サステナビリティCPSOメッセージ

長期ビジョン「TDK Transformation」により
サステナビリティを推進し未来を形づくる力を育みます。

常務執行役員
Chief People and Sustainability Officer(兼)人財本部長

Andreas Keller

プロフィール

2000年に入社後、複数の役職を歴任。2002年には、TDK Electronics Europeにおいて人財およびサプライチェーンマネジメント部門のエグゼクティブディレクターを務めていた。2017年、人財・総務本部長に就任。2023年4月、Chief People and Sustainability Officer(CPSO)に任命され、人財・サステナビリティ活動を担当。同時に、人財本部長として、人財に関する取り組みの戦略的方向性の舵取りを行っている。

TDKグループで人財本部の指揮をとるAndreas Kellerは、サステナビリティおよび人財に関する担当役員であるCPSOに就任して2年目を迎えたいま、TDKが長期ビジョンで掲げた「Transformation」をどのように加速させていくのか説明します。

チームメンバーに権限を与え価値創造を促す

TDKは、お客様のNo. 1パートナーになるため、絶えず企業価値を高める取り組みを進めると同時に、サステナブルな未来を育もうと取り組んでいます。これを担うのがサステナビリティ推進本部です。同本部は、長期ビジョン「TDK Transformation」に則したサステナブルな社会の実現に全力を注いでいます。
計画を達成するため、「My Sustainability Action(MSA)」という文化を育んでいます。MSAでは、チームメンバー(従業員)一人ひとりに権限が与えられるため、メンバーは熱意を持ち、会社に貢献したいと自ら望んで行動します。MSAでは、グローバルな課題に幅広く対応することも求められます。全チームメンバーがサステナビリティを自分事と考え行動することが期待されているのです。
同本部は設置以来、TDKが持つ技術を事業戦略の中に組み込みながら、TDKの技術を活かしてさまざまな課題の解決にどう取り組んでいくか、チームメンバーが積極的に検討するための体制を整えてきました。私たちは、サステナビリティの取り組みを単にコストの観点から見るのではなく、イノベーションや今後の成長にとってのチャンスと捉えて活かしています。

サステナビリティにおける取り組み

新中期経営計画のなかでは、以下3つの主要分野に注力していきます。「MSA」に対するエンゲージメントを高めること、TDK のsocial responsibility management system を強化すること、地球規模の環境問題に取り組むことです。前述のMSAや「MSA Guides」といったTDKグループでの共通プラットフォームを活用し、DX推進の取り組みである「DX forSustainability +(DXを駆使したサステナビリティとエンゲージメント)」を通じ社内外の取り組みも促し、チームメンバーのエンゲージメントを向上させたいと考えています。過去5年間、私たちはグローバルマネジメント人財育成プログラムの一環で80以上のプロジェクトを実施してきましたが、その約3分の1においてサステナビリティに言及してきました。
こうしたプロジェクトはグループ内のサステナビリティに対する共通理解を深めるとともに、チームメンバーの認識向上に不可欠な役割を果たしてきたのです。今後もプロジェクトへの積極的な参加を促すことにより、TDKのサステナビリティトランスフォーメーションを加速させていきます。

人財における取り組み

多様な人財の活躍推進と育成による変革の実現を、長期ビジョン実現に向けて取り組むTDKグループの重要課題(マテリアリティ)の一つとして設定しました。とりわけ、チームメンバーのエンゲージメント向上を重視し、継続的な成長に向けたサステナブルな人的資本の拡大を目指しています。多様性を尊重し、インクルーシブな考えを備えたリーダーシップを促進し、チームメンバー全員が能力を発揮して有意義な影響をもたらすことができるような企業風土の醸成を目指しています。私たち全員がTDKグループの一員として責任を分かち合い、部門や組織の枠組みを超えてつながり、協力することがグループの成功に不可欠なのです。

リーダーシップの強化と組織の成長

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進に向けて、多様な個性を持つチームメンバーの中からリーダーを任命し、インクルーシブなリーダーシップを醸成していくことはまさに私の責務といえます。リーダーがそれぞれに持つ多様な経験や知識を活かし、すべての職位・職場でインクルーシブなリーダーシップを発揮すれば、グループ全体の変革が加速されます。また、イノベーションと効率性を推進するための組織能力の強化を目指しています。このほか、チームメンバーの健康とエンゲージメントのさらなる向上にも取り組みます。なお、人権を尊重し、気候変動への対策など環境・社会的な課題にも取り組みながら上記を実施することが重要だと考えています。

