株主・投資家情報 | IRイベント | Investors Meetings

TDK Investor Day
(2024年5月22日開催)

社長執行役員CEO 齋藤 昇

社長執行役員CEO 齋藤 昇

齋藤でございます。私より長期ビジョンおよび新中期経営計画についてご説明します。

1. 長期ビジョン

長期ビジョン

当社は、東京工業大学で発明された磁性材料フェライトの工業化を目的として1935 年に設立されました。
このスライドの写真は、2代目社長の山﨑貞一が創業の精神を揮毫している写真です。「創造によって文化、産業に貢献する』という社是のもと、独創的でイノベーティブな製品を社会に提供し続け今日まで成長してきております。

社長としての私のコミットメント

社長としての私のコミットメント

お伝えしたい私のコミットメントを明記します。
今回公表する長期ビジョンおよび新中期経営計画は、私が社長に就任してから最初に策定したものです。当社マネジメントと関係者の間で、何度も当社の競争優位性、未来の10年後のありたい姿について議論し、そこからバックキャストする形で策定しました。
・当社のコア技術によってお客様のNo1パートナーになり、社会のサステナブルな未来に向け、その変革を加速する。
・事業ポートフォリオマネジメントを強化し、ROIC-WACCスプレッドを高め、キャッシュフロー拡大と資本効率を改善させ、財務資本を高める経営を強化する。
・当社が代々引き継いで成長させてきたフェライトツリーを進化させ、将来の財務資本の源泉となる未財務資本を高める経営を強化する。
・投資家の皆様とのさらなる協働が必要との考えから、皆様との対話・IRを強化する。
これらを企業価値の向上につなげていきます。
この私のコミットメントを踏まえ、これから長期ビジョンについてご説明します。

TDK Value Structure

TDK Value Structure

当社には、これまで、そして今後も引き続き従業員の心に刻まれ続けていく精神として、「創造によって文化、産業に貢献する」という社是、「夢 勇気 信頼」という社訓があります。
この不変の精神のもと、これまでに定めたTDK Value Structureを見直し、長期ビジョン、重要課題(マテリアリティ)、中期経営計画を新たに策定しました。

TDK Transformationに込めた2つの想い

TDK Transformationに込めた2つの想い

このTDK Value Structure のもと、TDKのありたい姿として、長期ビジョン「TDK Transformation」を策定しました。
この長期ビジョンには、社会のTransformationへの貢献と言う意味と、社内、すなわち当社自身がTransformし続けていくという2つの意味があります。この2つのサイクルを加速させ、サステナブルな未来の実現に貢献するという想いをこめています。
当社はこれまでも、オーディオ・ビデオ、パソコン、スマートフォンなど各時代の産業をけん引するアプリケーションに欠かせない製品を提供することで社会の変革に貢献してきました。今後も、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめとした社会のTransformationはより一層加速し進化していくことが予想されます。これに伴い、TDKが貢献できる領域は広がり続けると考えています。

社会のTransformationに貢献します

社会のTransformationに貢献します

当社が見据える社会のTransformationは、このスライドで示すイメージです。 前中期経営計画期間中においても、Seven Seasとして社会の変革にインパクトを与えるアプリケーションを見定めてきました。
今後も、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった変革の潮流は継続すると考えています。
6Gネットワークが実装される社会においては、さまざまなデバイスがネットワークに接続される端末となります。これに伴いやり取りされるデータ量は膨大に拡大していきます。このような社会においては、世界の電力供給量がデータセンターの消費電力量に追い付かなくなることが予想されるため、さまざまな電子機器のエネルギー効率を向上させることが求められます。エネルギー効率の向上に向け、消費電力量が低く、小型軽量化され、CO2排出量が少ない電子部品や材料が貢献できる領域は今後も拡大し続けていくと考えています。

