テクノロジーの進化:過去・現在・未来をつなぐ

5G: コネクティビティ(接続)を変革する技術を理解する

5Gとは

主なポイント
1. 前例のない速度と低遅延: 5Gは、最大20Gbpsのピークダウンロード速度と1〜2ミリ秒の超低遅延を実現し、自動運転車、遠隔医療、没入型AR/VR体験などのリアルタイムアプリケーションを可能にします。

2. 革新的なインフラ: ミリ波、MIMO、エッジコンピューティングなどの高度な技術を活用することで、5Gは人口密度の高い地域でもシームレスな接続性と比類のないパフォーマンスを保証します。

3. 変革をもたらす産業アプリケーション: 5Gは、スマートシティ、コネクテッドロジスティクス、自動製造、強化されたヘルスケアを推進し、さまざまなセクターでの効率とイノベーションを促進します。

4. 消費者のメリット: 5Gは、即時ダウンロードからラグのないゲーム、没入型のショッピング体験まで、日常のデジタル体験を向上させ、エンターテインメント、教育、コミュニケーションを再構築します。

5. 課題と今後の展望:インフラの未整備、セキュリティ上の懸念、コストの障壁にもかかわらず、5Gは次世代の技術である6Gへの道を切り開いています。これにより、ハイパーコネクティッド(超接続型)で革新的な未来が期待されています。

5G ネットワークとは何か?

第5世代のモバイル通信技術である5Gは、コネクティビティ(接続)における革命的な進化を象徴しています。4G LTEネットワークを基盤に、ダウンロード速度を大幅に向上させ、接続デバイスの密度を高め、これまでにないローレイテンシー(超低遅延)を実現しています。

5Gの公式規格は、2018年6月に3GPP(3rd Generation Partnership Project= 第三世代パートナーシッププロジェクト)によって定義され、電気通信の歴史における重要な瞬間となりました。4Gとは異なり、5Gは既存のインフラを活用しつつ、ミリ波(mmWave)などの高度な無線周波数帯域を組み込むことで、容量とパフォーマンスを劇的に向上させます。最初の5Gネットワークは2019年に韓国と米国で展開され、その後、世界中で急速に普及しました。

4Gから5Gへの移行は大きな進歩です。2022年までに、5Gネットワークのピークダウンロード速度は最大20Gbps*に達し、4Gの1Gbpsと比較して大幅に向上しました。遅延は、4Gの一般的な20〜70ミリ秒から1〜2ミリ秒に短縮され、自動運転車や遠隔手術などのリアルタイムアプリケーションが現実のものになりました。

※「Gbps」はGigabits Per Secondの略で、データ転送速度の指標で、毎秒数十億ビットの伝送数を示します。

5Gはデジタルの世界を再形成し始めています。2025年までに、膨大なデータトラフィックを処理する能力により、革新的な技術の広範な採用が可能になると予想されています。これには、自動運転車、広範なIoTエコシステム、シームレスな4K/8Kビデオストリーミング、没入型AR/VRアプリケーションが含まれます。専門家は、2030年までに5Gが世界経済に1兆3,000億ドル以上貢献し、イノベーションを推進し、世界中の産業を再定義すると予測しています。

 1Gから5Gまでのネットワークの進化

5Gの仕組み

5Gは、高度な無線スペクトル帯域と最先端技術を組み合わせることで、驚異的な速度、低遅延、接続密度を実現しています。その仕組みは以下の通りです。

● サブ6GHzとミリ波:5G ネットワークは、さまざまな無線周波数で動作します。サブ6 GHz 帯域 (6GHz未満) は広範なカバレッジを提供するため、特に地方や郊外での広範な展開に最適です。一方、ミリ波帯(24-40GHz)は、超高速データ伝送のための帯域幅を提供し、人口密度の高い都市中心部やスタジアムや空港などの需要の高い環境に最適です。
● 高度なアンテナシステム:5G は MIMO(Multiple Input, Multiple Output= 多入力多出力)アンテナ技術を採用しており、複数のデータストリームを同時に送受信できます。この技術により、ネットワーク容量が大幅に増加し、速度や信頼性を損なうことなく、より多くのデバイスを接続できます。
● スモールセルネットワーク:一貫したパフォーマンスを確保するために、5G はスモールセルネットワークを活用しています。これらは、街灯、屋上、電柱などに設置されるコンパクトな基地局で、局所的なネットワーク容量を強化し、高密度エリアでシームレスな接続を提供します。
● 直交周波数分割多元アクセス(OFDMA):この高度な変調技術は、スペクトルを小さなサブチャネルに分割し、スペクトルの使用を最適化します。OFDMAにより、複数のユーザーが同時にネットワークにアクセスでき、高負荷時でも効率的なデータ伝送が可能になります。
● ネットワークスライシング:5Gの最も革新的な技術の一つであるネットワークスライシングは、共有された物理インフラ上に複数の仮想ネットワークを構築できるようにする機能です。各スライスは特定の用途に合わせて最適化でき、例えば、自動運転車向けの超低遅延通信や、高精細映像のストリーミング向けのネットワークを個別に設定することが可能です。
 エッジコンピューティング:遅延を最小限に抑えるために、5G にはエッジコンピューティングを取り入れています。これは、ローカライズされたデータセンターを通じてユーザーに近い場所でデータを処理する仕組みです。このアプローチにより、応答時間が短縮されるだけでなく、中央サーバーの負荷が軽減され、ネットワークの全体的な効率が向上します。

