じしゃく忍法帳

第106回「磁気浮上」の巻

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

「踊るUFO」と「ミニ・リニアモーターカー」

磁石で“親子ミュニケーション”

 鉄を吸い寄せることから、英語のマグネチック(magnetic)には、“人を引きつける”“魅力的”という意味があります。磁力というのは宇宙の根源的な力の1つ。磁石の不思議な振る舞いは、昔も今も変わらず魅力的です。そこで、今回は家庭でできる簡単な磁石実験と工作をご紹介いたします。名づけて、「踊るUFO」と「ミニ・リニアモーターカー」。いずれも磁石の同極どうしの反発力を利用したものです。

 使用する磁石はリング状のフェライト磁石(大・小サイズ)、円板(または角板)状フェライト磁石、帯状ゴム磁石(ラバーマグネット)です。その他の材料も含めてホームセンターなどで容易に入手できます。

 大型のフェライト磁石は磁力が強いので取り扱いに注意してください。銀行のキャッシュカードなどの磁気カード、磁気テープ、フロッピーディスクなどを近づけると、記録された情報が消えてしまうことがあります。

 また、大型のフェライト磁石どうしを不用意に近接させると危険です。指がはさまれて血豆を作ったりすることがあります。カッターナイフや糸ノコなどの刃物の取り扱いにも気をつけてください。

 以上の注意点を守っていただければ、短時間で簡単に製作が可能。親子のコミュニケーションも兼ねてチャレンジしてはいかがですか?

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永久磁石を完全浮上させるのは難しい

 まず、最も簡単な磁気浮上の実験から始めてみましょう。リング磁石を複数個用意して、木やプラスチックの棒に同極どうしが向き合うように貫通させて重ねます。すると2段目より上の磁石はすべて浮き上がります(図1左)。いちばん上の磁石を押してみてください。フワフワとした磁力のバネの感触が体験できます。棒なしに浮遊させることができれば面白いのですが、残念ながらそれはできません。棒は水平方向に逃げ出そうとする磁石をとどめる役割を果たしているからです。

 回転しながら空中にフワリと浮く磁気浮上コマ(独楽)のおもちゃが市販されています。これも磁石どうしの反発力を利用したもの。磁石をコマとして回転させることで姿勢を保ち、短時間ながら何とか浮かすことができるのです。

 この磁気浮上コマは、大小2つのリング磁石を利用すれば自作も可能です(図1中央)。大型リング磁石を使うのは、中央に磁力線の凹み部分ができるからです。この凹み部分に回転コマの反発磁力がうまくフィットすると磁気浮上します。理屈は簡単ですが、実際は重さや位置などに微妙な調整が必要です。せっかく作っても成功するとはかぎりません。そこで、手っ取り早く小型リング磁石を糸で吊ってみることにしました。これが「踊るUFO」です(図1右)。完全な磁気浮上とはいえませんが、2つのリング磁石の反発力と重力の作用により、まるで酔っ払いの千鳥足のような、予想外の複雑な動きを示します。

 UFOではなく、蝶やカモメなどの模型にしても面白いでしょう。テーブル(木製)の裏に大型リング磁石を貼り付けておき、マジックのように見せることもできます。

磁気浮上コマの仕組みと“フラフラUFO”の作り方

図1 磁気浮上コマの仕組みと“フラフラUFO”の作り方

短時間で製作できる磁気浮上式ミニ・モノレール

 本シリーズ第35回「リニアモーターカー」の巻 で磁気浮上式リニアモーターカーを取り上げ、簡単な模型工作も紹介しました。これは磁石を貼ったU字溝の中に、磁石を貼った車両模型を浮かせるものです。数多くの磁石を必要とするうえ、バランスをとるのがなかなか難しく、製作に時間も費用もかさんでしまいます。

 そこで、わずかな工作時間と費用で、誰でもできる磁気浮上式ミニ・モノレールを考案してみました(図2)。

 レールにはサッシ窓などに使われる断面がコの字型のアルミ建材を使いました。寸法精度が高く、曲がりやたわみにも強く、見栄えもよいからです(アルミ上で磁石を動かすと、渦電流によるブレーキ効果が発生しますが、高速で動かすわけではないのでほとんど問題ありません)。車両にはカセットテープの透明アクリルケースが利用できます(糸ノコなどで切断)。

磁気浮上式ミニ・モノレール

図2 磁気浮上式ミニ・モノレール

磁気浮上式ミニ・リニアモーターカー

 ミニ・モノレールでは物足りないと思われる方は、ミニ・リニアモーターカーに挑戦してみてください。これは図2のミニ・モノレールを2台連結して台車としたもの。レールを2本とすることでかなり安定して浮上し、スイスイと滑ります。自由にデザインしたボディを、台車の上に乗せるか、吊り下げてみましょう。

 磁気浮上するだけで走行はしないので、リニアモーターカーと称するのはおかしいのですが、それなりの雰囲気を楽しむことはできます(注:磁気浮上と駆動用のリニアモーターは別の概念です。東京の地下鉄・大江戸線のように、磁気浮上しないリニアモーターカーもあります)。

 大きな浮上力を得たいときは、台車の磁石の数を増やしたり、より強力な磁石を使えばよいでしょう。構造がシンプルなので簡単に製作できて安上がり、工夫しだいでさらに高度なシステムに発展させることも可能です。

磁気浮上式ミニ・リニアモーターカー

図3 磁気浮上式ミニ・リニアモーターカー

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