TDKのTransformationを加速

TDKのTransformationを加速

社会のTransformationに貢献し続けるためには、TDK自身も変革を加速させていくことが重要だと考えています。当社は、オーガニック成長とM&Aの両輪で、事業ポートフォリオを入れ替え、成長してきました。この両輪で、材料×プロセス×ソフトウェア技術を組み合わせた電子デバイス領域でのリーディングポジションを確立し、お客様のNo.1パートナーとしてサステナブルな社会の実現に貢献します。
このスライドで示しているのは当社のビジネスモデルです。左側にある「経営の変革力」と右側にある「ポジショニング」が、稼ぐ力・投資力の向上に寄与する大きな2つのドライバーとなります。
多様な人財による「人財の変革力」を基盤に、長期的に技術・市場のトレンドを見極める「未来構想力」と構想した未来を実現する「実行力」との両輪で「投資余力の確保と最適投資」を実行し、経営の変革力を高めていきます。
マーケット・お客様のニーズをいち早くとらえ、独自の材料、パーツ、モジュールからシステムまで幅広いソリューションを提供するサイクルをより一層進化させていきます。これによりサステナブルな社会の実現に貢献することで、当社のポジショニングのさらなる向上を実現していきます。

重要課題(マテリアリティ)を設定

重要課題(マテリアリティ)を設定

長期ビジョンの実現に向け、TDKグループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を改めて見直しました。マテリアリティは、すべてのステークホルダーに対する長期的な価値創造を前提としたうえで、自社の企業価値を最大化させるものにフォーカスし、社会と企業のサステナビリティの同期化という考え方を採用しています。

2. 前中期経営計画の振り返り

前中期経営計画の振り返り

新中期経営計画についてご説明する前に、前中期経営計画の振り返りについてご説明します。

前中期経営計画「Value Creation 2023」の振り返り

前中期経営計画「Value Creation 2023」の振り返り

前中期経営計画の立案時においては、小型二次電池に次ぐ収益源を多様化し、当社を新たな成長ステージに乗せるべく成長戦略を推進してきました。
この結果、収益源の多様化が進みました。キャッシュマネジメントも進捗し、3か年累計で還元後フリーキャッシュフロー(FCF)の黒字化を達成することができました。
一方、営業利益率、ROEは目標未達となったことが課題として残りました。この背景には、HDD市場の急減速による関連事業の収益悪化、その他の課題事業の収益性改善が進まなかったことが挙げられます。
事業別に見ると、受動部品事業が二次電池に次ぐ収益源となりました。センサ応用製品についても、TMRセンサやMEMSセンサが収益に貢献する事業となりました。小型二次電池はシェア拡大により収益性が向上しました。中型二次電池はJV稼働が本格開始し成長を実現していく基盤が固まりました。

資本効率の改善が継続課題

資本効率の改善が継続課題

キャピタルアロケーションについて当初の計画と実績をご説明します。
前中期経営計画期間においては、3年間累計で設備投資額7,500億円を予定していました。為替変動による増加分が約1,000億円、これに加え今後成長が期待できる事業に対し先行投資を行い、3年間累計で7,856億円となりました。各セグメントに市場環境に応じて適切なアロケーションを実施しました。運転資本改善や中型二次電池のJVへの設備売却によるキャッシュインフローの増加もあり、目標としていた株主還元後FCFプラスを達成することができました。他方、持続的なキャッシュ創出力と資本効率の改善が課題と認識しています。以上が前中期経営計画の振り返りとなります。

3. 新中期経営計画

新中期経営計画

次に、新中期経営計画についてご説明します。

新中期経営計画の位置づけ

新中期経営計画の位置づけ

2025年3月期から開始する今回の新中期経営計画は、長期ビジョンからバックキャストする形で策定しました。この長期ビジョンの実現に向け、今回の中期経営計画期間は事業基盤強化の期間と考えています。

新中期経営計画のポイント

新中期経営計画のポイント

企業価値向上のためには、FCF創出の最大化、資本コストの低減、期待成長率の向上が、重要であると考えています。この考えにもとづき、新中期経営計画においては、キャッシュ・フロー経営の強化、事業ポートフォリオマネジメントの強化、フェライトツリーの進化(未財務資本の強化)を3本柱としました。

財務・未財務KPI

財務・未財務KPI

この3本柱を踏まえ、新中期経営計画においては、財務的価値の追求だけでなく将来の財務的価値の源泉となる未財務の価値を追求し、短・中期的な業績目標達成と長期的に価値を生み出し続けるための取り組みを両立する事により、持続的な企業価値の向上を図ります。この考え方のもと、従来の財務KPIに加えて、未財務KPIを設定しました。
主要事業の成長戦略の確実な実行に加え、課題事業への対処を含むポートフォリオの変革、未財務資本の強化等により、これらのKPIを上回る成果を目指していきます。

