TDKの価値を高めるマテリアリティの特定に向けて
TDKでは2013年度より、GRI-G4に基づき、マテリアリティの設定を進めてきました。ステークホルダー視点を取り入れるため、その過程では、社外からの評価も積極的に取り入れています。2015年10月には、3名の有識者の方を招いたダイアログを開催。TDKのマテリアリティで重視すべき点や、マテリアリティ設定に留まらずTDKに寄せる今後への期待など、幅広い見地からご意見をいただきました。
実施日:2015年10月9日
有識者からの主なご意見・提言
非財務分野の取り組みと本業を関連づけたメッセージの発信を
株式会社日本政策投資銀行
環境・CSR部長
竹ケ原 啓介 氏
ESGをはじめとする非財務分野は、企業が社会との信頼を築く基盤となります。マテリアリティの概念が出てきたことで、近年では投資家からも、それらが企業のパフォーマンスを水面下で支える価値として注目を集めつつあります。そうした中、非財務分野の取り組みを本業と関連づけて説明する必要性は高まっており、本業の拡大と社会価値の実現がつながるようなマテリアリティの発信が期待されます。
たとえば環境側面では、TDKはすでにカーボンニュートラルを達成しており、今後もその取り組みを新たな買収先などを含めて広く世界で展開されていくことと思います。言い換えればそれは、TDKの製品が売れ、売上高が伸びるほど、社会全体での環境負荷が下がるということ。マテリアリティでもそうした関連性を積極的に打ち出すことで、企業価値をより強力なメッセージとして伝えられることを期待します。
顧客ニーズと社会ニーズの重なる分野での挑戦に期待
独立行政法人
経済産業研究所
コンサルティングフェロー
藤井 敏彦 氏
1987年、通商産業(現経済産業)省入省し、国際交渉のエキスパートとして活躍。CSRについての見識も豊富で、2013年よりTDK CSRレポートの第三者意見を執筆。
社会への貢献を語るとき、その前提として不可欠なのが「一企業グループとしてどのような社会を実現していくのか」の明確化です。たとえばサプライチェーンへの対応では、ときには問題を抱える調達先への指導が必要になりますが、そうした「介入」は目的が明らかにされて初めて意義を持ちます。同様に、ダイバーシティ推進でも多様な人材が一丸となっていくためには、高い目標のもとでの価値観の共有が欠かせません。
川中企業としてバリューチェーンの中間にある貴社は、製品・サービスを通した社会との直接的な接点が少ない難しさはあるでしょう。また、BtoB企業ではお客様の要望と社会的要請が完全には重ならないのも事実です。しかしTDKは、全従業員が同じ方向を向き、社訓である「夢・勇気・信頼」を一人ひとりが体現していけば、そうした制約を乗り越えいくことができる企業だと思います。「実現すべき社会」への強い意志のもと、顧客ニーズと社会ニーズの重なる部分をビジネスとして掘り起こしていくような挑戦に期待します。
目標とする企業像や創出価値の明確化と共有が不可欠
株式会社やよいジャパン
代表取締役
増田 弥生 氏
企業のグローバル経営推進のためのリーダーシップ開発・組織開発コンサルタント。リコー、リーバイス米国本社を経て、ナイキ米国本社でアジア太平洋地区人事部門長などを歴任。
真のグローバル企業を目指すには、目標とする「グローバル企業」のイメージを世界中のTDKグループのすべての社員にわかるように具体的に描くことが求められます。人事的な側面でも「グローバル人材」とはどんな人材のことを言うのか、どう育成するのかということを発信し、対話し続けることで当事者意識と成長意欲がより育まれます。日本国内従業員にとどまらない全世界ベースでの人材マネジメントが鍵になるでしょう。
ビジョンと目標を誰にでも分かるように言語化し、フェアな指標に基づいて評価されていくプロセスは結果として真の多様性の推進につながります。それと並行して、グローバルな舞台での成長のため、「TDKはどのような価値を社会に提供する企業か」が全世界の社員に共有され、すべての役員・社員がぶれない軸やバリューに即した行動につながり、よりTDKに誇りを持つ社員が世界中で活躍されますよう期待しています。
ご意見を受けて
TDK株式会社
取締役常務執行役員
戦略本部長
齋藤 昇
企業ビジョンや行動指針を一人ひとりに落とし込み、国籍や言葉、組織の壁を無くし、つながり合える組織を築いていくことが不可欠と再認識しました。当社グループを取り巻くリスクもチャンスも根本には「人」があり、その重要性を深く感じています。真のグローバル企業として全社一丸となっていくためには、まだまだ乗り越えるべき課題がありますが、「創造によって文化、産業に貢献する」という社是のもと、当社の製品なしには便利で豊かな生活は成り立たないと言われるインパクトある会社を目指し続けます。
TDK株式会社
執行役員
アドミニストレーション
本部長
桃塚 高和
コーポレートガバナンスコードやスチュワードシップコードに基づき、近年投資家の視点は徐々に短期から長期に移りつつあります。そうした動きの中、TDKとして的確なマテリアリティの発信は極めて重要と受け止めています。
TDKは日本発の企業ではありますが、グローバル化推進のためにはコーポレート機能を日本に限る必要はないかもしれません。どこに拠点を置いたとしても、TDKの理念やDNAが全世界の従業員に浸透し、共有していくことが肝要とあらためて実感しました。