テクのサロン

3. 加速する車載ネットワークとノイズ対策

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

クルマの中はもうネットワーク社会、と言ったら驚くだろうか。実はクルマの中には各種のLAN(Local Area Network:構内情報通信網)がすでに張り巡らされている。しかしオフィスや学校、最近では家庭内にまで普及し始めたLANと、クルマのLANとは導入の背景と目的がいささか異なっている。前者が情報の共有と迅速なコミュニケーションを主眼に置くのに対して、クルマの場合は燃費改善を目的とした軽量化が大前提にあり、情報収集も目的の一つだが、どちらかというと各種の車載ユニットの制御に重点が置かれている。

車重を減らして燃費向上

TDK積層セラミックチップコンデンサ

150℃近くにもなるエンジンルームには、高温耐久性にすぐれたX8Rタイプが採用されている。

車体の軽量化にLANがなぜ役立つのだろう。ちょっと昔のクルマは、例えばブレーキを踏んだ時、機械的に直接ブレーキの油圧系統を操作して動力を伝えていた。これはほんの一例で、アクセルにしろ、個々の操作が独立したワイヤーで結ばれていた。 

クルマが進化を続けるにつれ、これらの機械的な動力伝達は次第に電動化(電気駆動)されていったが、操作とアクションが1対1という関係に変化はなかった。

 このため電動化したはいいが、今度は信号線の束が太くなってしまった。信号線はほとんどが銅線なので束になると実に重い。燃費を改善するには軽量化が一番の早道だが、この銅線の束が目障りな存在に映った。邪魔者を消す方法はないか、思案の末に辿り着いたのが、オフィスで活用されていたLANを導入するという解決策だ。銅線の束を1本のケーブルにまとめる、1対1の操作とアクションの関係を多対多の関係に変える。折しもクルマはエレクトロニクス化の真っ最中で、制御ユニットはマイコン化されてECU(電子制御ユニット)となっており、駆動系も電動化が進み、いろいろな条件が整ってLAN導入の絶好機となった。

クルマの中はネットワーク社会

車内LAN(CAN BUS)に対応し、コモンモードノイズを減衰、機器の誤動作を防ぐノイズフィルタ。

クルマのネットワークには、ギガビットLANのような高速性の前に、まずは安全で確実な情報伝達が要求される。情報の誤りが人命にかかわるからだ。今後、外部の情報ネットワークと無線でつながれるようになると事情は変わるが、目下のキーポイントは「安全性」と「確実性」に置かれる。

 車載ネットワークの標準化は欧州がリードした。現在、標準に最も近いと考えられているCAN(Controller Area Network)-BUSはドイツ生まれだ。CAN-BUSは1980年代の半ばに開発され、1991年には欧州車の一部に標準搭載された。2008年には米国でも自動車の自己診断システムの基幹ネットワークに導入される予定だ。
 CAN-BUSは中速(伝送速度1Mbps)のネットワークでパワートレイン系と呼ばれる中枢機械部分(エンジン、トランスミッション、ブレーキなど)の制御に用いられる。クルマでは中速以外にもボディ系(ドアロック、パワーウインドウ、ライト点灯など)の低速(数十kbps)、安全性重視系(ABS制御、アクセル情報伝達など)の高速(数M〜数十Mbps)、情報系(インターネット接続、映像情報伝送など)の超高速(〜100Mbps)など、各種のネットワークが混在すると考えられる。中速以外の分野ではまださまざまな提案が続いており、標準化はもっと先になると見られている。

ノイズは出さず出させず

TDKバリスタ
サージ(異常に高い電圧)やモーターノイズを吸収して、電子回路の誤動作や破壊を防ぐ。

車載LANに共通する特色は、信号伝送に差動信号を採用する点だ。差動信号は伝送エラーの回避に適している。クルマの基幹部品そのものもかなりのノイズを発生するし、最近はさまざまな電装品が備えられている。これもノイズ源になるし、クルマの利用環境自体が一般のオフィスや家庭に比べれば過酷な条件になる。そのためにCAN-BUSなどの車載LANは例外なく、差動信号伝送が不可欠になる。この差動信号のノイズを除去するためにコモンモードフィルタがLANインタフェースに装着される。TDKは現在、このCAN-BUS用コモンモードフィルタでトップレベルのシェアを獲得している。また直流電源の安定化を行ったり、サージノイズによるECUの誤動作を防ぐために、耐熱性の高い積層セラミック・チップコンデンサなどが必須となっているが、ここでもTDKのX8Rチップコンデンサが大きく貢献している。

 ノイズは防ぐだけでは十分ではない。やはり出さない工夫も必要だ。そのためにクルマには厳しいEMC基準が定められている。前号のトピックスで紹介した「R10」などの型式認定にかかわる規格もある。これらの条件を満たすにはノイズを元から断つ対策も講じなければならない。例えばクルマに多いパルス上の高電圧(サージ)を遮断するためにはチップバリスタが有効だ。またクルマには数多くのモーターが使われているが、ここにはフェライト磁石と並んでリングバリスタが不可欠になる。さらに電源周りにはチョークコイルやチップインダクタ等。TDKはこれらのノイズ対策部品について、数多くの実績とともに、最新の技術や製品を有している。
 これからのクルマを支える車載LAN。その安全性を守る要所にもTDKの様々な電子部品が光る。

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