

#29あんなタネ、こんなタネ
~たねもしかけもあるお話~
果物を食べていると、よく顔を出してくるアイツ…そう、タネです!
「食べる時に、邪魔だなぁ」、そんな風に思っている人も少なくないのでは?
でも、彼らには隠された賢~いヒミツがありました。
身近なタネの知られざるヒミツから、ちょっと変わったタネ、
はたまた「これも実はタネだったの!?」と驚くようなものまで、
‘たねもしかけもある’お話のはじまりはじまり~!
登場人物

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もうっ! お兄ちゃんってば肝心な実まで消し飛ばしちゃうなんて!
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いや~、ごめんごめん。 まさか、あんなにタネがあったとはね。
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そういえば、ほとんどの果物にはタネが入っているけど、あれってどうしてかしら。 無い方が食べやすいのに~。
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よし、じゃあ今回はその「タネ」について詳しく見ていこう。
タネはそもそもナニモノ?
タネは何のためにあるの?
それは、自分たちの種(しゅ)を次の世代に繋ぎ、仲間をふやすため。 同じ場所ばかりで増えると、何か問題が起きたときあっという間に絶滅してしまうんだ。 だから「できるだけ広い範囲に、できるだけたくさん散らばりたい!」 というのが、タネたちの思いなんだ。
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でも、タネは自分で移動することができない。
そこで、弾け飛んだり、風や水、他の生き物に運んでもらうなど…
タネはさまざまな工夫をしている。タンポポ、アカマツ
風に運んでもらいやすいよう軽い綿毛や羽根のようなものがついており、
飛びやすいつくりになっている。オニグルミ、ココヤシ
水の力(川や海)によって運んでもらいやすくするため水に浮き、
たどりついた先で発芽できるような構造になっている。ヤマモモ、アケビなどの果物
実を美味しくし、タネを丸ごと飲めるように小さくすることで、鳥など動物が食べやすくする。
鳥たちが移動し、フンとして排出された先で発芽しやすいようになっているんだ。
※オナモミのようにくっついて運んでもらうものもある。 -
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へぇ~! 一言で「タネ」といっても、その生存戦略はさまざまななんだね。
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「運んでもらう」ために、形や大きさを変えているなんて、タネって頭いい~!
タネは栄養の宝庫!
タネの正体は、植物の種子(しゅし)。
中身をみてみると…
芽を出すための胚(はい)という部分あり、
その胚が成長できるように胚乳(はいにゅう)という栄養がぎっしり詰まっている。
そして皮である種皮(しゅひ)がその2つを大事に包んでいる。
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ちなみにクルミやアーモンドなどのナッツ類は、この種子の中身を食べているんだよ。
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一時期、色んなナッツがスーパーフードとして流行ったわよね。私も買ったわ~。
タネがないと、どうなる?
スイカやブドウなど、タネがない果物があるのはどうして?
自然的な理由もあるけれど、ほとんどは「美味しく、簡単に食べたい!」という人間の都合。
でも「タネなし」にするには、手間や時間がかかるんだ。
ブドウの場合は、実がなった後に1房ずつ薬品(体に害はないとされている)に浸す作業があり、
これは手作業で行われている。
スイカは、芽が出た時に特別な処置をしてタネなしにする。
しかしタネがないため、もちろん子孫は残せず、
次につくるときはその工程をまた1からやり直さなくてはいけない。
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え~!ブドウって、1つ1つ手作業なの!? ブドウ畑って、あんなに広いのに農家の人大変…。
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「タネなしブドウ」や「タネなしスイカ」が、他よりちょっとお高いのは納得だわ。
珍しい「自然と」タネなしになった果物もある
一部のカキやミカンは自然とタネがなくても成長できる果物。
通常、果物はタネがないと甘さが控えめとも言われているが、
これらはつぎ木やさし木
(枝のやわき芽の一部をとって、他の木の幹につなぎ合わせる方法)
をすることでタネがなくても繁殖することができる。
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そういえば、バナナって横に半分に切ると 細かな黒いタネみたいなのがない?
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あれはバナナのタネの名残だね。 今は食べやすく改良されているものばかりだけど、その原種に近いバナナのタネは、黒くてごつごつしているよ。 でも種から育てるのはとっても大変だから、生えているバナナの新芽を使って 増やしているんだ。
こんなタネ、あんなタネ? 実は豊富なタネのバリエーション
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ここからは、ちょっと変わったタネを紹介していくぞ。
栗の食べられる部分は?
栗は、実は果物の仲間。
とげとげのイガで中身を守っているけれど、
私たちが食べている「実」だと思っている部分は、実はタネ。
ちなみにどんぐりもタネ。
どんぐりの帽子も栗のイガも、同じく「タネを守る」役割をしているんだ。
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パイナップルのタネは、どこに?
パイナップルにもタネはある。
皮の周りに小さくあるぽつぽつした黒いものが、実はパイナップルのタネ。
皮の近くにあるから、食べるときはほとんど目にしないかも。
これもタネから育てるのは、とっても大変らしいよ。 -
タネが多い果物は?
これは、ドラゴンフルーツ!
実際に何個あるか調査したところ、1個当たり平均3,838粒のタネが見つかったそう。
他にもキウイやイチゴが、タネが多い果物なんだ。1番大きいタネは?
オオミヤシというヤシの仲間。
大きいもので直径35cm、重さは20kgにもなるそう。 -
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タネの種類って色々あっておもしろいね、お兄ちゃん。
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よーし! 色んなタネを探すために、もっと食べるぞー!
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おや、「タネはジャマだ~」といっていたのは、誰だったかな…。
もっと知りたい!「日本の植物を全部知りたい!」 ~牧野富太郎編~
考えてみよう
変わりダネ? 大集合!
知れば知るほど魅力的なタネの世界。
タネたちは自分たちの仲間を増やそうと、さまざまな生存戦略を立てている。
ここでは本編では紹介できなかった、変わったタネを集めてみた。
「山火事を利用する!」バンクシア
オーストラリアには「バンクシア」という植物がある。
この果実は松ぼっくりのような形をしていて、とても硬いことで有名なんだ。
そしてこの硬い実がはじけてタネを落とすためには、山火事が必要になる。
火事の熱などの刺激ではじけて地面に落ちた種は、
他の植物が焼けた後の灰を栄養にして成長していく。
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「ハデにはじける!?」、カタバミ
カタバミは可愛らしい花とは裏腹に、自らタネを遠くに飛ばそうとするなんともワイルドなタネ。
柔らかい皮をばねのようにして、実を縦に割り速いスピードではじける。
その飛ぶ距離はなんと1~2m!
他には、ホウセンカもはじけてタネを飛ばすことで有名。 -
「知らないうちに寄生しちゃう!」、ベンガルボダイジュ
熱帯アジア原産のこの植物は、実を鳥に食べさせ、フンとしてタネを遠くに運んでもらう。
種はそのままでは発芽せず、他の木の枝や幹に落ちた時に発芽し、
次第に根を地面までたらし新たな幹として成長する。
同時に宿主の木を覆い日光を得るため、宿主の木は枯れてしまう。
別名「シメコロシノキ」とも呼ばれ、ガジュマルもこの種の仲間。 -
果物や植物などは、その花や果実の特徴もさまざま。
でもタネも調べてみると、その個性や生存戦略にさらに感心してしまうかも!
この秋は自然の恵みを味わいながら、魅力あふれるタネの世界にハマってみては?