5Gのスピード

5G技術の発明者

5G 技術の開発は、世界中の通信会社、学術機関、技術標準化組織の広範な協力によって進められてきました。 5Gを「発明した」と主張できる単一の企業はなく、その開発は、エリクソン、ノキア、クアルコム、サムスン、ファーウェイ、ZTEなどの業界リーダーの貢献によって形作られました。これらの各企業は、5Gネットワークを支えるハードウェア、ソフトウェア、インフラの革新において重要な役割を果たしてきました。

主要な国際機関として、3GPP(Third Generation Partnership Project:第三世代パートナーシッププロジェクト)やITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)が、5Gの技術標準の策定に重要な役割を果たしてきました。 例えば、3GPPは2018年に5Gの最初の仕様を発表し、世界的な商用展開への道を切り開きました。

TDKでは、5Gネットワークを支えるコアコンポーネントの進化に注力しています。5Gの高速・低遅延化に不可欠なスモールセル基地局の最適化に欠かせない超小型DC-DCコンバータLTCC AiPデバイスなど、当社のイノベーションは多岐にわたります。これらの技術は、5Gインフラの効率とパフォーマンスを向上させ、人口密度の高い地域でもシームレスな接続を可能にします。

TDKは今後も「Beyond 5G」など、現状の限界を押し広げる取り組みに積極的に取り組んでいきます。私たちの研究は、次世代のワイヤレス技術に焦点を当てており、5Gがハイパーコネクテッドな未来の要求を満たすように進化することを保証します。

5Gの高速性

5Gは、モバイルネットワーク技術を飛躍的に進化させ、速度、信頼性、接続性に新たな基準を打ち立てました。5Gがゲームチェンジャーである理由を理解するために、まずモバイルネットワークの進化を見てみましょう。

● 1G(1980年代):主に音声通話用に設計されたアナログシステム。暗号化がなかったため、セキュリティは事実上存在せず、アップロード速度はごくわずかでした。
● 2G(1990年代):最初のデジタルネットワークで、セキュリティの強化と SMSなどの基本的なデータサービスが導入されました。しかし、速度の上限はわずか64kbpsで、3分間の曲をダウンロードするのに20分以上かかりました。
● 3G(2000年代):384kbps から 2Mbpsの速度でモバイルインターネットを主流にしました。進化したものの、これらの速度はスムーズなビデオや音楽のストリーミングには不十分でした。
● 4G LTE(2010):HDビデオストリーミング、高度なアプリケーション、大容量ファイルのダウンロードに対応できる速度で、転換点となりました。理論上のピーク速度は 100Mbpsに達しましたが、実際には多くの場合、これよりもはるかに低速でした。

5Gの登場により、私たちは新しい時代を迎えました。5Gは4Gよりどれほど速いのでしょうか? 5Gは、高度な無線周波数帯域と短いデータ伝送バーストを使用して、超高速と超低遅延を実現します。レイテンシーがわずか数ミリ秒に短縮され、自動運転車やスマートホームシステムなどのデバイスのリアルタイム通信が可能になりました。

スピードの優位性
5Gは、あらゆる指標で4Gを凌駕しています。ピークダウンロード速度は最大20Gbpsに達し、これは4Gの1Gbpsの20倍です。たとえば、3GでフルHD映画をダウンロードするには26時間、4Gでは6分かかるのに対し、5Gではわずか3.6秒です。


5GがLTEや4Gよりも優れているのはなぜですか?
5Gのメリットはスピードだけではありません。以下のような機能を提供します。

● 容量が大幅に増加し、数百万台のデバイスをシームレスに接続できるようになりました
● 遅延の短縮は、遠隔医療や産業オートメーションなどのアプリケーションに不可欠です
● ネットワークの信頼性が向上し、医療、製造、輸送などの分野でのイノベーションへの道が開かれます

