サステナビリティ | 環境生物多様性への対応

基本的な考え方

TDKでは事業活動を通じて、地球環境の再生・保護に努めるなど、サステナブルな未来の実現を目指すことを私たちの果たす役割としています。生物多様性の喪失は、気候変動に次ぐ長期的グローバルリスクとして注目を集めています。製品の原材料から廃棄にいたるライフサイクルを通して、生物多様性に与える負の影響を回避、軽減、回復し、ネイチャーポジティブに貢献する活動が求められます。
TDKは、環境憲章の中で、生態系保全への寄与を常に考え、積極的に取り組むことを明記しています。地域社会などの外部パートナーと連携して、生物多様性の保全および回復の取り組みを推進しています。また、バリューチェーンレベルで重要な生物多様性を含む地域および近隣での事業活動を回避するようにします。

関連情報

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD) への対応

2023年9月18日、自然関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Nature-Related Financial Disclosures, TNFD)の最終提言が公開されました。TDKではTNFDが提唱するLEAPアプローチにより、事業と自然との接点を分析し、生物多様性を含む自然資本との依存、影響、リスク、機会の特定と評価を開始しています。2024年よりTCFD/TNFDを統合した報告を開示しています。

ガバナンス

取締役会の監視

TDKの取締役会は、未財務目標の進捗モニタリングを通して、環境業務の執行状況について四半期ごとに報告を受けています。基本的方針、中長期戦略、年度計画、重要な指標と目標について、審議・決議します。

経営者の役割

経営会議では、執行部門から目標の達成状況およびリスクについての報告を受けています。環境関連業務は安全環境担当役員が管轄しています。
環境関連リスクの対策実施や、定期的なモニタリングは、安全環境グループがその実行責任を担っています。主要KPIの報告や中長期目標の策定、また投資計画など、環境活動を推進する上での重要事項について、関連各部署と協議しながら、活動を推進しています。経営に重要な影響を及ぼすと判断された案件については、経営会議、また必要に応じて取締役会で審議をしています。

戦略

TDKの事業活動では、さまざまな資源を活用して製品を製造し、また事業活動にともなう排出物が発生します。これら資源の利活用は、自然資本(淡水、海水、土壌、大気)や生態系サービスに依存したり、影響を与えます。TNFDのLEAPアプローチに沿って、生物多様性を含む自然との接点、依存とインパクト、リスクと機会を評価し、生物多様性の保全および回復につながる戦略を検討します。

自然資本に対する依存と影響

自然資本に対する依存とインパクト

直接事業および上流・下流のバリューチェーンを通した、事業活動と自然資本との関連性を把握するため、事業セクターごとの依存および影響を評価しました。図1、図2に自然資本に対する依存と影響をそれぞれヒートマップで示します。(TDK固有の依存・影響を分析したものではありません)

 ヒートマップ(依存)
図1 ヒートマップ(依存)
ヒートマップ(影響)
図2 ヒートマップ(影響)

電子部品セクターにおける、直接操業では、水資源の供給サービスや調整サービスについて中程度の依存があります。また、水利用、水質汚染についてやや高いインパクトがあることが示唆されます。また、工場等のインフラ保有は、土地利用等の変化を伴うことから、地域によっては生態系に影響を与える可能性が示唆されます。
バリューチェーンを考察すると、原材料調達プロセスにおいて、土地利用変化、GHG排出、水およびその他資源に対する高い影響があります。バリューチェーンの上流になるほど、自然との接点が増えるため、依存や影響が大きくなるものと考えられます。

リスクと機会

生物多様性に関するリスクと機会を表1に示します。
物理的リスクについては、水資源減少や水質汚染があげられます。移行リスクについては、法規制やESG外部評価の低下があります。水リスクマネジメントを強化するとともに、適切な水環境データ開示が求められます。
機会については、水利用高度化による競争力強化、水ビジネスの展開などがあげられます。事業拠点地域における生物多様性の保全・回復・創出活動として植林等による生態系の回復があります。

表1リスク・機会
表1 生物多様性に関するリスクと機会

リスク管理

環境関連の依存と影響、リスク・機会の特定および評価プロセス

環境に関連する依存、影響、リスク、機会の特定および評価は、「電機・電子の事業活動と生物多様性の関係性マップ ver.3.0」を使用しました。本ツールは、TNFDが推奨するLEAPアプローチに準拠しており、製品ライフサイクルを通した「依存と影響」「リスクと機会」「事業アクション」のマテリアルな項目を抽出します。

環境関連のリスク管理プロセス

TDKでは、社長執行役員CEOが指名した執行役員を委員長とするERM(Enterprise Risk Management)委員会を設置して、全社的リスクマネジメント活動を実施しています。ERM委員会では、「リスク管理規程」に従って全社的リスクを特定しています。同委員会が管理しているリスクのロングリストには、環境関連リスクが含まれており、経営上のリスク分析評価によって重要と評価された場合は、管理対象として取扱われます。
TDKグループの環境活動の推進を主導する安全環境グループが、環境関連項目のリスクや機会の特定、対策の実施、モニタリングを行います。