営業キャッシュフローの成長を目指します

営業キャッシュフローの成長を目指します

1つ目の柱となる営業キャッシュフロー重視の考え方についてご説明します。当社はこれまで、オーガニック成長とM&Aの活用により、事業ポートフォリオを変革し、稼ぐ力を高めてきました。このグラフは3年間移動平均の営業キャッシュフローを示していますが、過去1,000億円水準であった営業キャッシュフローが2,000億円レベルに向上してきています。この新中期経営計画期間中には3,400億円水準を目指していきます。
また、当社は約20年前からTVA※1(TDK Value Added)の導入を始めとして資本コストを重視した経理財務マネジメントに取り組んできました。2022年3月期からは、この後ご説明する投資傾斜配分のマトリックスを導入しました。
今期からは、ポートフォリオマネジメントへと進化させていきます。

※1 TVAは事業活動によって企業が新たに創造した付加価値を計る指標であり、経営上の重要判断指標として採用しております。TVAとは当社グループ独自の付加価値指標で、利払前税引後利益と各事業の事業用資産に対し最低限求められる収益(株主資本コスト)を比較する指標です。

事業ポートフォリオマネジメントを強化します

事業ポートフォリオマネジメントを強化します

当社は、2022年3月期から4つのセグメントの中にある約80のCBU(キャッシュフロー・ビジネス・ユニット)を、「投下資本収益性」と「事業将来性」の2つの軸で6つに階層化、投資配分の強弱を明確化し、ポートフォリオの転換と最適化を進めてきました。投下資本収益性については、ミニマムハードルレートとして10%を設定し、これをクリアし、かつ将来性も高い事業には優先的に投資しています。
新中期経営計画期間からは、投資配分の2軸マップから、事業ポートフォリオの2軸マップへと進化させ、ミニマムハードルレートを下回る事業に対しては、営業利益率が黒字であったとしても先手を打って適切にモニタリングを行い、ターンアラウンドに向けた施策を早急に行っていきます。そのうえで、ベストオーナーの観点からも事業の競争優位性、持続性を検討し、先手のポートフォリオマネジメントを強化していく予定です。
すなわち、事業が図の左下側の象限に入る前に、各事業の競争優位性、将来性を吟味し、先手で施策を実行していくことがこの「先手」に込めた意味になります。このような施策を行うことで、資本収益性を改善し、成長領域への資源配分を優先させ、成長事業をより強化していきます。

(参考)事業ポートフォリオマネジメントの事例

(参考)事業ポートフォリオマネジメントの事例

当社は、これまでも産業のライフサイクルを見据え、M&Aやダイベストメントによりポートフォリオの転換を行ってきています。
例えば、オーディオテープは2000年代にダイベストメントを行いました。受動部品のSAWデバイスにおいては、EPCOS社を買収後にプロセス技術を進化させ、質と収益性を改善しターンアラウンドを達成しました。その後、ベストオーナーの観点から、2017年にQualcommへ約3,000億円で売却しました。
この売却による資金をもとにセンサ事業を強化するようInvenSenseを買収し、センサのポートフォリオ拡充を進め、ミニマムハードルレートを越える高収益事業へと転換させました。
今後は、よりミニマムハードルレートを意識し、後手に回ることのないよう先手でのポートフォリオマネジメントを行っていきます。

事業ポートフォリオ戦略

事業ポートフォリオ戦略

今後、80の個別CBUごとにポートフォリオマネジメントを推進・強化していく事で、この図の通り各セグメント別のROIC向上を目指していきます。
左側の図は、縦軸にROIC、横軸に3か年の売上成長率を示しています。
新中期経営計画期間より、セグメント別ROICの目標値および実績値を開示することで、資本収益性をより重視していくとともに、投資家の皆様との対話においても、各事業の資本収益性に基づいた、より具体的な議論をしていきたいと考えています。
なお、磁気応用製品やセンサ応用製品に関しては、この中期経営計画期間においてはこの目標値となりますが、中長期的には収益性向上に向けたさらなる施策をさらに進めることで、ミニマムハードルレートを越えることを目標にしていきます。

