テクの雑学

第158回 冬場の強い味方 〜加湿器もハイブリッド〜

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

寒い日が続いていますが、皆様は風邪などひいておられないでしょうか?関東地方のこの冬は降雨量が少なく、日照時間が長いことで空気も乾燥し、東京23区と多摩地域では2010年12月31日から2011年2月5日まで、一ヶ月以上にわたって、乾燥注意報が発令されました。これは現在の注意報基準が導入された1967年以降で2番目に長い記録です。また、2月7日には再び注意報が発令されています。当然というべきか、風邪やインフルエンザが流行っているようですから、こまめな手洗いとうがいに加え、室内の温度と湿度を適切に保つことも心がけていただきたく思います。そこで今回は、冬場の体調管理の強い味方、「加湿器」をテーマとしてみましょう。

なぜ、冬になると乾燥するの?

そもそも、なぜ、冬場は空気が乾燥するのかといえば、空気が持つ「飽和水蒸気量」の性質が理由です。飽和水蒸気量とは、空気中に溶け込める水分(水蒸気)の量で、気温によって増減します。たとえば、気温30℃での飽和水蒸気量は1m3あたり30.38gなのに対し、気温0℃では4.85g/m3にまで低下します。冬場、サッシなどに起こる「結露」も、気温と飽和水蒸気量の関係に起因するものです。冷たい外気に触れているサッシ周辺は、室内の他の場所より気温が低いので、飽和水蒸気量が小さくなります。つまり、温度差によって空気中の水蒸気が飽和して液体に戻り、サッシ表面に凝集したものが結露です。ちなみに、冬の戸外で吐く息が白くなるのも、沸騰しているお湯から湯気が立つのも、同じく飽和水蒸気の結露による現象です。


 私たちは普段、空気中の水分量を「湿度」で表現しています。これは正確には「相対湿度*」と呼び、ある気温における飽和水蒸気量と、実際に空気中に含まれている水蒸気の量(重量絶対湿度=水蒸気密度)との比率を%で表したものです。例として、「気温25℃、相対湿度50%」の場合で考えてみましょう。25℃における飽和水蒸気量は23.06g/m3なので、相対湿度が50%なら、実際に空気中に溶け込んでいる水蒸気はその半分の約11.5g/m3ということになります。ところが、同じ相対湿度50%でも気温が15℃(飽和水蒸気量12.85g/m3)になると、空気中の水蒸気量は約6.4g/m3まで減ってしまいます。この絶対的な水蒸気量の差が、「冬場の乾燥」の原因となるわけです。

また、「暖房によって空気が乾燥する」理由もここにあります。例にあげた気温15℃、湿度50%の状態から、暖房によって気温を25℃まで上げたとします。しかし、なんらかの手段で加湿しない限り、空気中の水蒸気量は約6.4g/m3のままですから、相対湿度は約6.4÷23.06=約28%にまで下がってしまう計算になります。

* 相対湿度の正確な定義は「飽和水蒸気圧に対する水蒸気圧の分圧」ですが、ここでは便宜的に重量比で考えます。

 乾燥した空気中では、肌表面の水分が常に空気中に奪われていくので、乾燥肌などの原因になりがちです。また、喉や鼻腔などの粘膜は、体内へ侵入しようとするウイルスを捕獲する役割を持っていますが、乾燥するとうまく機能しなくなってしまい、防御能力が低下します。「エアコンを入れっぱなしで寝てしまって、起きたら喉が痛い」といった状態は、乾燥によって粘膜の活動が低下しているサインと考えてください。

 そして湿度が低い環境は、風邪やインフルエンザなどのウイルスの活動を活発化させます。ウイルスは単独では生命維持活動が行えず、動物の体内でしか増殖できません。宿主の体内からせきなどで放出されたウイルスは、新たな宿主に辿り着くために空気中を漂います。この時、湿度が低いとウイルス中の水分が減って軽くなるため、長時間かつ広範囲に空気中を漂えることで、新たな宿主に到達する可能性が高まるわけです。ウイルスの活動と気温、湿度の関係についてはさまざまな研究結果が発表されていますが、ほとんどの事例で、湿度50%以上の環境では12時間程度でほぼすべてが死滅するという結論が出ています。日本で夏季にインフルエンザが流行しない理由も、湿度の高さにあるわけです。

 いったん話をまとめてみましょう。ただでさえ、空気が乾燥している冬場、暖房を入れるとさらに相対湿度が低下し、ウイルスの活動が活発化しやすくなります。これを防ぐには、なんらかの手段を使って屋内の相対湿度を50%程度に保っておくことが重要です。暖房器具が石油ストーブやガスファンヒーターの場合、燃料が燃える過程で水蒸気が発生するので、気温上昇による湿度低下の度合いは小さくて済みます。とはいえ、それだけで湿度50%を維持することは難しいので、やかんを載せたり、洗濯物や濡れタオルを近くに置いて水蒸気を発生させるわけです。しかし、エアコンや電気ストーブではそのような手が使えませんから、ぜひとも加湿器を併用することをおすすめします。

 

■ 加湿器のさまざまな種類と構造をみてみよう

 



 加湿器の基本構造は単純なもので、水を蓄えておくタンクと、その水を気化させる機構、気化した水蒸気を広範囲に拡散させる(用途によっては、逆に水蒸気を集中させる)吹き出し口を組み合わせたものと考えてかまいません。ポイントは水を気化させる機構の違いです。現在、市販されているものは「スチーム式」「超音波式」「気化式」の3種類に大別でき、さらに複数の方式を組み合わせた「ハイブリッド式」があります。

