社会課題を起点としたビジネス創出
ATLの住宅用蓄電池システムRESSで、再生可能エネルギー社会を実現
TDKグループのATL(Amperex Technology
Limited)は、リチウムイオン電池の開発、製造、販売を行っています。
ATLのビジネスモデルは新素材の設計と開発、新しいセルとパックの構造、自動化生産プロセスと装置により、優れた製品を作り、革新的な電池技術と顧客ファーストをベースに、高度な製品設計、優れた技能、世界規模の生産能力、迅速な受注処理、そして比類ない顧客サービスを提供できることがATLの強みです。
ATLが製造する充電式リチウムイオン電池は、技術的には、リモートコントロール盤など家電製品のほとんどの種類の一次電池と置き換えることができます。装置の寿命を迎えるまでに、一次電池の場合は複数の電池を使い果たしてしまう可能性がありますが、充電電池の場合は通常であれば1つで十分です。要するに、1つの充電電池が、複数の一次電池に置き換えられる可能性が非常に高いといえます。
また、充電ができない一次電池の大部分は、使用後固形廃棄物として埋め立てられているため、充電して繰り返し使えるリチウムイオン電池に置き換えることで廃棄物の削減に貢献することができます。
ATLの電池製品の中でも、特にRESS(Residential Energy Storage Systems:住宅用蓄電池システム )は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標7.2「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」 に寄与することができます。
RESSは、太陽光パネルや風力発電等により、自家発電した電気を貯蔵する大規模な電池です。一般的な住宅での電気使用量は、家族が仕事や学校で外出している日中は少なく、家族が帰宅する夜間に多くなる傾向が顕著です。太陽光発電は日中のみに発電するため、電気の発電時間と消費時間にズレが生じます。RESSがあって初めて、日中に発電した電気を貯蔵して夜に使うことができるのです。また、太陽エネルギーで発電できない曇りや雨の日にも、RESSに蓄えられた電気は役立ちます。
私たちがRESSを適正価格で優れたサービスとともに供給することにより、住宅で使用する再生エネルギーの割合を増やし、再生エネルギー社会の実現に貢献することができます。
優れたRESSを供給することによって、再生可能エネルギーを拡大することを使命とする私たちATLが、脱炭素社会の実現のために、今後の課題としているのは、自社のCO₂を削減することです。電池の原材料調達から製造、供給、廃棄まで、ライフサイクル全体のCO₂排出量を調査し、削減する方法を模索しています。同時に、使用済み電池のリサイクル、リユースの研究にも注力しています。
私たちは、企業成長とサステナブルな社会の実現は両立できると考えています。さまざまな国や企業がすでにカーボンニュートラル計画を発表しています。CO₂排出量を削減することに貢献する製品を供給するATLにとって、これは成長するチャンスでもあるととらえ、あらゆる努力を継続して取り組んでいきます。
Joe Kit Chu Lam
Executive Vice President
Amperex Technology Limited
TDK ElectronicsはCO₂排出量を半減します
TDK Electronicsは、社会と環境に対する責任を真摯に受け止めています。私たちの世界中の施設では常に、エネルギー効率の向上、エネルギーの可能な限りの節約、再生可能エネルギー源からの電力使用に努めるほか、環境を保護し、社会に利益をもたらす製品づくりにも力を注いでいます。また、スタッフに対しては、自分自身の行動をグローバルコミュニティの社会的、経済的、生態学的な目標の実現に役立てるという認識を育んでいます。持続可能な開発目標(SDGs)は、私たちが目標達成に到達するためのガイダンスとなっています。
インドと中国でのプロジェクトにより、TDK Electronicsは2021年4月までにCO₂排出量を約50%削減することができました。2019年以来、生産工場の屋上に設置した太陽光発電設備が工場の電力需要の約5%をカバーしているナシック工場では、現在、このカバー率を50%に増やすことを計画しています。そのためこの工場では、太陽光発電分野が7,000 kWpのピーク出力を提供できるパートナーと協力しており、ナシック工場にのみ太陽光発電を供給しています。2020年9月には、中国の珠海と紅旗の工場がすべての電力需要を再生可能エネルギーから調達開始しており、この取り組みは2021年末まで続きます。このようにTDK Electronicsではアジアにおいて、再生可能エネルギーの使用率を70%以上に増やし、SDG 7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)、SDG 12(つくる責任 つかう責任)、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に取り組んでいます。
Dr. Klaus Moertl
