テクのサロン

3. ビデオ接続はHDMIの時代へ

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

アテネ・オリンピックを今年8月に控え、家電業界は液晶やプラズマといった大画面デジタル・テレビの需要開拓に手ぐすね引いている。高画質を売り物にテレビの買い換え需要を喚起する千載一遇の好機到来というわけだ。  テレビに限らず、最近ではデジタル技術を駆使したDVDレコーダーなどのデジタル家電が家庭にあふれている。それでなくても混乱しがちな接続ケーブル配線はいっそう煩雑さを増している。  その一方でこれを簡素化しようという取り組みもすでに始まっている。パソコン用のUSBやIEEE1394(i-LINK)などのシリアル・ケーブルはその最初の試みで、努力の甲斐あってパソコン周りはずいぶんすっきりしてきた。

ビデオ接続コネクタを簡素化したHDMI

液晶やプラズマなどの高解像度・大画面テレビのビデオ接続には、これまでDVI(Digital Visual Interface)というインタフェースが使われてきた。DVIはもともとパソコンの高解像度デジタル・モニターに映像を表示するために制定された仕組みで、コネクターの形状も大きく、パソコンのモニター事情に合わせて、さまざまな信号線が同居している。
 そこでデジタル・テレビの次世代標準として、DVIを簡素化しながら新たな特色を盛り込んだHDMI(High-Difinition Multimedia Interface)という新しい接続方式を制定した。HDMIは2003年9月に規格が確定し、同年12月に正式に発効している。
 高解像度のビデオ信号とマルチチャンネルのオーディオ信号を非圧縮で高品質のまま伝送するのがHDMIの売り物だ。DVDコンテンツの著作権保護用のHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)という手法も組み込んでいる。DVIに比べて信号線の数を大幅に削減し、コネクターもはるかに取り扱いやすいものを採用した。

TMDSリンク1組みでHD-TV信号を伝送

DVIはデジタル映像用の差動信号伝送*1 を実現するTMDSリンク(Transition Minimized Differential Signaling)*2 が2組みと、パソコン・ディスプレイ用のアナログRGB信号から成るデジタル/アナログ混合型のインタフェースだった。DVIには高解像度と高いリフレッシュ・レート(1秒間の映像フレーム数)を両立する目的があったからだ。HDMIではこれを思い切ってTMDSリンク1本に集約している。
 HDMIのTMDSリンクは4つのTMDS差動信号チャネルから成る。このうち3チャネルはRGBまたはYCC*3 の映像色信号、1チャネルは色信号の同期クロック信号である。この一本のケーブルで165Mピクセル/秒 × 3チャンネル、合計495M/秒の映像信号を伝送し、併せてマルチチャンネルのオーディオ信号もこれに多重化する。HDMIの伝送速度は実に5Gビット/秒に達する。実際にHD-TV(デジタル・ハイビジョン)クラスの映像を伝送したとしても、帯域上はHDMIの半分も使い切らない。
 パソコン用のUSBやi-LINKの例を待つまでもなく、高速のシリアル伝送には差動信号伝送が適している。シリアル*4 で接続を簡素化し、しかも高速大容量の信号伝送というトレンドはますます深まる。TDKはいち早くHDMI専用のコモンモード・フィルタを開発した。これに限らずTDKのEMC対策部品のニーズは家庭内の隅々に広がっていく。

◆ 用語説明 ◆

*1 差動信号伝送
デジタル信号の伝送に2本の信号線を用い、2信号の電位差(電圧の差)がプラスであれば「1」、マイナスであれば「0」と判別する信号伝送方式。1本の信号線を用い、その電圧の高低で判別する通常の方式よりも、外来ノイズに強い、ノイズ発生も少ないという特徴がある。USBやi-LINK、LANのようにデジタル信号を高速でやりとりする通信にはこの方式が採用されている。

*2 TMDSリンク
米Silicon Image社が開発したデジタル映像信号伝送方式。1本のTMDSリンクは3チャネルの色信号伝送線と1チャネルの同期クロック線から成る。個々の色信号線には非圧縮のデジタル信号がRGB形式またはYCC形式で割り当てられる。色信号線にはマルチチャンネルのオーディオ信号も多重化される。システム的にはハードウェアIDを用いたコンテンツ保護機能HDCPも備える。4チャネルの信号伝送には差動方式を採用する。

*3 RGBとYCC
色信号の伝送方式。RGB方式は色信号をR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分割する方法で、主としてパソコンの色彩表現に用いられる。YCC方式は映像系(テレビ、ビデオ)の色彩表現に採用される方式で、色信号をY(輝度)、C(輝度とR成分の色差情報)、C(輝度とB成分の色差情報)に分割して表現する。HDMIはビデオ系の規格なので、3チャネルの色信号にはYCC方式の信号が伝送される。

*4 シリアル伝送とパラレル伝送
デジタル信号の伝送方式。本来は並列(パラレル)であるデジタル信号を、時間軸方向に1ビットずつ直列(シリアル)に送り出すのがシリアル伝送方式で機器外部の配線に使われる。そのまま送り出す方法をパラレル伝送方式と呼ぶ。主に機器内の配線に用いられる。シリアル伝送方式には、高速化しやすい、ノイズに強い、伝送線路(ケーブル)が簡素、伝送距離を長くしやすい、などの特色がある。最近はデジタル信号の高速伝送の必要性が高まっているので、シリアル伝送方式が増加している。

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