未来のリーダーを育てるTDKの取り組み

グローバルマネジメント人財育成プログラムや社内インキュベータープログラムである「TDK Kindergarten」などの各種プログラムを通じ、次世代のビジネスアントレプレナー育成や後継者育成にも積極的に取り組んでいます。Empowerment & Transparency(権限委譲と透明性の確保)を原則として、すべてのグループ会社が同じ目標を持ってリーダーの育成に取り組む一方、計画の詳細や現場での指揮については個々のグループ会社やリーダーが自主的に取り組むようにしています。
日本企業が世界に進出する際には、西洋のマネジメント方式をしばしば採用する傾向にあります。しかし、TDKは西洋と東洋の両方のアプローチを融合できる点が強みです。新任執行役員または執行役員候補を対象とした研修であるGlobal Executive Management Program(GEMP)は、スペイン・バルセロナにある西洋式ビジネススクールと東京の大学院大学の両方と連携しています。直近のリーダーシップ研修では約半数が日本人、残りの半数は世界各地からの参加者と多様なメンバー構成となりました。また、参加者それぞれがさまざまなアプローチを学べる機会があり、有意義な意見交換の場となっています。
TDKの成長とメンバー構成の推移を振り返ってみると、私が入社した2000年当時の人数は約3万5,000人でしたが、現在は10万人に達しています。また、メンバーの約8割がM&AでTDKの一員となっています。約10万人いるメンバーのうち、日本の拠点で働くメンバーは約1万1,000人で、残りの約9万人は海外拠点で働いています。このような多様性により、TDKはきわめてユニークな企業となっているのです。このようなTDKのユニークさは、競合他社に比べ大きな強みとなっています。

長期的な人財戦略

長期
ビジョン
・独自の材料・プロセス・ソフトウェアを組み合わせた電子デバイスで、テクノロジーの進化と社会の変革を加速し、サステナブルな未来の実現に貢献します。
・自己を変革し続け、世界のお客様と共に成長するNo.1パートナーになります。
才能ある人財、組織、リーダーシップにおける人財能力の価値を高めるために、リーダーと人事機能が協働します。
多様性を尊重し、インクルーシブなリーダーシップの実践を推進する企業文化を醸成します。
そしてすべてのチームメンバーが価値を認められ包摂されていると感じ、インパクトを生み出せる 環境を創ります。

「未来構想力」を鍛える

お客様のNo. 1パートナーになるというTDKのビジョンを達成するために、私たちは、プロダクトアウトの考え方から、お客様と議論しともに未来をつくる考え方へとアプローチを変えていく必要があります。そのためには、チームメンバーのそれぞれが潜在的な市場の可能性について将来像を描く力、つまり「未来構想力」が求められます。私は以下に述べる3つのアプローチにより向上させることができると考えています。
第一に、イノベーションを促す環境づくりを目指すことです。権限を委譲し、「TDK Kindergarten」のようなプログラムを実施することによって、創造力を伸ばし起業家的な思考を育みます。このプログラムによりTDK初の社内スタートアップ事業が現在進行しています。これからもTDK Kindergartenを継続し、チームメンバーには創造力を発揮し将来のビジョンを形にしてほしいと考えています。
第二に、グループ共通のe-ラーニングプラットフォームである「Weconnect」を通じて知識を共有し連携することです。Weconnectプラットフォームは、さまざまな研修コースの作成や周知を容易に行えるようにするもので、チームメンバーは短期間で効率よくスキルを身に付けることができます。グローバルリーダーが連携を取り、標準化された質の高い研修プログラムを開発した事例もあります、開発された研修プログラムはワーキンググループによりプログラム化され、TDK本社での検証を経て、世界各地のTDKグループ会社で利用できるように複数の言語に翻訳されました。このようにプロセスの無駄をなくし効率化することにより、TDKに必要不可欠なノウハウへのアクセスや共有を、全チームメンバーが迅速に行うことができるのです。さらに、研修コースは常に評価・改善されているため、研修内容はアップデートされています。これにより、将来像を描いた提案に対する各々の能力が向上するだけでなく、世界各地の同僚と一緒に新たな研修コースを作り上げることで、協力関係を育てることができるのです。
第三に、私たちはチームメンバー・エンゲージメントと心身の健康の向上に力を入れています。各種社内イベントやチームメンバー・エンゲージメント調査の取り組み、Empowerment & Transparencyの考え方などを通じて、どのメンバーも自分の価値が認められ、有意義な貢献ができると感じられる環境をつくるようにしています。Empowerment & Transparencyの理念を重視する研修の実施により、各々がどのような考え方をし、どのような経験を積んでいるか理解することができます。そうすることで、何か問題が起きても、その問題を素早く見極めて対処することができるのです。
具体的な例を挙げると、2023年にグループ全体で実施したチームメンバー・エンゲージメント調査のなかで、多くのメンバーから「会社単位を超えてグループ横断的なテーマに取り組もうとしたところ、手続上の問題がありうまくいかなかった」と報告がありました。この問題に対応すべく、私たちは意思決定プロセスをデジタル化するグローバルなITシステムを導入し、組織面での非効率を改善しました。これは、チームメンバー・エンゲージメント調査の結果に基づき現場の問題や組織的な課題を特定し、有効な解決策を講じるという、いわばPDCAサイクルに対して会社が取り組んでいることの実例です。
今後も、個人および組織の先見力を引き続き強化していきます。そして、共通の目標に向かい一丸となって取り組むチームをつくると同時に、チームメンバー一人ひとりが積極的に自ら考え行動し、各自の「MSA」を実行できるよう能力の向上を図っていきます。

