テクの雑学

第163回 電池切れでも安心! 〜手回し式発電機の原理〜

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

東日本大震災の余震がまだまだ続いています。停電に備えて、懐中電灯やラジオの備えを見直している人も多いのではないでしょうか。また、徐々に解消しつつありますが、震災の直後は各地で電池の品切れが発生し、入手が困難になりました。そんな時に頼りになるのが、手回し式発電機付きのLED懐中電灯やラジオです。
 

フレミングの「右手の法則」と「左手の法則」

 手回し式発電機は、人間がハンドルを手で回す力のエネルギーを電気に変換しています。この変換は、「電磁誘導」という現象により起こります。では、電磁誘導とはどのような現象なのでしょうか。

 1820年、デンマークの物理学者エルステッドが、方位磁石が指す方向と平行に導線をはり、電流を流すと磁針が動く、すなわち磁場が発生することを発見しました。その向きは、電流の方向に対して右回り(右ねじの法則)となります。電磁誘導とは、閉じた回路の中を通る磁束(磁気の流れ)が変化するとき、その変化を妨げる方向に磁場を発生するように電流を流そうとする電圧(起電力)が生じるという現象なのです。

 電磁誘導を実験的に実証したことで知られるのが、イングランドの物理学者ファラデーです。1831年に行った実験で、コイルの中に磁石を出し入れすると、電流が発生することを発見しました。また、磁石を固定してコイルを動かしたときにも、同様に電流が発生することを発見したのです。また、逆に磁場の中においたコイルに電流を流すと、その電流が発生する磁場を打ち消すような方向の磁場を発生するように、コイルを動かす力が発生することも発見しました。

 磁場の中にあるコイルを動かした時に発生する電流の向きや、コイルに電流を流したときに発生する力の向きは決まっています。これを覚えやすくするために、UCL(University College London)の電気工学教授であったジョン・フレミングが考案したのが、「フレミングの右手の法則」「フレミングの左手の法則」です。

フレミングの右手の法則 フレミングの左手の法則


 ちょっと余談ですが、フレミングは、自分が教えている学生が電磁誘導を何度説明しても磁場と電流の関係を覚えられないため、分りやすく表現するために右手の法則、左手の法則として表現したそうです。

 「フレミングの右手の法則」でエネルギーを「力→電気」に変換するのが「発電機」、「フレミングの左手の法則」でエネルギーを「電気→力」に変換するのが「モータ」です。つまり、両者は同じ仕組みを逆向きに利用しているのです。

手回し式発電機の仕組み

 では、手回し式発電機で、電流が発生する仕組みを見てみましょう。手回し式発電機の中には、磁石の間に導線を巻いたコイルが設置してあります。このコイルを回転させることで、導線が磁場の中を円を描いて移動することになります(なお、以下の図では、電流の流れがわかりやすいように、コイルの巻き部分を省略して描いています)。


 この図では、手前から見て反時計回りにコイルが回転しますので、磁石のN極側では導線は下から上へ、S極側では上から下へと動くことになります。したがって、「フレミングの右手の法則」にのっとって、N極側の導線では奥から手前へ、S極側の導線では手前から奥へと電流が流れます。この電流は、コイルの付け根に接している「ブラシ」を通して取り出されます。図の向かって右側がプラス極、左側がマイナス極になります。

 90度回転して、コイルが垂直に立った状態になると、導線が移動する方向は、磁場と平行になります。この状態になると、「フレミングの右手の法則」は成り立たなくなるので、電流は一瞬流れなくなります。

 そして、さらにコイルが回転すると、再び「フレミングの右手の法則」に従って、N極側の導線では奥から手前へ、S極側では手前から奥へと電流が流れます。

 流れる電流の量は、導線の磁場に対する垂直方向の移動速度が大きいほど大きくなります。つまり、コイルが磁場と平行な状態の時が最も大きく、コイルが磁場と垂直になると一度「ゼロ」になります。さらに回転すると、コイルを流れる電流の向きは反転することになります。たとえば、上の図でいえば、黄色い導線側を流れる電流はN極側にいるときは奥から手前に流れているのに対し、S極側では手前から奥に流れることになります。

 直流発電機の場合は、ブラシの部分に接している「整流子」によって、発電機から取り出された電流の流れる方向が一定になるように調整されます。整流子は半円を2つ組み合わせた形になっており、この図では電流が奥から手前に流れている時はプラス極側のブラシに、手前から奥に流れている時はマイナス極側のブラシに触れるようになっています。そのため、回転に伴ってコイルを流れる電流が反転しても、取り出される電流は一定の向きになります。


 交流発電機の場合は、整流子の代わりに「スリップリング」を使用します。スリップリングはコイルと一緒に回転します。コイルを流れる電流が反転すると、ブラシから取り出される電流も反転するので、交流電流を取り出すことができます。
 

非常時には頼もしい味方

 さて、最初に「電磁誘導の法則」で説明した通り、発電するには、磁石とコイルが相対的に動けば良いので、コイルを固定して磁石を回転しても、発電することができます。実は、私たちが日常使っている発電所にある発電機は、コイルの中にある磁石を回転させて発電します。発電機に「タービン」という大きな羽根車を接続して発電機の軸を回転させることで、電気を発生させているのです。タービンを回すために、水を沸騰させて水蒸気をあてたり、風車を使ったり、水が高いところから低いところに落ちる時のエネルギーを使ったりしているのです。

 市販されている手回し式発電機付きLED懐中電灯やラジオには、蓄電池が内蔵されており、その機器を使用するだけでなく、携帯電話などを接続して充電ができます。災害時などの停電時に、乾電池や充電池が切れてしまっても、とにかく回せば発電できる、頼もしい味方です。非常用に常備しておくことをお勧めします。


著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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