成長牽引事業の成長戦略

成長牽引事業の成長戦略

成長をけん引する事業の成長戦略についてご説明します。
モビリティ関連においては、xEV化、ADAS化等の電装化の進展により、需要のさらなる伸びが期待される高信頼性受動部品、センサへの積極的な投資を継続します。競争力を強化しながら確実に需要を捉えていきます。
ICT関連においては、AI機能搭載やフォルダブルスマートフォン等高機能端末の需要増に合わせ、シリコン負極リチウム電池等の高付加価値製品やTMRセンサ等の販売をより一層拡大していきます。
産業機器関連においては、脱炭素化、再生エネルギー普及の進展に合わせ、家庭用に加え商業用ESS向け、データセンター用UPS(Uninterruptible Power System)電源等における中型二次電池の需要増が期待されるため、JVのシナジーを最大限に発揮させ、中長期での販売の拡大を進めていきます。

資本効率の向上に向けた財務戦略

資本効率の向上に向けた財務戦略

成長戦略を達成するための財務戦略についてご説明します。
資本効率の向上に向けた財務戦略の大きな方針としては、事業ポートフォリオマネジメントの強化によりミニマムハードルレート 10%を下回る事業のROIC改善と方向性見極めを強化します。また、成長事業ごとの投資も継続的に強化します。さらに、成長戦略の推進による資金ニーズを踏まえた最適なバランスシート(B/S)構造を実現するとともに、株主還元についても強化していきます。以上3点となります。

キャピタルアロケーション方針(FY25/3~FY27/3累計)

キャピタルアロケーション方針(FY25/3~FY27/3累計)

キャピタルアロケーション方針としては、3年間累計で約10,000億円の営業キャッシュフローを見込んでいます。このうち約7割を設備投資に充てる予定です。設備投資の割合としては、ここに記載の通りで、約46%をエナジー応用製品、約29%を受動部品、約12%をセンサ応用製品、磁気応用製品およびその他事業にも一部投資する予定です。残り3割は、約1,500億円を戦略投資に充て、M&AやCVC等を通じた長期的な成長機会獲得を目指し、約1,500億円を株主還元に充てるよう考えています。

株主還元のさらなる強化へ

株主還元のさらなる強化へ

新中期経営計画においては、事業環境の変化、成長事業への投資、ROEやDOE(親会社所有者帰属持分配当率)等を総合的に勘案し、従来の配当性向30%目途を今回引き上げ、配当性向35%を目途に株主還元を行っていく予定です。2025年3月期の年間配当金は120円を見込み、4円の増配を予定しています。戦略投資の状況を鑑み、機動的な自己株式取得も検討し、株主還元を強化していきます。

4. 変革を支える未財務資本

変革を支える未財務資本

ここまで、中期経営計画の戦略および財務目標値についてご説明しましたが、企業経営においては、財務的価値の追求だけでなく“未来”の財務価値とも言える、ESGをはじめとした活動の両輪によって企業価値を高めることが重要です。
当社では、このようなサステナビリティ活動や、人的資本、知的財産、ガバナンス等の取り組みを未来の価値創造活動と捉え「未財務資本」と定義しています。
これらの取組についてご説明します。

さらなる成長に向けてフェライトツリーを進化させます

さらなる成長に向けてフェライトツリーを進化させます

冒頭でもご説明をしましたが、これはTDKがこれまで事業として手がけてきた製品を、フェライトから始まる当社4大イノベーションの技術的なつながりにひもづけて説明した「フェライトツリー」になります。創業時にはフェライトコアのみ、1970年代にはまだ左端のように小さかった木が、材料からプロセス、そして派生技術の持続的開発やM&Aによるポートフォリオの追加により、技術の枝や葉を大きく成長してきました。今回の長期ビジョンの実現の原動力として、このフェライトツリーを今後もさらに進化、成長させていく予定です。