 「スチーム式」は最もベーシックな加湿器で、内蔵ヒーターによって水を沸騰させ、高温の水蒸気を発生させます。メリットは時間あたりに発生できる水蒸気量の多さと、高温水蒸気で暖房効率にも貢献できることです。パワフルなので、本体サイズを比較的コンパクトに抑えられ、また水を沸騰させるのでタンク中の雑菌繁殖といった心配も無用です。構造が単純なので、価格帯も安価なものから用意されています。
 デメリットとしては、吹き出し口が高温になりがちで火傷の危険性があること、本体を倒してしまった場合に熱湯が撒き散らされてしまうこと、熱源を使うので消費電力が大きくなることがあげられます。内部で水が沸騰するので、機種や設置場所によっては作動音が気になる場合もあります。

 「超音波式」は、超音波で水を振動させて霧状にし、空気中に拡散させるものです。駆動するのが超音波発生用モータだけなので電気代が安く済み、作動音も比較的静か、熱くならないので安全性が高いといったメリットがあります。
 デメリットとしては、水蒸気の粒が大きいので、機種によっては設置場所の周囲が湿った状態になりかねないことや、水道水に含まれる塩素やミネラル分が白い粉状になって付着する場合があることです。また、超音波振動によって水道水の殺菌成分である塩素が短時間で抜けてしまうので、タンク内に雑菌が繁殖、周囲に飛散して健康被害を招く「加湿器病」の原因とされることもありました。現在市販されている機種では抗菌加工などを施したものが主流ですが、それでもこまめにタンクを清掃する必要があるようです。

 「気化式」は、水を「気化フィルタ」に吸い上げ、そこに送風ファンで風を当てることで水蒸気を拡散させる方式です。やはり電気代が安く済み、熱い水蒸気が出ないので安全性も高いことが利点ですが、機種によってはファンの作動音が大きめになること、また時間当たりに発生できる水蒸気の量が少ないので、素早く加湿したい場合には向かないことがデメリットです。機種によっては気化フィルタの清掃や交換が必要になる場合もあります。

■ 加湿器もハイブリッド化で省エネ?


 それぞれの方式が持つデメリットを解消するため、複数の方式を組み合わせて水蒸気を発生させるのが「ハイブリッド式」と呼ばれる加湿器で、大別して2種類があります。「ヒーター+超音波」式のハイブリッド加湿器は、ヒーターで加熱した水に超音波振動を与えて霧状にし、拡散させる方式です。水蒸気量が多く、作動音が静か、過熱によって雑菌飛散の心配が低減といった特長がありますが、超音波式の持つ白粉、周囲の湿りといったデメリットを引きずっている機種もあります。

 もう一つのハイブリッド式は「ヒーター+気化」式です。気化フィルタに吸上げた水に温風を当てて気化させるもので、現在はこちらの方式が主流になっています。温風を使うことで気化の効率を高め、素早い加湿に対応できない気化式のデメリットを解消したわけです。温風発生用の熱源は使いますが、水を直接沸騰させる場合に比べて消費電力はかなり少なくて済みますし、機種によっては状況に応じて温風と冷風を使い分けるといった作動モードを持っているので、その点でも省エネに貢献できます。高温水蒸気や本体の転倒による火傷の危険性もありません。現時点では比較的高価格帯の商品が多いのですが、そのおかげで気化フィルタに抗菌加工を施している機種が多く、雑菌繁殖の心配も低減されています。現時点では最もバランスのいい加湿器と言えるでしょう。

 実際に加湿器を購入する場合は、置き場所と用途に応じて最適なタイプを選択しましょう。広いリビングルームで常時作動させておくような場合は「ヒーター+超音波」式や「ヒーター+気化」式ハイブリッドが適していますが、全体的に価格帯が高いことがネックです。
 最近は加湿機能付き空気清浄機も多数出回り、価格的にも単機能加湿器とそう大きくは違わないものもありますから、環境によってはそちらを検討するべきかもしれません。また、エアコンの暖房能力が十分に高い場合は通常の気化式でこと足りるケースもありますし、寝室で寝る前にだけ使うといった場合にはコンパクト&パワフルで比較的安価なスチーム式が適しているでしょう。販売店の店員さんに相談する場合、「売れ筋」を聞くのではなく、自分の用途をしっかり説明すれば、適切なアドバイスが返ってくるはずです。

 もう一つ注意していただきたいのは、「本当に加湿器が必要なのか?」です。現在の住宅は密閉度が高いので、暖房器具に石油ストーブやガスファンヒーターを使う場合、それだけで40%程度の湿度を維持できるケースも少なくないようです。そんな場合は、先にも書いたようにストーブにやかんを乗せたり、濡れタオルを近くに置いておけばこと足りてしまうかもしれません。小さめの部屋なら、ストーブの近くでなくとも、単に濡れタオルを置いておくだけで湿度の維持に役立ちます。そのような環境で加湿器を常用していると、湿度が高くなりすぎて冬なのにカビが発生してしまう、といったケースがあります。

 「寝る前に寝室を」という場合はともかく、常用するつもりで加湿器を購入する場合は、実際の使用環境がどのようなものなのかを確認してみましょう。冬場に快適に過ごせる環境は室温18〜23℃程度で、ウイルスを活性化させずカビも発生させない湿度は50〜60%の範囲と言われています。最近はデジタル式の温度・湿度計が安価に購入できますから、まずはそういうものを使って室内の実際の環境を確認していただくことをおすすめします。


著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。
現在はMotorFan illustrated誌、日経トレンディネットなどに執筆。
著書/共著書/編集協力書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」「PC自作の鉄則!2005」(日経BP社)
「図解雑学・量子コンピュータ」「最新!自動車エンジン技術がわかる本」(ナツメ社)など

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