サステナビリティトップコミットメント

創業以来大切にしている社是に自信を持ち、
"テクノロジーですべての人を
幸福に"を実現します

2021年度、中期経営計画「Value Creation 2023」を始動し、持続可能な社会と企業成長を共に実現することを宣言したTDK。その2年目となる2022年4月、6年ぶりの社長交代により、石黒成直から齋藤昇へとバトンが引き継がれました。
ここでは、2021年度および任期中の6年間を石黒が振り返り総括するとともに、TDKが未来に向かい目指す姿について齋藤が中心となって語ります。

中期経営計画「Value Creation 2023」1年目の振り返り

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ウクライナ情勢を受けた緊迫状況が続き、私たちの暮らしや経済、社会は依然として大きな変化を迫られています。そうした中、TDKグループは2021年度、「Value Creation 2023」の1年目を終了し、過去最高の売上高と営業利益を達成しました。
4つのセグメント(受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品、エナジー応用製品)がすべて黒字となった中でも、長く苦労を重ねてきたセンサ応用製品事業の黒字化には深い意義を感じています。社会に役立つ事業という確信を持ちながらも、製品を十分に市場に展開しきれていなかったのがこれまでであり、黒字化により、私たちの方向性が間違っていなかったことを証明できたと考えています。
一方、近年TDKの成長を牽引してきたバッテリなどのエナジー応用製品事業は、一つの転換期を迎えています。世界で拡大を続けてきたスマートフォン市場の需要に天井が見えてきた中、未来を見据え、次の一歩を踏み出していく必要があります。
受動部品事業、磁気応用製品事業は共に堅調に推移しました。あらゆるモノやサービスがデジタル化され、新たなエネルギーデバイスが次々と登場する社会において、当社の技術・製品への需要は伸び続けています。
あらためて振り返ると、2021年度はDX(Digital Transformation)・EX(Energy Transformation)という潮流が本流となり、今後の社会が進んでいく方向性が明確になった1年だったと感じます。そしてそのトリガーとなったのは皮肉にも新型コロナの拡大であり、人類にとって危機的な状況が変化のスピードを上げ、社会のあり方を急転換させることとなりました。

変化する時代においても不変の、サステナビリティへの価値観

私たちを取り巻く事業環境を一歩引いて眺めたとき、世界は今「統合の時代」の最終盤を経て、「分断の時代」の序盤を迎えていることに気づきます。1980年頃以降、中国の改革開放路線や冷戦の終結、EU の誕生など、世界では統合化・グローバル化の動きが進みました。国際水平分業が広がる中、そのグローバルプラットフォームを活かして世界で成長してきたのがTDKでした。
しかし、状況は変わりつつあります。経済大国の貿易摩擦や新ナショナリズムの台頭、軍事侵攻など、世界は再び分断の道を選びつつあります。ただ、世界を分断するどのような線が政治によって引かれても、独自のコアテクノロジーとソリューションによって、すべての人々にとって持続可能で幸福な社会を目指すTDKの価値観に変わりはありません。DXとEXを推進し、ボーダーレスに社会に貢献するのが私たちのビジネスです。
サステナビリティ推進をめぐっては、この6年間で社内でもさまざまな進捗がありました。2019年にサステナビリティ推進本部を立ち上げ、社長直下の重要組織として取り組みを加速して以来、従業員の意識は明らかに変わってきたと思います。かつては180度ベクトルが異なると考えられてきた「社会的合理性」と「経済的合理性」が、今日TDKでは完全に一致するものとしてとらえられています。SDGsの課題解決に自社の技術を使っていかに活用するかを開発・生産現場の従業員が考え、事業計画へと落とし込む仕組みが根付いてきたのはその一例です。