価値創造を支える未財務資本

価値創造を支える未財務資本

このフェライトツリーは、投資家の皆様にも技術の系譜を示す絵として示してきましたが、この度、根の部分に、技術力、組織力、人的資本、顧客基盤といった重要な未財務資本も含めて表現をすることにしました。1つの事業を成功(失敗も含む)させるために培った技術力・組織力・顧客資産は社内で共有され、次の機会へと引き継がれています。
また、この未財務資本を支えるのは、当社が創業以来培ってきたベンチャースピリット、機能対等の文化です。新しいことに勇気を持ってチャレンジするよう役職関係なく対等な立場で議論をする文化や、買収した会社の文化も尊重しグローバルでお互いに学び合うことにより、ユニークなシナジー効果を発揮しイノベーティブな製品を創出し続けています。

組織横断で潜在的なニーズ/シーズに対応

組織横断で潜在的なニーズ/シーズに対応

フェライトツリーを持続的に成長させていくための光となるのが、社会のTransformationから生まれるニーズです。市場やお客様のニーズをいち早く捉え、社会からの潜在的なニーズ・シーズに迅速に対応しマーケットインの機能を強化する仕組みとして、2021年4月に設立した事業横断組織としてコーポレートマーケ ティング&インキュベーション(CM&I)本部があります。また、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)として「TDK Ventures」を設立しています。新たな価値創造に向け、幅広いマーケットや顧客、アプリケーションに対するアンテナ機能を果たすとともに、コーポレートR&Dとの協働により、ビジネスカンパニーにも横串を通しグループ横断で新たな価値創造ができるよう取り組んでいます。

オープンイノベーションへの取り組み

オープンイノベーションへの取り組み

CVCの活動は2019年から開始しており、既に3号ファンドまで設立、現在37のベンチャー企業に投資をしています。長期での新たな可能性を探索するよう、現状の事業スコープではまだアクセスしていない、あるいはアクセスできないような技術領域に投資をし、TDKが現在保有している事業とのシナジー創出にも注力しています。
例えば、GX領域においては、核融合技術やバッテリー材料リサイクル、グリーン水素を手がける企業等に投資を行っています。また、DX領域では、AI、機械学習チップを手がけるGroqに投資しています。Groqは元Googleのエンジニアによって創業された企業であり、大規模言語モデル(LLM)に特化しGPUより高速なLPU(Language Processing Units)を開発しており、生成AI普及の時代に大きな価値をもたらす可能性が高いと見ています。
さらに、モビリティ領域では、ヒト型ロボット企業や、電動エアーモビリティを手がける企業にも投資しています。

新事業に関する事例①|データセンター関連部品

新事業に関する事例①|データセンター関連部品

次に、組織横断活動による新事業の事例を3つご説明させて頂きます。
まず、データセンターに使われる先端技術についてご説明します。
世の中で消費される電力のうち、非常に大きい割合を占めるのがデータセンターのデータ処理であり、今後AIの普及が進むとその負荷は莫大になると予想されています。データセンターにおける消費電力の課題を解決するソリューションとして、当社が研究しているのが「ニューロモルフィックデバイス」です。これは、人間の脳を模したもので、メモリと演算機能が一緒に入っていることが特徴です。現状では、演算するためにメモリからデータを取り出しまた戻すということを高速・大容量に処理しており、ここに膨大なエネルギーを使っていますが、開発中のデバイスはその読み書きが不要になるという画期的な技術です。メモリと演算が同時にできる神経回路としてのデバイスを開発しています。

新事業に関する事例②| Human Machine Interface

新事業に関する事例②| Human Machine Interface

次に、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)で将来的な普及が予想されているARグラス等に使われるLEDレーザーの開発について説明します。
当社では、レンズやミラーを使わない新技術「平面導波路技術」に注目し、レーザーモジュールの小型化に成功しました。
一般的な空間光学モジュールと比較して、体積比約1/10という大幅な小型化を実現しています。また、最大表示色は約1,620万色とフルカラーでの映像表示を実現し、高画質の映像によってAR体験の質がさらに高まります。加えて、レーザーが小型化された際には、スマートグラスに搭載される電池の更なる軽量化・小型化が求められます。当社は、2017年に超小型のCeraCharge™という全固体電池を開発しており、現在は前世代よりも数段容量の高い次世代品を開発中です。

