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[ 2023年3月期 通期 決算説明会 ]2023年3月期 連結業績概要

専務執行役員 山西 哲司

専務執行役員 山西 哲司

山西でございます。本日はご多忙のところ、2023年3月期通期決算説明会に多数ご参加いただき、誠にありがとうございます。私から連結業績概要についてご説明します。

2023年3月期 通期決算のポイント

2023年3月期 通期決算のポイント

まず、決算のポイントを説明します。一部地域における新型コロナウイルス感染症再拡大から社会経済活動及び生産活動の回復傾向は続いているものの、長引くウクライナ危機等に起因するインフレの継続や欧米各国による政策金利上昇等により、世界経済は減速しました。第4四半期に入り、米国金融機関の破綻や、欧州金融機関の経営危機懸念を発端とした金融不安から、世界経済の先行きに対する不透明感がさらに高まっております。また、国内外の金利差が為替相場に大きく影響し、円安が進行しました。
このような経営環境の下、当社の業績に影響を与えるエレクトロニクス市場においては、特にICT市場における需要の低迷が継続した一方、xEV向けや産業機器等のEX需要が堅調に推移しました。この需要を確実に取り込み、売上高は前期比14.7%の増収、営業利益は同1.2%の増益となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。
ICT市場においては、コロナ禍で好調だったPCやタブレット端末の需要が期初想定を大きく下回ったものの、スマートフォン新モデル向けに二次電池やセンサの販売が拡大しました。一方、データセンター向け投資は急速に減速し、HDDヘッドやサスペンションの販売が大幅に減少しました。
自動車市場では、半導体供給不足等サプライチェーン上の制約が継続しているものの、全体で緩やかな回復が見られました。特にxEV比率の高まりやADAS化の進展により部品搭載点数が増加し部品需要が堅調に推移した結果、受動部品やセンサの販売が拡大しました。
地政学的リスクの高まりにより、世界的にエネルギーの供給不安や価格高騰影響が出ており、再生可能エネルギーや省エネ関連設備、また家庭用蓄電システムの需要が継続的に拡大しており、中型二次電池や産業機器用電源の販売も拡大しました。
第3四半期決算発表の際に足元で最終需要に低下圧力がさらに強まっていることを踏まえ、第4四半期において構造改革費用約200億円を計上する見込みと説明しましたが、収益改善に課題を抱える事業を中心に今後の需要動向や業績見通しを精査した結果、第4四半期中に減損損失や構造改革費用約467億円を計上、定年年齢延長に伴う退職給付負債減少による収益約120億円と相殺し、第4四半期に一時費用347億円を計上しております。

2023年3月期 連結決算概要

2023年3月期 連結決算概要

次に、業績概要を説明します。
対ドル等の為替変動により、売上高は約2,922億円の増収、営業利益で約689億円の増益影響となりました。この影響を含み、売上高は2兆1,808億円、前期比2,787億円、14.7%の増収、営業利益は1,688億円、前期比21億円、1.2%の増益、税引前利益は1,672億円、当期利益は1,142億円となりました。1株当たり利益は301円19銭となります。営業利益には一時費用として357億円が含まれております。また、一時費用にかかる損失の多くは税金費用の減少効果がないため、当期利益は前期比で減益となっています。
為替の感応度については、営業利益において前回と同様、円とドルの関係において1円の変動で年間約20億円、円とユーロの関係において約6億円と試算しています。

2023年3月期 事業別概況 -受動部品事業-

2023年3月期 事業別概況 -受動部品事業-

続いて、通期のセグメント別概況について説明します。
受動部品セグメントの売上高は5,759億円、前期比13.4%の増収、営業利益は955億円、同24.4%の増益となりました。xEV向けを中心とした自動車市場向け販売が好調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。
自動車や産業機器向けの売上構成比率が高いコンデンサ、アルミ・フィルムコンデンサ、インダクティブデバイスは増収増益を確保しました。
一方、スマートフォンへの需要が減少した結果、スマートフォン向け売上構成が高い高周波部品は減収減益となりました。今後の需要動向を見据えた生産能力調整のため、構造改革費用約3億円を計上しました。
圧電材料部品・回路保護部品は増収となりましたが、数量ベースでは販売が減少し、減益となりました。

2023年3月期 事業別概況 -センサ応用製品事業-

2023年3月期 事業別概況 -センサ応用製品事業-

センサ応用製品セグメントの売上高は1,695億円、前期比29.7%の大幅増収となりました。営業利益は107億円となり、一時費用25億円を含みながらも増収効果により収益が大きく改善し、前期比110億円の増益となりました。
温度・圧力センサは、自動車及び家電向けの販売が数量ベースで減少したうえ、拠点整理等の構造改革費用13億円を計上したため減益でした。
磁気センサにおいては、ホールセンサの自動車及びスマートフォン向け新製品販売が拡大しました。TMRセンサは、自動車向け売上が堅調に推移していることに加え、スマートフォン向け販売の採用も拡大しました。磁気センサ全体では大幅増収となり、収益も大きく増加しました。収益性も向上しています。
MEMSセンサは、需要が低調なICT市場向けの売上が減少した一方、自動車及びウェアラブル、ゲーム機向けの販売が順調に増加し増収となりました。在庫処分等による一時費用12億円も計上していますが、MEMSセンサ全体の収益は改善に向かっています。

