取締役会の実効性評価:2024年3月期
2024年5月23日
当社は、取締役会に期待されている機能が適切に果たされているかを検証し、その向上を図っていくために、毎年、取締役会の実効性の評価を実施しています。
また、その実効性を中立的・客観的に検証するため、一定期間毎(三年に一度を目途)に第三者評価機関に評価を依頼しています。
2024年3月期の取締役会評価においては、2022年3月期に第三者評価機関による調査を実施したことから、取締役会の諮問機関であるコーポレート・ガバナンス委員会(委員長:執行役員を兼ねない取締役会長 石黒成直)が中立的な立場で一次評価を実施し、取締役会によるディスカッションを経て、最終的な評価を行いました。
評価プロセス
- コーポレート・ガバナンス委員会(社外取締役を含む取締役および執行役員(戦略本部長)で構成)において、今回の実効性評価の方法とスケジュールを検討・審議しました(2023年9月)。また、その内容は取締役会にも共有されました(2023年10月度取締役会)。
- コーポレート・ガバナンス委員会が全取締役(7名)および全監査役(5名)に対し、実効性評価アンケート(無記名方式)を実施しました(2023年11月~12月)。
- 【アンケート項目(大項目)】
- ①取締役会の役割・機能(設問+自由記入)
- ②取締役会の規模・構成(設問+自由記入)
- ③取締役会の運営状況(設問+自由記入)
- ④指名諮問委員会の構成と役割(設問+自由記入)
- ⑤指名諮問委員会の運営状況(設問+自由記入)
- ⑥報酬諮問委員会の構成と役割(設問+自由記入)
- ⑦報酬諮問委員会の運営状況(設問+自由記入)
- ⑧コーポレート・ガバナンス委員会の構成と役割(設問+自由記入)
- ⑨コーポレート・ガバナンス委員会の運営状況(設問+自由記入)
- ⑩社外取締役に対する支援体制(設問+自由記入)
- ⑪監査役の役割・監査役に対する期待(設問+自由記入)
- ⑫投資家・株主との関係(設問+自由記入)
- ⑬取締役会の実効性全般(自由記入)
- ⑭取締役および監査役の自己評価(自由記入)
- ※上記の大項目の下に詳細な小項目を設けて多面的な調査を行っています。
実効性評価アンケートは、毎年の継続的な測定が可能なように、一定の質問項目については毎回同じにする一方で、評価の質を高めるために、質問項目の見直しを毎年行っています。また、自由記入欄を多く設け、アンケート項目にとらわれず多様な意見や提言を吸い上げられるようにしています。
- コーポレート・ガバナンス委員会が、上記アンケートの結果を取りまとめ、共通する課題や論点を抽出しました。その内容はコーポレート・ガバナンス委員会から取締役会に中間報告し取締役会で審議しました(2023年12月度取締役会)。
- コーポレート・ガバナンス委員会委員長が、上記アンケートにより抽出された重要な論点を中心に個別インタビュー(全取締役および全監査役)を実施しました(2023年12月~2024年1月)。
- コーポレート・ガバナンス委員会が、アンケートおよびインタビューで集めた意見を無記名の形で取りまとめ、それに基づく検討・審議を行い、一次評価としてまとめました(2024年3月)。
また、この一次評価結果は取締役会に報告され、取締役会はその内容を勘案し複数回の審議を行い、最終的な評価を確定しました(2024年3月度および4月度取締役会)。
コーポレート・ガバナンス委員会による一次評価
コーポレート・ガバナンス委員会による一次評価の結果は以下のとおりです。
- 評価結果の概要
- ①高い実効性と年々の進化がみられる。
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- 「ボードカルチャー」の浸透により取締役会にさらなる活性化がみられる。
- 執行側への権限委譲と透明性の確保が進んでいる。
- 「開かれたボード」活動により、従業員とのエンゲージメント向上がみられる。
- ボードメンバーから、さらなる高みを目指して、社内・社外、取締役・監査役の区別に関わらず、それぞれの立場から、大局的な観点で多くの忌憚なき意見が出されている。
- 取締役会評価で抽出された課題に対するPDCA施策を通じ、ガバナンスのスパイラルアップが継続的に図られている。