抜本的なアップグレード
5Gはゆるやかな改善ではなく、4Gネットワークの10〜100倍のアップグレードです。速度から容量、信頼性まで、5Gはネットワークが実現できることのパラダイムシフトをもたらしています。

全体像
5Gネットワークの機能は、これまでの世代では実現できなかったシームレスな接続と、リアルタイムの自動化の世界を可能にします。高速化だけでなく、リアルタイムのデータ処理を可能にし、何十億ものデバイスを接続し、スマートシティや自律型テクノロジーといった新たな可能性を引き出します。過去の通信技術は人々を結びつけたのに対し、5Gは世界を結びつけるでしょう。

次のステップ
5Gによって確立された基盤は、6Gのような将来の進歩への道を開き、さらに高速化、低遅延、前例のないイノベーションの可能性を約束します。

 

 

 

5Gのインフォグラフィック

5Gがもたらす未来:さまざまな分野への影響を探る

2025年現在、5Gは、その超高速、ほぼゼロの遅延、数十億台のデバイスを接続する能力により、すでに業界、政府、日常生活を変革し始めています。ここでは、この革新的なテクノロジーが世界をどのように変えているかをご紹介します。

ビジネストランスフォーメーション
5Gは、さまざまな業界でイノベーションを推進しています。

● 多くの企業が今後数年間で5Gソリューションの実装を計画しています。この傾向は、リアルタイムのデータ処理を可能にし、ビジネス運用の柔軟性と俊敏性を高める高度なネットワークの重要性が増していることを示しています。5Gにより、企業は従来の制約を克服し、より自由に実験と革新を行うことができます。
● ネットワーク型物流は、商品のリアルタイム追跡と予測分析の恩恵を受け、5G 以前のシステムと比較して遅延を大幅に削減します。
● 小売業、ヘルスケア、製造業などの業界では、効率を高め、カスタマーエクスペリエンスを向上させるために、5G対応のロボティクスと自動化の採用が進んでいます。

政府とスマートシティ
政府は、よりスマートな都市管理のために5Gを活用しています。

● 5Gを活用したスマートシティは、大都市圏の交通の流れを改善し、渋滞を緩和しています。
● IoTベースの環境モニタリングにより、大気質と水使用量をリアルタイムで追跡し、持続可能性への取り組みをサポートします。
● 5Gと緊急対応
● 5G接続により、機関間の通信が高速化され、より効果的なデータ共有が可能になり、緊急対応の取り組みが改善されています。

医療革命
5Gは、ヘルスケアのイノベーションを加速させました。

● 遠隔医療の利用は大幅に増加し、5Gにより高品質のビデオ診察とリアルタイム診断が可能になりました。
● 5G接続を備えたウェアラブルデバイスは、継続的な健康モニタリングをサポートし、これらのテクノロジーを採用するユーザーが増えています。Spherical Insightsのレポートでは、5Gを活用したウェアラブルがリアルタイムの患者モニタリングを改善し、病気の早期発見に役立っていることが強調されています。
● かつては未来的と考えられていた遠隔手術は、5Gがロボット支援手術の精度と信頼性を高めるにつれて、より実現可能になりつつあります。

没入型体験
5Gはエンターテインメントと教育に革命をもたらしています。

● AR/VRプラットフォームは今や小売業の中心であり、主要なブランドではバーチャル試着室や没入型の製品デモンストレーションが標準となっています。
● 教育分野では、5Gを活用した仮想教室が、世界中の2億人以上の生徒にインタラクティブなレッスンを提供し、農村部のギャップを埋めています。
● 8Kストリーミングや超リアルなVRゲームが主流となり、全く新しいデジタル体験が生まれています。

自動運転車
2025年には、5Gのおかげで自動運転車が現実のものとなりました。

● スマートシティのパイロットプログラムでは、車両とインフラ間のリアルタイム通信により交通安全が向上しており、早期の実装により事故率の低下が見られます。
● 自動運転車の利用は着実に増加しており、5Gは障害物の検出、ナビゲーション、意思決定において重要な役割を果たしています。Verified Market Reportsによると、米国の自動運転車市場は、5G接続の進歩とAIを活用した意思決定に牽引されて、2030年までに860億ドルに達すると予測されています。

