

#34回らないモータって…どういうこと?
~リニアモータのお話~
ドライヤーや洗濯機、エレベーターやクレーンゲーム、スマートフォンの‘ブルブル’も
くるくる回るモータのおかげで動いている。
君たちの身近なところで活躍している「回るモータ」だけど、
実は「回らないモータ」もあることは知ってたかな?
しかもそれは、とっても大きなものも動かしているんだ。
そんな不思議な「回らないモータ」の世界、知らないなんてモータイナイ!(もったいない)
では、さっそくてれみんファミリーと一緒にのぞいてみよう。
登場人物

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あ~、お寿司おいしかった! ごちそうさま~。
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回るのもいいけど、たまには回らない方もいいわね。
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そういえば、回転寿司のレーンは「回るモータ」で動いているけれど、 回らないモータのことを「リニアモータ(リニアモーター)」というのは知っているかな?
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えっ! また回らないお寿司の話!?(キラキラ)
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・・・そうじゃないけど、 リニアモータはまっすぐ進む力を生み出しているんだ。
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それって、よく聞くあのかっこいい電車のことじゃない?
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ふふふ、それじゃあ腹ごなしに「回らないモータ」の話をしよう。
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「回らない」モータって、ナンダ?
モータといえば、電気の力をつかって「回転する動き」をつくる装置。
(詳しくは♯30「くるくるモータ実験」をみてみよう くるくるモータ実験| article | TEREMIN | TDK)なのに、回らずまっすぐ動くモータがあるらしいけど、どういうこと?
その仕組みを一緒にみてみよう。まっすぐ進む 「リニアモータ」の仕組みとは・・・?
「リニア」とは、直線やまっすぐという意味。
回らずにまっすぐな動きを作る装置だから「リニアモータ」と呼ばれている。
仕組みを簡単にいえば、巻いてあったモータをまっすぐ伸ばして直線的にしただけ。
直線に並ぶ電磁石のS極とN極を切りかえることで、
直線的に進む力を生み出している。 -
「リニアモータ」と聞くと、思い浮(う)かべるのが「リニアモーターカー」。
これは、リニアモータの仕組みを使った乗り物のこと。
実は日本人が名付けた和製(わせい)英語なんだ。リニアモーターカーは、もうすでに走っている?
関東だと都営地下鉄大江戸線、
関西だと大阪メトロ長堀鶴見緑地線(ながほりつるみりょくちせん)、
九州だと福岡市地下鉄七隈線(ななくません)など、
実はすでに全国で「リニアモーターカー」は走っているんだ。浮かなくたって、「リニアモーターカー」!
リニアモーターカーというと、線路から浮き上がって進む電車を想像する人も多いのでは?
「リニアモーターカー」とは、リニアモータの仕組みを使った乗り物のこと。
だから、浮いても浮かなくても「リニアモーターカー」なんだ。
先ほど紹介した地下鉄は、みんな浮かないリニアモーターカーだ。 -
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リニアモーターカーがじわじわ増えているのは分かるけど…、 そもそもなんで普通の電車じゃなくてリニアモーターカーにする必要があるんだろう?
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おっほん。それには、ちゃんと理由があるんだ。
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なんでリニアモータを使うの?
リニアモータは、モータ自体が薄(うす)く平べったいため、
車体の高さを抑(おさ)えることができる。
そのため電車が走るトンネルも小さくできるので、
トンネルを掘るときのコストを低くできるし、工事期間も短くてすむ。さらに普通のモータより坂道を上るときの性能もすぐれているため、
急勾配(きゅうこうばい)も力強く登ることができるんだ。
そのため、坂道を気にせず駅と駅の間を直線的に短く結ぶことができる。
しかも走行するときの音も静かで、乗り心地も快適(かいてき)なんだって。 -
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えー!! リニアモーターカーって良いことずくめだね!
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「リニアモーターカー」の浮く・浮かない問題!?
リニアモーターカーと聞いて頭に思い浮かべるのが、
2027年の開通を目指して開発が進むリニアモータ新幹線。
(正式には「リニア中央新幹線」っていうんだ)
これは、磁石の力で浮き上がって進む「磁気浮上式(磁気浮上式)」の
リニアモーターカーらしいけど…
どんな仕組みなんだろう? -
リニアモータ新幹線のひみつは、超電導にあり!
すごく重い車体を浮かすのには、大きなエネルギーが必要なんだ。
そのためには、とても強い力の電磁石がいる。
でも、強い電気を流そうとすると
電磁石のコイルは電気抵抗(でんきていこう)によって熱くなってしまう。
だから、そのままでは大きな電流を流すことができないんだ。 -
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電気抵抗って、なに?
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電気抵抗とは、電気が流れるのを防ごうとする力のことだよ。 豆電球が光ったり熱くなったりするのは、この電気抵抗が原因なんだ。
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この問題を解決したのが「超電導磁石」!
