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[第4回 マラソン&トランス技術] 長距離ランニングと液晶テレビ その省エネの秘訣

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

数ある陸上競技の種目のなかで日本のマラソンは世界のトップレベル。とくに女子マラソンは、オリンピックのシドニー大会(2000年)、アテネ大会(2004年)で2大会連続の金メダルを獲得するという快挙を成し遂げた。マラソンランナーは必ずしも体格にはめぐまれていない。日本選手が伝統的にマラソンを得意とするのは、エネルギー源である食事も大きく関係している。  

長距離走はスタミナが要求されるスポーツだ。スタミナをつけるというと、日本人はふつう肉・魚などのタンパク質を摂取することと思っている。しかし、これは大きな誤解。むしろ炭水化物を摂取して体内に最大限に貯蔵することがポイントだ。

短距離走と長距離走とではエネルギーの使い方が異なる

スポーツ生理学というものが未発達だった初期のオリンピックのマラソン競技のエピソード。42.195kmを走りぬいた欧米の選手たちの多くが、ゴールに達したとたんバタバタと倒れるのに、日本の選手はさほど疲労のようすもみせず平然としているので不思議がられた。いろいろと調べたところ、どうやら食事が関係しているらしい。肉類の多い欧米食とちがって、日本の選手たちの食事は米や梅干といった質素なもの。しかし、長距離走のエネルギーとして炭水化物がきわめて重要だったのだ。  

炭水化物・脂肪・タンパク質を3大栄養素という。このうち筋肉運動のエネルギーとして使われるのは炭水化物と脂肪。米、麦、イモ類、砂糖などの炭水化物は、体内でグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵される。スポーツには短時間ながら筋肉をフル活動させる無酸素運動と、持久力をになう有酸素運動がある。100m走、200m走、400m走のような短距離走は無酸素運動で、そのエネルギーにはグリコーゲンが使われる。しかし、肝臓や筋肉に貯蔵できるグリコーゲンにはかぎりがあるので、中・長距離走のような有酸素運動では体内の脂肪が燃焼してエネルギーを補給する。実はこの脂肪の燃焼にもグリコーゲンが必要である。したがって、短距離走ではあまり影響しないが、マラソンのような長距離走となるとグリコーゲンの貯蔵不足は記録を大きく左右することになる。

およそ距離1,500mを境に、短・中距離走と長距離走では平均スピードは急速に落ちる。1,500m走が過酷なのは瞬発力と持久力の双方が必要とされるからだ。

炭水化物が不足するとスタミナ切れとなる

ビーフステーキやトンカツ、焼肉など、日本人にとってふつうタンパク質がスタミナ食といわれる。これは食糧事情が悪かった時代の名残である。肉類を中心とした欧米では、逆にスタミナ補給とは炭水化物の摂取を意味する。とくにマラソンのような長距離走でスタミナ切れを防ぐために、欧米ではグリコーゲン・ローディング(カーボ・ローディング)という食事法がスポーツに取り入れられて発達した。レースの3日前あたりから肉類中心の食事から、炭水化物を中心とした食事に切り替えて、体内にグリコーゲンを十分に貯蔵しておくという考え方に基づく。自動車にたとえるなら脂肪はガソリン、グリコーゲンはバッテリ電力。バッテリがあがったら、いくらガソリンが満タンでも走ることはできなくなる。  

シドニー・オリンピックの金メダリストである高橋尚子選手は、2003年の東京女子国際マラソンの35kmあたりで急に失速して2位となり、アテネ・オリンピックへの出場切符を逃してしまった。体調は万全、気力も十分だったのに誰もが首をかしげたが、これは食事計画のうっかりミスによる炭水化物の摂取不足によるものだったという。昔から遠足や旅行の携帯食であるおにぎりは、グリコーゲンを補給するうえで格好の食べ物なのだ。  

かといって炭水化物を取りすぎて、運動もしないでいると、炭水化物は脂肪に変化して、体内に蓄積されて肥満になる。結局はバランスのよい食事と、適度な運動が健康増進のための基本ということになる。栄養学的にもスポーツ生理学的にも、伝統的な和食はもっと見直されてよい。

液晶大画面テレビのスタミナアップ、インバータ用防磁トランスを新開発

マラソンランナーは標高3,000m前後での高地トレーニングをメニューに取り入れる。酸素の薄い環境で持久力を養うと、平地での血液の酸素運搬量が増して記録が伸びるからだ。かぎられた体内のグリコーゲンを効率よく利用する省エネ的なトレーニング法だ。  

電力の多くを石油に頼っている現在、製品のコストダウンのためのきめ細かな努力は、大きな省エネ効果をもたらす。現在、家電メーカーにおいて、液晶大画面テレビのパネル構造材を従来のアルミニウムから鉄にかえようという動きがみられるのも、さらなるコストダウンを追求するためだ。だが、ここでやっかいな問題が起きる。液晶ディスプレイのパネル内部には、バックライトを点灯するためのインバータが組み込まれているが、インバータ用トランスの漏れ磁束が鉄材に渦電流と呼ばれる電流を発生させて発熱ロスとなるのだ。そればかりでなく、渦電流は信号処理回路のノイズ原因となって画質に悪影響を及ぼしたりする。  

そこで、TDKが開発したのは、低コアロスの高特性フェライトコアに加えて、漏れ磁束を遮断する新構造を採用したインバータ用防磁トランス。従来の40インチ液晶テレビのバックライト点灯用インバータとくらべて10〜20Wも電力消費を低減する。このインバータ用防磁トランスは、CEATEC JAPAN 2006にも出品され注目を集めた。これからの省電力時代において、TDKのコアテクノロジーはますます真価を発揮する。

漏れ磁束によって鉄板カバーに発生する渦電流は、発熱ロスのほか、ノイズの原因となって画質に悪影響を与える。

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