全社的なリスク管理プロセス

リスク管理体制

TDKは、持続的成長を目指す上で、組織目標の達成を阻害する要因(リスク)に対し、全社的に対策を推進し、適切に管理する全社的リスクマネジメント(ERM)活動を実施しています。ERM活動に関する施策を検討・実施し、リスクマネジメント活動を強化するため、社長執行役員CEOが指名した執行役員を委員長とするERM委員会を設置しています。
ERM委員会は、全社のリスクの分析評価を行い、対策が必要なリスクを特定するとともに、リスクごとにリスクオーナー部門、実行部門および関係部門を配置し、適切な管理を行います。リスクオーナー部門は、担当するリスクについて、リスク管理体制構築に必要な最低限の要求事項・ルールの制定、リスクアセスメント結果の取りまとめと報告を行います。実行部門は、担当するリスクについて、当該リスクを管理するために必要な体制を構築、具体的な対策の立案と実行、進捗状況のモニタリングを行います。
ERM委員会によるリスク分析評価や重要なリスクの対策状況については、経営会議において審議し、取締役会に報告しています。

対策の実施

ERM委員会は、各リスクの対応策をリスクオーナー部門、実行部門および関係部門に周知します。実行部門は、関係部門と緊密に協働し、TDKグループ各社が担当するリスクについて、対策を実施または指示します。TDKグループ各社は、実行部門からの指示に基づき、リスクごとに対策を実施します。

モニタリングと改善

実行部門は、担当するリスクに対する対策の実施状況を定期的にモニタリングし、当該リスクが十分にコントロールされているかを検証します。リスクオーナー部門は、実行部門が対策の実施状況を適切にモニタリングしているかを検証します。
ERM委員会は、実行部門が取りまとめたモニタリング結果に基づき、必要と認める場合には、リスクオーナー部門や実行部門に対して改善の勧告を行います。

指標と目標

TCFD / TNFDをご覧ください。

取り組み

水資源への配慮(グローバル)

TDKにおいて、水は製造活動において必要不可欠な資源であるとともに、水資源の枯渇や洪水などの影響を受けるため、水リスクの適切な把握と管理は重要事項です。地域の水リスクと生産工場における水利用状況について監視、管理を行い、製造工程における取水量の削減に努めています。
取水量の削減は「TDK環境・安全衛生活動2025」における活動項目の一つであり、水取水量原単位の前年度比1.5%改善を年間の削減目標と定めています。2024年度の総取水量は前年度比2.3%増加の15,525千m3、原単位は前年度比2.4%改善となり、目標を達成しました。

水資源への取り組みに関して、詳細はリンク先をご参照ください。

Miyawaki Forest at Nashik(TDK India Private Limited, Nashik Factory)

インドにあるNashik Factoryではナシーク遺跡に隣接する約6,000平方メートルの土地に宮脇方式に基づいた森林帯を造成しました。これまで植樹した樹木は60種以上、10,000本以上になります。植樹された木々は、森林被覆度の改善、生物多様性の保護に役立っています。このプロジェクトは、国の森林被覆率を現在の17%から33%に引き上げるという政府目標に貢献するものです。この活動を通じ、従業員の生物多様性に対する意識向上につなげています。この森林を維持するために、Nashik Saytrees Environmental Trust(非営利団体)の協力を仰いでいます。

※宮脇方式:1970年代にすでに大都市の森林開発と緑化に取り組んでいた日本の生態学者宮脇昭氏によって生み出された手法。その土地に自生し、生態系に最適な樹種群を選定して苗木を育て、混色・密植型の植樹を行うことで、それぞれの樹木の特性を活かしながら、自然の状態をよみがえらせる手法。この手法により、森林は従来の10倍の速さと3倍の密度で成長し、30倍のCO2吸収を実現。3年で自給自足の自然林が生まれます。

”Tree For Life”, planting program(PT TDK ELECTRONICS INDONESIA, Batam / Indonesia)

PT TDKエレクトロニクス・インドネシアに近いバタム島は、過去に長い乾燥に見舞われ、また数年前には森林火災が発生しました。貯水池の水位は非常に低くなり、水不足リスクが高いエリアとなっています。PT TDKは地域コミュニティの一員として、植林プログラムに参加して、水供給としての貯水池と森林生態系の活性化に協力しています。植林プログラムのテーマは "Tree for Life"。2016年以来、PT TDKは年間1,000本の森林植樹を行い、2021年からは年間1,000本のマングローブ植樹も行っています。このプログラムは地元政府との協力のもと、TDKの従業員やTDKの教育プログラムの学生も参加して実施しています。