超電導とは、
「超電導体」という物質をすごく低温にすると電気抵抗がゼロになるというもの。
電気抵抗がなくなれば、熱や光を出すことなく大きな電流を流すことができる。
リニアモータ新幹線は、軽くて強い電磁石を使い車体を浮かすことで、
時速500kmという超高速運転を実現しようとしているんだ。 -
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リニアモータ新幹線には、-255℃ほどに冷やして 超電導状態を保てる高温超電導磁石を使う予定で、開発を進めているんだそうな。
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え? -255℃で「高温」なの?……キンッキンに冷えてるのに?
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あくまでも他の超電導体に比べたら“高めな温度”ってことらしいぞ。
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うーむ……きっとすごい技術なんだろうなぁ。
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実際どんな構造になっているかというと…
まず、車体には先ほど紹介したすごい技術の超電導磁石がついている。
そして、地上側にはリニアモータ新幹線が進むための「推進コイル」と
車体を浮かせたり安定した状態を保ったりするための「浮上・案内コイル」が埋め込まれている。 -
① 「めちゃ速く進む」しくみとは…
車体についている超電導磁石のN極・S極はあらかじめ固定してある。
地上の「推進コイル」には、それぞれに電流が流せるようになっている。
すると、電磁誘導の仕組みによって地上のコイルも電磁石に変身させることができる。
※電磁誘導についてくわしく知りたい人は♯18「ゆらゆら科学実験」を見てみよう。
ゆらゆら科学実験!| article | TEREMIN | TDK地上側のコイルのS極・N極の切り替えをタイミングよく操作することによって
超伝導磁石との間に車体を前に進めたり、ブレーキをかけたりする力を作り出すことができる。
S極・N極の切り替えを車体の動く速さに合わせて絶妙にコントロールすることで
車輪では出せない超高速走行を実現しているんだ。② 車体が「浮く」しくみとは…
お次は、「浮上・案内コイル」が活躍するよ。
浮上・案内コイルには、推進コイルのように外から電気を流す仕組みはない。
だけど、車体側にある超電導磁石が「浮上・案内コイル」の横を通過するとき、
浮上・案内コイルは、勝手に電気が流れて電磁石に変わる。
これも、やっぱり電磁誘導のしわざだ。 -
この「浮上・案内コイル」は、とてもうまく作られている。
まずは上下の向きについて考えるよ。
コイルのちょうど真ん中を車体が通過しても、コイルには電流が流れないようになっている。
でも、コイルの真ん中より上か下に車体がちょっとズレてしまうと、
車体をコイルの真ん中へ戻そうとする力が生まれるような電磁石へと、
コイルが変身するよう設計されている。
こうして車体を安定した位置に浮上させているんだ。 -
次に、左右についても考えてみるよ。 車体の左右に位置する浮上・案内コイルは、それぞれレールの下を通ってつながっている。 レールの中央を走っていればコイルと超電導磁石の間には何の力も働かない。 でも、車体が左か右のどちらかに寄ってしまったときには… 上下の時と同じように、磁石の反発と引きつけあう力が電磁誘導によって生まれるように設計されている。
上下にも左右にも、浮いたまま電磁誘導の力でバランスが取れるようになっているんだね。
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参考:リニア中央新幹線チャンネル「超電導リニアの技術」 JR東海
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なるほど…、磁石でうまくバランスを取りながら、車体を浮かせていたのね。
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ちなみに時速500kmで動いている時は、 線路からは10cmほど浮いているんだそうだ。
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超電導リニアは、最新の科学技術をつかって
時速500kmというものすごいスピードを出しながらも、
静かで快適、安全な走行を実現しているんだ。
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日本の技術、めちゃくちゃすごいね!
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本当に、漫画に出てくるような未来の電車だわ!
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BUIBUI! (ぼくも超電導を使えば超高速で動けるかな~)
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科学技術がつまったこの乗り物は
どんな未来に私たちを連れて行ってくれるのだろう…? -
もっと知りたい!「磁石と電気の関係はややこしい?」 ~ジョン・フレミング編~
考えてみよう
実は遊園地で大活躍のリニアモータ
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リニアモータは、実際の交通だけでなく遊園地でも使われている。
・東京ディズニーランドの「ビックサンダーマウンテン」
スピードを上げたり下げたりする際にリニアモータの仕組みが使われている。・富士急ハイランドの「高飛車」「ZOKKON」
「高飛車」ではリニアモータを使って急加速を実現している。
最大時速は100kmにもなるそう!
「ZOKKON」では、爽快感(そうかいかん)のある加速のためにリニアモータを使っているんだって。リニアモータは、交通機関だけでなくスピードのでるアトラクションでも使われている。
それは、どうしてだろう?通常のローラーコースターは、
まず高いところまで登り、落ちるスピードを利用して加速している。
でも、リニアモータを使うと直線的なところでもスピードを出すことができるんだ。 -
ハラハラ・ドキドキの高スピードなアトラクション
リニアモータが使われている仕組みを知ってから乗ると
また一味違った楽しみ方ができるかも?