新事業に関する事例③|ソリューションビジネス

新事業に関する事例③|ソリューションビジネス

また、工場や物流現場での予知保全に使われるセンサを中心とした、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションビジネスについてご説明します。
生産、物流現場においては、機械・設備の異常を事前に予知することでダウンタイム(停止時間)を抑制すること、自動化・省人化の推進、生産性の向上が課題となっています。TDKでは、エッジAIに対応した超小型センサモジュールであるi3 Micro Moduleを開発しました。当社が保有するさまざまなセンサを組み合わせ、設備の振動・温度・音・気圧などをリアルタイムでモニタリングし、機器の故障を事前予知することを可能にしました。さらに、このハードウェアに2023年に買収したQeexoの自動機械学習(AutoML)エッジAI機能を加えることで、エッジセンシングとエッジAIの高付加価値化を実現し、お客様のDX推進や生産性の向上に多大なる価値を提供するセンシングソリューションを提供することが可能となりました。現在、事業化に向けた準備を開始しております。

多様性重視の企業文化

多様性重視の企業文化

人的資本とその多様性についてご説明します。
新しいビジネスの創出、企業の持続可能な成長を支える根本は「人」です。TDKの人的資本における強みはダイバーシティだと考えています。現在のTDKグループは世界30以上の国や地域に、250カ所を越える拠点を展開し、約10万人の従業員のうちおよそ90%が日本人以外となるグローバル企業になりました。「買収先の企業文化を尊重する」ことも当社の強みとなっています。買収先企業の人財登用も行っています。

ガバナンスの特徴

ガバナンスの特徴

ガバナンスの取り組みについて説明します。
当社のグループガバナンス方針は、Empowerment & Transparencyという考え方のもと、地域本社や中核子会社への権限委譲を積極的に進めています。グローバルで遵守すべき基本ルールをグローバル共通規程として定める一方、それぞれの個性を活かせる自律分散型のグループマネジメントの浸透を進めてきました。また、マネジメント体制においては全執行役員の50%を外国人執行役員が占める体制となっています。

コーポレート・ガバナンスの進化

コーポレート・ガバナンスの進化

また、取締役会の諮問委員会として設置しているコーポレート・ガバナンス委員会において議論した結果、2024年6月に予定している株主総会の承認を経て、取締役の過半数が社外取締役となる体制になります。また、役員報酬に未財務的項目も連動させ、今期からはCO2排出量、エンゲージメントスコアも連動させる予定です。さらに、企業価値向上の取り組みを、従業員一人ひとりが自分事と捉え経営への参画意識を高められるよう、国内従業員向けに株式報酬制度を導入いたしました。従業員持株会に加入している社員一人あたりに年間15株を付与、経営目標達成時にはさらに15株を追加することとしています。

リスクマネジメントの継続的改善

リスクマネジメントの継続的改善

リスクマネジメントについてもご説明します。
この中期経営計画期間中に想定される主なリスクは、記載の通りです。 当社グループは、持続的成長を目指す上で、組織目標の達成を阻害する要因(リスク)に対し、全社的に対策を推進し、適切に管理する全社的リスクマネジメント(ERM)活動を実施しています。リスクの評価として、毎期、残余リスクについてインパクトの大きさを算定し、さらにリスクの顕在化する可能性との組み合わせにより、残余リスクヒートマップを作成し、リスクの対策優先度を可視化し評価しています。リスクマネジメント体制の継続的な改善に取り組むことで、最適なガバナンス体制を追求していきます。

“Quality”追求で企業価値を向上

Quality追求で企業価値を向上

未財務資本に関連し、私が社長就任以降、全社に徹底を呼びかけているのが「Quality First(品質第一)」です。持続可能な成長に向け、私はとりわけ「品質」を重視しています。
「品質」というと一般には製品品質だけを思い浮かべがちですが、ここでの「品質」はさらに広い意味となっています。生産の効率化、健康の質、労働環境の改善による社員のモチベーションアップなども広い意味での質の向上に含まれます。これらの要素は、マクロな市場環境がどうであれ、自分たちの努力、すなわち“自力”で改善・向上させることができるものです。これらが成長可能性につながると考えています。
以上が未財務資本の最大化に向けた取り組みとなります。

