領域でやるべきことを着実にやって、新製品の拡大、企業価値の拡大を図ってまいりたいと思います。引き続きご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。