Head of Environmental Protection / Occupational Safety and CSR Coordinator
TDK Electronics
COVID-19のパンデミックが発生し、世界中の注目はSDG3(すべての人に健康と福祉を)に注がれています。
それ以来、私たちの工場の多くは、自国の医療システムをサポートするためのさまざまなプロジェクトを立ち上げています。たとえばドイツでは、TDK Electronicsが赤十字に50,000枚のフェイスマスクを提供しました。ハンガリーのソンバトヘイ工場では、患者をほかの場所に移動させることなく肺疾患とCOVID-19の診断をするためのモバイル超音波スキャナーを地元の病院に寄贈しました。
そして、私たちは製品でも健康と福祉の促進に貢献しています。たとえば、ドイツのベルリン工場では、人工呼吸器や麻酔機器用の圧力センサーを製造しています。これらのセンサーは、人工呼吸器の酸素の流れを制御し、その圧力を測定することが可能です。また、私たちの製品であるコンデンサ、インダクタ、バリスタ、その他あらゆる種類の受動部品は、人工呼吸器に必要不可欠な製品なのです。
Manuel Lumpe
Head of TPS Pressure Sensors Business Unit, Berlin
TDK Electronics
TDK Electronicsの医療技術製品のもう一つの例としては、オーストリアのドイチュランツベルクで製造された特殊なセラミックディスクがあげられます。ディスクは癌患者の治療に使用され、低強度の交流電界によって癌細胞の分裂を中断させるのに役立ちます。ディスクは医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格であるISO 13485に沿って、2018年に特別認定されたドイチュランツベルク工場で、完全自動化で大量生産されています。
Harald Kastl
Head of PPD Piezo Automotive Electronics / Industrial Electronics Business Unit, Deutschlandsberg
TDK Electronics
InvenSenseの超音波ToFセンサで、COVID-19など伝染病の根絶に貢献
TDKグループのInvenSenseは、慣性センサの開発、製造、販売を行っています。InvenSenseは、センサ本体だけでなく、ファームウェアやドライバ、アプリケーション、リファレンスデザインを含むソリューションを、センサと併せて提供することにより、顧客が製品を市場に投入するまでの時間を大幅に短縮することができます。
InvenSenseはSDGs(持続可能な開発目標)の目標3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に貢献することに重点的に取り組んでいます。
COVID-19のパンデミックにより世界は一変しました。感染抑制のためにはソーシャルディスタンスの保持や、接触した相手を追跡することが重要な役割を担っています。TDKの子会社であるChirpの高性能超音波3Dセンシングを活用し、InvenSenseが提供する超音波ToF(Time of Flight)センサは、センチメートルの精度で人との距離を測定して、ソーシャルディスタンスの最低距離を越えるとアラートを発信し、接触時間を測定。同時に接触者との距離と接触時間を、個人のプライバシーを守りながら記録します。ユーザーの感染が確認された場合には、接触者を追跡して通知することもでき、的を絞って感染の蔓延を抑制することができます。従業員がこの超音波ToFセンサを身に着けることで、安全な職場環境を実現します。
現在、この超音波ToFセンサは、ストラップを使用して、身体の前面と背面に1台ずつ着ける必要があります。今後の改善点として、シームレスに衣服に組み込むこと、電池の寿命を延ばすことに取り組んでいます。
また、システムのセキュリティをさらに強化することにより、都市など、より広範囲での使用が可能となると考えています。
超音波ToFセンサの着用可能性を広げるためには、チップの消費電力の改善とシステム統合、高度なパッケージングの研究が必要です。これらはTDKが最先端の技術を有している領域であり、その強みを活かして改善していきます。
セキュリティに関しては、システム設計全体と、装着者を特定するすべての情報を考慮する必要があります。この点はあらゆる障害点を分析することにより、安全を確保できると考えています。
SDGsへの貢献なくして企業の成長はないと考えています。InvenSenseの製品、設計、製造に関する意思決定は、材料や資源の使用量の削減、機器の処理能力の向上、製造における消費電力の低減を行い、効率性を向上させることを重要視しています。製造や試験に設計プロセスを採用し、最新のインダストリ4.0における機械学習法を採用することによってこれを実行しています。
事業を大幅に拡大しつつ、資源使用量を維持し、CO₂削減を実現すること。InvenSenseはたゆまぬ努力により、これを両立しています。
Dr. Peter Hartwell
Chief Technology Officer
InvenSense