マーケットインの視点で、お客様と社会から寄せられる期待を超えていく

2022年度は、中期経営計画「Value Creation 2023」の2年目を迎えます。DX・EXという強力な追い風をしっかりととらえ、これまで培ってきた成長基盤を活かして、次の飛躍を目指していかなければなりません。お客様の期待値は高まる中、いかに期待を超える価値を提供していくかが問われています。
鍵を握るのはマーケットインの視点です。「こんな良いものをつくったから使ってほしい」という従来のプロダクトアウトの発想を超え、世界の人々が何を課題と考え、どのような期待を持っているのか常にアンテナを張り、製品開発に組み入れていく必要があります。
これはまさに、「Value Creation 2023」の始動にあたって掲げた2CX(Customer ExperienceとConsumer Experience)です。TDKの直接のお客様だけを見ていれば良いのではなく、その先のエンドユーザーが何を求めているのかまで認識し、「社会課題や市場ニーズに、いかに素材・技術を活かして応えていくか」を考え抜くことが不可欠です。
その意味で、「コトづくり」は今日のTDKのビジネスのキーワードといえますが、これはモノづくりを軽視するのとは全く異なります。コトを理解した上でモノをつくることが非常に重要であり、何を実現したいのか、どんな社会になってほしいのかを具体的に思い描きながら、外部のパートナーの方々とも一緒になってモノづくり、価値創出に取り組むということです。

従業員一人ひとりの価値創造の総和がTDKの価値になる

経営トップという立場からあらためて実感するのは、「人がすべて」ということです。技術を開発するのも人、製品をつくるのも人、製品を市場に広めていくのも人。TDKの価値とは、高いモチベーションをもって働く従業員一人ひとりの価値創造の総和にほかなりません。2021年度、私たちは1,667億円という過去最高益を更新しましたが、この数字は現場での小さな努力の積み重ねでしか成し得なかったものです。
先日、TDKの創業の地である秋田県で、モノづくりの底上げを図る小集団活動成果発表大会に出席した際にも、その想いは深まることとなりました。日本の全21工場から集まったメンバーの発表を聞き、いかに品質を高めるか、効率を改善するかを追求する、現場の人々の溢れる熱意には感動を覚えるほどでした。そしてそれは日本だけに留まるものではなく、世界各地の現場において、モノづくりの原点に立ち返った小集団活動が自然発生的に生まれています。自分がやりたいことに打ち込んでいる人々の成長は果てしなく、それこそがモノづくりを、そしてTDKを強くします。
ある意味で、TDKはソロプレーヤーが魅力的なジャズバンドのようなものだと考えています。ジャズバンドのマネージャー役として、個人や個社の力を伸ばしながらお互いの理解を促し、個性あふれる融合体「TDKユナイテッド」としてチームワークで価値を創出していけるよう、組織をつないでいく。多様性に富む組織の融合体が緊密につながる環境を創りだすことが経営の役割です。

すべてのステークホルダーが幸福を感じられる社会へ

近年、企業の存在意義を見つめ直す「パーパス経営」に注目が集まる中、より重みをもって感じられるのが「創造によって文化、産業に貢献する」というTDKの社是です。創業以来受け継ぐこの社是は、当社のパーパスそのものであり、87年間揺らいだことはありません。その点には従業員にぜひ自信を持ってほしいですし、株主やお客様、サプライヤー、社会など、当社に関わるステークホルダーすべてに信頼を感じていただきたいと思います。
創業100周年を迎える2035年という次の大きな節目を視野に、私たちはあるべき未来の姿からのバックキャスティングで次の成長を描いていかなければなりません。TDKグループ サステナビリティビジョンで「テクノロジーですべての人を幸福に」を掲げるように、私たちが長期的視野から追求するのはすべての人々にとって持続可能で幸福な社会の実現です。幸福が意味するものは幅広く、受け手によってもさまざまでしょう。その多様性を意識しながら、そこに挑戦していく会社でありたいと願います。社是のもと、グループ約11.7万人の力を活かしきり、すべての人に幸福をお届けし続ける「幸福サプライヤー」を目指していきます。