5. 事業戦略

事業戦略

事業別戦略についてご説明します。

受動部品|事業戦略

受動部品|事業戦略

受動部品についてご説明します。
自動車のxEV化やADAS化、AIの普及、再生エネルギー等の産業機器用途での需要の成長を引き続き見込んでいます。このなかで高付加価値品の競争力を向上させるとともに、品質と生産性を改善しコスト競争力をさらに強化をすることで、収益力を上げ、2027年3月期にはROIC 15%水準を目指します。

受動部品|車載向け受動部品の生産能力拡大

受動部品|車載向け受動部品の生産能力拡大

特に受動部品のなかでも、車載向け受動部品は、MLCCのみならず、インダクタ、圧電保護部品等において堅調な需要の伸びが見込まれます。
左側のグラフの通り、需要金額の年率12%成長を予想しています。足元においては、EVの市場成長伸び率が緩やかになってきていますが、HEV、PHEVにおいても、員数、需要が確実に増えて行きます。この傾向に合わせて、当社のMLCCやフィルムキャパシタ等主力製品の能力をタイムリーに拡大させることで需要を確実に捉え、事業を成長させていきます。

センサ応用製品|事業戦略

センサ応用製品|事業戦略

センサ応用製品についてご説明します。データ社会における情報のエントリーポイントとしてのセンサ部品の需要は、今後も継続的に増えて行きます。
お客様がまだ気づいていないニーズを捉えるマーケットインの活動と、コンセプトベースから提供するコンセプトアウトのアプローチを推進します。業界をけん引するテクノロジーリーダーとの協業を拡大する事で、市場での競争力をさらに高めていきます。当社固有の強い製品をさらに成長させ続け規模と収益性を拡大し、2027年3月期には、ROIC 8%以上を目指していきます。

センサ応用製品|ポジショニングと投資強化

センサ応用製品|ポジショニングと投資強化

DX、EXの需要トレンドは、今後も加速する事が予想されるため、センサ部品の需要は、今後も年成長率5~6%で伸び続けることが予想されます。
当社のセンサの売上は、市場の伸び(年率6%成長を予想)よりも高い年率8~10%となる伸び率で成長させていく予定です。そのためにも、xEV向けで成長が期待できる温度センサの能力を拡張させる予定です。
予定より少し遅れはあるものの、ICT、自動車、産業機器用途等さまざまなアプリケーションでの需要拡大が期待できるTMRセンサの能力拡張も引き続き推進していきます。

磁気応用製品|事業戦略

磁気応用製品|事業戦略

磁気応用製品についてご説明します。
昨年度は市場の急減速が見られましたが、データセンター市場も底入れ感が見られ、今後は継続的に市場が拡大すると見込んでいます。前中期経営計画期間中に実施した構造改革の効果を取り込みながら、MAMR技術等の高付加価値品において量産比率を順次引き上げ収益性を改善することで、まずはROIC 4%程度を目指していきます。
今後の技術革新も見据え、HAMR量産化に向けた開発を加速していきます。

ヘッド・HGA 新世代技術の投入

ヘッド・HGA 新世代技術の投入

HDD市場、ストレージ市場を概観しますと、データ取引生成量は、2023年から2027年の4年間で約2.3倍に増加すると見込まれます。
HDDストレージも同様に2倍に増える見込みです。
これに伴い、HGA(ヘッドジンバルアセンブリ)の需要数量も、2024年3月期を底として中長期的には増加傾向と予想しています。
サスペンションにおいても、大容量モデルが増えるため、Tri-SAサスペンション方式の需要が約3倍に増える見込みです。このような環境下において、当社の技術力、オペレーション力を十分に発揮しシェアを拡大していくことで収益性を改善させ、この中期経営計画期間後、中長期的にはROIC 2ケタ%台を目指していきます。

エナジー応用製品|事業戦略

エナジー応用製品|事業戦略

エナジー応用製品についてご説明します。
2024年3月期の実績においては、シェア拡大による数量増に加え材料相場価格の下落等の一時的な要因もあり、ROICは想定以上に高い実績となりました。今後も、ICT市場向け小型二次電池の業界内No.1のポジションを確保し、相対的に高い利益率を維持していくことでROIC 18%台を実現していきます。

