テクの雑学

第53回 たまには夜空をながめてみよう −天体望遠鏡の仕組み−

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

2006年8月、歴史的なできごとがありました。一度は太陽系の第9惑星として認められていた冥王星が、惑星ではないとされ、惑星の数が8個に減ったのです。

 宇宙の観測には天体望遠鏡が欠かせません。天体望遠鏡とは、「遠方にある天体を観測するための装置」であり、肉眼で見るだけではなく、天体が放出する電波を観測する電波望遠鏡や、赤外線を観測する赤外線望遠鏡などさまざまなものが含まれています。ですが、今も昔も、惑星の発見に使われているのは昔から使われている、可視光で天体を観測する光学式望遠鏡です。今回の雑学では、この光学式望遠鏡の仕組みについてみてみましょう。

世界で最初の天体望遠鏡は?

たまには夜空をながめてみよう −天体望遠鏡の仕組み−


 望遠鏡が発明されたのは1608年、オランダの眼鏡職人ハンス・リッペルハイだといわれています。凹レンズと凸レンズの2枚を重ねて見ると、遠くにあるものがとても近くに見えることに気づいたリッペルハイは、2枚のレンズを筒の両端に取り付けた屈折望遠鏡を作りました。

 世界で最初に望遠鏡で天体を観測したのは、ガリレオ・ガリレイです。ガリレオは1609年末から1610年にかけて、自作の望遠鏡で月面を観測し、そのスケッチを『星界の報告』という小冊子にまとめました。『星界の報告』は日本語訳が岩波文庫に収録されており、スケッチも見ることができます。

 日本に望遠鏡が伝来したのは、江戸時代初期の1613年です。イギリスの使節団が献上したのが最初といわれており、「遠眼鏡」「星眼鏡」などと呼ばれていました。

■ 屈折式と反射式の仕組み

 光学式望遠鏡は、大きくわけると屈折式と反射式の2種類があります。

[ 屈折望遠鏡 ]
 筒の両端に対物レンズと接眼レンズを取り付け、拡大して見る仕組みです。凸レンズを対物レンズに、凹レンズを接眼レンズとして使用するガリレオ式と、両方に凸レンズを使用するケプラー式があります。


屈折望遠鏡の仕組み

 ケプラー式は、倍率を上げやすい反面、像が倒立する(逆さまになる)という特徴があります。一方のガリレオ式では、高倍率を得にくいが、像は正立(肉眼でみるのと同じ)という特徴があります。現在市販されている屈折望遠鏡の多くは、ケプラー式です。ガリレオ式望遠鏡の仕組みは、オペラグラスに採用されています。


[ 反射望遠鏡 ]
 筒の底に凹面鏡(主鏡)を取り付け、筒の頭を星に向けます。主鏡に星の光を集めて反射させ、その光を筒の中に取り付けた副鏡でさらに反射して、その光を接眼レンズで見ます。主鏡の形と副鏡の取り付け方によって、さまざまな種類がありますが、代表的なニュートン式反射望遠鏡の仕組みは図のようになっています。
 

反射望遠鏡の仕組み


 反射望遠鏡は、主鏡を大きくすることで倍率を高めやすく、暗い星でも見えるようになるというメリットがあります。天文台などに設置されている大きな天体望遠鏡は、ほとんどが反射望遠鏡です。

■ 星を追いかけるのに必要な架台

 天体望遠鏡を使ってはじめて天体観測をする人がよく困るのが、「見たい星がどこにあるのか分からない」ということです。天体望遠鏡の視野(見える範囲)は倍率が高いものほど狭くなります。望遠鏡を目当ての星に向けたつもりでも見えない、というのは、実は視野の中におさまっていないからなのです。

 視野を合わせるために使うのが、「ファインダー」と呼ばれる小さな、倍率の低い望遠鏡です。ファインダーは、望遠鏡の鏡筒と並行になるように固定して使います。ファインダーは倍率が低く視野が広いので、まずこれで目当ての星を見つけて視野の中央に入れて、望遠鏡本体をのぞくと、高倍率で観測することができます。