- 当社の取締役会は、社内外取締役会メンバーが深い信頼関係と健全な緊張関係を持ちつつ、高いレベルでの議論を行っている。
- ②現状の機関設計は有効に機能している。
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- 機関設計(監査役会設置会社)および各機関(取締役会、監査役会、指名諮問委員会、報酬諮問委員会、コーポレート・ガバナンス委員会)は有効に機能している。
- 各機関(取締役会、監査役会、指名諮問委員会、報酬諮問委員会、コーポレート・ガバナンス委員会)の規模・構成・メンバー資質は高いバランスを有しており適切である。
- 独立社外取締役が取締役会議長を務め、中立的な立場から公正かつ活発な議論のファシリテートに貢献している。
- ③取締役会において活発で実質的な議論がなされている。
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- 取締役会の年度運営方針に基づき、議論のフォーカスがなされている。
- 社内・社外、取締役・監査役の区別なく積極的な議論参加が行われている。
- 長期ビジョン、中長期経営計画、経営課題等についての議論が行われている。
その内容は企業の持続的成長、企業価値向上に資するものである。 - 取締役会の議論が、事業計画や施策に反映され、最終的な経営の質向上につながっている。
- 前事業年度の実効性評価で抽出された課題への取組みの進捗状況
前事業年度に報告した次の課題については、取締役会の運営方針および年間計画において対応項目として掲げられ、改善への取り組みが認められました。
- ①取締役会の議論のさらなる進化
- 取締役会の議論をより大局的かつ中長期的なテーマにフォーカスすべく、コーポレート・ガバナンス委員会は第128期の取締役会の運営方針(重点審議項目)を策定し、当該方針に基づき取締役会の運営が行われた。
- <第128期 取締役会の運営方針>
- 取締役会運営の基本方針
- 取締役、監査役、執行側は、TDKの持続的成長と中長期的な企業価値の向上という共通目的に向けて取り組む。第128期は、現中期経営計画の最終年度かつ、第129期からの新中期計画の策定年度であるため、取締役会はFeasibility(実現可能性)が高く、ステークホルダーへの訴求力の高い計画策定に向けて、多方面からの監督・助言を行う。
- T128 重点審議項目
- 1.長期計画のレビューと新中期経営計画についての議論
2.ステークホルダーエンゲージメント強化についての議論
3.次期経営体制についての議論 - また、コーポレート・ガバナンス委員会における権限委譲の議論に基づき、2023年7月度取締役会において職務決定権限規程(取締役会付議基準)の改定を行い、執行側への権限委譲を推進した。
さらに、執行側は取締役会における実効的な議論を担保するために、新任役員向け説明会や拠点視察、本社拠点以外での取締役会の開催、技術展示会・社内イベントへの招待など、ボードメンバーへの適切な情報共有を行った。 - ②ステークホルダーとのエンゲージメント強化
- 当社の企業価値の向上を目指し、全てのステークホルダーに当社の成長性・競争優位性についての理解をより深めてもらうべく、取締役会は、Feasibility(実現可能性)が高く、ステークホルダーへの訴求力の高い中期経営計画策定に向けて、多方面からの監督・助言を行った。具体的には、2023年8月から、取締役会や取締役会以外の場(オフ会)において、当社の長期ビジョンやそこからバックキャストする中期経営計画について、複数回の議論を行った。また、全社および各事業部門からの現中期経営計画の進捗報告と審議を経て、2024年3月度取締役会において、新中期経営計画(第129期~第131期)を決定した。
また、取締役会は、執行側によるステークホルダーとのコミュニケーションの強化を推進すべく、取締役会においてブランディング・PR戦略について複数回の議論を行った。執行側は、統合報告書での情報発信の強化や新たなIRイベントの企画開催に取り組み、一定の成果を得た。
さらに、取締役会は、従業員とのエンゲージメント強化のため、「開かれたボード」と称する活動を開始した。具体的には、秋田地区での取締役会開催と現地社員とのパネルディスカッション、成田地区での社外取締役と従業員とのディスカッション、取締役からの社員向けメッセージなども取り入れて、取締役会の活動を従業員に近づけるための交流や情報発信を進めた。 - ③変化の激しい市場動向への対応
