サプライチェーンにおけるCSR推進
実施日:2015年5月11日
サプライチェーン全体でCSRを推進するために、TDK に期待すること、評価できる点は何か―株式会社エナジェティック グリーンの和田征樹氏をお迎えし、意見交換会を実施しました。
株式会社 エナジェティック グリーン
共同代表取締役
和田 征樹 氏
2001年からスポーツ用品やアパレル関連の企業に在籍し、サプライチェーンにおける人権課題を中心に活動を行ってきた。2013年6月より、公益財団法人にて外国人技能実習制度に関わり、2014年8月より、株式会社エナジェティック グリーン、共同代表に就任し、CSRに関する研究、コンサルティングを行っている。
和田氏の主な意見・提言
サプライヤーとしての取り組みについて
顧客からの監査要求が高まり続ける中、それに対応するTDK 各拠点の負担は今後も増していくことが見込まれます。
職場の人権・労働について、業界を問わず問題となり得るのは強制労働・児童労働・長時間労働など特定の項目です。これらは先んじて自社で調査結果を取りまとめ、問い合わせがあればいつでも提出できるよう備えておくことも大切でしょう。
現在、各拠点でこれまで受けた外部監査・内部監査の内容、結果、対策などの履歴を一元化し公開する試みを進められているとのこと、これは素晴らしい取り組みです。今後に向けたリスク回避策として有効な上、顧客の要請に応え続けるためにも意義が大きく、ぜひ積極的に推進していただきたいと願います。
また、海外拠点の設立に備え、確実に実行すべき項目をチェックリスト化し、品質や設備、コストなどとともにCSR観点を組み込んだ、フィージビリティスタディをしている点は大変優れています。「現地」「現場」「現物」「現人」という4 現主義に基づく展開の重要性をよく理解された行動をお願いしたいと思います。
バイヤーとしての取り組みについて
数多くある取引先に対し、SAQ(自己調査票)や監査、改善指導を一律に行うのは難しく、優先順位を意識した取り組みが求められます。取引先の依存度などを踏まえ、TDK としてのガイドラインを明確にしていくことが欠かせません。
取引先へのCSR 監査を行い、監査する人材育成にも注力する今、その先に何を目指すかが問われる段階を迎えています。
取引先への改善指導では、共に成長していくという視点から、指導を通じて相手企業の組織強化をサポートする「キャパシティ・ビルディング」の考え方が一層重要になります。情報開示の一環として、どのような項目をいかに指導したか、今後レポートにも盛り込んでいけるとよいように思います。
川中企業として業界で求められる役割
TDK は川中企業であるからこそ、サプライヤーとバイヤーの二側面からサプライチェーンを見渡すことができます。サプライチェーンで今何が重視されてきているかという傾向の把握は常に欠かせません。NPO・NGO とも連携し、人権課題の最新動向やCSR監査について指導を求めるといったことも一考されるとよいでしょう。
これまでSAQ 策定などで川中企業が強い存在感を示してこられなかったのは残念な点であり、グローバル化が進む中、川中企業としての考えをしっかりと表明していくことは不可避となっています。業界連携や業界横断を強化し、国際社会でイニシアティブがとれるような基準づくりに期待します。