 ところがもう一つ問題があります。地球は自転しているので、時間が経つにつれて星は動いていきます。つまり、地球の自転速度に合わせて、望遠鏡の向きを少しずつ変えなければ、一つの星を長時間見続けることはできないのです。

 星の動きに合わせて望遠鏡を動かしていくことを「追尾」といいます。特に、写真を撮影するときには、弱い光をとらえるために長時間シャッターを開放して露光し続ける必要があるので、追尾の仕組みは欠かせません。天体望遠鏡を支える「架台」は、追尾のための仕組みを備えています。架台には経緯台と赤道儀の2種類があります。

 経緯台は、望遠鏡を垂直方向と水平方向の2方向に動かすことで視野を移動し、追尾する方法です。構造が簡単で扱いやすいのですが、モータが2つ必要なので、動作が複雑になります。

 赤道儀は、あらかじめ軸を天の北極の方向に向けておき、地球の自転速度にあわせて望遠鏡を回転する仕組みです。モータが一つですむので動作が簡単ですが、構造が複雑なことと、望遠鏡が大きく傾くためバランスをとるためのおもりが必要となり、あまり大きな望遠鏡が乗せられないという欠点があります。

赤道儀の仕組み 極軸を天の北極の方向に合わせて、赤経軸と赤緯軸を回転して星を視野に入れる。一度調整ができたら、極軸を中心に回転するだけで自転による星の動きに追尾できる


 最近の架台は、一度望遠鏡を目的の天体に向けた後は、コンピュータ制御で自動追尾を行えます。コンピュータ制御であれば、経緯台の複雑な動作も全く問題なく、正確に行うことができます。そのため、すばる天文台をはじめとする、天文台の大きな望遠鏡は経緯台式の架台を採用するケースが増えています。

■ 新しい天体の発見には写真が大事!

 新しい天体の発見というと、最新の技術が使われていると考えられがちですが、そんなことはありません。高倍率の望遠鏡と架台を使って、空の同じ場所の写真を何日も連続して撮影し、動いている天体や明るさの変わる天体がないかを根気よく人の目で探していくのです。

 望遠鏡の倍率が大きくなり、暗い天体の写真を撮影できるようになりましたが、やっていることは昔から変わりません。全く同じ作業を経て、1930年にアメリカのクライド・トンボーが発見したのが、冥王星でした。

 冥王星は発見時から太陽系の第9惑星として扱われてきましたが、その性質は他の8つの惑星とは大きく異なっていました。公転軌道が極端な楕円形を描いており、しかも傾いていること、極端に小さいことなどから、これを惑星として認めるかどうかという議論は昔からありました。

 これを見直す大きなきっかけとなったのが、2005年1月にマイケル・ブラウン、チャドウィック・トルヒージョ、デイヴィッド・ラビノウィッツによって発見された「2003 UB313」です。名前の「2003」は、2003年に撮影された写真から発見されたことに由来しています。

 2003 UB313は冥王星よりも遠い軌道を描いて太陽の周りを回っており、しかも冥王星よりも大きいことから、これを太陽系第10惑星として認めるかどうかという議論が科学者の間で起こりました。実はそれまで、惑星の学術的に明確な定義は存在しておらず、2003UB313を惑星として認めると、際限なく惑星が増えていくのではないかという可能性が指摘されたのです。

 2006年8月の国際天文学連合(IAU)総会で、惑星とは何かが明確に定義され、その結果、冥王星は惑星ではなく「矮惑星」という新たなカテゴリーの天体に分類されることになりました。この決議がされたときに矮惑星とされたのは、冥王星、2003UB313、小惑星ケレスの3つであり、他に14個の天体が矮惑星の候補として挙がっています。

 惑星ではなくなっても、冥王星が太陽系を構成する天体であり、科学的に重要な知見をもたらしてくれる存在であることには変わりがありません。大きな望遠鏡ができることで、さらにまた新しい太陽系の仲間が見つかるかもしれませんね。


著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など

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