IMUセンサがやり投げ競技のデータを可視化。
スポーツ観戦の新たな可能性に挑む
投てきされたやりの軌跡、スピード、高さ、距離、回転などの各種データをTDKのセンサ技術によって可視化する——このプロジェクトは、World Athletics(世界陸連)とTDKが共有する「技術で陸上競技を進化させ、その魅力をより多くの人に伝えたい」という共通のビジョンから生まれました。TDKは世界陸連と協働し、センサ技術でアスリートの挑戦を可視化し、投てきされたやりが飛翔するその強さと美しさを、誰もが実感できる形で届けようとしています。
ワールドアスレティックス(World Athletics/世界陸連)
ワールドアスレティックスは、陸上競技の国際競技連盟。競技規則の制定や世界陸上競技選手権大会の運営などを通じて、陸上競技の発展と普及、公正な競技環境の構築を目指しています。
テクノロジーがスポーツ観戦を進化させる
近年、スポーツの楽しみ方が大きく変化しています。単なる勝敗だけでなく、アスリートの動きや競技の細部をデータとして可視化することで、これまで知られてこなかった技術や戦略を感じることができます。このようにテクノロジーを活用して、スポーツに新たな観戦体験を実現する「スポーツテック」の普及が広がっています。たとえば、サッカーではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によって判定の正確性が向上したり、陸上ではフライング判定にセンサ技術が導入されたりするなど、映像解析やセンシング技術が、競技の公正さとエンターテインメント性をどちらも高めることにつながっています。
陸上競技のやり投げはスピード、パワー、そして正確な技が融合した競技です。しかし、これまで観客に伝わる情報は「飛距離」という結果に限られていました。そこでTDKと世界陸連は、やりにIMU(慣性計測ユニット)など複数のセンサを搭載することで、投げた瞬間の加速度や角度、飛翔するやりの高さ、回転などを可視化するプロジェクトを開始しました。この取り組みを通じて、競技の魅力やアスリートの卓越したパフォーマンスを多くの聴衆の方々に伝えると同時に、そのデータをアスリートの能力向上のために提供することで、投てき競技の新たな価値を提案することを目指しています。
やり投げ競技における各種データ(やりの軌跡、角度、速度、高さ、回転など)が可視化されることで、競技の楽しみ方が大きく変わる可能性を秘めています。また一方、投てきの精密なデータを選手やコーチに提供することで、記録向上に役立つことが期待されます。
ギャラリー
やりの動作を精緻に捉えるTDKのIMUセンサ
やり投げを可視化するこのプロジェクトは、TDKのIMU(慣性計測ユニット)が使用されています。高精度のセンサによって、やり投げの動作を精緻に捉え、軌道や回転、速度といった複雑な運動データを可視化することができます。このプロジェクトでは、以下のTDK製品が活用されています。
● ICM-45686:高性能な6軸MEMSモーション・トラッキングデバイス(UI + AUXインタフーェース)
製品の詳しい情報はこちらセンサはやり本体に取り付けられ、投てきの瞬間に発生する加速度や角速度を計測。これにより、やりの飛行中の姿勢変化や回転数、最高到達速度などが数値化され、ソフトウェアと連動し可視化されます。今後、このソリューションを更に発展させて、将来的には観客に新たな競技体験を提供するだけでなく、アスリート自身がパフォーマンスを深く理解し、技術向上に役立てることも目指しています。
ワールドアスレティックス担当者のコメント
陸上競技は、純粋なパフォーマンスがすべてであり、競技におけるテクノロジーは急速に進化し、アスリートのパフォーマンスを記録し、理解することが可能になっています。
スポーツデータは、アスリートの能力向上に役立つだけでなく、ファンに対して新しいストーリーテリングを提供しています。TDKがその技術力を活かして、フィールドでのイノベーションを支援してくれることを嬉しく思い、TDKのセンサ技術が投てき競技の計測に応用されることを、私たちのコミュニティは楽しみにしています。
ワールドアスレティックス CIO
An Dang Duy氏
TDK担当者のコメント
今回、世界陸連と初めて技術面での協働ができたことを、TDKとしてとても光栄に思います。世界陸連のアスリートへの愛情と理解、そしてTDKのセンサ技術が融合し、“両者の共創”を通じて、競技の新たな可能性を引き出す挑戦に踏み出すことができました。
TDKは”TDK transformation”のビジョンのもと、世の中に変革を起こす最先端テクノロジーを支えています。しかし、その働きは表から見てもわかりません。TDKの電子部品をスポーツにも役立てたいと考えていたところ、世界陸連から「やり投げを可視化して新たなファン層を獲得したい」というご提案をいただきました。TDKの技術を多くの方に知っていただくチャンスだと考え、協働することとなりました。世界陸連やアスリートなど多くの方々と出会い、私たちもやり投げへの理解が進みました。現在、TDKのセンサ技術でやり投げの軌跡データを可視化できていることに大きな喜びを感じています。
まだプロジェクトは初期段階ですが、技術を磨きながら、やり投げ、そして陸上競技のTransformationに貢献していきたいと思います。これからも、世界陸連やアスリートと共に新しい価値を創造できることを楽しみにしています。
TDK株式会社 戦略本部 広報グループ
小池中人、岡田壮右
東京2025世界陸上でやり投げを体験できる!
2025年9月13日から21日まで、東京2025世界陸上競技選手権大会が開催されます。大会のオフィシャルスポンサーを務めるTDKは、会場となる国立競技場の外周にTDKブースを出展します。ブースでは、記事で紹介したワールドアスレティックスとのやり投げプロジェクトのプロトタイプ展示やTDKのセンサを搭載したダミーの「やり」を投げて世界記録に挑戦できる、体験イベントも行います。ぜひご来場ください。
" スポーツデータは選手の成長だけでなく、ファンへの新たなストーリーテリングにも貢献しています。TDKのセンサ技術が投てき競技に応用されることを、私たちは大いに期待しています。 "
ワールドアスレティックス CIO
An Dang Duy氏