- グローバル規模での市場分析を含むマーケティング戦略、および地政学・地経学リスクへの対応力を高めるべく、取締役会において、新中期経営計画策定を見据えたグローバルマーケットの動向についての報告を行なうとともに、市場状況の変化については、毎回の取締役会の主要事業部門の報告等において議論を行った。また、グループリスクマネジメントについて複数回の議論を行い、地政学・地経学リスクについては、ボードメンバーおよび執行側マネジメント層を対象に、外部有識者による講演会を開催した。
取締役会による最終評価
- 実効性評価の結果(結論)
この評価においては、取締役会の実効性を「会社の持続的な成長を実現する為に取締役会が期待される役割・機能(経営の監督、重要事項の決定等)を適切に果たしていること」と捉え、それを担保する仕組みがあり、適切な審議や活発で実質的な議論が行われているか、その結果が経営の向上に繋がっているかという観点で評価を行いました。
当社取締役会は、コーポレート・ガバナンス委員会による一次評価を踏まえ、取締役会において複数回の審議を行った結果、取締役会及びその諮問委員会(指名諮問委員会、報酬諮問委員会、コーポレート・ガバナンス委員会)は、その規模や構成、議案や審議内容、議論の状況、経営への反映等々の点から、その実効性が十分に確保されていることを確認しました。
さらに、前事業年度における取締役会評価の結果を踏まえた改善を図ることにより、取締役会の実効性向上を継続的に進めていることを確認しました。 - 今後の課題
今回の取締役会評価の結果、取締役会が今後も取り組んでいくべき主な課題として以下の3点が認識されました。
- ①取締役会における中期経営計画達成のための意思決定
- 当社の中期経営計画(第129期~第131期)の執行をモニタリングし、その達成を支援すべく、取締役会は中期経営計画の重要な要素である「事業ポートフォリオ戦略」と「経営レベルでのリスク管理」についての議論を深め、その上で必要な意思決定を行っていく必要がある。
具体的には、「事業ポートフォリオ戦略」においては、事業ポートフォリオの継続的評価と最適化(コア事業への重点投資と次期柱事業の創出および課題事業の対処)について、「経営レベルでのリスク管理」においては、従来から取締役会で議論しているグループリスクマネジメントについて、リスク・ヒートマップを継続的に改良し、重大リスク対応方針・とるべきリスクと必要な対策の観点から、掘り下げた議論を行う事が課題として挙げられる。 - ②ステークホルダーとのエンゲージメント活動強化
- 取締役会による企業価値向上への貢献を果たすため、前期に引き続きステークホルダーエンゲージメント活動の強化を図る。前期においては主に取締役会と内部ステークホルダー(従業員)とのエンゲージメント活動に特化した取り組み(「開かれたボード」活動)を行ったが、当期は「開かれたボード」を継続しつつ、その対象を外部ステークホルダー(投資家、株主等)に拡大し、当社の未財務資産(将来キャッシュフローの源泉:人的資本、組織資産、技術資産、顧客資産等)やポテンシャルを訴求してゆく。また、取締役会において、当社のPR力・ブランド力強化についての議論を行い、執行側によるステークホルダーとのコミュニケーションの強化を推進する。
- ③中期経営計画期間を見据えた最適なガバナンス体制の追求
- 当社は中期経営計画(第129期~第131期)の策定にあたり、長期ビジョン「TDK Transformation~Accelerating transformation for a sustainable future~」からバックキャストした計画策定を行った。そして、取締役会自身もまた、さらなる実効性向上のために最適な姿に変革してゆく必要がある。
スキルマトリクスの検証、指名プロセスの明文化を行い、必要なスキルを有する取締役を招聘してゆくとともに、ガバナンス機能のさらなる向上のために、独立社外取締役過半数体制への移行など、最適なガバナンス体制を追求する。
当社は、会社の持続的な成長と企業価値の向上を実現していくために、取締役会の実効性の向上に今後とも取り組んでいきます。
以 上