自身の変革によるTDK Transformationの推進

私自身はもともとサプライチェーンマネジメントの分野で経験を積んでおり、サステナビリティや人事の専門家ではありませんでした。しかし今では、TDKのメンバーのおかげで、毎日新しいことを学んでいます。
2017年に人財本部長に就任して間もなく、私は、人財開発のレベルをグローバルで向上させ、グループ全体の組織構造を強化することが重要であると気づきました。サプライチェーンマネジメントの経験から得たこの気づきは、世界に拠点を置く各地域のグループ会社から人事リーダーを登用する計画につながりました。当時の石黒社長にこの計画を提案すると、早速計画を進める権限を私に与えてくれました。その後、私は各種グローバルプロジェクトの実施権限を米国、アジア、欧州地域のグループ会社の人事リーダーに委ねたのですが、その際には、私と緊密に協力しながら、自主性を持ってプロジェクト管理を実施してほしい旨を強調しました。リーダーには、CEOや経営陣にプロジェクトを直接プレゼンする権限が与えられ、結果としてTDK にEmpowerment & Transparencyを特長とする組織文化を醸成することができたと考えています。
こうした企業文化の変化は、チームマネジメントに対する当社独自のアプローチと相まって、人財本部内に変革をもたらしました。以前の人財本部はほぼ日本人だけで構成されていましたが、今では日本人以外の幹部(マネージャーやリーダー)が20名ほど在籍しています。
2023年4月からCPSOに就任しましたが、人財本部長を務める私にとって、人財とサステナビリティはそもそも切り離せないものであり、そこに職務の意義があると感じています。チーメンバー同士のつながりを深め、メンバー一人ひとりの能力を開花させることで、価値を創出することができ新たな可能性の道が開けるという事実を目の当たりにし、TDKと社会にとってのサステナビリティや成長には人財が必要不可欠であると固く信じるようになりました。
私たちのビジョンは、自律的でサステナブルな組織をつくることです。「意欲を高め、行動を促す」よう、リーダーがチームメンバーに権限を与えることで、誰もが主体的に考えて行動できるような環境を整えていきます。改善が必要な分野には、TDKグループの共通プラットフォームを活用し、異文化間の理解を促進するとともに、自由闊達に意見を言い合える場を提供します。さらに、幹部との情報および評価の共有も強化し、透明性をさらに向上させることにより、オペレーションの効率化も目指します。このためには、欧州、米州、アジア、日本それぞれの強みを活かし、グローバルな事業環境がどのようなものであれ、その環境に対応できる体制の実現に向けて取り組んでいきます。
人財とサステナビリティの取り組みを統合的に行うことにより、TDK Transformationを迅速に推し進める体制が整いました。いまこそ、サステナブルな成長とイノベーション――この両方を実現する未来に向けて道を切り開いていきます。