2023年3月期 事業別概況 -磁気応用製品事業-

2023年3月期 事業別概況 -磁気応用製品事業-

磁気応用製品セグメントの売上高は2,006億円、前期比19.3%の減収、営業利益は一時費用279億円を含め564億円の大幅赤字となりました。
HDDヘッド・サスペンションにおいてはPC向けの需要が減少し、ニアラインHDD向けでも景気減速等の影響によるデータセンター投資が減少、HDDの在庫調整によりHDD総需要も前年比で40%弱の減少となりました。この結果、HDD向けヘッド及びサスペンションとも販売数量は前期比で大幅に減少し大幅な減収、赤字を計上しました。
HDD需要の回復にはしばらく時間がかかることを見越し、ヘッドおよびサスペンション、サスペンション応用製品とヘッド関連事業全体で、減損損失や構造改革にかかる一時費用を第3四半期の10億円と合わせ通期で257億円計上しました。
マグネットはxEV向け販売が増加し増収となったものの、生産性改善の遅れにより減益となり、収益改善も進まず減損損失22億円を計上しました。

2023年3月期 事業別概況 -エナジー応用製品事業-

2023年3月期 事業別概況 -エナジー応用製品事業-

エナジー応用製品セグメントの売上高は1兆1,734億円、前期比21.5%の増収、営業利益は一時費用170億円を含みながらも1,474億円、同19.6%の増益となりました。
二次電池は前期比で増収でした。中国スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどモバイル用途向けの販売数量が減少しましたが、スマートフォン新モデル向けの販売は増加したうえ、家庭用蓄電システム向けを中心とした中型電池の売上拡大でカバーしました。営業利益は小型バッテリーの数量減による減益影響があるものの、製品ミックスの好転や販管費も含めたコスト効率化、中型電池の収益改善により増益を確保しました。なお、スマートフォン向け旧モデルの専用設備52億円の除却損を計上しています。
産業機器用電源は、半導体製造装置等の産業機器及び医療用機器向けで需要が堅調に推移し増収増益となりました。収益性も大きく向上しています。なお、EV用電源については順調に売上を伸ばしてきましたが、コスト改善の遅れや需要動向の変化による受注見込みの減少もあり、減損損失118億円を計上しました。

2023年3月期 事業別四半期推移

2023年3月期 事業別四半期推移

第3四半期から第4四半期のセグメント別売上高、営業利益の増減要因について説明します。
受動部品セグメントの売上高は第3四半期から第4四半期にかけて△77億円、△5.3%の減収、営業利益は△107億円、△41.0%の減益となりました。スマートフォン向けを中心にICT市場向け販売が減少したことに加え、産業機器市場及び家電向け、代理店向け販売も減少し、全体で減収でした。圧電材料・回路保護部品は売上高増加により増益を確保しましたが、コンデンサ、インダクティブデバイス等が販売数量減少の影響や第4四半期における季節性要因の影響もあり、減収減益となりました。
センサ応用製品セグメントの売上高は△67億円、△14.6%の減収、営業利益は△75億円の減益でした。他方、第4四半期に計上した一時費用25億円を除けば、第4四半期も利益を確保しています。温度・圧力センサの売上高は第3四半期からほぼ横ばいで推移、一時費用13億円を除けば営業利益もほぼ横ばいで推移しました。磁気センサは、TMRセンサ、ホールセンサとも大手得意先向け販売における季節性要因などから減収減益となりました。 MEMSセンサはモーションセンサが自動車向け販売は堅調に推移しましたが、中国スマートフォン向け販売が減少、マイクロフォンの販売も減少しました。この結果減収となり、一時費用12億円も含み減益となりました。
磁気応用製品セグメントの売上高は△42億円、△8.8%の減収、営業利益は△261億円と大幅に赤字が拡大しました。売上高は主にニアラインHDDの総需要がさらに減少した結果、HDDヘッドの販売数量が第3四半期からさらに7%減少し減収となりました。稼働損も大きく影響しています。一時費用を含み大幅減益となり、赤字を計上しました。マグネットは生産性の改善が遅れ減収減益、一時費用の計上もあり赤字が拡大しました。
エナジー応用製品セグメントの売上高は△919億円、△27.7%の減収、営業利益は△531億円と大幅減益でした。二次電池はICT向け販売において季節性要因も含み販売数量が減少し減収となりました。一時費用52億円も含み減益となっています。産業用電源は増収増益で好調を維持した一方、EV用電源は減収減益に加え一時費用118億円も含み、大幅な赤字を計上しました。

営業利益増減分析

営業利益増減分析

営業利益は前期比で21億円増益となりました。ICT市場の需要減少の影響を大きく受けているHDDヘッド・サスペンション及び二次電池の販売数量減少により、売上による利益変動は△831億円と大幅減益でした。一方、円安による増益効果689億円によりある程度吸収できたことに加え、二次電池や受動部品を中心とした合理化コストダウンの推進、前期実施の構造改革効果、販管費の効率化により、前期より実質約282億円の増益となりました。
なお、HDDヘッド等の需要環境が大きく変化していることを踏まえ、第3四半期に加え第4四半期においても構造改革を実施しました。一時費用は通期で357億円計上となり、前期比261億円の増加となりました。