消費者の利点
日常的なユーザーに向けて、5Gは以下の利点を提供します。

● インスタントダウンロードが可能で、フル8Kムービーは10秒未満で完了します。
● 遅延が1ミリ秒と短く、遅延のないシームレスなゲーム体験を実現します。
● ショッピング、旅行、学習体験などを再定義するARアプリ(バーチャル試着から没入型の旅行計画まで)

克服すべき課題
5Gは変革をもたらすメリットをもたらしますが、課題は依然として残っています。
● インフラの遅延:農村部と発展途上地域では、5Gの展開が依然として遅れています。2028年までに全世界が完全にカバーされると予測されています。
● セキュリティ上の懸念:コネクテッドデバイスの大幅な増加により、サイバー攻撃のリスクが高まり、新しい業界標準が生まれています。
● コスト障壁:5G対応デバイスは依然として高価であり、一部の消費者にとっては利用が遅れています。

全体像
5Gは単なるアップグレードではなく、ハイパーコネクテッドワールドの基盤です。スマートシティから自動運転車まで、このテクノロジーは可能性を再定義するイノベーションを可能にしています。今後、6Gの概念の予備的な調査はまだ始まったばかりであり、5Gによって築かれた基盤に基づいて、時間の経過とともに潜在的な進歩について専門家の間で議論が続いています。

結論

2025年に5Gが中心となる中、業界と日常生活をかつてないほど変革しています。超高速、超低遅延、数十億台のデバイスを接続する能力を備えた5Gは、単なる技術的なマイルストーンではなく、イノベーションの新時代の基盤となっています。自動運転車やスマートシティから、没入型エンターテインメントや命を救うヘルスケアアプリケーションまで、5Gはギャップを埋め、かつては手の届かなかった可能性を実現します。

インフラの拡張やセキュリティ上の懸念などの課題は残っていますが、産業界、政府、イノベーターの協力的な取り組みにより、広範な採用への道が開かれています。5Gが6Gのような新興技術の基礎を築き、その影響をさらに拡大するため、未来は明るいです。
5Gの計り知れない可能性を受け入れることで、私たちはハイパーコネクテッドで、より効率的で、力強い世界を構築しています。可能性は無限大で、旅はまだ始まったばかりです。

FAQ

1. 5Gとは何ですか、また4Gとどう違うのですか?
5Gは第5世代の無線技術で、4Gと比べて大幅に高速で低遅延、多くのデバイスを接続できるのが特徴です。4Gでは実現できなかった自律走行車や遠隔医療などのリアルタイムアプリケーションをサポートします。

2. 5Gはどのようにして高速かつ低遅延を実現するのですか?
5Gは、ミリ波周波数、MIMOアンテナ、スモールセルネットワーク、エッジコンピューティングなどの高度な技術を活用し、データ伝送を最適化し、遅延を最小限に抑えます。

3. 5Gから最も恩恵を受けるのはどの業界ですか?
ヘルスケア、製造、物流、教育、エンターテインメントなどの業界が、5Gの能力の恩恵を受けています。これにより、遠隔手術、スマートシティ、自動化されたサプライチェーン、没入型のAR/VR体験などのイノベーションが可能になります。

4. 5Gはいつどこでも利用可能になりますか?
5Gは急速に拡大していますが、全世界が完全にカバーされるのは2028年までにと予想されています。一部の農村部や低開発地域では、インフラの課題により、導入が遅れています。

5. 5Gは安全に利用できますか?
広範な研究により、5Gは安全で、国際的な健康と安全の基準を満たしていることが示されています。ただし、すべてのワイヤレス技術と同様に、そのインフラは、信頼性とセキュリティを確保するために慎重な実装を必要とします。

6. 5Gに関連する課題は何ですか?
主な課題には、農村部でのインフラの展開、コネクテッドデバイスによるサイバーセキュリティリスクの増加、消費者にとっての5G対応デバイスの高コストなどがあります。

7. 5Gは古いデバイスをサポートできますか?
いいえ、4G以前のネットワーク用に設計された古いデバイスは5Gに接続できません。ユーザーがネットワークにアクセスするには、5G対応デバイスが必要になります。

8. 5Gの次は何ですか?
6Gの研究はすでに進行中で、2030年までにさらに高速、低遅延、革新的な機能を提供することを目指しています。6Gは、5Gによって築かれた基盤の上に構築され、新たな技術的可能性を解き放ちます。

参考文献:
● 5G - Wikipedia
● 5G System Overview
● Technical Specifications and Technical Reports for a 5G based 3GPP system
● ITU Standardization on 5G
● What is 5G? | Everything You Need to Know
● 5G Use Cases and Industry Applications

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