小型二次電池|成長戦略

小型二次電池|成長戦略

特に、小型二次電池の戦略としては、シリコン負極等の革新的・先端技術によってユーザーエクスペリエンスを高め、スマートフォンをはじめとする小型電子機器の進化を支えていきます。また、地政学的リスクを見据えたチャイナプラスワンの拠点戦略を遂行するため、2017年よりインドにおいて電池の後工程パック工程の生産を開始しています。また、2022年よりセル生産も開始しました。さらに、2025年から新工場 となるSohna工場における生産を開始する予定です。この写真の通り第一期の区画を建設中であり、今後もローカル需要の拡大に合わせ順次拡大を図っていきます。材料の調達においては、材料供給サプライヤーへの出資等戦略的な取り組みも含め、バリューチェーンを強化し事業価値を最大化させていきます。

中型二次電池|成長戦略

中型二次電池|成長戦略

中型二次電池については、再生可能エネルギーへの転換等EXの加速に引き続き貢献していきます。ESS、電動バイク、ドローン、パワーデバイス等それぞれの特性に合わせた幅広い製品ポートフォリオ(ラミネート、円筒、角型等)に、LFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)の材料等さまざまなコア技術を提供できることが当社の競争優位性となっています。最適な技術を提案、提供することで、顧客価値を一層高めていきます。
なお、ESS市場向けには、太陽光パネルの寿命を踏まえた、20~25年と長寿命な製品のシェア拡大を見込んでいます。これに加え、パワーデバイス向けの高出力品であるジャンボパワーのシェア拡大により、中型電池市場でのシェアNo.1を目指していきます。
今後の需要、売上の伸びに合わせ、新工場での能力を拡大し、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)それぞれの面で、業界内No.1の地位確立を目指していきます。

フェライトツリーを進化させます

フェライトツリーを進化させます

ここまでご説明してきましたように、現在の事業を強化しながら、さらに先の領域を探索、研究・開発し、コアテクノロジーを磨きあげることで、フェライトツリーを大きく成長させていきます。過去の歴史のなかで現在は手がけていない製品もありますが、これらはフェライトツリーの根の部分である人的資本、組織力、顧客基盤として脈々と引き継がれ、未財務資本として当社の企業価値を大きく成長・進化させていくことに貢献してきています。
現在保有している事業だけでは届かないような領域の技術やアプリケーションに対しても、CVCやCM&I本部、コーポレートR&D機能と各ビジネスカンパニー(BC)の活動を効果的、効率的に融合することで価値を最大化していきます。これにより今後の社会のTransformationに貢献し続けたいと考えています。
前にご説明した3つの新製品・事業の事例は、あくまで数多くあるポテンシャルの一部でしかありません。それ以外にも、ここに記載されている通り、当社の将来は新領域の技術、事業の可能性に溢れていると考えています。この点を最後に再度強調させていただきます。

最後に

最後に

本日これまでご説明してきましたように、私たちは社会の変革に貢献し続けるよう、未来構想力と実行力、人財の変革力で、TDK内部の変革を加速させていきます。コアテクノロジーを深化させつつ、新たな強みの探索を行います。また、先手の事業ポートフォリオマネジメントを強化し、ROIC-WACCスプレッドを高めていきます。
未財務資本を強化する経営を推進し、フェライトツリーをさらに進化させることで、企業価値の最大化を目指していきます。
企業価値向上を目指すにあたっては、当社には技術、製品、人財等の様々な意味での「多様性」が強みなっています。このスライドの左側のデザインのモチーフとなっている「TDK United」という文字は、個性溢れる当社の多様性を表現しています。
今後も厳しい経済環境が予想されますが、多様性溢れるTDK Unitedの力を結集し常に力強く前進するレジリエントな企業体質を作りたいと考えています。これにより、多くの新しい価値を社会に提供し続け、社会になくてはならない存在であり続けることができると信じております。
多様性の本質は、さまざまな意見をオープンに取り入れていく事だと考えております。当社単独では考えられないような戦略を、ステークホルダーの皆様との対話の中で練り上げていくことが、今後の長期的な企業価値向上にとって重要となります。このため、今後とも投資家の皆さまとの建設的な対話や協働活動を続けたいと考えています。引き続きご支援の程、よろしくお願いいたします。